研究記事29

自分自身の成長を喜びましょう

自分自身の成長を喜びましょう

「人と比べて喜ぶのではなく,自分自身のことを喜べます」。ガラテア 6:4

29番の歌 忠誠のうちに歩む

を学ぶか *

1. エホバが私たちをほかの人と比べたりしないのはなぜですか。

エホバはさまざまな違いを楽しむ神です。人間をはじめとする素晴らしい創造物を見れば,そのことが分かります。あなたと同じ個性を持っている人は一人もいません。ですから,エホバはあなたをほかの人と比べたりは決してしません。あなたの心の中を調べます。(サム一 16:7)あなたの得意なことや苦手なこと,また育った環境もご存じです。そして,あなたができないことまで求めたりはしません。私たちは,自分自身に対してエホバと同じ見方をする必要があります。そうすれば,「健全な考え方」を持つことができ,自分を過大評価することも過小評価することもないでしょう。(ロマ 12:3

2. 自分を人と比べるのが良くないのはなぜですか。

2 もちろん,宣教を上手に行っている兄弟姉妹の手本に注目するのは良いことです。(ヘブ 13:7)そうすれば,自分の宣教を改善する方法が分かるかもしれません。(フィリ 3:17)しかし,誰かの手本に倣うことと,自分をその人と比べることは,別の話です。そうした比較をするなら,ねたんだり,がっかりしたり,自分はだめだという気持ちになったりするかもしれません。また,前の記事で学んだ通り,会衆の仲間に対して競争心を抱くなら,エホバとの関係が損なわれてしまいます。それでエホバは,愛の気持ちから私たちにこう勧めています。「一人一人,自分の行いについてよく考えましょう。そうすれば,人と比べて喜ぶのではなく,自分自身のことを喜べます」。(ガラ 6:4

3. 自分のどんな成長を喜ぶことができますか。

3 エホバが願っているのは,あなたが信仰面での自分自身の成長を喜ぶことです。例えば,すでにバプテスマを受けているなら,その段階まで進歩できたことを喜ぶことができます。あなたはバプテスマを受けることを自分で選びました。そうしたのは,あなたがエホバを愛していたからです。その時以降,どんな進歩を遂げてきたでしょうか。聖書通読や個人研究がもっと好きになったかもしれません。一層心のこもった祈りを捧げるようになったかもしれません。(詩 141:2)伝道でもっと会話ができるようになり,いろいろなツールを上手に使えるようになったかもしれません。そして,エホバの助けで,より良い夫や妻や親になれたかもしれません。こうした面で成長してきたことを心から喜ぶことができるでしょう。

4. この記事ではどんなことを考えますか。

4 私たちは,ほかの人もその人自身の信仰面での成長を喜び,人と比べることがないように助けることができます。この記事では,親が子供を,夫婦が互いをどのように助けられるか,また,長老や会衆のほかの人たちが仲間の兄弟姉妹をどのように助けられるかを考えます。そして,自分の能力や状況に応じた目標を立てる上で役立つ聖書の原則も考えます。

親や夫婦にできること

親の皆さん,子供たち一人一人の努力に目を留めてください。(5‐6節を参照。) *

5. エフェソス 6章4節からすると,親はどんなことを避けるべきですか。

5 親は子供をほかの子供と比べたり,その子に無理なことを求めたりしないよう注意するべきです。そうしたことをするなら,子供をいら立たせてしまうかもしれません。エフェソス 6:4を読む。)幸子姉妹はこう言います。 * 「学校で先生たちから,クラスメートよりも良い成績を取るように期待されました。さらに母からも,学校でしっかりやるようにと言われました。先生や真理にいない父親にエホバの証人のことを良く思ってもらうためです。母は私に,テストでいつも100点満点を取ることを求めましたが,それは無理なことでした。学校を卒業して何年もたちますが,今でも,『ベストを尽くしても,エホバは喜んでくれないんじゃないか』と思うことがあります」。

