第​14​章

すべてのことにおいて正直

すべてのことにおいて正直

『わたしたち​は​すべて​の​こと​に​おい​て​正直​に​行動​し​たい​と​願っ​て​い​ます』。―ヘブライ 13:18

1,2 正直​で​あろ​う​と​する​わたしたち​の​努力​を​見​て​エホバ​が​喜ば​れる​の​は​なぜ​です​か。例え​で​説明​し​て​ください。

母親​と​幼い​子ども​が​店​から​出​て​き​ます。突然,子ども​が​はっ​と​し​て​立ち止まり​ます。店​に​あっ​た​おもちゃ​を​握っ​て​い​ます。棚​に​戻す​の​を​忘れ​た​の​でしょ​う。買っ​て​いい​か,お母さん​に​聞く​つもり​だっ​た​の​か​も​しれ​ませ​ん。ただただ​泣きじゃくり​ます。母親​は​優しく​声​を​かけ,一緒​に​店​に​戻り​ます。子ども​は​おもちゃ​を​返し​て​謝り​ます。それ​を​見る​母親​の​心​に​は,喜び​と​誇らしい​気持ち​が​わき上がっ​て​くる​の​で​は​ない​でしょ​う​か。

2 親​は,子ども​が​正直​さ​の​重要​性​を​学ん​で​いる​の​を​見る​と,本当​に​うれしく​感じ​ます。わたしたち​の​天​の​父​で​ある「真理​の​神」も​同じ​よう​に​お感じ​に​なり​ます。(詩編 31:5)わたしたち​が​霊的​な​円熟​に​向かっ​て​成長​する​の​を​ご覧​に​なり,正直​で​あろ​う​と​努力​する​姿​を​見​て​喜ば​れ​ます。わたしたち​は,神​を​喜ばせ​たい,神​の​愛​の​うち​に​とどまり​たい​と​望ん​で​いる​の​で,使徒​パウロ​と​同じく,『すべて​の​こと​に​おい​て​正直​に​行動​し​たい​と​願っ​て​い​ます』。(ヘブライ 13:18)では,正直​で​ある​の​が​特に​難しく​思える​こと​の​ある​四つ​の​分野​に​注意​を​向け​ましょ​う。その​後,正直​さ​の​結果​と​し​て​もたらさ​れる​祝福​を​考え​ます。

自分​自身​に​対し​て​正直

3‐5 (イ)自己​欺瞞​の​危険​に​つい​て,神​の​言葉​は​どの​よう​に​警告​し​て​い​ます​か。(ロ)自分​自身​に​対し​て​正直​で​ある​ため​に,何​が​助け​に​なり​ます​か。

3 まず​難しい​の​は,自分​自身​に​対し​て​正直​に​なる​こと​です。不​完全​な​人間​で​ある​わたしたち​は,いとも​簡単​に​自己​欺瞞​に​陥っ​て​しまい​ます。例えば​イエス​に​よる​と,ラオデキア​の​クリスチャン​は​自分​自身​を​だまし​て​い​まし​た。実際​に​は​霊的​に「貧しく,盲目​で,裸」と​いう​本当​に​哀れ​な​状態​に​あっ​た​に​も​かかわら​ず,富ん​で​いる​と​自ら​に​思い込ま​せ​て​い​た​の​です。(啓示 3:17)その​よう​に​自ら​を​欺い​て​も,いっそう​危険​な​状況​に​陥る​だけ​でし​た。

4 次​の​よう​な​弟子​ヤコブ​の​警告​も​思い出さ​れ​ます。「自分​で​は​正しい​方式​に​従う​崇拝​者​で​ある​と​思っ​て​い​て​も,自分​の​舌​に​くつわ​を​かけ​ず,自ら​の​心​を​欺い​て​いる​人​が​いれ​ば,その​人​の​崇拝​の​方式​は​無益​です」。(ヤコブ 1:26)舌​を​誤用​し​て​も​自分​の​崇拝​は​エホバ​に​受け入れ​られる,と​考える​と​し​たら,自分​の​心​を​欺く​こと​に​しか​なり​ませ​ん。エホバ​に​ささげる​崇拝​は​無益​な​もの,全く​無駄​な​もの​と​なっ​て​しまい​ます。どう​すれ​ば​その​よう​な​惨め​な​歩み​を​避け​られる​でしょ​う​か。

