イエスと使し徒とたちは過すぎ越こしの食しょく事じをした階かい上じょうの部へ屋やを出でようとしています。イエスは大たい切せつな事こと柄がらをたくさん話はなしてきましたが，さらにこう言いいます。「私わたしがこれらの事ことを言いったのは，あなたたちが信しん仰こうを失うしなわないためです」。この言こと葉ばは適てき切せつでした。なぜですか。イエスはこう説せつ明めいします。「人ひと々びとはあなたたちを会かい堂どうから追つい放ほうします。実じっ際さい，あなたたちを殺ころす人ひとが皆みな，自じ分ぶんは神かみに神しん聖せいな奉ほう仕しをしたと思おもう時ときが来きます」。（ヨハネ 16:1，2）

使し徒とたちは動どう揺ようしたでしょう。世よから憎にくまれるとイエスから聞ききましたが，殺ころされるとは初はつ耳みみです。イエスは，「これらの事ことを最さい初しょに話はなさなかったのは，あなたたちと一いっ緒しょにいたからです」と説せつ明めいします。（ヨハネ 16:4）しかし今いま，イエスは去さっていくので，使し徒とたちをこれから先さきに備そなえさせようとしているのです。後あとになって，彼かれらが信しん仰こうを失うしなうことのないためです。

イエスはこう続つづけます。「私わたしは自じ分ぶんを遣つかわした方かたの元もとに行いこうとしています。それでも，あなたたちの誰だれも，『どこに行いくのですか』とは尋たずねません」。その晩ばん，使し徒とたちはイエスがどこに行いこうとしているのか尋たずねました。（ヨハネ 13:36; 14:5; 16:5）でも今いま，迫はく害がいされると聞きいて動どう揺ようし，悲かなしみに沈しずんでしまったため，イエスが受うける栄えい光こうや，それが神かみの真しんの崇すう拝はい者しゃにどんな意い味みを持もつかについて質しつ問もんできません。イエスはその様よう子すを見みて，「私わたしがこれらの事ことを話はなしたために，悲かなしみに暮くれています」と言いいます。（ヨハネ 16:6）

それから，「私わたしが去さっていくことはあなたたちのためになります。私わたしが去さらなければ，援えん助じょ者しゃはあなたたちの元もとに来きませんが，去さったら，私わたしはその者ものを遣つかわすからです」と言いいます。（ヨハネ 16:7）イエスが死しに，天てんに行いって初はじめて，弟で子したちは聖せい霊れいを受うけるようになります。イエスは自じ分ぶんの弟で子したちが地ち上じょうのどこにいようと，その援えん助じょ者しゃを遣つかわすことができます。

聖せい霊れいは，「罪つみに関かんし，正ただしさに関かんし，裁さばきに関かんして，納なっ得とくのいく証しょう拠こを世よに与あたえます」。（ヨハネ 16:8）聖せい霊れいにより，世よが神かみの子こに信しん仰こうを抱いだかなかった罪つみが暴ばく露ろされます。そして，イエスが天てんへ昇のぼることによって，イエスの正ただしさに関かんする納なっ得とくのいく証しょう拠こが与あたえられ，「この世よの支し配はい者しゃ」サタンが不ふ利りな裁さばきに値あたいする理り由ゆうも明あきらかになります。（ヨハネ 16:11）

イエスは話はなしを続つづけ，「あなたたちに言いうべきことがまだたくさんありますが，あなたたちは今いまはそれを理り解かいできません」と言いいます。将しょう来らいイエスが聖せい霊れいを注そそぐ時とき，弟で子したちは「真しん理りを十じゅう分ぶんに理り解かいできる」よう導みちびかれ，真しん理りに沿そって生いきることが可か能のうになります。（ヨハネ 16:12，13）

使し徒とたちはイエスの次つぎの言こと葉ばを聞きいて戸と惑まどいます。「しばらくしたら，あなたたちはもう私わたしを見みません。でも，しばらくしたら，あなたたちは私わたしを見みます」。彼かれらは，これはどういう意い味みだろうと話はなし合あいます。イエスは彼かれらが質しつ問もんしたがっていることに気き付づき，こう説せつ明めいします。「はっきり言いっておきますが，あなたたちは泣なき叫さけびますが，世よは喜よろこびます。あなたたちは深ふかく悲かなしみますが，悲かなしみは喜よろこびに変かわります」。（ヨハネ 16:16，20）イエスがこの日ひの午ご後ごに殺ころされると，宗しゅう教きょう指し導どう者しゃたちは喜よろこび，弟で子したちは深ふかく悲かなしみます。しかしその悲かなしみは，イエスが復ふっ活かつすると喜よろこびに変かわります。そして，イエスが彼かれらに聖せい霊れいを注そそぐため，喜よろこびは続つづきます。

イエスは使し徒とたちの状じょう況きょうを陣じん痛つうに例たとえます。「女じょ性せいは，出しゅっ産さんの時ときが来くると苦くるしみます。しかし，子こ供どもを産うみ終おえると，人ひとが世よに生うまれた喜よろこびのためにもう苦く痛つうを覚おぼえていません」。それからこう励はげまします。「あなたたちも今いまは悲かなしんでいますが，再ふたたび私わたしに会あい，心こころから喜よろこびます。誰だれもその喜よろこびを奪うばえません」。（ヨハネ 16:21，22）

この時ときまで，使し徒とたちはイエスの名なによって祈いのったことがありませんでした。しかし今いまイエスは，「その日ひ，あなたたち は私わたしの名なによって父ちちに願ねがい求もとめます」と言いいます。これは天てんの父ちちが祈いのりをあまり聞ききたがらない，ということでは決けっしてありません。イエスはこう言いいます。「父ちちはあなたたちに愛あい情じょうを抱いだいているのです。あなたたちは，私わたしに愛あい情じょうを抱いだき，私わたしが神かみの代だい理りとして来きたことを信しんじているからです」。（ヨハネ 16:26，27）

イエスの励はげましにより使し徒とたちは勇ゆう気きづけられたでしょう。「あなたが神かみの元もとから来きたことを信しんじます」と言いい，確かく信しんを表あらわします。しかしその確かく信しんは間まもなく試ためされます。イエスは何なにが待まち受うけているかを話はなします。「あなたたちが散ちらされてそれぞれ自じ分ぶんの家いえに帰かえり，私わたしを独ひとりにする時ときが来きます。いえ，もう来きています」。しかし，保ほ証しょうも与あたえます。「これらの事ことを言いったのは，あなたたちが私わたしによって平へい和わな気き持もちになるためです。あなたたちは世よで苦く難なんに遭あいますが，勇ゆう気きを出だしなさい！ 私わたしは世よを征せい服ふくしたのです」。（ヨハネ 16:30-33）イエスは彼かれらを見み捨すてません。イエスは使し徒とたちも世よを征せい服ふくできると確かく信しんしていました。使し徒とたちはサタンとその世よが自じ分ぶんたちの信しん仰こうを砕くだこうとしても，神かみの意い志しを忠ちゅう実じつに果はたしていくことにより，必かならず世よを征せい服ふくできるのです。