研究記事12

あなたはゼカリヤが見たものを見ていますか

あなたはゼカリヤが見たものを見ていますか

「『私の聖なる力によるのである』と大軍を率いるエホバは言う」。ゼカリヤ 4:6

137番の歌 わたしたちに大胆さを与えてください

を学ぶか *

1. バビロンで捕囚になっていたユダヤ人が喜びに包まれたのはなぜですか。

 ユダヤ人は喜びに包まれていました。エホバ神がペルシャの「キュロス王の心を奮い立たせ」たので,ユダヤ人は何十年も捕囚になっていたバビロンから解放されることになったのです。キュロスはユダヤ人に対して,故国に戻り,「イスラエルの神である真の神エホバの家を建て直す」ように,との布告を出しました。(エズ 1:1,3)それを聞いたユダヤ人は,本当にうれしかったことでしょう。真の神エホバがご自分の民に与えた土地で,エホバへの崇拝がついに回復されるのです。

2. エルサレムに帰還した人たちは,まずどんなことを行いましたか。

2 紀元前537年,バビロン捕囚から帰還した人たちの第1陣が,南のユダ王国の首都だったエルサレムに到着しました。それらの人たちは,すぐに神殿再建に取り掛かり,紀元前536年にはすでに土台を据えていました。

3. ユダヤ人はどんな反対に直面しましたか。

3 ユダヤ人は神殿の再建を始めましたが,すぐに激しい反対に直面しました。周辺の国々の人たちが,「絶えずユダの民の士気をくじき,建てる意欲を失わせようとした」のです。(エズ 4:4)そして,状況はさらに悪くなっていきます。紀元前522年にアルタクセルクセスがペルシャの王になりました。 * 反対者たちはこれを絶好の機会と考え,「法の名の下に問題を巻き起こして」,神殿の建設をやめさせようとたくらみました。(詩 94:20)王に対して,ユダヤ人は反逆を企てている,といううその内容の手紙を送ったのです。(エズ 4:11‐16)アルタクセルクセスはこの話を信じ,神殿の建設を禁じる命令を出しました。(エズ 4:17‐23)こうして,喜びのうちに始まった神殿建設はストップしてしまいました。(エズ 4:24

4. 神殿の建設が禁じられた後,エホバはどんなことをしましたか。(イザヤ 55:11

4 その土地に住むエホバを崇拝していない人たちや,ペルシャの政府の一部の役人たちは,神殿の建設をやめさせようと決意していました。でも,エホバは神殿が再建されることを望んでいました。そして,エホバはご自分が望むことを必ず成し遂げる方です。イザヤ 55:11を読む。)エホバはゼカリヤを預言者に選び,印象的な幻を8つ見せました。そして,ゼカリヤはその幻についてユダヤ人に話し,励みを与えました。それを聞いた人たちは,反対者たちを恐れる必要がないことを理解し,エホバから命じられた活動を続けるよう動かされました。ゼカリヤは5番目の幻の中で,ランプ台と2本のオリーブの木を見ました。

5. この記事では,どんなことを考えますか。

5 私たちも,時には気落ちすることがあります。それで,エホバがゼカリヤに見せた5番目の幻から,ユダヤ人と同じように励みを得ることができます。この幻について理解するなら,反対に直面したり,変化を経験したり,理解できないような指示を受けたりする時にも,エホバに忠実に仕える助けを得られるでしょう。

反対に直面する時

ゼカリヤは幻の中で,7つのランプがあるランプ台に2本のオリーブの木から油が供給されている様子を見た。(6節を参照。)

6. ゼカリヤ 4章1‐3節にある,ランプ台と2本のオリーブの木の幻が,ユダヤ人に勇気を与えるものだったと言えるのはなぜですか。(表紙の絵を参照。)