6. 親は,詩編 131編1,2節からどんなことを学べますか。

6 親は, 131編1,2節から大切な点を学べます。(読む。)ダビデ王は,「大それたことや,身の丈以上のことを望んだりしない」と言いました。ダビデは,謙遜で慎み深い人だったので,「自分を落ち着かせ,静め」ることができました。親はダビデの言葉から何を学べますか。謙遜さと慎みがあれば,自分に対してだけでなく,子供に対しても無理なことを求めたりしないということです。親は,子供の得意なことや苦手なことを理解した上でふさわしい目標を持てるよう助けるなら,子供に自信を持たせることができます。マリーナ姉妹はこう述べています。「母は,私のことを兄や2人の弟やほかの子供たちと比べることは決してしませんでした。みんなそれぞれにいいところがあって,誰もがエホバにとって大切なんだ,ということを教えてくれました。おかげで,今も自分をほかの人と比べることはほとんどありません」。

7‐8. 夫は妻を大切にしていることをどのように示せますか。

7 クリスチャンである夫は,妻を大切にする必要があります。(ペテ一 3:7)大切にするとは,高く評価して重んじることです。ですから,夫は妻の考えや気持ちを尊重することによって,妻を大切にしていることを示せます。妻に無理なことを求めたりはしません。ほかの女性と比べたりすることもありません。もしそのように比較されるとしたら,妻はどう感じるでしょうか。ロサ姉妹の例を考えてみましょう。姉妹の夫はエホバの証人ではありません。姉妹のことをほかの女性とよく比較します。姉妹は,夫のひどい言葉に自尊心を傷つけられただけでなく,自分は誰にも愛されていないのではないか,と考えるようになりました。こう言っています。「エホバは私のことを大切にしてくれている,といつも自分に言い聞かせる必要があります」。一方,クリスチャンである夫は妻を大切にします。そうすれば,妻との関係もエホバとの関係も良くなる,ということが分かっているからです。 *

8 妻を大切にしている夫は,妻のことを人前で褒め,愛していることや感謝していることを直接伝えます。(格 31:28)前の記事に出てきたカテリーナ姉妹の夫はこの点を実践し,姉妹が自分はだめだという気持ちを乗り越えられるように助けています。姉妹は子供の頃,母親からけなされ,友達やほかの女の子と比べられることがよくありました。そのため,自分のことをほかの人と比べて考えるようになり,エホバの証人になってからもそうしていました。しかし,クリスチャンである姉妹の夫は,姉妹がこうした傾向と闘い,自分に対してもっとバランスの取れた見方ができるように助けています。姉妹はこう言います。「主人は私を愛し,私の良い点を褒め,私のために祈ってくれます。そして,エホバがどんなに素晴らしい方かを思い出させてくれますし,私がマイナス思考から抜け出せるように助けてくれます」。

長老や会衆のほかの人たちにできること

9‐10. 長老たちは,人と比較する傾向があった姉妹をどのように優しく助けましたか。

9 自分を人と比べる傾向がある人たちを助けるために,長老たちは何ができるでしょうか。ハヌニ姉妹の例を考えてみましょう。姉妹は子供の頃,褒められることがほとんどありませんでした。こう述べています。「私はシャイで,自分のことをほかの子たちと比べて,自分はだめだという気持ちになっていました。物心がついた頃からずっとそうでした」。姉妹は,エホバの証人になってからも自分のことを人と比べていました。そのため,自分はほとんど会衆の役に立っていない,と感じていました。でも,今では開拓奉仕を楽しんでいます。姉妹はどうして見方を変えることができたのでしょうか。

10 ハヌニ姉妹は,長老たちが優しく助けてくれた,と言っています。長老たちは,姉妹が会衆にとって大切な存在であることを伝え,姉妹の立派な手本を褒めました。姉妹はこう述べています。「長老たちから何度か,助けが必要な姉妹を励ましてほしい,と頼まれたことがあります。そのように頼まれると,自分は必要とされているんだと感じました。ある時,長老たちは,私が若い姉妹たちを励ましたことに感謝してくれました。そして,テサロニケ第一 1章2,3節を読んでくれました。とてもうれしかったです。こうした素晴らしい牧者たちのおかげで,今では,エホバの組織の中に自分の居場所がある,と感じられるようになりました」。