5 ヤコブ​は​この​文脈​で,神​の​言葉​の​真理​を​鏡​に​なぞらえ​て​い​ます。そして,神​の​完全​な​律法​の​中​を​熟視​し,それ​に​基づい​て​調整​を​行なう​よう​に,と​助言​し​て​い​ます。(ヤコブ 1:23‐25)わたしたち​は​聖書​の​助け​に​より,自分​自身​に​対し​て​正直​に​なり,改善​に​必要​な​事柄​を​見分ける​こと​が​でき​ます。(哀歌 3:40。ハガイ 1:5)また,エホバ​に​祈り,わたし​を​調べ​て​ください​と​お願い​する​こと​も​でき​ます。重大​な​欠点​が​あれ​ば​それ​を​見つけ​て​正せる​よう​助け​て​ください,と​祈る​の​です。(詩編 139:23,24)不​正直​さ​は​油断​の​なら​ない​弱点​です。不​正直​さ​に​関し​て​天​の​父​と​同じ​見方​を​持つ​こと​が​必要​です。箴言 3​章​32​節​に​こう​あり​ます。「ねじくれ​た​人​は​エホバ​に​とっ​て​忌む​べき​もの​で​あり,神​の​親密​さ​は​廉直​な​者​たち​と​共​に​ある」。エホバ​と​同様​の​感覚​を​持ち,エホバ​が​わたしたち​を​ご覧​に​なる​の​と​同じ​よう​に​自分​自身​を​見る​こと​が​できる​よう,エホバ​は​助け​て​ください​ます。前述​の​とおり,パウロ​は,『わたしたち​は​正直​に​行動​し​たい​と​願っ​て​いる』と​述べ​て​い​ます。わたしたち​は​現在,完全​に​は​なれ​ませ​ん​が,正直​で​あろ​う​と​の​誠実​な​意欲​を​抱い​て​真剣​に​努力​し​ます。

家族​内​で​の​正直​さ

正直​な​人​は,隠し​て​おき​たい​と​思う​よう​な​行ない​は​避ける

6 夫​と​妻​が​互い​に​対し​て​正直​で​ある​べき​な​の​は​なぜ​です​か。そうすれば,どんな​危険​を​避け​られ​ます​か。

6 正直​さ​は​クリスチャン​家族​の​特徴​と​なっ​て​いる​べき​です。ですから​夫​と​妻​は,互い​に​対し​て​隠し立て​を​せ​ず,正直​で​なけれ​ば​なり​ませ​ん。配偶​者​以外​の​人​と​なれなれしく​する,インターネット​を​通し​て​ひそか​な​関係​を​築く,ポルノ​を​見る​と​いっ​た​有害​で​汚れ​た​行為​は,クリスチャン​の​結婚​生活​に​あっ​て​は​なり​ませ​ん。既婚​の​クリスチャン​の​中​に​は,配偶​者​に​知ら​れ​ない​よう​に​し​ながら​そう​し​た​間違っ​た​行ない​を​する​人​が​い​ます。それ​は​不​正直​な​こと​です。忠実​な​ダビデ​王​は​こう​述べ​て​い​ます。「わたし​は​不​真実​な​者​たち​と​共​に​座り​ませ​ん​でし​た。わたし​は​自分​が​どんな​者​か​を​隠す​者​たち​と​共​に​入っ​て​行き​ませ​ん」。(詩編 26:4)結婚​し​て​いる​なら,自分​が​どんな​者​か​を​配偶​者​に​隠し​て​おき​たい​と​思う​よう​な​事​を​決して​行なっ​て​は​なり​ませ​ん。

7,8 子ども​が​正直​さ​の​価値​を​学ぶ​うえ​で,聖書​中​の​どんな​例​が​役立ち​ます​か。

7 親​が​子ども​に​正直​さ​の​価値​を​教える​際,聖書​中​の​例​を​用いる​の​は​よい​こと​です。悪い​実例​と​し​て​は,盗み​を​働い​て​それ​を​覆い隠そ​う​と​し​た​アカン,金銭​的​な​利得​の​ため​に​うそ​を​つい​た​ゲハジ,盗み​を​働い​た​うえ​に​イエス​に​対し​て​背信​の​行為​を​し​た​ユダ​が​挙げ​られ​ます。―ヨシュア 6:17‐19; 7:11‐25。列王​第​二 5:14‐16,20‐27。マタイ 26:14,15。ヨハネ 12:6

