研究記事37

仲間を信頼しましょう

仲間を信頼しましょう

「愛は……全てのことを信じ,全てのことを希望し……ます」。コリント第一 13:4,7

63番の歌 忠節を保つ

を学ぶか a

1. この世の中に信頼が見られないとしても,私たちが驚かないのはなぜですか。

 サタンの世界で暮らしている人々は,誰を信頼したらよいのかが分からなくなっています。ビジネスや政治や宗教の指導者たちに,いつも期待を裏切られてきたからです。そして,友達や近所の人や家族のことさえ信頼できなくなっています。とはいえ,私たちはこうした様子を見聞きしても驚くことはありません。聖書の預言によれば,「終わりの時代」に,「人々は……不忠実になり……中傷し……人を裏切[る]」からです。これはつまり,人々がこの体制の神であるサタンと同じように信頼できない者になるということです。(テモ二 3:1‐4。コリ二 4:4

2. (ア)私たちはどこに信頼を置くことができますか。(イ)どう思う人がいるかもしれませんか。

2 とはいえ,クリスチャンである私たちは,エホバを100%信頼しています。(エレ 17:7,8)エホバが私たちのことを愛していて,「決して見捨てない」ということを固く信じています。(詩 9:10)また,キリスト・イエスのことも信頼しています。私たちのために命を与えてくださったからです。(ペテ一 3:18)そして,聖書の導きが信頼できるものであるということを,経験を通して知っています。(テモ二 3:16,17)ですから,私たちはエホバとイエスと聖書を信頼できるのです。それでもある人は,会衆の兄弟姉妹をいつも信頼することはできるのだろうか,と思うかもしれません。できるとすれば,それはなぜでしょうか。

私たちには兄弟姉妹が必要

世界中の兄弟姉妹は,私たちと同じようにエホバを愛していて,信頼できる。(3節を参照。)

3. 私たちはどんな素晴らしい経験をしていますか。(マルコ 10:29,30

3 エホバは,ご自分を崇拝する者たちから成る世界的な家族に私たちを加えてくださいました。これは本当に素晴らしいことであり,私たちにとって大いに助けとなっています。マルコ 10:29,30を読む。)私たちには,共にエホバを愛し,エホバの基準に従って生きるよう一生懸命努力している兄弟姉妹が世界中にいるのです。言語や文化や服装などは違っているかもしれませんが,初めて会った時でさえ,親しみを感じます。そして,そうした兄弟姉妹と一緒に愛情深いお父さんエホバを賛美し,崇拝できるのは,特にうれしいことです。(詩 133:1

4. 私たちに兄弟姉妹が必要なのはなぜですか。

4 私たちは,これまでになく兄弟姉妹と一致団結する必要があります。仲間は私たちが重荷を負うのを助けてくれます。(ロマ 15:1。ガラ 6:2)また,私たちがエホバに熱心に仕え,エホバとの絆を強く保っていけるよう励ましてもくれます。(テサ一 5:11。ヘブ 10:23‐25)私たちは,共通の敵であるサタンやサタンの邪悪な世界にしっかり立ち向かう必要があります。この面で会衆からの保護がなかったら,私たちはどうなってしまうでしょうか。サタンとサタンの支配下にある者たちは,神に仕える人たちを間もなく攻撃します。その時,私たちを支えてくれる兄弟姉妹がいるというのは,本当にありがたいことです。

5. 兄弟姉妹を信頼するのを難しく感じる人がいるのはなぜですか。

5 とはいえ,中には兄弟姉妹を信頼するのを難しく感じる人もいます。それは,内密のことをほかの人に漏らされたり,約束を破られたりしたことがあるからかもしれません。あるいは,傷つくようなことを言われたりされたりしたからかもしれません。確かに,こうした経験をすると,人を信頼するのが難しくなるのも無理はありません。では,どうすれば仲間を信頼することができるでしょうか。

