研究記事25

寛大に許す人はエホバから祝福される

寛大に許す人はエホバから祝福される

「エホバが寛大に許してくださったのですから,同じようにしなければなりません」。コロサイ 3:13

77番の歌 快く許しなさい

を学ぶか *

1. エホバは罪を悔い改める人にどんなことを約束していますか。

 エホバは,私たちを造った方,裁く方,法を定める方であるだけでなく,優しい天のお父さんでもあります。(詩 100:3。イザ 33:22)私たちが罪を犯すとしても心から悔い改めるなら,エホバはその罪を許すことができるだけでなく,許したいと思っています。(詩 86:5)愛の気持ちから,預言者イザヤを通してこう約束しています。「あなたたちの罪は緋のようだが,雪のように白くされる」。(イザ 1:18

2. 誰かと親しくなりたいと思うなら,どんなことをする必要がありますか。

2 私たちは皆,完全ではないので,誰かを傷つけるようなことを言ったりしたりしてしまうことがあります。(ヤコ 3:2)でも,だからといって,親しくなることができないというわけではありません。進んで許すよう努力するなら,親しい関係を築くことができます。(格 17:9; 19:11。マタ 18:21,22)誰かからちょっとしたことで傷つけられるとしても,私たちが許すことをエホバは願っています。(コロ 3:13)私たちがこのように進んで許すべきなのは,エホバが私たちを惜しみなく「寛大に」許してくださっているからです。(イザ 55:7

3. この記事ではどんなことを考えますか。

3 この記事では,どうすれば不完全な人間である私たちが,エホバに倣って人を許せるかを考えます。どんな罪は長老たちに伝える必要があるでしょうか。エホバはなぜ私たちが人を許すことを願っているのでしょうか。他の人の罪のせいで非常につらい経験をした兄弟姉妹の例から,どんなことを学べますか。

クリスチャンが重大な罪を犯した場合

4. (ア)クリスチャンは重大な罪を犯した場合,どんなことをする必要がありますか。(イ)罪を犯した人に関して,長老たちはどんな役割を果たしますか。

4 誰かが重大な罪を犯した場合,私たちはそのことを長老たちに伝える必要があります。重大な罪とは,神のおきてを大きく踏み越えることです。コリント第一 6章9,10節には,その例が挙げられています。クリスチャンは重大な罪を犯した場合,許しを求めてエホバ神に祈り,長老たちに話す必要があります。(詩 32:5。ヤコ 5:14)長老たちはどんな役割を果たすのでしょうか。罪を完全に許すことができるのはエホバだけです。エホバは贖いの犠牲に基づいて許してくださいます。 * それでもエホバは,長老たちに大きな責任を委ねています。罪を犯した人が会衆にとどまれるかどうかを聖書に基づいて判断するという責任です。(コリ一 5:12)長老たちはこの責任を果たすために,次のようなことを考えます。その人は前もって計画した上で罪を犯したのだろうか。罪を隠そうとしていただろうか。ある程度の期間にわたって繰り返し罪を犯しただろうか。最も重要なこととして,その人は心から悔い改めていることをはっきり示しているだろうか。エホバがその人を許していることが明らかだろうか。(使徒 3:19

5. 長老たちの働きはどんな良い結果をもたらしますか。

5 長老たちは,罪を犯した人と話し合う時,自分たちの決定が天ですでに下されている決定と同じものになることを目指します。(マタ 18:18)この取り決めが会衆のためになると言えるのはなぜでしょうか。罪を悔い改めない人を会衆から除くことによって,エホバが大切にしている羊を守ることができるからです。(コリ一 5:6,7,11‐13。テト 3:10,11)そして,悔い改めてエホバからの許しを得られるよう,罪を犯した人を助けることにもなるかもしれません。(ルカ 5:32)長老たちは,罪を悔い改めた人のためにエホバに祈り,エホバとの絆を取り戻せるようその人を助けます。(ヤコ 5:15

