記き念ねん式しきの食しょく事じが終おわり，イエスは使し徒とたちをこう力ちからづけます。「心こころを騒さわがせてはなりません。神かみに信しん仰こうを抱いだき，私わたしにも信しん仰こうを抱いだきなさい」。（ヨハネ 13:36; 14:1）

イエスは自じ分ぶんが去さっても心こころを騒さわがせるべきでない理り由ゆうをこう説せつ明めいします。「私わたしの父ちちの家いえには住すむ所ところがたくさんあります。……行いって場ば所しょを整ととのえたら，再ふたたび来きてあなたたちを私わたしの所ところに迎むかえます。私わたしがいる所ところにあなたたちもいるようにするのです」。しかし使し徒とたちは，イエスが天てんに行いくことを話はなしているということが分わかりません。トマスはこう尋たずねます。「主しゅよ，あなたの行いこうとしている所ところが分わからないのに，どうしてその道みちが分わかるでしょうか」。（ヨハネ 14:2-5）

イエスは，「私わたしは道みちであり，真しん理りであり，命いのちです」と答こたえます。イエスとその教おしえを受うけ入いれ，イエスの生いき方かたに倣ならう人ひとだけが，天てんの父ちちの家いえに入はいることができます。それでイエスは，「私わたしを通とおしてでなければ，誰だれも父ちちの元もとに来くることはできません」と言いいます。（ヨハネ 14:6）

すると，熱ねっ心しんに聞きいていたフィリポが，「主しゅよ，私わたしたちに父ちちを見みせてください。それで十じゅう分ぶんです」と頼たのみます。モーセやエリヤやイザヤに与あたえられたような幻まぼろしで神かみを見みたいと思おもっているようです。でも使し徒とたちには，幻まぼろしよりもずっと良よいものがあります。イエスはその点てんをこう強きょう調ちょうします。「こんなに長ながい間あいだ一いっ緒しょに過すごしてきたのに，フィリポ，あなたはまだ私わたしを知しらないのですか。私わたしを見みた人ひとは，父ちちをも見みたのです」。天てんの父ちちを100％反はん映えいしたイエスと一いっ緒しょに暮くらし，イエスを観かん察さつするのは，いわば神かみを見みるようなものでした。とはいえ，父ちちは子こより上じょう位いの方かたなので，イエスは，「あなたたちに言いうことは，独どく自じの考かんがえで言いっているのではありません」と話はなします。（ヨハネ 14:8-10）そのことは使し徒とたちにもよく分わかりました。

使し徒とたちは，イエスが素す晴ばらしい行おこないをするのを見みたり，神かみの王おう国こくの良よい知しらせを伝つたえるのを聞きいたりしてきました。それでイエスは，「私わたしに信しん仰こうを抱いだく人ひとも，私わたしがし ていることを行おこないます。しかも，もっと大おおきなことを行おこないます」と話はなします。（ヨハネ 14:12）これはイエスより偉い大だいな奇き跡せきを行おこなうという意い味みではありません。弟で子したちがイエスよりも，もっと長ながい期き間かん，もっと広ひろい範はん囲いで，もっと多おおくの人ひとに伝でん道どうするということです。

イエスは去さっていきますが，使し徒とたちを見み捨すてるわけではありません。イエスは，「あなたたちが私わたしの名なによって何なにか求もとめるなら，私わたしはそれを行おこないます」と約やく束そくします。また，こうも言いいます。「私わたしは天てんの父ちちにお願ねがいします。父ちちは別べつの援えん助じょ者しゃを与あたえて，あなたたちと共ともに永えい久きゅうにいるようにしてくださいます。それは真しん理りを伝つたえる聖せい霊れいです」。（ヨハネ 14:14，16，17）別べつの援えん助じょ者しゃ，つまり聖せい霊れいを与あたえるという約やく束そくは，ペンテコステの日ひに実じつ現げんします。

また，こう続つづけます。「もうしばらくすれば，世よの人ひと々びとは二に度どと私わたしを見みません。しかしあなたたちは見みます。私わたしは生いきていて，あなたたちも生いきるからです」。（ヨハネ 14:19）イエスは復ふっ活かつ後ごに人にん間げんの姿すがたで使し徒とたちに現あらわれ，さらに彼かれらを復ふっ活かつさせ天てんで一いっ緒しょになるようにします。

次つぎにイエスはシンプルな真しん理りを話はなします。「私わたしのおきてを受うけ入いれてそれに従したがう人ひとは私わたしを愛あいしています。さらに，私わたしを愛あいする人ひとは父ちちに愛あいされます。そして私わたしはその人ひとを愛あいして，自じ分ぶんのことをはっきり知しらせます」。この時とき，タダイとも呼よばれるユダが，「主しゅよ，私わたしたちには自じ分ぶんのことをはっきり知しらせようとし，世よの人ひと々びとにはそうしようとしない，というのはどういうことですか」と質しつ問もんします。イエスはこう答こたえます。「私わたしを愛あいする人ひとは私わたしの言こと葉ばを守まもります。私わたしの父ちちはその人ひとを愛あいし……ます。私わたしを愛あいさない人ひとは私わたしの言こと葉ばを守まもりません」。（ヨハネ 14:21-24）世よの人ひと々びとは，イエスが道みち，真しん理り，命いのちであることを認みとめません。

イエスが去さってしまった後のち，弟で子したちは教おそわったことをどのようにして思おもい出だせばよいのでしょうか。イエスは説せつ明めいします。「父ちちが私わたしの名なによって遣つかわす援えん助じょ者しゃつまり聖せい霊れいが，あなたたちに，全すべてのことを教おしえるとともに，私わたしが話はなした全すべてのことを思おもい起おこさせます」。使し徒とたちは聖せい霊れいがどれほど強きょう力りょくに働はたらくかを知しっていたので，安あん心しんしたでしょう。イエスはさらにこう言いいます。「私わたしが与あたえる平へい和わはあなたたちの元もとにとどまります。……心こころを騒さわがせてはならず，弱よわ気きになってもなりません」。（ヨハネ 14:26，27）ですから，心こころを騒さわがせる必ひつ要ようはありません。イエスの父ちちから指し示じと保ほ護ごが与あたえられるからです。

神かみからの保ほ護ごは間まもなく明あきらかになります。イエスはこう言いいます。「世よの支し配はい者しゃが来こようとしてい[ま]す。もっとも，その者ものは私わたしに対たいして何なんの力ちからもありません」。（ヨハネ 14:30）悪あく魔まはユダの中なかに入はいり，彼かれをコントロールできました。しかしイエスには罪つみ深ぶかい弱よわさが全まったくないので，イエスを神かみに反はん逆ぎゃくさせることはできません。イエスを死しに封ふうじ込こめておくこともできません。イエスは「父ちちが命めいじた通とおりにして」おり，父ちちが自じ分ぶんを復ふっ活かつさせてくださるという確かく信しんがあります。（ヨハネ 14:31）