愛によって信頼を築く

6. 信頼を築く上で,愛はどのように助けとなりますか。(コリント第一 13:4‐8

6 信頼の土台となるのは,愛です。コリント第一 13章には,愛のさまざまな側面が説明されています。こうした点を考えることは,他の人への信頼を築いたり取り戻したりする上で助けとなります。コリント第 13:4‐8を読む。)例えば,4節には,「愛は辛抱強く,親切です」とあります。エホバは,私たちが罪を犯したとしても,辛抱強く接してくださいます。ですから私たちも,誰かの言葉や行動に傷ついたり気分を害されたりするとしても,辛抱強さを示さなければなりません。また,5節には,「[愛は]いら立ちません。愛は傷つけられても根に持ちません」とあります。ですから,自分にされた嫌なことを覚えておいて,後で持ち出すようなことはしません。伝道の書 7章9節には,「すぐに腹を立ててはならない」とあります。腹を立てるよりも,エフェソス 4章26節にある次の言葉を当てはめる方が,はるかに優れています。そこにはこうあります。「怒ったまま日が沈むことがないようにしましょう」。

7. マタイ 7章1‐5節の言葉は,信頼を築く上でどのように助けとなりますか。

7 兄弟姉妹に対してエホバと同じ見方をすることも,信頼を築く上で助けとなります。エホバは兄弟姉妹のことを愛しています。そして,罪を記録するようなことはしません。私たちもエホバに倣う必要があります。(詩 130:3)兄弟姉妹の欠点に注目するのではなく,良い性質や可能性に目を向けるように努力しましょう。マタイ 7:1‐5を読む。)動機を疑うこともしません。愛は「全てのことを信じ」るからです。(コリ一 13:7)もちろん,全てのことを信じるといっても,エホバは私たちがだれかれ構わず信頼することを願っているわけではありません。エホバが願っているのは,信頼できることを示してきた人を信頼することです。 b

8. どうすれば仲間への信頼を深めることができますか。

8 信頼は敬意と同じように,勝ち得る必要があるもので,それには時間がかかります。では,兄弟姉妹への信頼を深めるためにどんなことができるでしょうか。相手のことをよく知るようにしましょう。集会の時に会話をしたり,一緒に伝道を行ったりできます。辛抱強く接し,その人に自分が信頼できる人であることを示すチャンスを差し伸べましょう。初めのうちは,自分のことを何でも話すというわけにはいかないかもしれませんが,絆が深まっていくと,自分の気持ちを打ち明けやすくなるかもしれません。(ルカ 16:10)では,信頼を裏切られてしまった場合には,どんなことができるでしょうか。その人のことをすぐに諦めるのではなく,時間を取るようにしましょう。一部の人から裏切られたからといって,誰も信頼できないと考えることがないようにしてください。聖書には,この点で立派な手本となっている忠実な人たちの記録が幾つも収められています。誰かから傷つけられても,ほかの人を信頼するのをやめなかった人たちの手本です。

信頼するのをやめなかった人たち

ハンナはエリからひどいことを言われたが,エホバの取り決めに対する信頼を失わなかった。(9節を参照。)

9. (ア)ハンナは,エホバから責任を委ねられている人たちのひどい行いを見ても,エホバの取り決めに対する信頼をどのように示しましたか。(イ)ハンナの例から,エホバの取り決めを信頼することについて,どんなことを学べますか。(挿絵を参照。)

9 あなたは,責任ある兄弟からがっかりさせられたことがありますか。もしあるなら,ハンナの手本について考えることはためになります。当時のイスラエルで,エホバへの崇拝において一番大きな責任を委ねられていたのは,大祭司のエリでした。しかし,エリの家族は良い手本を示していませんでした。息子たちは,祭司の務めを委ねられていたにもかかわらず,恥ずべき不道徳な行いをしていました。それに対して,エリはほとんど正すことをしませんでした。エホバは,すぐにエリを大祭司の立場から除くことはしませんでした。それでもハンナは,エリが大祭司の間は幕屋に行かない,と言って,エホバの取り決めに従うのをやめたりはしませんでした。ある時,エリはハンナが涙ながらに祈っているのを見て,酔っていると思い込みました。そして,事実を確かめることもせずに,苦しい思いをしていたハンナにひどいことを言いました。(サム一 1:12‐16)それでもハンナは,息子を与えられたなら幕屋で仕えさせる,という誓いを守りました。それはつまり,息子をエリのもとに預けるということです。(サム一 1:11)エリの息子たちの行いは正される必要があったので,後にエホバは,この2人を罰しました。(サム一 4:17)一方,ハンナには息子サムエルを授けました。(サム一 1:17‐20