6. 排斥されたとしても,エホバに許していただくことはできますか。

6 長老たちと話し合った時点で,罪を犯した人が悔い改めていない場合は,どうなるでしょうか。その人は会衆から排斥されることになります。その人が国や地域の法律を破った場合,長老たちはその人が罰を受けないようにかばうことはしません。エホバは,であれ法律を破った人を裁いたり罰したりする権限を政府に与えています。その人が悔い改めていてもいなくても,このことに変わりはありません。(ロマ 13:4)では,排斥された人が,後に本心に立ち返り,心から悔い改めて生き方を変える場合はどうでしょうか。エホバはその人を快く許してくださいます。(ルカ 15:17‐24)犯した罪がとても大きなものであったとしてもそうです。(代二 33:9,12,13。テモ一 1:15

7. 誰かが私たちに対して罪を犯した場合,その人を許していることをどのように示せますか。

7 罪を犯した人を許すかどうかはエホバが決めることであり,私たちが決める必要はありません。これは本当にうれしいことです。とはいえ,私たちが決めなければならないこともあります。誰かが私たちに対して罪を犯し,その後,許しを求めて謝ってくるかもしれません。あるいは,謝ってこない場合もあるでしょう。いずれにしても,私たちは相手を許すことにし,その人に対する憤りや怒りを捨てるよう努力できます。もちろん,そうするには時間や努力が求められるでしょう。深く傷つけられた場合は特にそうです。「ものみの塔」1994年9月15日号にはこう述べられています。「罪を犯した人をあなたが許す時,それは罪を大目に見ているのではないということを理解しておきましょう。クリスチャンにとって,許すとはエホバを信頼して,そのみ手のうちに問題を委ねることを意味します。エホバは全宇宙の義なる裁き主であられますから,ふさわしい時に公正を行なってくださいます」。エホバは,私たちが快く許し,裁きをご自委ねることを願っています。それはなぜでしょうか。

私たちが快く許すことをエホバが願っているのはなぜか

8. エホバの憐れみに対する感謝をどのように示せますか。

8 すなら,感を示すことになる。イエスはある時,エホバを1人の主人に例えました。この主人は,ある奴隷の自分では返し切れないほど巨額の借金を取り消してあげました。しかしこの奴隷は,自分からわずかな額を借りていた仲間の奴隷に憐れみを示そうとしませんでした。(マタ 18:23‐35)イエスは何を教えようとしていたのでしょうか。私たちは,エホバから示していただいている大きな憐れみに心から感謝しているなら,人を許そうとするはずです。(詩 103:9)私たちが人を何回許すとしても,神がキリストを通して与えてくださる許しや憐れみとは決して比較にならないのです。

9. エホバはどんな人に憐れみを示しますか。(マタイ 6:14,15

9 すなら,自も許していただける。エホバは憐れみ深い人に憐れみを示します。(マタ 5:7。ヤコ 2:13)イエスは弟子たちに祈り方を教えた際,この点を明らかにしました。マタイ 6:14,15を読む。)また,エホバが忠実なヨブに語った言葉からも,同じ点を学べます。ヨブは,エリパズ,ビルダド,ツォファルからひどいことを言われ,深く傷つきました。それでも,エホバはヨブに対して,その3人のために祈るようにと言いました。そして,ヨブが祈ると,エホバはヨブを祝福しました。(ヨブ 42:8‐10

10. 憤りを抱き続けるなら,自分を傷つけることになるのはなぜですか。(エフェソス 4:31,32

10 りを抱き続けるなら,自を傷つけることになる。エホバは,私たちが憤りという重い荷物を下ろして楽になることを願っています。エフェソス 4:31,32を読む。)それで,「怒るのをやめ,激怒を捨てよ」と勧めています。(詩 37:8)このアドバイスに従うことは,私たちのためになります。憤りを抱き続けることは,心にも体にも良くありません。(格 14:30)憤りを抱き続けても,自分を傷つけるだけで,相手には何の影響もありません。自分が毒を飲んでも相手には何の影響もないのと同じです。ですから,人を許すことは自分のためになります。(格 11:17)思いと心が穏やかになり,エホバに仕え続けることができるのです。