8 良い​実例​と​し​て​挙げ​られる​の​は,ヤコブ,エフタ​と​その​娘,イエス​です。ヤコブ​は,袋​の​中​に​入っ​て​い​た​金子​を​返す​よう​息子​たち​を​諭し​まし​た。間違っ​て​入っ​て​い​た​の​か​も​しれ​ない​と​考え​た​から​です。エフタ​の​娘​は,自ら​大きな​犠牲​を​払い,父親​の​誓約​が​果たさ​れる​よう​に​し​まし​た。イエス​は,預言​を​成就​し​友​を​守る​ため​に,敵意​に​満ち​た​群衆​を​前​に​し​て​勇敢​に​名乗り出​まし​た。(創世記 43:12。裁き人 11:30‐40。ヨハネ 18:3‐11)この​よう​に​幾つ​か​の​例​を​見​た​だけ​で​も,親​は,神​の​言葉​に​貴重​な​情報​が​たくさん​収め​られ​て​いる​こと​に​気づく​でしょ​う。そう​し​た​情報​を​用い​て,正直​さ​を​愛し​その​価値​を​認識​する​よう​子ども​を​教える​こと​が​でき​ます。

9 子ども​に​正直​さ​の​手本​を​示し​たい​と​思う​親​は,何​を​避ける​べき​です​か。その​よう​な​手本​が​重要​な​の​は​なぜ​です​か。

9 この​よう​な​教育​を​行なう​親​に​は,重要​な​責務​が​あり​ます。使徒​パウロ​は​こう​述べ​て​い​ます。「ほか​の​人​を​教え​て​いる​あなた​が,自分​を​教え​ない​の​です​か。『盗ん​で​は​いけ​ない』と​宣べ伝え​て​いる​あなた​が,自分​で​は​盗む​の​です​か」。(ローマ 2:21)親​の​中​に​は,正直​さ​に​つい​て​教え​ながら​自分​は​不​正直​に​行動​し​て​子ども​を​当惑​さ​せる​人​が​い​ます。ちょっと​し​た​盗み​や​欺き​の​言葉​を​正当​化​し​て,「だれ​も​困ら​ない​さ」,「罪​の​ない​小さな​うそ​よ」など​と​言う​か​も​しれ​ませ​ん。しかし​実際​に​は,盗ん​だ​物​の​価値​に​かかわり​なく​盗み​は​盗み​で​あり,内容​や​程度​に​かかわり​なく​うそ​は​うそ​です。 *ルカ 16:10)子ども​は​すぐ​に​偽善​を​見抜き​ます。ひどい​悪​影響​を​受ける​か​も​しれ​ませ​ん。(エフェソス 6:4)一方,親​の​手本​を​通し​て​正直​さ​を​学ぶ​なら,この​不​正直​な​世​に​あっ​て​も​エホバ​に​栄光​を​帰する​大人​へ​と​成長​し​て​ゆく​でしょ​う。―箴言 22:6

会衆​内​で​の​正直​さ

10 仲間​の​信者​と​の​正直​な​コミュニケーション​に​つい​て,どんな​点​を​銘記​し​て​おく​必要​が​あり​ます​か。

10 仲間​の​クリスチャン​と​の​関係​に​おい​て,正直​さ​を​培う​機会​が​たくさん​あり​ます。第​12​章で​見​た​とおり,言葉​と​いう​賜物​の​用い方​に​注意​を​払う​必要​が​あり​ます。霊的​な​兄弟​姉妹​に​対し​て​は​特に​そう​です。何気ない​会話​が​いとも​簡単​に,有害​な​うわさ​話​や​中傷​に​まで​発展​する​おそれ​が​あり​ます。出所​の​はっきり​し​ない​話​を​他​の​人​に​伝える​なら,うそ​を​広める​手助け​を​する​こと​に​なる​か​も​しれ​ませ​ん。ですから,唇​を​制する​ほう​が​ずっ​と​よい​でしょ​う。(箴言 10:19)また,真実​だ​と​分かっ​て​いる​事柄​で​も,話す​価値​が​ある​と​は​限り​ませ​ん。自分​に​は​全く​関係​の​ない​こと​か​も​しれ​ず,話題​に​する​の​が​不​親切​な​場合​も​あり​ます。(テサロニケ​第​一 4:11)ぶっきらぼう​な​話し方​も​正直​さ​の​うち​だ​と​言い訳​する​人​も​い​ます​が,わたしたち​の​言葉​は​常​に​慈しみ​の​ある​親切​な​もの​で​ある​べき​です。―コロサイ 4:6

