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対話を拒否するような返事に対処する方法

対話を拒否するような返事に対処する方法

注解: 人々が命を得る見込みは,エホバ神と,キリスト・イエスの治める神の王国とに対する態度にかかっています。神の王国に関する音信は感動的なもので,人類のための唯一の信頼できる希望を指し示しています。この音信には人の生き方を変えさせる力があります。ですから,わたしたちはこの音信をすべての人に聞いてもらいたいと思います。感謝の念を抱いてそれを受け入れるのはごく少数の人たちにすぎないことは分かっていますが,しかし人々が情報を得た上で選択することになっているのであれば,少なくともそれについて聞く必要があるということをわたしたちは知っています。それでも,すべての人が喜んで耳を傾けるわけではありませんし,わたしたちも人々に強制しようとは思いません。しかし,分別を働かせれば,対話を拒否するような返事が,話し合いをさらに進めるきっかけになる場合も少なくありません。次に挙げるのは,経験を積んだ証人たちがふさわしい人々を探す努力を払う際に用いてきた話し方の実例です。(マタイ 10:11)わたしたちがお勧めするのは,それらの返事のどれかを丸暗記するのではなく,考えを把握して,それを自分の言葉で述べ,相手の人に対する純粋の関心が伝わるように話すことです。そうすれば,心が正しい事柄に傾いている人々なら,よく耳を傾け,命を得させるための愛ある備えを受け入れるよう,そのような人を引き寄せるためにエホバが行なっておられる事柄に感謝の念を抱いてこたえ応じるという確信を持つことができます。―ヨハネ 6:44。使徒 16:14

『興味がありません』

● 『それは,聖書に興味をお持ちではないということでしょうか。それとも,一般の宗教に興味をお持ちではないということでしょうか。と申しますのは,以前は宗教心を持っておられたのに,教会で多くの偽善を目にするので(あるいは,宗教も金もうけのための商売の一つにすぎないと思えるので; あるいは,教会が政治に関与することは許せないので; その他),教会にはもう行っていないという方によくお会いするからです。聖書もそういう行ないを是認してはいません。聖書は私たちが確信を抱いて将来を待ち望むことのできる唯一の根拠を示しています』。

● 『ほかの宗教には興味をお持ちではないかもしれませんが,核戦争の脅威を考えますと,どんな将来が期待できるか(あるいは,どうすれば麻薬の乱用の危険から子供たちを守ることができるか; あるいは,犯罪に関して何を行なえば,不安なく町を歩けるようになるか; その他)という問題には興味をお持ちではないでしょうか。真の解決策が見いだされる何らかの見込みがあると思われますか』。

● 『それは,ご自分の宗教を持っておられるからでしょうか。……すべての人が同じ宗教を持つ時代がいつか来ると思われますか。……そうなるのを何が妨げていると思われますか。……それが有意義なものとなるためには,どんな土台が必要でしょうか』。

● 『そうおっしゃるのはごもっともだと思います。数年前,私も同じように感じておりました。しかし,聖書である事柄を読んでから,物事を違った目で見るようになりました。(それがどんな事柄であったかをその人に示す。)』

● 『どうすれば,亡くなられた愛する方々に再びお会いになれるか(あるいは,人生の真の目的とは何か; あるいは,家族の一致を保つのに聖書はどのように助けになるか; その他),聖書からお知らせできるとしたら,興味をお持ちになるのではないでしょうか』。

● 『もし,何かを買うことには興味がないとおっしゃるのでしたら,私は商売をしている者ではございませんので,ご安心ください。しかし,病気や犯罪のない楽園<パラダイス>の地上で,自分を本当に愛してくれる隣人と共に生活する機会があるということでしたら,興味をお持ちになるのではないでしょうか』。

● 『エホバの証人がお訪ねするとき,いつもそのようにおっしゃるのですか。……どうしてこんなによく来るのだろう,何を言いたいのだろう,と真剣にお考えになったことはありませんか。……簡単にお話ししますと,あなたにもぜひ知っていただきたい事がありますので,お伺いいたしました。今回だけでもお聴きいただけませんか』。

