研究記事16

贖いに対する感謝の気持ちを保つ

贖いに対する感謝の気持ちを保つ

「人の子[は]多くの人と引き換える贖いとして自分の命を与えるために来た」。マルコ 10:45

149番の歌 贖いに感謝する

を学ぶか *

1‐2. 贖いとは何ですか。私たちにそれが必要なのはなぜですか。

完全な人間アダムが罪を犯した時,アダムだけでなく,その子孫も永遠に生きるチャンスを失いました。アダムは意図的に罪を犯したので,何の言い訳をすることもできません。しかし,アダムの子孫についてはどうでしょうか。子孫はアダムの罪に何の責任もありません。(ロマ 5:12,14)アダムが死ぬのは当然のことでしたが,その子孫を死の宣告から救い出す方法は何もないのでしょうか。あります。アダムが罪を犯した直後から,エホバはアダムの大勢の子孫をどのように罪と死の災いから救い出すかを徐々に明らかにしていきました。(創 3:15)エホバはご自分が定めた時に独り子を天から遣わすことにしました。独り子が「多くの人と引き換える贖いとして自分の命を与えるため」です。(マル 10:45。ヨハ 6:51

2 贖いとは何でしょうか。ギリシャ語聖書に出てくる場合,それはアダムが失ったものを買い戻すためにイエスが支払った代価のことを指します。(コリ一 15:22)私たちに贖いが必要なのはなぜでしょうか。モーセの律法から分かる通り,公正に関するエホバの基準によれば,命は命で償う必要があるからです。(出 21:23,24)アダムは完全な人間の命を失いました。神の公正の基準を満たすために,イエスは完全な人間の命を差し出しました。(ロマ 5:17)それでイエスは,贖いに信仰を抱く全ての人の「永遠の父」となります。(イザ 9:6。ロマ 3:23,24

3. ヨハネ 14章31節と15章13節によると,イエスが自分の完全な人間の命を進んで差し出したのはなぜですか。

3 イエスは,天のお父さんと私たちへの深い愛に動かされて,自分の命を進んで差し出しました。ヨハネ 14:31; 15:13を読む。)そして,最後まで忠誠を保つことと,お父さんエホバの意志を成し遂げることを決意していました。死ぬまで忠実を保ったのです。結果として,エホバが意図していた人類と地球の本来の姿が実現することになります。神は,イエスが非常に苦しんで死ぬままにしました。その理由についてこれから考えます。また,贖いに深く感謝していた聖書筆者ヨハネの手本について短く考えます。そして,エホバとイエスが私たちに与えてくださった贖いに対する感謝を示す方法と,その感謝を深める方法についても考えます。

イエスが苦しまなければならなかったのはなぜか

贖いとなるためにイエスが耐え忍んだあらゆる苦しみについて考えましょう。(4節を参照。)

4. イエスは,捕らえられてから死ぬまでにどんな経験をしましたか。

4 イエスが人間として過ごした最後の日について考えてみましょう。イエスは,天使の大軍を呼んで守ってもらうこともできましたが,ローマの兵士たちに捕らえられ,ひどい仕打ちをされるままにしました。(マタ 26:52‐54。ヨハ 18:3; 19:1)兵士たちはむちで打ちたたくことによって,イエスの体に幾筋もの深い傷を負わせます。そして,イエスの傷だらけの背中に重い杭を載せて運ばせます。イエスは処刑場所に向かって運び始めますが,すぐに力尽きてしまったため,そばにいた人が代わりに運ぶよう命じられます。(マタ 27:32)イエスが処刑場所に到着すると,兵士たちはイエスの手と足を杭にくぎ付けにします。杭が立てられると,体の重みでくぎを打たれた所が裂け始めます。友人たちは深く悲しみ,母マリアは涙を流しています。一方,ユダヤ人の支配者たちはイエスをあざけっています。(ルカ 23:32‐38。ヨハ 19:25)イエスの苦しみは何時間も続きます。イエスの心臓と肺には非常に大きな負担が掛かり,息をするのも大変になります。そして,死に至るまで忠実を保ったイエスは,苦しい息の中,エホバに向かって最後の祈りを捧げます。その後,頭を垂れて息を引き取ります。(マル 15:37。ルカ 23:46。ヨハ 10:17,18; 19:30)イエスは痛みと屈辱に耐えながら,ゆっくりと死んでいったのです。

