研究記事19

終わりの時の「北の王」

終わりの時の「北の王」

「終わりの時に,南の王は彼[北の王]と押し合います」。ダニエル 11:40

133番の歌 救出を神に求めなさい

を学ぶか *

1. 聖書預言からどんなことを知ることができますか。

エホバに仕える人々は間もなくどんなことを経験しますか。何が起きるかは分かっています。聖書預言を通して,私たち全てに影響を及ぼす重要な出来事を知ることができます。聖書にある1つの預言は,世界の強力な政府が今後何を行うかを明らかにしています。ダニエル 11章に出てくるその預言には,2つの対抗する勢力である北の王と南の王が何をしてきたかが記されています。この預言の大部分はすでに実現しています。ですから,残りの部分もその通りになります。

2. ダニエルの預言を理解するには,どんな点を覚えておく必要がありますか。創世 3章15節,啓示 11章7節,12章17節からどんなことが分かりますか。

2 ダニエル 11章の預言を理解するに当たり,覚えておくべき点があります。その預言に出てくる王たちは,エホバの民に直接影響を与えた支配者や政府を指している,という点です。エホバに仕える人々は,世界人口からすればごく少数にすぎませんが,しばしば政府から迫害されてきました。サタンとサタンの体制全体が掲げている主要な目的は,エホバとイエスに仕える人々を征服することだからです。 3:15と 11:7; 12:17を読む。)覚えておくべき別の点として,ダニエルの預言は聖書の他の預言とつじつまが合っていなければなりません。ダニエルの預言を正しく理解するには,聖書の他の部分と比較検討する必要があります。

3. この記事と次の記事では何を学びますか。

3 こうした点を踏まえてダニエル 11章25‐39節を調べましょう。1870年から1991年まで誰が北の王で,誰が南の王だったかを確かめます。北の王と南の王に関する預言の一部について,なぜ理解を調整する必要があるかも確かめます。次の記事ではダニエル 11章40節から12章1節を調べます。1991年からハルマゲドンの戦いの時までに起きる事柄について最近理解が調整された箇所を確認します。この2つの記事を学ぶ時,「終わりの時の対抗する王たち」という図表を参照してください。まず,ダニエル書の北の王と南の王が誰かを確かめましょう。

北の王と南の王を見分ける鍵

4. 北の王と南の王に共通する,どんな3つの特徴がありますか。

4 「北の王」と「南の王」という称号は当初,イスラエルの北と南に位置する強国を指していました。ダニエルのもとに遣わされた天使はこう言っています。「私が来たのは,最後の日々にあなたの民に起きる事柄をあなたに理解させるためです」。(ダニ 10:14)西暦33年のペンテコステの日までは,イスラエル国民が神に選ばれた民でした。しかしそれ以降,エホバはイエスの弟子たちをご自分の民と見ていることを明らかにしました。ですから,ダニエル 11章の預言の多くはイスラエル国民にではなく,イエスに従う人たちに関係するものです。(使徒 2:1‐4。ロマ 9:6‐8。ガラ 6:15,16)誰が北の王で誰が南の王かは,時代とともに変化してきました。とはいえ,どちらの王にも共通する特徴があります。第一に,どちらの王もエホバの民に大きな影響を与えてきました。第二に,どちらの王もエホバの民をひどく扱い,真の神エホバに対する憎しみを表してきました。第三に,どちらの王も互いに優位に立とうとしてきました。

5. 2世紀から19世紀の終わりごろまでに北の王と南の王は存在しましたか。説明してください。

5 2世紀のある時点から,クリスチャン会衆に偽のクリスチャンがはびこるようになりました。その人たちは異教の教えを受け入れ,聖書の教えを覆い隠しました。その頃から19世紀の終わりごろまで,地上には組織されたエホバの民が存在しませんでした。偽のクリスチャンという雑草がはびこり,真のクリスチャンとの区別がつかなくなりました。(マタ 13:36‐43)この点は大切なポイントです。2世紀のある時点から19世紀の終わりごろまでに存在した支配者や政府は,北の王や南の王を指すことはあり得ません。その間,攻撃対象である組織されたエホバの民が存在しなかったからです。 * しかし,北の王と南の王は19世紀の終わりごろに再び登場します。なぜそういえますか。

6. エホバの民の区別がはっきりつくようになったのはいつですか。

6 1870年以降,エホバの民は組織された1つのグループとして存在するようになりました。1870年にチャールズ・T・ラッセルと仲間たちが聖書研究会をつくりました。ラッセル兄弟と仲間たちは,メシア王国の設立に先立って「道を整える」使者となりました。(マラ 3:1)エホバの民の区別がはっきりつくようになったのです。では,エホバの民に大きな影響を与える強国は存在していましたか。考えてみましょう。