『宗教には興味がありません』

● 『お気持ちはよく分かります。率直に言って,教会はこの世界をより安全な住みかにしてはいませんね。……前からそのように感じていらっしゃいましたか。……でも,神は信じていらっしゃるのですか』。

● 『同じように考えている方が大勢おられます。実際,宗教は人々を助けてきませんでした。そのことも私たちがお訪ねする理由の一つです。教会は神に関する真理も,また人類に対する神のすばらしい目的に関する真理も人々に教えてこなかったからです』。

● 『でも,ご自分の将来についてはきっと興味を持っておられると思います。聖書は確かに,今日の世界の状態を予告していました。そのことをご存じでしたか。……そして聖書は,どんな結末になるかも示しています』。

● 『今までずっとそのようにお考えでしたか。……将来についてはどう思われますか』。

『エホバの証人には興味がありません』

● 『多くの方がそのようにおっしゃいます。でも,ほとんどの家で歓迎されないということが分かっていても,私たちがこうして自発的に訪問するのを不思議に思われたことはありませんか。(マタイ 25章31-33節の要点を述べて,すべての国の人々を分ける業が行なわれていること,そしてこの業における重要な要素は王国の音信に対する人々の反応であることを説明します。あるいは,エゼキエル 9章1-11節の要点を述べてから,すべての人が王国の音信に対する反応に基づいて,大患難を生きて通過する者であるか,あるいは神に滅ぼされる者であるか,どちらかの「印」を付けられているということを説明します。)』

● 『私もかつては同じように感じておりましたので,そうおっしゃるお気持ちはよく分かります。でも,公平でなければいけないと思いまして,エホバの証人の話を聴いてみることにしました。そして,エホバの証人たちについて本当のことを教えられていなかったことに気づきました。(一般的な間違った非難について述べ,それからわたしたちの信じている事柄を説明します。)』

● 『それほど前のことではありませんが,私の家に来たエホバの証人に向かって私も同じことを言いました。しかし,その人が去る前に,私は,その人もきっと答えられないだろうと思いながら,ある質問をしました。どんな質問だったと思われますか。……(一例: カインはどこから妻を得ましたか。)』(実際にそのような経験をした人たちはこの方法を用いることができます。)

● 『信仰心をお持ちの方でしたら,そうおっしゃるのはごもっともだと思います。きっとご自分の宗教があなたにとって大きな意味を持っているのだと思います。でも,私たちはお互いに(ふさわしい話題を述べて)に関心を抱いているのではないでしょうか』。

● 『それでは,ご自分の宗教をお持ちなんですね。失礼ですが,どちらの宗教に入っておられるのですか。……私たちはあなたと同じ信仰をお持ちの方々とよくお話しします。(話し合おうとしている話題を述べて)についてはどう感じていらっしゃいますか』。

● 『そうですか,おっしゃることはよく分かります。しかし,私ども家族がこうしてお訪ねしておりますのは人々が平和な状態で共に暮らすようになるのを見たいと願っているからです。私たちは人々の争いや苦しんでいる人々のことをニュースで毎晩のように聞かされ,やりきれない気持ちです。あなたも同じように感じておられると思います。……しかし,何が必要な変化をもたらしてくれるでしょうか。……私たちは聖書の約束から励みを得ています』。

● 『お気持ちを聞かせてくださり,感謝します。私たちのどんな点を快く思っておられないのか教えていただけるでしょうか。それは,私たちが聖書からお話しする事柄でしょうか。それとも,お宅をお訪ねすることでしょうか』。

『自分の宗教を持っています』

● 『あなたが信じていらっしゃる宗教は,正しい事柄を愛する人々が地上で永遠に生きられる時代が来るということを教えていますか。……これはとても魅力的な考えではないでしょうか。……聖書のここにそのことが書かれています。(詩編 37:29。マタイ 5:5。啓示 21:4)』

● 『私もこれは各人が自分で決めるべき事柄だと思います。しかし,神はご自分の真の崇拝者として,ある種の人々を求めておられることをご存じでしたか。ヨハネ 4章23,24節のここをちょっとご覧ください。「真理をもって」神を崇拝するとは,どういう意味でしょうか。……何が真実か,また何が真実でないかを知るよう私たちを助けるために,神は何を与えてくださったでしょうか。……(ヨハネ 17:17)そして,それが私たちにとって個人的にどれほど重要かにご注目ください。(ヨハネ 17:3)』