5. イエスにとって,どんな方法で処刑されるかよりも,もっと気に掛かっていたこととは何ですか。

5 イエスにとって,どんな方法で処刑されるかよりも,もっと気に掛かることがありました。それは,どんな罪状で処刑されるかということです。イエスは,神や神の名前に敬意を示さず冒瀆した,という偽りの告発を受けました。(マタ 26:64‐66)このような容疑を掛けられること自体,イエスを非常に苦しめるものでした。この屈辱を取り去ってください,とお父さんエホバに祈ったほどです。(マタ 26:38,39,42)では,どうしてエホバは愛する独り子が苦しんで死ぬままにしたのでしょうか。3つの理由を考えましょう。

6. イエスが杭に掛けられる必要があったのはなぜですか。

6 第一に,イエスはユダヤ人を災いから解放するために杭に掛けられる必要がありました。(ガラ 3:10,13)ユダヤ人は神の律法に従うと約束したのに,従いませんでした。それで,アダムから受け継いだ罪の結果に加えて,さらに災いを被ることになりました。(ロマ 5:12)神がイスラエル人に与えた律法によれば,死に値する罪を犯した人は処刑されることになっていました。その後,死体が杭に掛けられることもありました。 *申 21:22,23; 27:26)イエスは,杭に掛けられることにより,ユダヤ人の身代わりになりました。こうして,イエスを退けたユダヤ人も,イエスの犠牲の恩恵を受けられるようになりました。

7. イエスが苦しまなければならなかった2つ目の理由は何ですか。

7 第二に,エホバはイエスが将来,大祭司としての役割を果たせるように備えさせていました。イエスは非常に厳しい試練の中で,神に従うことの大変さを経験しました。とても大きなプレッシャーを感じていたので,「大きな声で叫び,涙を流しながら」助けを求めて祈りました。極度のストレスを経験したので,私たちの必要を理解し,「試練に遭っている[私たち]を助けることができます」。「私たちの弱さに同情」できる憐れみ深い方を大祭司として任命してくださったことを,エホバに心から感謝できるのではないでしょうか。(ヘブ 2:17,18; 4:14‐16; 5:7‐10

8. イエスが苦しまなければならなかった3つ目の理由は何ですか。

8 第三に,重要な質問に対する答えを出す必要がありました。厳しい試練に遭っても神への専心を示せる人間はいるだろうか,という質問です。サタンは,いない,と言っています。人間が神に仕えるのは自分の得になるからだ,と言うのです。そして,人間は皆,先祖のアダムと同じで,エホバを愛してなどいないと考えています。(ヨブ 1:9‐11; 2:4,5)エホバは,イエスが裏切ることはないと信じていたので,人間が耐えられる限界までイエスが試されるままにしました。イエスは忠誠を保ち,サタンがうそつきであることを証明しました。

ヨハネは贖いに深く感謝していた

9. 使徒ヨハネはどんな手本を示しましたか。

9 多くのクリスチャンは,贖いの教えによって信仰を強められてきました。反対されても伝道を続けてきた人もいれば,長い人生の中でありとあらゆる試練を忍耐してきた人もいます。使徒ヨハネの手本について考えてみましょう。ヨハネは,キリストと贖いに関する真理を伝え続けました。60年以上もそうしたようです。100歳近くになった時,ローマ帝国から危険人物と見なされ,パトモス島に島流しにされました。いったい何をしたというのでしょうか。「神について語り,イエスについて証言した」のです。(啓 1:9)信仰と忍耐の素晴らしい手本です。

10. ヨハネは贖いに感謝していました。そのことは,ヨハネが書いた書からどのように分かりますか。

10 ヨハネが聖なる力に導かれて書いた書の中には,イエスへの深い愛や贖いへの感謝が言い表されています。贖いや贖いによって可能になったことについて100回以上述べられています。例えば,こうあります。「もし誰かが罪を犯したとしても,私たちを助けてくださる方が父のもとにいます。正しい方であるイエス・キリストです」。(ヨハ一 2:1,2)また,「イエスについて証言する」ことの大切さも強調されています。(啓 19:10)ヨハネが贖いに深く感謝していたことがよく分かります。では,私たちも贖いに感謝していることをどのように示せるでしょうか。

贖いに対する感謝を示すには

贖いに心から感謝しているなら,罪への誘惑を退ける。(11節を参照。) *

11. 誘惑を退ける上で何が役立ちますか。

11 への誘を退ける。贖いに心から感謝しているなら,次のように考えたりはしないでしょう。「誘惑を感じても,罪を犯さないように頑張る必要はない。罪を犯しても,許しを求めればいいんだ」。誘惑を感じた時には,こう考えてください。「だめ! こんなことできるわけない。エホバとイエスがあれほどのことをしてくれたんだから」。そして,力を求めてエホバに次のように祈ることができます。「誘惑に負けないように助けてください」。(マタ 6:13