11. 「打ちのめされた謙遜な人たち」をどのように助けることができますか。(イザヤ 57:15

11 エホバは,「打ちのめされた謙遜な人たち」のことを心から気に掛けています。(イザ 57:15)長老たちだけでなく,私たち全てがこうした兄弟姉妹の力になることができます。そうするための1つの方法は,深い関心を示すことです。エホバはご自分の大切な羊のことをとても愛していて,そのことを私たちを通して伝えたいと思っています。(格 19:17)兄弟姉妹を助けるもう1つの方法は,謙遜さと慎みを示すことです。私たちは,自分に注意を引くことで誰かにねたみの気持ちを抱かせるようなことはしたくありません。そうではなく,自分の能力や知識を仲間の力になるために用いたいと思います。(ペテ一 4:10,11

弟子たちがイエスと一緒にいたいと思ったのは,イエスが見下すような態度を取らなかったから。イエスは,友たちと時間を過ごすことを楽しんだ。(12節を参照。)

12. 一般の人々がイエスと一緒にいたいと思ったのは,なぜですか。(表紙の絵を参照。)

12 私たちは,人にどのように接したらよいでしょうか。弟子たちに対するイエスの接し方から多くのことを学べます。イエスは,最も偉大な人でしたが,「温和で,謙遜」でした。(マタ 11:28‐30)自分が非常に賢く,膨大な知識を持っていることを見せつけるようなことはしませんでした。分かりやすい言葉で教え,一般の人たちの心に訴える例えを使いました。(ルカ 10:21)イエスは,高慢な宗教指導者たちとは違い,人々が自分自身を神から見て大切な存在と思えるようにしました。(ヨハ 6:37)一般の人々に対して敬意をもって接したのです。

13. 弟子たちに対するイエスの接し方には,どのように親切と愛が表れていましたか。

13 弟子たちに対するイエスの接し方には,親切と愛も表れていました。イエスは弟子たちのことをよく知っていました。弟子たちは能力や状況がそれぞれ違っていたので,皆が同じ責任を果たせたわけでも,宣教で同じ成果を上げられたわけでもありませんでした。それでも,イエスは弟子たちそれぞれがベストを尽くしていることをうれしく思っていました。イエスの思いやり深い態度は,タラントの例え話によく表れています。その例え話の中で,主人は奴隷たちに対して,「各自の能力に応じて」仕事を任せました。2人の奴隷は熱心に働きましたが,成果には差がありました。それでも,主人は2人に同じ褒め言葉を掛けて,こう言いました。「よく頑張りました! あなたは忠実な良い奴隷です」。(マタ 25:14‐23

14. 兄弟姉妹に接する際,イエスの手本にどのように倣えますか。

14 イエスは,私たちにも親切と愛を示してくださいます。能力や状況は人によって違うということを理解していて,私たちがベストを尽くす時,喜んでくれます。私たちがイエスのこの手本に倣うのは大切なことです。私たちのせいで,仲間の兄弟姉妹が「自分はほかの人ほど多くのことを行えない」と感じて,がっかりしたり気落ちしたりするようなことが決してないようにしたいと思います。事あるごとに,兄弟姉妹がベストを尽くしてエホバに仕えていることを褒めるようにしましょう。

達成できる目標を立てる

達成できる目標を立て,それに向かって努力するなら,喜びを味わえる。(15‐16節を参照。) *

15‐16. 1人の姉妹は達成できる目標を立てることによって,どんな良い経験をしましたか。

15 目標を持ってエホバに仕えるなら,充実した生活を送ることができます。とはいえ,ほかの人ではなく,能力や状況に合わせて目標を立てることが重要です。そうしないと,がっかりしたり気落ちしたりすることになってしまいます。(ルカ 14:28)開拓者の緑姉妹の例を考えてみましょう。