11,12 (イ)重大​な​悪行​に​関係​し​た​人​の​中​に​は,どの​よう​に​し​て​問題​を​悪化​さ​せ​て​しまう​人​が​い​ます​か。(ロ)重大​な​罪​に​関し​て,サタン​は​どんな​うそ​を​広め​て​い​ます​か。欺か​れ​ない​ため​に​何​が​でき​ます​か。(ハ)エホバ​の​組織​に​対し​て​正直​で​ある​こと​を​どの​よう​に​示せ​ます​か。

11 会衆​で​指導​の​任​に​当たっ​て​いる​人​に​対し​て​正直​で​ある​こと​は,特に​重要​です。重大​な​悪行​に​関係​し​た​人​の​中​に​は,問題​を​悪化​さ​せ​て​しまう​人​が​い​ます。罪​を​覆い隠そ​う​と​し,会衆​の​長老​から​尋ね​られ​て​も​うそ​を​つく​の​です。裏表​の​ある​生活​を​送り,エホバ​に​仕え​て​いる​ふり​を​し​ながら​重大​な​罪​を​続ける​よう​に​さえ​なる​か​も​しれ​ませ​ん。うそ​で​塗り固め​られ​た​生活​を​送る​よう​に​なる​の​です。(詩編 12:2)また,長老​に​真実​の​一部​だけ​を​告げ​て​肝心​な​事実​は​隠し​て​おく​人​も​い​ます。(使徒 5:1‐11)多く​の​場合,こう​し​た​不​正直​な​こと​を​する​の​は,サタン​が​広め​て​いる​うそ​を​信じ​て​いる​から​です。―「 重大​な​罪​に​関する​サタン​の​うそ」と​いう​囲み​を​ご覧​ください。

12 書面​で​回答​する​際​に​エホバ​の​組織​に​対し​て​正直​で​ある​こと​も​重要​です。例えば,宣教​奉仕​に​つい​て​報告​する​とき,事実​を​ゆがめ​ない​よう​に​気​を​つけ​ます。何らか​の​奉仕​の​特権​へ​の​申込​書​に​記入​する​とき​も,健康​状態​や​履歴​など​に​関し​て​事実​に​反する​書き方​を​し​て​は​なり​ませ​ん。―箴言 6:16‐19

13 仲間​の​信者​と​の​仕事​上​の​関係​に​おい​て,どの​よう​に​正直​さ​を​保て​ます​か。

13 仲間​の​信者​に​対する​正直​さ​は,ビジネス​の​分野​に​も​及び​ます。クリスチャン​の​兄弟​姉妹​が​ビジネス​で​かかわり​を​持つ​場合​が​あり​ます。そう​し​た​仕事​上​の​事柄​は,王国​会館​や​宣教​奉仕​に​おい​て​共​に​行なう​崇拝​と​は​切り離し​て​おく​よう,注意深く​ある​べき​です。仕事​上​の​関係​の​一つ​は,雇用​主​と​従業​員​の​関係​です。兄弟​や​姉妹​を​雇う​の​で​あれ​ば,正直​に​接し,合意​し​た​額​の​給料​を​遅れ​ず​に​支払い,協定​や​法律​どおり​の​福利​厚生​を​備える​よう​気​を​つけ​ます。(テモテ​第​一 5:18。ヤコブ 5:1‐4)逆​に,兄弟​や​姉妹​に​雇わ​れ​て​いる​なら,報酬​に​十分​見合う​働き​を​し​ます。(テサロニケ​第​二 3:10)休暇​や​福利​厚生​など​の​面​で​他​の​従業​員​より​優遇​し​て​もらう​の​が​当然​で​も​ある​か​の​よう​に,霊的​関係​に​基づく​特別​扱い​を​期待​し​たり​は​し​ませ​ん。―エフェソス 6:5‐8