12. ヨハネ第一 3章16‐18節のアドバイスをどのように当てはめられますか。

12 の兄を愛する。仲間を愛するなら,贖いに対する感謝を示していることになります。どうしてそう言えますか。イエスはあなただけでなく,仲間の兄弟姉妹のためにも命を与えてくれたからです。これはつまり,イエスが兄弟姉妹のことを貴重に思っているということです。ヨハネ第 3:16‐18を読む。)私たちは兄弟姉妹を愛していることを接し方で示せます。(エフェ 4:29,31–5:2)例えば,病気にかかっている仲間や,自然災害などの厳しい試練に耐えている仲間を助けることができます。では,仲間から嫌なことを言われたりされたりした場合はどうすべきでしょうか。

13. 仲間を許すべきなのはなぜですか。

13 仲間を許すのが難しいと感じることがありますか。(レビ 19:18)もしあるなら,次のアドバイスの通りにしてください。「引き続き互いに我慢し,寛大に許し合いましょう。たとえ誰かに不満を感じるとしてもです。エホバが寛大に許してくださったのですから,同じようにしなければなりません」。(コロ 3:13)仲間を許すたびに,贖いに心から感謝していることを天のお父さんエホバに示すことになるのです。では,神からのこの贈り物に対する感謝を深めていくために何ができるでしょうか。

贖いに対する感謝を深めるには

14. 贖いに対する感謝を深めるために何ができますか。

14 いに感していることをエホバに伝える。インドに住む83歳のジョアナ姉妹はこう言います。「毎日の祈りの中で贖いに感謝していることをエホバに伝えるのは大事なことだと思います」。1人で祈る時には,1日を振り返り,してしまった良くないことについてエホバに許しを求めましょう。もちろん,重大な罪を犯した場合には,長老たちの助けも必要です。長老たちはあなたの話を聞き,聖書から親切な助言を与えてくれるでしょう。そして一緒に祈り,イエスの犠牲に基づいて許してくださるようエホバにお願いしてくれます。「そうすれば癒やされ」,エホバとの良い関係を取り戻せることでしょう。(ヤコ 5:14‐16

15. 贖いについて読んでじっくり考えるために時間を取るべきなのはなぜですか。

15 いについてじっくり考える。73歳のラジャマニ姉妹は,「イエスが苦しんだことについての記述を読むたびに,涙があふれてきます」と言っています。あなたも,イエスがどれほど苦しんだかについて考えると,いたたまれない気持ちになるかもしれません。それでも,イエスが払った犠牲についてじっくり考えるほど,イエスとエホバへの愛は深まっていくでしょう。贖いについてじっくり考えるために,研究のテーマとして個人や家族で調べてみるのはいかがですか。

イエスは簡素な食事によって,自分の犠牲を思い出す方法を弟子たちに示した。(16節を参照。)

16. 贖いについて教えることは,どのように私たちのためになりますか。(表紙の絵を参照。)

16 いについて教える。贖いについて人に教えると,感謝の気持ちが深まります。さまざまな優れたツールを使って,イエスが私たちのために死ぬ必要があったのはなぜかを教えることができます。例えば,「神からの良い知らせ」の冊子の第4課「イエス・キリストはどんな方ですか」から教えることができます。あるいは,「聖書は実際に何を教えていますか」の本の5章「贖い ― 神からの最大の贈り物」を使うこともできます。そして毎年,イエスの死の記念式に出席することや,熱心に招待することによって,贖いへの感謝を深めることができます。エホバは,イエスについて教えることを私たちに委ねてくださいました。これは本当に素晴らしい務めです。

17. 贖いは神から人類への最高の贈り物である,と言えるのはなぜですか。

17 確かに,私たちは贖いに対する感謝をさらに深めていくべきです。贖いのおかげで,完全ではない私たちもエホバの親しい友になることができます。贖いのおかげで,悪魔の行いは完全に終わります。(ヨハ一 3:8)贖いのおかげで,エホバが意図していた地球の本来の姿が実現することになります。地球全体がパラダイスになります。そこに住むのは,エホバを愛し,エホバに仕える人たちだけです。では,毎日さまざまな機会に,贖いに対する感謝を示していきましょう。贖いは神から人類への最高の贈り物なのです。

2番の歌 エホバよ,わたしたちは感謝します

^ 5節 この記事では,イエスが苦しんで死ななければならなかった理由について考えます。また,どうすれば贖いに対する感謝を深められるかについても考えます。

^ 6節 ローマでは,死刑囚を生きたまま杭にくぎ付けにするか縛り付けるのが普通でした。エホバは,イエスがそうした方法で処刑されることを許しました。

^ 55節 や挿: 兄弟たちがそれぞれ,不適切な画像やたばこや賄賂の誘惑を退けている。