6 ゼカリヤ 4:1‐3を読む。ランプ台と2本のオリーブの木の幻は,反対に立ち向かうようユダヤ人に勇気を与えるものでした。なぜそう言えるでしょうか。ランプ台には,絶えることなく油が供給されていました。2本のオリーブの木から,鉢のようなものに油が注がれ,そこから7つのランプそれぞれに油が供給されていました。そのおかげで,ランプの火は消えることなく燃え続けていました。ゼカリヤが,「これらのものは何を表しているのでしょうか」と尋ねると,天使はこう答えました。「『軍隊によるのでも,人間の力によるのでもなく,私の聖なる力によるのである』と大軍を率いるエホバは言う」。(ゼカ 4:4,6)油は,エホバの強力な聖なる力を表していました。聖なる力は尽きることがありません。そして,ペルシャ帝国の軍隊全てをもってしても,足元にも及ばないほど強力なものです。そのような力を持っているエホバが共にいてくださるのですから,ユダヤ人は反対があっても神殿の再建を成し遂げることができるのです。こうしたことを聞いて,ユダヤ人は大いに励まされたことでしょう。ユダヤ人に求められていたのは,エホバを信頼し,神殿の建設に再び取り掛かることでした。そして実際,禁止令が出されていた中でも工事を再開したのです。

7. 神殿を再建していたユダヤ人にとって追い風となるどんな変化が生じましたか。

7 やがて,神殿を再建していたユダヤ人にとって追い風となる変化が生じました。どんな変化でしょうか。当時ペルシャを治めていたダリウス1世が,その治世の第2年(紀元前520年)に,神殿の再建に対する禁令は違法であるということを知ったのです。そして,神殿を完成させるようにという布告を出しました。(エズ 6:1‐3)これだけでも驚くべきニュースでしたが,この布告にはさらに続きがありました。ダリウスは周りの国々の人たちに対して,神殿の再建を邪魔することを禁じ,資金や資材を提供するようにと命じたのです。(エズ 6:7‐12)そして4年余り後,紀元前515年についに神殿が完成しました。(エズ 6:15

反対に直面した時には,エホバの力に頼る。(8節を参照。)

8. 反対に直面しても勇気を出せるのはなぜですか。

8 現代でも,エホバに仕える人たちの多くが反対に直面しています。例えば,エホバの証人の活動が制限されている国では,兄弟姉妹が逮捕され,「総督や王の前に連れていかれ」ることがあります。そうした人たちに証言するためです。(マタ 10:17,18)時には,政権が変わって,これまでよりも自由にエホバを崇拝できるようになることもあります。また,公正を愛する裁判官がエホバの証人に対して好意的な判決を下すということもあります。別の反対に直面している人たちもいます。エホバを比較的自由に崇拝できる所に住んでいても,家族や親族が,エホバに仕えるのをやめさせようとして激しく反対するかもしれません。(マタ 10:32‐36)でも多くの場合,どれだけ反対してもやめさせることができないと気付くと,反対するのをやめます。激しく反対していた人が,熱心なエホバの証人になったということさえあります。ですから,反対に直面するとしても諦めてはいけません。勇気を出してください。エホバが共にいて聖なる力を与えてくださるのですから,何も恐れる必要はありません。

変化を経験する時

9. 神殿の土台が据えられた時,悲しくなったユダヤ人がいたのはなぜですか。

9 神殿の土台が据えられた時,それを見た年老いたユダヤ人の中には泣いた人たちがいました。(エズ 3:12)それらの人たちは,ソロモンが建てた立派な神殿を見たことがあったので,今建てている神殿は「かつてと比べると,ないに等しい」と感じました。(ハガ 2:2,3)それで悲しくなったのです。とはいえ,そうした人たちにとって,ゼカリヤに与えられた幻は喜びを取り戻す助けになったでしょう。どのようにでしょうか。