16 緑姉妹の父親はエホバの証人ではありません。姉妹は子供の頃,父親から,弟や妹やクラスメートと比較され,自尊心を傷つけられました。「自分はだめな子なんだと感じました」と緑姉妹は言います。しかし,姉妹は成長するにつれて自信を持てるようになりました。こう言っています。「聖書を毎日読むことで気持ちが穏やかになり,エホバに愛されていると感じられるようになりました」。さらに,姉妹は達成できる目標を立て,それに向かって努力できるよう具体的に祈りました。その結果,信仰面での自分自身の成長を喜ぶことができました。

ベストを尽くしてエホバに仕え続ける

17. どうすれば「考え方を新しくする努力を続け」ることができますか。そうすれば,どんな結果になりますか。

17 自分に対するネガティブな考え方を変えるには時間がかかります。それで,エホバはこう勧めています。「考え方を新しくする努力をけましょう」。(エフェ 4:23,24)そのためには,エホバに祈り,聖書を学び,じっくり考える必要があります。こうしたことに励み,力を求めてエホバに頼りましょう。そうすれば,聖なる力の助けによって,自分を人と比較するどんな傾向にも立ち向かうことができます。また,ねたみや誇りという良くない感情が私たちの心に湧き上がる時も,エホバの助けを得て,そのことに気付いてすぐに除き去ることができます。

18. 歴代第二 6章29,30節の言葉から,どんな慰めを得られると思いますか。

18 エホバは私たちの心をご存じです。(代二 6:29,30)私たちがサタンの世の精神や自分自身の不完全さと闘っていることも知っています。エホバは,私たちがそうしたものと必死に闘っているのを見て,私たちをますます愛してくださいます。

19. エホバは私たちに対するご自分の気持ちをどんな例を挙げて説明していますか。

19 エホバは,母親と赤ちゃんの絆を例に挙げて,私たちに対するご自分の気持ちを説明しています。(イザ 49:15)母親であるレイチェル姉妹はこう述べています。「娘のステファニーは未熟児でした。初めて見た娘はとても小さくて弱々しく見えました。娘が保育器の中にいた1カ月間,病院の先生は私が毎日娘を抱くことを許可してくれました。そうした幸せな時間を過ごせたので,娘との絆が強くなりました。娘は今では6歳になりました。体は同じ年のほかの子供たちほど大きくありません。それでも,生きるために一生懸命闘った娘を私は心から愛しています。娘のおかげで本当に大きな喜びを味わっています」。エホバは私たちがベストを尽くしてご自分に仕えようとするのを見る時,同じような深い愛を感じます。そのことを知ると,本当にうれしくなるのではないでしょうか。

20. エホバに仕えているあなたが喜べるのはなぜですか。

20 エホバに仕えているあなたは,エホバの大きな家族の中で貴重な存在です。あなたの代わりになれる人は誰もいません。エホバがあなたを引き寄せたのは,あなたがほかの人よりも優れていたからではありません。あなたの心を見て,あなたが温厚で,学んだことを当てはめようとする人であることを知ったからです。(詩 25:9)あなたがベストを尽くしてエホバに仕える時,エホバはそのことを必ず喜んでくださいます。あなたが忍耐と忠実さを示してきたことは,あなたが「非常に良い心」を持っていることの証拠です。(ルカ 8:15)ですから,ベストを尽くしてエホバに仕え続けてください。そうすれば,「自分自身のことを」大いに喜ぶことができるでしょう。

60番の歌 神はあなたを強い者としてくださる

^ 5節 エホバは,私たちをほかの人と比べたりはしません。しかし私たちには,自分を人と比べて,自分はできていない,と考える傾向があるかもしれません。この記事では,自分を人と比べると良くないのはなぜかを考えます。また,家族や会衆の人たちが自分自身に対してエホバと同じ見方をするよう助けるために何ができるかも考えます。

^ 5節 一部の名前は変えてあります。

^ 7節 ここで取り上げた点の多くは,夫だけでなく妻にも当てはまります。

^ 58節 や挿: 家族の崇拝で,子どもたちがそれぞれノアの箱船に入れるものを作っている。その様子を見て,父親と母親がうれしそうにしている。

^ 62節 や挿: 学校に上がる前の子供を1人で育てている姉妹が補助開拓奉仕の計画を立てている。その後,目標を達成して,喜びを味わっている。