南の王は誰か

7. 第1次世界大戦中までは誰が南の王でしたか。

7 1870年の時点で,英国は世界最大の帝国となり,最強の軍事力を有していました。大英帝国は,3本の角であるフランス,スペイン,オランダを打ち負かした「小さな角」でした。(ダニ 7:7,8)第1次世界大戦中までは英国が南の王でした。当時,アメリカ合衆国は世界の経済大国となっていて,英国と密接な関係を築いていました。

8. 終わりの時代の間,誰が南の王ですか。

8 第1次世界大戦中,米国と英国は強力な軍事同盟を結びました。こうして,英国とその植民地だった米国が英米世界強国になりました。ダニエルの預言にある通り,南の王は「非常に強大な軍隊」をつくり上げていました。(ダニ 11:25)終わりの時代の間,英米同盟が南の王となっています。 * では,北の王は誰ですか。

北の王が再び現れる

9. 北の王が再び現れたのはいつですか。ダニエル 11章25節はどのように実現しましたか。

9 1871年,北の王が再び現れました。ラッセル兄弟と仲間たちが聖書研究会をつくった年の翌年です。その年,オットー・フォン・ビスマルクの働きによりドイツ帝国が設立されました。プロイセンの国王ウィルヘルム1世が初代皇帝になり,ビスマルクを初代宰相に任命しました。 * その後,ドイツはアフリカや太平洋の国々を植民地として支配するようになり,英国に対抗する勢力になりました。ダニエル 11:25を読む。)ドイツ帝国は強力な軍隊をつくり上げ,英国に次ぐ規模の海軍を持つまでになりました。第1次世界大戦でドイツは軍事力を振るって敵国と戦いました。

10. ダニエル 11章25節後半と26節の預言は,どのように実現しましたか。

10 ダニエルは次に,ドイツ帝国とドイツの軍事力がどうなるかを預言しています。北の王は「立ち続けることができません」。なぜですか。「が陰謀を企てるため」です。「彼の美食をべていた者たちが彼を倒れさせます」。(ダニ 11:25後半,26前半)ダニエルの時代,王の「美食」を食べていた者たちの中には,「王に仕える」役人が含まれていました。(ダニ 1:5)現代では誰のことですか。ドイツ帝国の高官のことです。その中には,皇帝に仕えていた将官や軍事顧問が含まれていました。その人たちの支持を失い,帝政は結局終わりを迎えました。 * ダニエルの預言は,帝政が崩壊することだけでなく,南の王との戦いの結果についても予告しています。北の王について,「彼の軍隊は押し流され,大勢が殺されて倒れます」と述べていました。(ダニ 11:26後半)この預言通り,第1次世界大戦でドイツ軍は「押し流され,大勢が殺されて倒れ」ました。その戦争では,それまでのどの戦争よりも大勢の犠牲者が出ました。

11. 北の王と南の王は何をしましたか。

11 ダニエル 11章27,28節には,第1次世界大戦よりも前の時期に起きることについて,北の王と南の王が「1つの食卓に着いてうそを言い合[う]」と述べられています。北の王が「大量の品々」を蓄えるともあります。実際その通りになりました。ドイツと英国は互いに平和を望むと言っていましたが,1914年に戦争が起き,それまで語っていたことが「うそ」であることが明らかになりました。1914年までに,ドイツの経済は潤い,ドイツは世界第2位の経済大国になっていました。後にダニエル 11章29節と30節前半の預言の通り,ドイツは南の王と戦いましたが,打ち負かされました。

2人の王はエホバの民と戦う

12. 第1次世界大戦中,北の王と南の王は何をしましたか。

12 1914年以降,2人の王の対立は激しくなりました。2人の王はエホバの民とも激しく戦ってきました。第1次世界大戦では,ドイツ政府も英国政府も,戦争に参加しないエホバの民を迫害しました。米国政府は,先頭に立って伝道を行っていた人たちを刑務所に入れました。啓示 11章7‐10節に預言されていた通りの迫害が起きたのです。