10. ゼカリヤ 4章8‐10節にある天使の言葉は,ユダヤ人が喜びを取り戻す上でどのように助けになりましたか。

10 ゼカリヤ 4:8‐10を読む。天使はどういう意味で,ユダヤ人は「[総督]ゼルバベルの手に下げ振りがあるのを見て,喜ぶ」と言ったのでしょうか。下げ振りとは,何かが完璧に垂直に建っているかどうかを確かめるための道具です。ですから,天使は神の民に対して,再建中の神殿がそれほど立派に思えないとしても,それは必ず完成し,エホバの基準を満たすことになる,ということを保証していました。エホバが再建された神殿を喜ぶのであれば,ユダヤ人も同じように喜ぶべきでした。エホバにとって重要だったのは,再建された神殿でご自分の基準を満たす崇拝が行われることです。ですからユダヤ人は,エホバに受け入れられる崇拝を行うことや,エホバに喜んでいただくことに思いを向けるなら,喜びを取り戻すことができました。

変化に対して前向きな見方をする。(11‐12節を参照。) *

11. 現代,エホバに仕えている人たちの中には,どんなことに難しさを感じる人がいますか。

11 変化に順応するのは大変なことがあります。例えば,特別全時間奉仕を長年行ってきた人が割り当ての変更を経験することがあります。また,一定の年齢になると,それまで大切にしてきた奉仕の立場から離れなければならなくなるかもしれません。こうした変化を経験する時に,がっかりするのは自然なことです。初めのうちは,なかなか受け入れにくく感じるかもしれません。昔の方が良かった,と思うこともあるでしょう。前ほどエホバに十分お仕えできなくなった,と感じてがっかりするかもしれません。(格 24:10)もしそうであれば,ゼカリヤが見た幻は,エホバに精一杯仕えていく上で助けになります。どのようにでしょうか。

12. 状況が変化して落胆を経験する時,ゼカリヤが見た幻はどのように助けになりますか。

12 エホバと同じ見方をするよう努力するなら,変化に順応しやすくなります。現代,エホバは素晴らしいことを行っています。そして私たちには,エホバと共に働くという貴重な機会があります。(コリ一 3:9)私たちに与えられている責任や立場は変わるかもしれませんが,私たちに対するエホバの愛は決して変わりません。ですから,組織の決定によって何かの変化を経験するとしても,その理由についてあれこれ考えないようにしましょう。「昔の方が良かった」と思うのではなく,良い面を探すことができるようエホバに助けを求めて祈りましょう。(伝 7:10)できないことではなく,できることに目を向けてください。ゼカリヤが見た幻から,前向きな見方を持つことの大切さが分かります。前向きな見方を保つなら,変化を経験するとしても喜びを保ち,エホバに忠実に仕えていけるのです。

指示に従うのを難しく感じる時

13. 工事を再開するという決定は良くない,と思ったユダヤ人がいたのはなぜですか。

13 民を導く責任を委ねられていた大祭司エシュア(ヨシュア)と総督ゼルバベルは,神殿の再建が禁止されていたにもかかわらず,「神の家を建て直し始め」ました。(エズ 5:1,2)この決定は良くない,と感じたユダヤ人もいたことでしょう。「工事を再開すれば反対者たちにそのことが分かり,あらゆる手を使って邪魔してくるだろう」と思ったのです。ですから,ヨシュアとゼルバベルは,自分たちにはエホバからの支えがあるという確信を必要としていました。そして,エホバはそのことを2人に確信させました。どのようにでしょうか。

14. ゼカリヤ 4章12,14節からすると,大祭司ヨシュアと総督ゼルバベルはどんなことを確信できましたか。

14 ゼカリヤ 4:12,14を読む。この幻の中で,天使はゼカリヤに対して,2本のオリーブの木は「2人の選ばれた者」を表していると述べました。つまり,ヨシュアとゼルバベルのことです。この2人は,いわば「全世界の主[エホバ]のそばに立」っていました。これは本当に名誉なことでした。エホバは2人を信頼していたのです。エホバがヨシュアとゼルバベルに民を導く責任を委ねていたのですから,ユダヤ人は2人から与えられるどんな指示にも信頼を置いて従うべきでした。