● 『今までずっと信仰心をお持ちだったのですか。……人類はいつか一つの宗教で結ばれるようになると思われますか。……私はこの啓示 5章13節に記されている事柄から,そのことについて随分考えてきました。……私たちがこのようになるためには何が必要でしょうか』。

● 『私は霊的な事柄に関心を持っておられるあなたのような方にお会いしたいと思っておりました。このごろは,そのような方はとても少なくなりました。聖書は,神がすべての悪を一掃してこの地球を義を愛する人々だけの住む場所になさることを約束していますが,こういう約束についてどうお感じになりますか。すばらしいことだと思われませんか』。

● 『教会の行事には積極的に参加しておられますか。……このごろ,教会は礼拝の時に,一杯になりますか。……教会員の方々は大抵,神の言葉を日常生活に当てはめて従いたいという誠実な願いを本当に示しておられますか。(あるいは,世界の直面している諸問題の解決策に関して教会員の方々が一致した考えを持っておられますか。)個人的に行なえる家庭聖書研究はお役に立つと思います』。

● 『ご自分の宗教に満足していらっしゃるようですが,大抵の方は世界の状態に不満を抱いていますね。あなたもそう感じておられるのではないでしょうか。……これから先一体どうなるのでしょうか』。

● 『聖書を愛読しておられるのですね。……時間を作って定期的に読んでいらっしゃいますか』。

● 『そのことを話してくださって,うれしく思います。私たちは皆,どんな宗教的背景を持っていても,世界平和(あるいは,子供たちを悪い影響から守る方法; あるいは,近隣の人々がお互いに本当に愛し合えるような環境になること; あるいは,他の人々と仲良くやってゆくことは,みんなが圧力を感じている場合,一つの挑戦となるかもしれない)には大変深い関心をお持ちではないでしょうか』。

● 『信仰心がおありのようで結構ですね。このごろ,多くの人々は宗教のことをあまり真剣に考えていません。神はいないと考えている方々もいます。しかし,これまで学んでこられた事柄から,神はどんな方だと思われますか。……聖書には神ご自身の名が示されています。ちょっとご覧ください。(出エジプト 6:3。詩編 83:18)』

● 『イエスはご自分の弟子たちを伝道にお遣わしになった時,地上のあらゆる場所に行くようお命じになりましたから,弟子たちは自分たちの宗教とは異なる別の宗教を奉ずる多くの人々と会うことになりました。(使徒 1:8)しかし,義に飢え渇いている人たちは耳を傾けるということをイエスはご存じでした。今の時代に伝えられるようになるとイエスが言われた特定の音信とは何でしょうか。(マタイ 24:14)その王国は私たちにとって何を意味するのでしょうか』。

『わたしたちはクリスチャンで,教会へ行っています』

● 『ああ,そうですか。それでは,イエスご自身がこのように人々の家を訪ねて伝道をなさり,弟子たちにもそうするようお命じになったことをよくご存じですね。弟子たちが宣べ伝えた音信の主題は何だったと思われますか。……今日はそのことについてお話しできればと思ってお伺いいたしました。(ルカ 8:1。ダニエル 2:44)』

● 『では,イエスがこの山上の垂訓の中で言われた事柄がどんなに重大な事柄であるかよく理解しておられることと思います。イエスは……と話された時,非常に率直な話し方をされましたが,同時に愛をこめて話されましたね。(マタイ 7:21-23)ですから,私たちは,天の父のご意志を自分がどれほどよく知っているか考えてみる必要がありますね。(ヨハネ 17:3)』

『今は忙しいので結構です』

● 『では,ごく簡単に,大切な事を一つだけお知らせして失礼いたします。(話そうとしていた事柄の要点をほんの一,二の短い文にまとめて述べる。)』

● 『分かりました。また別の機会にお邪魔させていただきますが,失礼する前に,大切な事柄を教えている聖句を一つだけお読みしたいと思います』。

● 『そうですか。私も母親(あるいは,勤め人; あるいは,学生)で,することがたくさんありますから,簡単にお話しさせていただきます。すべての人は今重大な事態に直面しています。聖書は,神が現在の邪悪な体制を滅ぼす時が非常に近いことを示しています。しかし,生き残る人たちもいます。問題は,その生き残る人の中に入るには何をしなければならないかということですが,聖書はこの問題に答えを与えています。(ゼパニヤ 2:2,3)』