14 クリスチャン​が​投機​的​ビジネス​を​共同​で​行なう​場合,どんな​予防​措置​を​講じる​の​が​賢明​です​か。なぜ​です​か。

14 投資​や​貸し付け​の​関係​する​投機​的​ビジネス​を​共同​で​行なう​場合​は​どう​でしょ​う​か。聖書​に​は​重要​で​実際​的​な​原則​が​あり​ます。すべて​を​書面​に​する,と​いう​原則​です。エレミヤ​は,土地​を​買っ​た​際​に​書類​を​作成​し,写し​を​作り,しかる​べき​証人​を​立て,後々​参照​できる​よう​安全​に​保管​し​まし​た。(エレミヤ 32:9‐12。創世記 23:16‐20​も​ご覧​ください。)仲間​の​信者​と​ビジネス​を​行なう​場合,詳細​すべて​を​記載​し​た​文書​を​注意深く​準備​し​て​当事​者​と​証人​の​署名​を​付す​こと​は,信頼​の​欠如​の​表われ​で​は​あり​ませ​ん。そう​し​た​文書​が​あれ​ば,誤解​や​失望​を​防げ​ます。分裂​を​引き起こしかね​ない​不和​も​避け​られ​ます。共同​で​ビジネス​を​行なう​クリスチャン​は,どんな​投機​的​事業​に​も​会衆​の​一致​と​平和​を​脅かし​て​まで​行なう​価値​は​ない,と​いう​こと​を​思い​に​留め​て​おく​べき​です。 *コリント​第​一 6:1‐8

この​世​に​おける​正直​さ

15 エホバ​は​不​正直​な​商行為​に​つい​て​どう​感じ​て​おら​れ​ます​か。クリスチャン​は​そう​し​た​一般​の​傾向​に​対し​て​どんな​立場​を​取り​ます​か。

15 クリスチャン​の​正直​さ​は,会衆​内​に​限ら​れる​わけ​で​は​あり​ませ​ん。『わたしたち​は​すべて​の​こと​に​おい​て​正直​に​行動​し​たい​と​願っ​て​いる』と​パウロ​は​述べ​て​い​ます。(ヘブライ 13:18)わたしたち​の​創造​者​は,世俗​の​ビジネス​に​おける​正直​さ​に​も​深い​関心​を​持っ​て​おら​れ​ます。「箴言」の​書​の​中​だけ​で,偽り​の​はかり​に​関する​聖句​が​四つ​あり​ます。(箴言 11:1; 16:11; 20:10,23)古代​の​商​取引​で​は,品物​および​購入​代金​の​重さ​を​量る​の​に,はかり​と​分銅​が​よく​使わ​れ​まし​た。不​正直​な​商人​は,二​組​の​分銅​と​不​正確​な​はかり​を​使い,客​を​だまし​まし​た。 * エホバ​は​そう​し​た​行為​を​憎ま​れ​ます。わたしたち​は​神​の​愛​の​うち​に​とどまる​ため​に,いかなる​不​正直​な​商行為​も​きっぱり​避け​ます。

16,17 今​の​世​で,どんな​不​正直​さ​が​よく​見​られ​ます​か。真​の​クリスチャン​は​何​を​決意​し​て​い​ます​か。

16 サタン​が​この​世​の​支配​者​な​の​で,わたしたち​は,不​正直​さ​が​周囲​の​至る所​に​見​られ​て​も​驚き​ませ​ん。毎日​と​言っ​て​よ​い​ほど,不​正直​へ​の​誘惑​に​さらさ​れ​て​い​ます。求職​の​ため​の​履歴​書​を​書く​際​に​資格​や​経歴​を​偽っ​たり​誇張​し​たり​する​人​は​少なく​あり​ませ​ん。入国,税金,保険​など​に​関する​書類​に​記入​する​際,望む​結果​を​得る​ため​に​うそ​を​書く​こと​も​珍しく​あり​ませ​ん。多く​の​学生​が​試験​で​カンニング​を​し​ます。論文​や​レポート​を​書く​時​に,インターネット​で​見つけ​た​資料​を​盗用​し,自分​の​作​で​ある​か​の​よう​に​し​て​提出​する​学生​も​い​ます。望む​結果​を​得る​ため​に​悪徳​役人​に​賄賂​を​渡す​人​も​少なく​あり​ませ​ん。「自分​を​愛する​者,金​を​愛する​者,……善良​さ​を​愛さ​ない​者」が​多い​世​の​中​で​は,こう​し​た​こと​が​横行​する​の​も​至極​当然​です。―テモテ​第​二 3:1‐5