15. 聖書を通して与えられるエホバからの指示に従いたいと思っていることを,どうすれば示せますか。

15 現代,エホバは私たちを導くために聖書を用いています。聖書には,どうすればエホバに受け入れられる崇拝を行うことができるかが載せられています。では,聖書を通して与えられるエホバからの指示に従いたいと思っていることを,どうすれば示せるでしょうか。時間を取って聖書を読み,理解するよう努力することによってそうできます。次のように考えてみましょう。「聖書や出版物を読む時,時間を取ってじっくり考えるようにしているだろうか。聖書の中で,『理解しにくい箇所』があったなら,よく調べるようにしているだろうか。それとも,さっと目を通すだけになってしまっているだろうか」。(ペテ二 3:16)エホバが教えてくださっていることを時間を取ってじっくり考えるなら,エホバからの指示に従い,伝道活動を最後までやり遂げることができるでしょう。(テモ一 4:15,16

「忠実で思慮深い奴隷」を信頼して,その指示に従う。(16節を参照。) *

16. 「忠実で思慮深い奴隷」からの指示をよく理解できないと思う時,それに従う上で何が助けになりますか。

16 エホバは私たちを導くために「忠実で思慮深い奴隷」も用いています。(マタ 24:45)時には,奴隷から与えられる指示をよく理解できないと思うこともあるかもしれません。例えば,自分が住んでいる地域では起きそうにない災害に備えるように,と言われることがあるでしょう。また,忠実で思慮深い奴隷は感染症対策の面で慎重すぎる,と感じることもあるかもしれません。では,そのように感じる時,どうしたらよいでしょうか。ユダヤ人がヨシュアやゼルバベルから与えられた指示に従った時,どんな良い結果になったかを考えることができます。聖書に載せられているほかの記述について考えるのも良いことです。神の民は,理解できないような指示を与えられることがありましたが,それに従った時,命を救われました。(裁 7:7; 8:10

ゼカリヤが見たものを見る

17. ランプ台と2本のオリーブの木の幻は,ユダヤ人にとってどのように助けとなりましたか。

17 ゼカリヤが見た5番目の幻は短いものだったかもしれませんが,神殿の再建やエホバへの崇拝に対して前向きな見方を持つよう,ユダヤ人を助けるものでした。ユダヤ人は,この幻から学んだことに沿って行動した時,エホバが愛情深く支え,指示を与えてくれていることを感じることができました。エホバは強力な聖なる力を用いて,彼らが建設を続け,喜びを取り戻せるように助けていたのです。(エズ 6:16

18. ゼカリヤが見た幻は,私たちにとってどのように助けとなりますか。

18 ゼカリヤが見たランプ台と2本のオリーブの木の幻は,私たちにとっても,大いに助けになるものです。この記事で考えた通り,それは問題に立ち向かうためのや変化に順応するためのを得ること,また,理解しにくく思えるような指示に従順に従う上で必要なを培うことに役立ちます。では,何かの問題にぶつかった時,何ができるでしょうか。まず,ゼカリヤが見たものを見るようにしましょう。つまり,エホバがご自分に仕える人たちを気遣っていることに目を向けます。そして,見たことに基づいて行動しましょう。エホバを信頼し,心を尽くしてエホバを崇拝するのです。(マタ 22:37)こうしたことを行うなら,エホバからの助けを得て,いつまでも喜びを持ってエホバに仕えていくことができるでしょう。(コロ 1:10,11

23番の歌 エホバはわたしたちの力

^ エホバは預言者ゼカリヤに印象的な幻を幾つも見せました。これらの幻は,清い崇拝を回復させるために奮闘していた,ゼカリヤとエホバの民に力を与えるものでした。そして,難しい状況の中でもエホバに忠実に仕えている現代の私たちにとっても,助けになります。この記事では,ゼカリヤが見たランプ台とオリーブの木の幻からどんな大切な点を学べるかを考えます。

^ 何十年も後,ネヘミヤが総督だった時代に王だったアルタクセルクセスは別人で,ユダヤ人に対してとても親切でした。

^ や挿: 1人の兄弟が,年齢や健康の問題に伴う状況の変化に順応する必要を感じている。

^ や挿: 1人の姉妹が,「忠実で思慮深い奴隷」にはヨシュアやゼルバベルと同じようにエホバからの支えがあるということを思い巡らしている。