13. 1930年以降,とりわけ第2次世界大戦中,北の王は何をしましたか。

13 1930年以降,とりわけ第2次世界大戦中,北の王はエホバの民を容赦なく攻撃しました。ナチ党がドイツで政権を握ると,ヒトラーと支持者たちはエホバの民の活動を禁止しました。何千人ものエホバの民が強制収容所に入れられ,約1500人が命を失いました。こうしたことが起きることをダニエルは預言していました。北の王は,エホバについて人々に知らせる活動を禁止することにより,「聖なる所……を汚し,日ごとの犠牲を除き去り」ました。(ダニ 11:30後半,31前半)指導者であるヒトラーは,ドイツのエホバの民を根絶すると断言することまでしました。

新しい北の王

14. 第2次世界大戦の後,北の王になったのは誰ですか。なぜそういえますか。

14 第2次世界大戦の後,共産主義政権であるソビエト連邦は,かつてドイツ領だった広大な国土を手に入れ,北の王になりました。ソビエト連邦は全体主義のナチ政権と同様,真の神エホバを崇拝し国への絶対服従を拒む人たちに激しい敵意をあらわにしました。

15. 第2次世界大戦が終わってから,北の王は何をしましたか。

15 第2次世界大戦が終わって間もなく,新しい北の王である,ソビエト連邦とそれを支持する国々は,エホバの民を攻撃し始めました。啓示 12章15‐17節にある預言の通り,この北の王は伝道活動を禁止し,エホバの証人を何千人もシベリアに追放しました。北の王は終わりの時代の間ずっと,エホバの民を迫害という「川」によって溺れさせて活動をやめさせようとしてきましたが,成功していません。 *

16. ソビエト連邦がしたことは,ダニエル 11章37‐39節にどのように預言されていましたか。

16 ダニエル 11:37‐39を読む。北の王はこの預言の通り,「自分の父祖たちの神を無視し」ました。どのようにですか。ソビエト連邦は,宗教を排除することを目指して,伝統的な宗教組織の影響力を弱めようとしました。ソ連政府が早くも1918年に出した通達により,学校で無神論が教えられるようになりました。北の王はどのように「要塞の神をたたえ」ましたか。ソビエト連邦は膨大な額をつぎ込んで軍備を増強し,何千発もの核弾頭を造りました。北の王も南の王も大量の兵器を備蓄しました。何十億もの人の命を奪うほどの量です。

2人の王が手を組む

17. 「荒廃をもたらす極めて不快なもの」とは何ですか。

17 北の王は1つのことで南の王と手を組みました。「彼らは荒廃をもたらす極めて不快なものを据え」ました。(ダニ 11:31)「極めて不快なもの」とは国際連合のことです。

18. 国際連合が「極めて不快なもの」と呼ばれているのはなぜですか。

18 国際連合が「極めて不快なもの」と呼ばれているのはなぜですか。神の王国だけが達成できる世界平和を自分たちが達成する,と唱えているからです。「極めて不快なもの」が「荒廃をもたらす」と預言されているのは,間違った宗教全てを滅ぼす上で大きな役割を果たすのが国際連合だからです。(「終わりの時の対抗する王たち」という図表を参照。)

起きた出来事を知る必要があるのはなぜか

19‐20. (ア)起きた出来事を知る必要があるのはなぜですか。(イ)次の記事ではどんなことを考えますか。

19 起きた出来事を知る必要があるのはなぜですか。1870年代から1990年代の初めにかけて,北の王と南の王に関するダニエルの預言が実現してきたからです。ダニエルの預言の残りの部分もその通りになるという信仰を持てます。

20 1991年にソビエト連邦が崩壊しました。では,現在誰が北の王ですか。次の記事で考えましょう。

24番の歌 報いを見つめなさい!

^ 5節 「北の王」と「南の王」に関するダニエルの預言は今実現しています。なぜそういえますか。この預言を詳しく理解する必要があるのはなぜですか。

^ 5節 この点を踏まえると,ローマ皇帝アウレリアヌス(在位270‐275年)を「北の王」,女王ゼノビア(在位267‐272年)を「南の王」と考えることはできないでしょう。この理解は,「ダニエルの預言に注意を払いなさい」の本の第13,14章にある説明に替わるものです。

^ 8節 聖書預言の英米世界強国」という囲みを参照。

^ 9節 1890年,カイゼル・ウィルヘルム2世はビスマルクを辞任させました。

^ 10節 高官たちが皇帝を支持するのをやめ,不利な戦況に関する機密情報を漏らし,皇帝に退位を迫ったことなどが,帝政の崩壊につながりました。

^ 15節 ダニエル 11章34節に示されている通り,北の王の国土で生活するクリスチャンに対する迫害がやんだ時期がありました。1991年にソビエト連邦が崩壊した時などがそうです。