11. 復讐することについて,聖書には何と書かれていますか。(ローマ 12:19‐21

11 はエホバがする。エホバは私たちに対して,誰かに復讐する権威を与えてはいません。ローマ 12:19‐21を読む。)私たちは完全ではありませんし,全体を見ることができないので,エホバのように正しく裁くことはできません。(ヘブ 4:13)時には,感情に流されてふさわしい判断を下せないこともあります。ヤコブは,エホバの聖なる力に導かれて,「怒りの気持ちからは,神が求める正しさは生まれません」と書きました。(ヤコ 1:20)エホバはいつも正しいことを行い,必ず公正が行われるようにしてくださるのです。

怒りや憤りを捨て,物事をエホバの手に委ねることは大切。エホバは,罪の結果生じた悪いこと全てを除き去ってくださる。(12節を参照。)

12. エホバが公正な方であることへの確信をどのように示せますか。

12 すなら,エホバが公な方であることへの確を示せる。物事をエホバに委ねるなら,私たちはエホバへの確信を示せます。罪の結果生じた悪いこと全てをエホバが除き去ってくださる,という確信です。エホバが約束している新しい世界では,つらい記憶はもはや「思い出されることも,心に浮かぶこともない」のです。(イザ 65:17)とはいえ,ひどく傷つけられた場合,憤りや怒りの気持ちを捨てることなど本当にできるのでしょうか。そうできた人たちの例を考えてみましょう。

人を許すことから得られる祝福

13‐14. トニー兄弟とホセ兄弟の例から,許すことについてどんなことを学べますか。

13 大勢の兄弟姉妹が,ほかの人の行動によって深く傷ついたにもかかわらず,許すことにしました。そのようにしてどんな祝福を味わっているでしょうか。

14 フィリピンに住むトニーという男性は,聖書を学ぶずっと前,自分の兄がホセという男性に殺されたことを知りました。 * 当時,トニーは怒りっぽく攻撃的な性格だったので,復讐してやる,と思っていました。ホセは逮捕され,刑務所に送られました。その後,ホセが釈放されると,トニーは,ホセを必ず見つけて殺してやる,と心に誓いました。そして,銃を購入しました。でもトニーは,やがてエホバの証人と聖書を勉強し始めました。トニーはこう言います。「聖書を学んで,自分を変え,怒りの気持ちを捨てなければいけないということが分かりました」。やがてトニーは,バプテスマを受け,その後長老に任命されました。一方,ホセもバプテスマを受けたエホバの証人になっていました。そのことを知ったトニー兄弟は,本当に驚きました。後に,2人は直接会うことになり,温かいハグを交わしました。そして,トニー兄弟はホセ兄弟を許していることを伝えました。トニー兄弟はこう言います。「こうして許すことができたので,本当に大きな喜びを味わっています。この気持ちは言葉では言い表せません」。確かにエホバは,快く許したトニー兄弟を祝福したのです。

ピーター兄弟とスー姉妹の例から分かる通り,私たちも怒りや憤りを捨てることができる。(15‐16節を参照。)

15‐16. ピーター兄弟とスー姉妹の例から,許すことについてどんなことを学べますか。

15 1985年,ピーター兄弟とスー姉妹が王国会館で集会に出席していた時,突然大きな爆発が生じました。ある男性が王国会館に爆弾を仕掛けていたのです。スー姉妹は重傷で,目と耳に大きな損傷を負い,嗅覚を失いました。 * ピーター兄弟とスー姉妹は,「誰がこんなひどいことをしたのだろうか」と幾度も考えました。何年も後,エホバの証人ではない男性がこの件で逮捕され,終身刑を言い渡されました。2人は犯人を許すかどうかと尋ねられて,こう答えました。「エホバは,怒りや憤りを持ち続けるなら,心にも体にも良くないと教えてくれています。それで,事件の後すぐに,怒りや憤りを捨てて穏やかに生きていくことができるように助けてください,とエホバにお願いしました」。