● 『私たちはお忙しい方々のためにこうしてお訪ねしているのです。私たちはみな忙しく日を送っていますが,あまり忙しすぎると,生活の中で本当に重要な事柄がおろそかになることはないでしょうか。……簡単にお話しいたしますが,この聖句にはきっと興味をお感じになると思います。(ルカ 17:26,27)だれもそのような状態でいたいとは思いませんので,忙しくても,聖書に書かれている事柄を考える時間を作る必要がありますね。(文書を提供する。)』

● 『ご近所の方々を何人かお訪ねして,30分ほどしてからお伺いしたほうが,ご都合がよろしいでしょうか』。

● 『では,すぐ失礼して,またいつかお邪魔させていただきますが,今日はこのような特別の出版物をご紹介しています。(その月の提供物を見せる。)この出版物には,(一,二の質問を述べて)というような質問に対する聖書からの答えを知るのに役立つ研究資料が載っています』。

● 『ご都合の悪い時にお邪魔しまして失礼いたしました。ご存じかもしれませんが,私はエホバの証人というグループの者で,聖書に書かれている一つの大切な事柄をお伝えしたいと思って伺いました。でも,今はお忙しいようですから,(主題を告げて)の問題を取り上げているこのパンフレットを差し上げたいと思います。時間はそれほどかかりませんし,きっと興味深く読んでいただけると思います』。

● 『おっしゃることはよく理解できます。何もかもしようと思えば,とても時間が足りませんね。でも,もし永遠に生きられるとしたら,生活はどんなふうに違ったものになるかお考えになったことはありませんか。もちろん,これは奇妙に聞こえると思いますが。でも,それがどうして可能なのかを説明している聖書の聖句を一つだけご覧いただけますか。(ヨハネ 17:3)ですから,今行なう必要があるのは,神とそのみ子についてのこの知識を取り入れることです。そのために,このような文書をお勧めしています』。

『どうしてこんなによく来るのですか』

● 『私たちは,聖書の中で終わりの日と言われている時代に生活していることを信じているからです。私たちは,現在の状態がどんな結末を迎えるかをすべての人が考えるのは重要な事だと思っています。(最近の出来事あるいは最新の事態の一,二の例を挙げる。)問題は,この体制の終わりを生き残りたいなら,何をする必要があるかということです』。

● 『私たちは神と隣人を愛しているからです。これは私たちすべてが行なうべき事ではないでしょうか』。

『あなた方のしている事についてはもうよく知っています』

● 『そうですか。それは大変うれしいことです。ご親族の方かお友だちに,エホバの証人がいらっしゃるのですか。……私たちが聖書から教えている事柄,例えば,私たちが「終わりの日」に生活していることとか,間もなく神が邪悪な者たちを滅ぼそうとしておられること,この地球は楽園になり,人々は本当に愛し合う隣人の中で,完全な健康に恵まれて永遠に生きられるということなどを,信じていらっしゃいますか』。

『お金がありません』

● 『私たちは寄付をお願いしているわけではありません。むしろ,無料の家庭聖書研究をなさるようお勧めしています。その研究で扱われる主題の一つは(最新の出版物の一つの章の主題を示して)です。数分しかかかりませんので,その研究がどのようにして行なわれるかをお見せしましょうか。研究は全く無料です』。

● 『私たちが関心を持っているのは,人々のお金ではなくて,人々です。(話を続けます。出版物の一つを見せ,それが家の人にどのように益となるかを説明します。家の人が純粋の関心を示し,読むことを約束するなら,その出版物を渡します。もし適当と思えるなら,わたしたちが行なっている世界的な伝道活動が資金面でどのようにまかなわれているかについて説明します。)』