10. ダビデ王は,裏切られたからといって人を信頼するのをやめてしまいましたか。

10 あなたは,親しい友達から裏切られたように感じたことがありますか。もしあるなら,ダビデ王について考えてみてください。ダビデには,アヒトフェルという友がいました。ダビデの息子のアブサロムが王権を奪おうとした時,アヒトフェルはその反逆に加わり,アブサロムの側に付きました。これはダビデにとって本当にショックなことでした。息子からも,友だと思っていた人からも裏切られたのです。それでもダビデは,ほかの人たちを信頼するのをやめたりはしませんでした。例えば,忠実な友であるフシャイを信頼しました。フシャイは,アブサロムの反逆に加わりませんでした。それで,ダビデにはフシャイを信頼する十分の理由がありました。そして,フシャイはその信頼に応え,命を危険にさらしてまでダビデを助けました。(サム二 17:1‐16

11. ナバルの召し使いは,どのように信頼を示しましたか。

11 ナバルの召し使の手本も考えてみましょう。ある時期,ダビデと部下たちは,イスラエル人ナバルの召し使いたちを親切に守りました。その後,ダビデは裕福なナバルに対して,部下たちのために食べ物を分け与えてくれるようにとお願いしました。でも,ナバルがこの控えめなお願いをはねつけると,ダビデは非常に怒り,ナバルの家の男たちを皆殺しにしようと考えました。召し使いは,この状況について,ナバルの妻のアビガイルに報告します。この召し使いもナバルの家の者だったので,自分の命がアビガイルに懸かっているということが分かっていました。そして,逃げるのではなく,アビガイルが何とかしてくれると信じました。アビガイルは機転が利く人としてよく知られていたからです。その後の展開から分かる通り,この召し使いがアビガイルを信頼したのは正しいことでした。アビガイルは勇気を持って行動し,ダビデを思いとどまらせることができました。(サム一 25:2‐35)アビガイルは,ダビデがふさわしい判断をしてくれると信頼していたのです。

12. イエスは,欠点がある弟子たちを信頼していることをどのように示しましたか。

12 イエスは,欠点がある弟子たちのことを信頼しました。(ヨハ 15:15,16)ヤコブとヨハネが王国での特別な立場を求めてきた時にも,エホバに仕える2人の動機を疑ったり,2人を使徒から外したりすることはしませんでした。(マル 10:35‐40)後にイエスが逮捕された夜には,弟子たち全てがイエスを見捨てて逃げていきました。(マタ 26:56)それでも,イエスは弟子たちのことを信頼し続けました。弟子たちが完全ではないということを理解していましたが,それでも彼らを「最後まで愛し」ました。(ヨハ 13:1)復活した後には,11人の忠実な使徒たちに大きな責任を委ねました。それは,人々を弟子とする点で率先することや,イエスの貴重な羊を世話することです。(マタ 28:19,20。ヨハ 21:15‐17)イエスがこれらの不完全な人たちを信頼したのは,間違いではありませんでした。彼らは地上での歩みを終えるまで,忠実を保ったからです。確かに,ハンナ,ダビデ,ナバルの召し使い,アビガイル,イエスは,不完全な人を信頼する面で立派な手本です。

信頼を再び築く

13. どんなことがあると,人を信頼するのが難しくなるかもしれませんか。

13 あなたは,ある兄弟を信頼して,内密にしておいてほしいことを話したのに,後になってその信頼を裏切られたということがありますか。そうしたことがあると,本当に大きなショックを受けます。1人の姉妹は,ある長老を信頼して個人的なことを打ち明けました。でも次の日,その長老の奥さんから励ましの電話がかかってきました。姉妹が打ち明けた話を長老から聞いたことは明らかでした。その結果,姉妹がこの長老を信頼できなくなったのも,無理もないことでした。でも姉妹は,賢明にも別の長老に助けを求め,長老たちを再び信頼できるようになりました。

