イエスは幕まく屋やの祭まつりでエルサレムにいる間あいだ，大たい切せつなことを教おしえます。そこにいたあるユダヤ人じんたちがイエスに，「私わたしたちはアブラハムの子し孫そんで，誰だれの奴ど隷れいになったこともありません」と言いったので，イエスはこう答こたえます。「あなた方がたがアブラハムの子し孫そんであることは知しっています。しかし，あなた方がたは私わたしを殺ころそうとしています。私わたしの教おしえを受うけ入いれられないからです。私わたしは自じ分ぶんの父ちちの元もとで見みた事ことを話はなし，あなた方がたは自じ分ぶんたちの父ちちから聞きいた事ことを行おこなっています」。（ヨハネ 8:33，37，38）

イエスの父ちちは彼かれらの父ちちとは違ちがうということです。しかしユダヤ人じんたちはそれが分わからず，「私わたしたちの父ちちはアブラハムです」と主しゅ張ちょうします。（ヨハネ 8:39。イザヤ 41:8）彼かれらはアブラハムの子し孫そんなので，神かみの友ともアブラハムと同おなじ信しん仰こうを持もっていると考かんがえているのです。

イエスは答こたえます。「アブラハムの子こなら，アブラハムに倣ならって行こう動どうしているはずです」。本ほん当とうの子こなら父ちちに倣ならうはずです。さらにイエスは，「あなた方がたは今いま，神かみから聞きいた真しん理りを告つげた者もの，つまり私わたしを殺ころそうとしています。アブラハムはそのようなことはしませんでした」と言いい，「あなた方がたは自じ分ぶんたちの父ちちに倣ならって行こう動どうしています」と指し摘てきします。（ヨハネ 8:39-41）

ユダヤ人じんたちには誰だれのことを言いっているのか分わかりません。「私わたしたちは姦かん淫いんによって生うまれたのではありません。私わたしたちにはひとりの父ちち，神かみがいます」と言いい張はります。でも，本ほん当とうにそうでしょうか。イエスはこう言いいます。「もし神かみがあなた方がたの父ちちなら，あなた方がたは私わたしを愛あいするはずです。私わたしは神かみの元もとから来きてここにいるからです。自じ分ぶんの考かんがえで来きたのではなく，その方かたに遣つかわされました」。それから，「私わたしが言いっている事ことをあなた方がたが理り解かいできないのはなぜでしょうか。それは，私わたしの教おしえを受うけ入いれようとしないからです」と話はなします。（ヨハネ 8:41-43）

イエスは自じ分ぶんを退しりぞける結けっ果かを示しめしてきましたが，ここでずばりと指し摘てきします。「あなた方がたは，あなた方がたの父ちち，悪あく魔まから出でていて，自じ分ぶんたちの父ちちが欲ほっすることを行おこなおうとしています」。そして彼かれらの父ちちの正しょう体たいを暴あばき，「その者ものはその始はじまりから人ひと殺ごろしで，真しん理りから離はなれました」と言いいます。それから，こう述のべます。「神かみの所ところから来きた人ひとは神かみの言いう事ことを聞ききます。あなた方がたは聞ききません。神かみの所ところから来きていないからです」。（ヨハネ 8:44，47）

ユダヤ人じんたちはかっとなり，「『あなたはサマリア人じんで，邪じゃ悪あくな天てん使しに取とりつかれている』と私わたしたちが言いうのも当とう然ぜんではありませんか」と叫さけびます。彼かれらはイエスを「サマリア人じん」と呼よび見み下くだしました。イエスはそれを気きに留とめず，「邪じゃ悪あくな天てん使しに取とりつかれてはいません。私わたしは父ちちを尊とうとんでいて，あなた方がたは私わたしを辱はずかしめています」と答こたえます。イエスをどう見みるかは重じゅう要ような問もん題だいです。イエスは，「私わたしの言こと葉ばを守まもる人ひとは，決けっして死しにません」という素す晴ばらしい約やく束そくをしているからです。これは，イエスの弟で子しは死しを経けい験けんしない，という意い味みではなく，「第だい二にの死し」，つまり復ふっ活かつの希き望ぼうのない永えい遠えんの滅ほろびに至いたることはないということです。（ヨハネ 8:48-51。啓けい示じ 21:8）

ユダヤ人じんはその言こと葉ばを文も字じ通どおりに取とり，「今いま，あなたが邪じゃ悪あくな天てん使しに取とりつかれていることがはっきり分わかります。アブラハムも預よ言げん者しゃたちも死しんだのに，あなたは，『私わたしの言こと葉ばを守まもる人ひとは，決けっして死しを迎むかえない』と言いっています。あなたは私わたしたちの父ちちアブラハムより偉えらくはないでしょう。アブラハムは死しに……ました。自じ分ぶんを誰だれだと思おもっているのですか」。（ヨハネ 8:52，53）

イエスはメシアであることを示しめそうとしているものの，質しつ問もんには直ちょく接せつ答こたえず，こう言いいます。「私わたしが自じ分ぶんを称しょう賛さんするなら，それはむなしいものです。私わたしを称しょう賛さんしてくださるのは私わたしの父ちちで，あなた方がたが自じ分ぶんたちの神かみだと言いう方かた です。しかし，あなた方がたはその方かたを知しりません。私わたしは知しっています。私わたしが，その方かたを知しらないと言いったら，あなた方がたのようにうそつきになるでしょう」。（ヨハネ 8:54，55）

ここでイエスは，「父ちちアブラハムは，私わたしが来くる日ひをとても楽たのしみにしていて，その時ときを思おもい描えがいて喜よろこびました」と述のべます。アブラハムは神かみの約やく束そくを信しんじ，メシアが来くることを待まち望のぞみました。それを聞きいたユダヤ人じんたちは，「50歳さいになってもいないのに，アブラハムを見みたことがあるのですか」と問とい詰つめます。そこでイエスは，「はっきり言いいますが，アブラハムが存そん在ざいする前まえから私わたしはいます」と答こたえます。人にん間げんになる前まえに強きょう力りょくな天てん使しとして天てんにいたことを述のべているのです。（ヨハネ 8:56-58）

ユダヤ人じんたちはその言こと葉ばに激げき怒どし，イエスを石いし打うちにしようとしますが，イエスはその場ばを無ぶ事じに離はなれます。