『わたしは仏教徒です』と言われたなら

● その人が信じている事柄は,他のすべての仏教徒が信じている事柄と同じだと結論してはなりません。仏教の教えは漠然としていて,解釈の仕方は人によって異なります。日本の仏教は東南アジアの仏教とはかなり異なっています。個々の人もそれぞれ違った見方をします。しかし一般的に言って,次のような点を知っておくと,役に立つ場合があります。(1)仏教では外在的な神,つまり人格的な創造者を認めません。しかし,多くの仏教徒は仏陀の像や遺物を拝みます。(2)仏陀という称号を与えられたゴータマ・シッダッタは,その追随者たちの見倣うべき宗教的な理想像とみなされるようになりました。仏陀は人間的な見地から人間について研究し,また俗世の欲望をすべて取り除くために思いを制御することにより,苦しみの根源を断ち切って,悟りを得るよう勧めました。このようにして,人は転生の過程の再生から解脱して涅槃(ニルバーナ)に到達すると,仏陀は教えました。(3)仏教徒は先祖を崇拝します。先祖を自分たちの命の源と見ているからです。

話し合いのための提案: (1)仏教徒と話す時には,自分がキリスト教世界に属していないことを強調してください。(2)仏教徒は“聖典”に対して敬意を抱いていますから,普通,聖書を尊重します。仏教哲学について長々と話すようなことをせずに,聖書の積極的な音信について話してください。聖書に書かれていることは単なる人間の哲学ではなく,人間の創造者,エホバ神の権威あるみ言葉であることを知らせてください。聖書というこの聖典の一つの興味深い点を見ていただけますか,と丁重に尋ねてください。(3)多くの仏教徒は平和と家族生活に深い関心を抱いており,道徳的な生活を送ることを願っています。これらの問題をどれか取り上げて話すと,多くの場合歓迎されます。(4)聖書は,人類の直面している諸問題の真の解決策として,地を治める義にかなった天の政府に注目させていることを述べてください。聖書は地球の将来と地上の楽園<パラダイス>で永遠に生きるすばらしい見込みを述べています。(5)聖書は生命の起源,人生の目的,死者の状態,復活の希望,悪が存在する理由などについて説明しているということを指摘することもできます。神の言葉の明白な真理を親切に説明すれば,羊のような人たちの心に真理の価値に対する良い反応が生まれるでしょう。

「父を尋ね求めて」と題する小冊子は,特に誠実な仏教徒のために用意されました。

『わたしはヒンズー教徒です』と言われたなら

● ヒンズー教の哲学は非常に複雑ですから,普通の論理は通じないことを知っておかなければなりません。次のような点を念頭に置いていれば,話をするときに役立つでしょう。(1)ヒンズー教は,神ブラフマンの中に,創造者ブラフマー,維持者ビシュヌおよび破壊者シバという三つの形が含まれていると教えています。しかし,ヒンズー教徒は別個に存在する人格神について考えません。(2)ヒンズー教徒は,自然界の物体にはすべて決して死なない魂があること,魂は事実上無限の輪廻を経験すること,輪廻において魂がどんなものに生まれ変わるかは業(カルマ)によって決まること,この“終わりのない輪転”からの解放は肉体の欲望をすべて消滅させることによってのみ可能であること,そのような解放が達成されるなら,魂が宇宙の霊と融合することなどを信じています。(3)大抵,ヒンズー教徒は他の宗教を尊重します。宗教はすべてそれぞれ相反する教理を教えているにもかかわらず,同一の真理に到達するとヒンズー教徒は信じています。

ヒンズー教の哲学の複雑な事柄を取り上げるのではなく,聖書にある満足のゆく真理を話すようにします。命を得させるためのエホバの愛ある備えはあらゆる人々のためのものであって,そのみ言葉の明白な真理は,義に飢え渇いている人々の心を動かすようになります。聖書だけが将来に対する本当に十分な根拠のある希望を提供しており,聖書だけがすべての人間の直面する重要な疑問に対する真に満足のゆく答えを与えています。そのような答えを聞く機会をヒンズー教徒に与えてください。ヒンズー教の賛歌,「リグ・ベーダ」の10編121章に「知られざる神に」という題が付されているのは興味深い事柄です。時には,使徒パウロがアテネで「知られていない神に」ささげられた祭壇に言及したのと同様の仕方で,そのことに触れてみるのもよいかもしれません。(使徒 17:22,23)興味深いことに,ヒンズー教の神ビシュヌの名は,その字母ディガンマを除くと,イシ・ヌーとなり,これはカルデア語で「人間ノア」を意味しています。ノアの時代に起きた地球的な大洪水の意義について聖書が述べている事柄を指摘してください。前途の終わりのない輪廻のことを考えて苦しんでいる人たちを助けるには,主要な見出し,「輪廻」の項の430ページの資料が役に立ちます。

