しばらくの間あいだ，イエスは「ヨルダンを渡わた」った所ところにあるペレアという地ち域いきで教おしえてきました。（ヨハネ 10:40）これから，南みなみにあるエルサレムに行いくつもりです。

イエスは1人ひとりではなく，弟で子したちや徴ちょう税ぜい人にんや罪つみ人びとなど大おお勢ぜいの人ひとと一いっ緒しょです。（ルカ 14:25; 15:1）イエスの言げん動どうを批ひ判はんするパリサイ派はの人ひとたちや律りっ法ぽう学がく者しゃたちもいます。迷まよい出でた羊ひつじ，いなくなっていた息子むすこ，裕ゆう福ふくな男だん性せいとラザロの例たとえ話ばなしを聞きいた後あとなので，彼かれらは考かんがえることがたくさんありました。（ルカ 15:2; 16:14）

イエスは，恐おそらくパリサイ派はの人ひとたちから批ひ判はんされたり冷れい笑しょうされたりしたことを考かんがえながら，弟で子したちに注ちゅう意いを向むけます。そして，ガリラヤで教おしえた幾いくつかのことをもう一いち度ど話はなします。

「信しん仰こうの妨さまたげとなるものが生しょうじることは避さけられませんが，その経けい路ろとなる人ひとは悲ひ惨さんです！……注ちゅう意いしていなさい。兄きょう弟だいが罪つみを犯おかすなら強つよく警けい告こくし，悔くい改あらためるなら許ゆるしてあげなさい。その人ひとが1日にちに7回かいあなたに罪つみを犯おかし，7回かい戻もどってきて『悔くい改あらためます』と言いうとしても，許ゆるさなければなりません」。（ルカ 17:1-4）この最さい後ごの言こと葉ばを聞きいたペテロは，兄きょう弟だいを許ゆるすのは7回かいまでかと質しつ問もんしたことを思おもい出だしたでしょう。（マタイ 18:21）

弟で子したちはイエスのこの言こと葉ばに従したがって行こう動どうできるのでしょうか。弟で子したちが，「さらに信しん仰こうを与あたえてください」と言いうと，イエスはこう保ほ証しょうします。「からしの種たねほどの信しん仰こうがあったなら，この黒くろ桑ぐわの木きに，『引ひき抜ぬかれて海うみに根ねを下おろせ！』と言いっても，この木きは従したがうでしょう」。（ルカ 17:5，6）ある程てい度どの信しん仰こうがあるなら，非ひ常じょうに大おおきな事こと柄がらを成なし遂とげられるのです。

さらにイエスは，謙けん遜そんであることと，自じ分ぶん自じ身しんに対たいするバランスの取とれた見み方かたをすることの大たい切せつさを使し徒とたちに教おしえます。「あなたたちのうちの誰だれが，畑はたけを耕たがやしたり羊ひつじの番ばんをしたりする奴ど隷れいが戻もどった時ときに，『すぐここに来きて，食しょく卓たくに着ついて食しょく事じをしなさい』と言いうでしょうか。そうではなく，『私わたしの夕ゆう食しょくのために何なにか用よう意いし，前まえ掛かけをして，私わたしが食たべたり飲のんだりし終おわるまで給きゅう仕じしなさい。その後あとは，食たべたり飲のんだりして構かまいません』と言いうのではありませんか。奴ど隷れいが割わり当あてられた事ことをしたからといって，ありがたく感かんじたりするでしょうか。あなたたちも，割わり当あてられた事ことを全ぜん部ぶした時とき，『私わたしたちは役やくに立たたない奴ど隷れいです。当とう然ぜんすべき事ことをしたまでです』と言いいなさい」。（ルカ 17:7-10）

私わたしたちは皆みな，生せい活かつの中なかで神かみに仕つかえることを最さい優ゆう先せんにしなければなりません。また，神かみの家か族ぞくの1人ひとりとして神かみを崇すう拝はいする機き会かいを与あたえられていることに感かん謝しゃすべきです。

イエスがこの点てんを教おしえたすぐ後あとのことと思おもわれますが，ラザロの姉し妹まいたちでユダヤのベタニヤに住すむマリアとマルタの所ところから，使つかいがやって来きます。その人ひとは，「主しゅよ，あなたが愛あい情じょうを抱いだいている者ものが病びょう気きです」という伝でん言ごんをイエスに伝つたえます。（ヨハネ 11:1-3）

イエスはラザロが重じゅう病びょうだと聞きいても，ショックを受うけてぼうぜんとするのではなく，こう話はなします。「この病びょう気きは死しで終おわるのではなく，神かみに栄えい光こうをもたらし，そして神かみの子こも栄えい光こうを受うけます」。イエスはそこにさらに2日か滞たい在ざいし，それから弟で子したちに，「もう一いち度どユダヤに行いきましょう」と言いいます。弟で子したちは，「ラビ，ついこの間あいだユダヤ人じんたちに石いし打うちにされそうになったのに，また行いくのですか」と反はん対たいします。（ヨハネ 11:4，7，8）

するとイエスはこう答こたえます。「昼ひる間まは12時じ間かんあるのではないでしょうか。誰だれでも昼ひる間まに歩あるくなら何なににもぶつかりません。人ひと々びとのための光ひかりによって見みることができるからです。しかし，誰だれでも夜よる歩あるくなら何なにかにぶつかります。光ひかりがその人ひとの内うちにないからです」。（ヨハネ 11:9， 10）ここでイエスが言いおうとしていたのは，神かみが定さだめたイエスの地ち上じょうでの伝でん道どう期き間かんはまだ終おわっていない，ということだったようです。ですから，イエスは残のこっている時じ間かんを最さい大だい限げんに活かつ用ようする必ひつ要ようがあります。

イエスはさらに，「友とものラザロは眠ねむっていますが，私わたしは起おこしに行いきます」と話はなします。弟で子したちは，ラザロが休やすんでいて，そのうち回かい復ふくすると思おもったようで，「主しゅよ，眠ねむっているのであれば，良よくなるでしょう」と言いいます。そこでイエスははっきりと，「ラザロは死しにました。……さあ，行いきましょう」と言いいます。（ヨハネ 11:11-15）

トマスは，イエスがユダヤで殺ころされる危き険けんがあると知しっていましたが，ぜひイエスを支ささえたいと思おもい，他たの弟で子したちに，「私わたしたちも行いこう。共ともに死しぬのだ」と呼よび掛かけます。（ヨハネ 11:16）