16 ピーター兄弟とスー姉妹にとって,許すのは簡単なことだったのでしょうか。そうではありません。2人はこう言っています。「スーがけがの影響で苦しむ時には,怒りの気持ちがこみ上げてくることがあります。でも,そうしたことについて考え続けないようにするので,すぐに気持ちが穏やかになります。心から言えることですが,犯人がいつかエホバの証人になったなら,喜んで迎え入れたいと思っています。この経験を通して,聖書の教えを当てはめるなら本当の自由を味わえる,ということを学びました。想像以上の自由です。そして,間もなくエホバが私たちの痛みや苦しみを全て除き去ってくださる,ということを知っているので,本当に慰められています」。

17. マイラ姉妹の例から,許すことについてどんなことを学べますか。

17 マイラ姉妹は,真理を学んだ時,すでに結婚していて,幼い子供が2人いました。夫は真理を受け入れず,やがて姦淫を犯し,家を出ていきました。姉妹はこう言います。「夫が私と子供たちを捨てて出ていった時,私は愛する人に裏切られた人たちの多くが感じるのと同じような気持ちを味わいました。ショックを受け,人を信じられなくなり,自分を責め,悲しみや後悔や怒りを感じました」。結婚生活は終わりましたが,裏切られた心の痛みは残りました。姉妹はさらにこう言います。「そうしたつらい気持ちに何カ月も苦しめられました。そして,そのせいでエホバやほかの人との関係に影響が出ていることに気付きました」。姉妹は,今では怒りの気持ちを捨て,以前の夫に対して悪感情を持ってはいません。それどころか,いつかエホバに仕えるようになってほしいと思っています。姉妹は将来に目を向けることができています。エホバに仕えるよう,2人の子供を1人で育て上げました。今では,子供たちや子供たちの家族と一緒にエホバに仕えることから喜びを味わっています。

エホバの裁きは完全

18. 裁く点で最高の方であるエホバは,どんなことを行ってくださいますか。

18 うれしいことに,私たちは誰かを裁くという荷を負う必要はありません。裁く点で最高の方であるエホバが行ってくださるからです。(ロマ 14:10‐12)エホバは必ず,善悪に関する完全な基準に従って裁きを行ってくださいます。(創 18:25。王一 8:32)エホバが不正を行うことは決してないのです。

19. エホバの完全な裁きによって,どんなことが成し遂げられますか。

19 私たちは,エホバが不完全さや罪の結果生じた悪いこと全てを除き去ってくださる時を心待ちにしています。その時,心の傷も体の傷も,全てが完全に癒やされます。(詩 72:12‐14。啓 21:3,4)それらを思い出すことさえなくなるのです。では,その素晴らしい時が来るまで,エホバがご自分に倣えるよう助けてくださることに感謝しつつ,人を快く許すようにしましょう。

149番の歌 贖いに感謝する

^ エホバは,罪を悔い改める人を快く許してくださる方です。クリスチャンである私たちは,誰かから傷つけられた時,このエホバの手本に倣いたいと思っています。この記事では,私たちが自分で許すことのできる罪と,長老たちに伝える必要がある罪について取り上げます。そして,私たちが許し合うことをエホバが願っているのはなぜか,人を許すならどんな祝福を受けることができるかについても考えます。

^ 「ものみの塔」1996年4月15日号の「読者からの質問」を参照。

^ 一部の名前は変えてあります。

^ 「目ざめよ!」1992年1月8日号9‐13ページを参照。JW Broadcasting®の「ピーターとスー・シュルツ: トラウマを乗り越えました」の動画も参照。jw.orgの検索ボックスに動画のタイトルを入力すると動画を探せる。