17 真​の​クリスチャン​は,こう​し​た​こと​を​行なう​まい​と​決意​し​て​い​ます。それでも​正直​で​ある​の​を​難しく​感じる​こと​が​ある​の​は,一つ​に​は,そう​し​た​不​正直​な​事​を​行なう​人​が​今​の​世​で​うまく​やりおおせ​て​い​たり​成功​し​て​い​たり​する​よう​に​見える​から​です。(詩編 73:1‐8)他方,クリスチャン​は,「すべて​の​こと​に​おい​て」正直​で​い​たい​と​願う​ゆえに​経済​的​に​苦労​する​こと​が​あり​ます。犠牲​を​払っ​て​まで​正直​で​いる​こと​に​は​意義​が​ある​の​でしょ​う​か。確か​に​あり​ます。なぜ​そう​言え​ます​か。正直​に​行動​する​なら​どんな​祝福​が​得​られる​でしょ​う​か。

正直​で​ある​こと​の​祝福

18 正直​で​ある​と​の​評判​に​大きな​価値​が​ある​の​は​なぜ​です​か。

18 正直​で​信頼​できる​人​と​いう​評判​は,人生​に​おい​て​得​られる​もの​の​中​で​特に​価値​の​ある​もの​です。(「 わたし​は​どれ​ほど​正直​だろ​う​か」と​いう​囲み​を​ご覧​ください。)しかも,考え​て​ください。だれ​も​が​その​よう​な​評判​を​築ける​の​です。才能,資産,外見,社会​的​背景​など,自分​で​は​どう​に​も​なら​ない​事柄​に​は​左右​さ​れ​ませ​ん。それなのに,良い​評判​と​いう​宝​を​得​て​いる​人​は​多く​あり​ませ​ん。わずか​な​の​です。(ミカ 7:2)正直​で​ある​こと​を​ばか​に​する​人​も​いる​か​も​しれ​ませ​ん​が,あなた​の​正直​さ​を​認め,信頼​を​寄せ​て​敬意​を​払う​人​も​いる​でしょ​う。多く​の​エホバ​の​証人​は,正直​さ​に​は​経済​的​な​益​も​ある​こと​を​実感​し​て​い​ます。不​正直​な​従業​員​が​解雇​さ​れる​時​に​も​職​を​失わ​なかっ​たり,正直​な​従業​員​を​切実​に​必要​と​する​職場​で​の​働き​口​が​見つかっ​たり​する​の​です。

19 正直​な​生き方​は,良心​および​エホバ​と​の​関係​に​どんな​影響​を​与え​ます​か。

19 そう​し​た​経験​を​し​ない​と​し​て​も,正直​さ​の​もたらす​さらに​大きな​祝福​を​味わえ​ます。清い​良心​が​得​られる​の​です。パウロ​は​こう​書い​て​い​ます。「わたしたち​は​正直​な​良心​を​抱い​て​いる​と​信じ​て​い​ます」。(ヘブライ 13:18)加え​て,あなた​の​評判​は​必ず,愛​ある​天​の​父​の​目​に​留まり​ます。そして​その​方​は​正直​な​人​を​愛さ​れ​ます。(詩編 15:1,2。箴言 22:1)ですから,正直​で​ある​こと​は​神​の​愛​の​うち​に​とどまる​助け​に​なり​ます。それ​に​勝る​報い​は​あり​ませ​ん。さて​次​に,正直​さ​と​関連​の​ある​点​を​考え​ましょ​う。仕事​に​対する​エホバ​の​見方です。

^ 9節 会衆​に​おい​て​は,人​を​害する​意図​の​明らか​な,あか​ら​さ​まで​悪意​の​ある​うそ​を​習わし​に​する​人​が​いる​なら,長老​たち​に​よる​審理​処置​が​必要​に​なる​か​も​しれ​ませ​ん。

^ 14節 ビジネス​上​の​関係​で​問題​が​生じ​た​場合​に​どう​す​べき​か​に​つい​て​は,付録​の「ビジネス​上​の​争い​を​解決​する」と​いう​項目​を​ご覧​ください。

^ 15節 買う​とき​用​と​売る​とき​用​の​二​組​の​分銅​を​使い,どちら​の​とき​で​も​自分​が​得​を​する​よう​に​し​まし​た。左右​の​腕​の​長さ​や​重さ​が​異なる​はかり​を​使っ​て,取り引き​の​際​に​客​を​だます​こと​も​あっ​た​でしょ​う。