14. ある兄弟が仲間への信頼を再び築く上で,どんなことが助けとなりましたか。

14 ある兄弟は,長い間,2人の長老たちと意見が合わず,信頼できないと感じていました。でも,自分が深く尊敬している兄弟の次の言葉が耳に残りました。「敵はサタンです。兄弟姉妹ではありません」。短いながらもインパクトのあるこの言葉をじっくり考え,助けを求めてエホバに祈りました。そして,やがて2人と良い関係を取り戻すことができました。

15. 仲間への信頼を再び築くのに時間がかかる場合があるのはなぜですか。

15 あなたは,会衆で与えられていた特別な仕事を失ったことがありますか。それはとてもつらいことです。グレーテ姉妹と母親は,1930年代にナチス・ドイツが支配していた頃,エホバに忠実に仕えていました。当時,エホバの証人の活動は禁止されていました。その中で姉妹は,仲間のために「ものみの塔」誌を複製する仕事を与えられていました。でも,兄弟たちは姉妹の父親が真理に反対していることを知ると,その父親が当局に通報するのではないかと恐れ,その仕事を姉妹から取り上げました。でも,姉妹の試練はそれで終わりではありませんでした。第2次世界大戦中,その兄弟たちはグレーテ姉妹と母親を信用せず,「ものみの塔」誌を渡そうとしませんでした。また,道で会った時にあいさつもしてくれませんでした。姉妹は本当に傷つきました。姉妹によると,兄弟たちを許して再び信頼できるようになるには,とても長い時間がかかりました。でもやがて,「エホバはこの兄弟たちを許しているに違いない。だから,自分も許さなければいけない」と考えるようになりました。 c

「敵はサタンです。兄弟姉妹ではありません」。

16. 兄弟姉妹を信頼するよう努力する必要があるのはなぜですか。

16 あなたも同じようなつらい経験をしたことがあるなら,仲間への信頼を再び築くよう努力してください。時間がかかるかもしれませんが,そうするだけの価値があります。例えで考えてみましょう。もし食中毒になってしまったなら,その後は食べる物にいっそう気を付けるはずです。でも,だからといって,食べるのをやめてしまうことはないでしょう。同じように,1度嫌な経験をしたからといって,兄弟姉妹は誰も信頼できないと考えてはいけません。人は皆,生まれた時から不完全だからです。信頼を再び築くようにするなら,いっそう幸せになれます。そして,会衆内の信頼感を深めるためにできることをいっそう考えられるようになるでしょう。

17. 信頼がとても重要なのはなぜですか。次の記事ではどんなことを考えますか。

17 サタンが支配する世界では,信頼はほとんど見られません。でも,エホバの証人の間には,愛に基づく信頼が満ちています。そうした信頼があるので,いま喜びや一致を味わうことができています。そして将来,難しい問題にぶつかる時,信頼は保護となります。では,信頼を裏切られて傷ついた時には,どんなことができるでしょうか。エホバと同じ見方をし,聖書の教えを当てはめ,仲間への愛を深め,聖書中の手本から学ぶようにしましょう。そうすれば,心の傷を乗り越え,再び信頼を築くことができます。そして,「兄弟以上の絆で結ばれる友」を大勢得ることができます。(格 18:24)とはいえ,信頼関係を育むには,自分が信頼するだけでは十分ではありません。相手から信頼してもらう必要もあります。次の記事では,自分が信頼できる人であることをどのように示せるかを考えます。

122番の歌 無数の兄弟たち

a 私たちは兄弟姉妹を信頼する必要があります。とはいえ,そうするのが簡単ではない場合もあります。仲間からがっかりさせられることがあるからです。では,どうすれば仲間への信頼を深めることができるでしょうか。また,自分をがっかりさせた相手を再び信頼できるようになるでしょうか。この記事では,聖書の教えを当てはめることや昔の手本をじっくり考えることがどのように助けとなるかを取り上げます。

b 聖書は,会衆の中に信頼に値しない人がいる可能性について警告しています。(ユダ 4)まれなことですが,偽兄弟が「曲がった事柄」を言って,会衆の人たちを惑わそうとすることがあります。(使徒 20:30)私たちは,こうした人たちを信頼したりその話を聞いたりはしません。

c グレーテ姉妹の経験については,「エホバの証人の1975年の年鑑」131‐132ページを参照。