「神の真理の道は解放に通じる」と「クルクシェトラからハルマゲドンまで ― そして,あなたの生存」と題する小冊子(英文)には,誠実なヒンズー教徒にとって非常に有益な情報が載せられています。

『わたしはユダヤ人です』と言われたなら

● まず,その人がユダヤ人として自分自身のことをどのように考えているかを確かめてください。信心深い人はごく少数です。多くの場合,ユダヤ人という名称は単なる民族の呼び名にすぎません。

次に,覚えておくとよい点を幾つか挙げてみましょう。(1)信心深いユダヤ人は,神のみ名を発音することは禁じられていると考えています。(2)多くのユダヤ人は“聖書”のことをキリスト教の書と考えますが,もし“ヘブライ語聖典”,“聖典”,あるいは“トーラー”と呼べば,問題を起こさないですみます。(3)伝承はユダヤ人の信仰の中心的な部分で,多数の信心深いユダヤ人は伝承を聖典と同等の権威を持つものとみなしています。(4)イエス・キリストといえば,ユダヤ人はキリスト教世界からイエスの名において加えられた残忍な迫害を連想するかもしれません。(5)多くの場合,ユダヤ人は安息日を守るよう神から要求されていると信じており,その信条には,安息日にお金は取り扱わないという考えが含まれています。

共通の立場を確立するために,こう言えるかもしれません。(1)『今の世界に住む私たちは皆,どんな背景をもっているかにかかわりなく,多くの同じ困難な問題に直面しているのではないでしょうか。この世代が直面している重大な問題に対する恒久的な解決策が実際にあると思われますか。(詩編 37:10,11,29。詩編 146:3-5。ダニエル 2:44)』(2)『私たちはキリスト教世界に属していませんので,三位一体を信じていません。でも,アブラハムの神を崇拝しています。そして,特に宗教的な真理という問題に関心をもっています。ユダヤ人の方々の間にも信仰に大きな違いがあるようにお見受けしますが,何が真実かどのようにしてお決めになりますか。……(申命 4:2。イザヤ 29:13,14。詩編 119:160)』(3)『私たちは,神がアブラハムに対してすべての国民がその子孫によって祝福されるようになると誓われた約束に,深い関心をもっています。(創世 22:18,口語)』

もし相手の人が神をあまり信じていないと言ったなら,これまでいつもそうだったかどうか尋ねてみます。それから,神が悪や苦しみを許してこられた理由について話し合えるかもしれません。ナチによる大虐殺が記憶にあるため,多くのユダヤ人はその問題を気にしています。

神のみ名を用いることの重要性について話し合うのでしたら,まず相手の人がそのことをどう感じているか確かめます。出エジプト記 20章7節は神の名をいたずらに取り上げることを禁じていますが,その名を敬意を抱いて用いることは禁じていないという点を指摘します。それから,出エジプト記 3章15節(あるいは,詩編 135編13節),列王第一 8章41-43節,イザヤ 12章4節,エレミヤ 10章25節,マラキ 3章16節などの聖句について論じてください。

メシアについて話し合う場合には,(1)メシアの実体ではなく,その支配がもたらす将来の祝福についてまず話します。(2)それから,メシア個人を指し示している聖句について論じます。(創世 22:17,18。ゼカリヤ 9:9,10。ダニエル 7:13,14)(3)メシアの到来が2回あることも話し合う必要があるかもしれません。(ダニエル 7:13,14とダニエル 9:24-26とを比較。)(4)イエスのことに触れる場合には,神の目的の漸進的な性格が強調されている文脈の中で触れてください。イエスが教えておられた当時,神の許しで二度目の神殿が破壊され,決して再建されなくなる時が近づいていたことを指摘します。しかし,イエスは律法と預言書が成就することや,信仰のある人々が律法と預言書によって導き入れられる輝かしい将来を強調されました。