私わたしはカナダのアルバータ州しゅうカルガリーで生うまれました。まだ幼おさない頃ころ，両りょう親しんが離り婚こんし，母ははは私わたしを連つれて親おやの家いえに引ひっ越こしました。祖そ父ふ母ぼは母ははと私わたしにとても優やさしくしてくれて，私わたしは幸しあわせでした。平へい和わだったあの頃ころのことを今いまでも懐なつかしく思おもい出だします。

 私わたしが7歳さいの時とき，幸しあわせだった毎まい日にちが変かわり始はじめます。母ははが再さい婚こんし，みんなでアメリカのミズーリ州しゅうセントルイスに引ひっ越こしました。すぐに，父ちちがとても乱らん暴ぼうな人ひとだと分わかりました。転てん校こうして最さい初しょの日ひ，私わたしは学がっ校こうでいじめられましたが，仕し返かえししませんでした。家いえに帰かえると，父ちちはそのことを知しってものすごく怒いかり，学がっ校こうの子こよりももっとひどく私わたしを殴なぐりました。私わたしはこの父ちちの“教おしえ”を受うけ止とめ，7歳さいにしてよくけんかをするようになりました。

 父ちちの気き性しょうの荒あらさに母ははもいら立だち，いつも大おお声ごえで夫ふう婦ふげんかをしていました。私わたしは11歳さいで薬やく物ぶつとアルコールに手てを出だし，ますます乱らん暴ぼうになって，路ろ上じょうでけんかばかりしていました。高こう校こうを卒そつ業ぎょうする頃ころには，かなり暴ぼう力りょく的てきな人ひとになっていました。

 18歳さいの時とき，米べい国こく海かい兵へい隊たいに入にゅう隊たいしました。訓くん練れんを受うけ，私わたしは暴ぼう力りょくで人ひとを殺ころせるまでになりました。5年ねん後ご，私わたしは除じょ隊たいして心しん理り学がくを学まなぶことにしました。いつか連れん邦ぽう捜そう査さ局きょくで働はたらきたいと思おもったからです。初はじめはアメリカの大だい学がくで学まなび，その後ごカナダに戻もどってからも大だい学がくで勉べん強きょうを続つづけました。

 大だい学がく生せい活かつをする中なかで，私わたしは世よの中なかにすっかり失しつ望ぼうしました。みんな自じ分ぶんのことしか考かんがえていないように思おもえ，全すべてがむなしく感かんじ，世せ界かいの問もん題だいがなくなることは絶ぜっ対たいないと思おもいました。世よの中なかを良よくするなんて無む理りだ，と投なげやりになりました。

 生いきる意い味みが分わからなくなり，アルコールや薬やく物ぶつに溺おぼれ，お金かねやセックスにまみれた生せい活かつをするようになりました。次つぎはどこのパーティーに行いくか，次つぎは誰だれとセックスするかといったことばかり考かんがえていました。軍ぐんで訓くん練れんを受うけたのをいいことに，得とく意いになってしょっちゅうけんかをしていました。自じ分ぶんなりの正せい義ぎ感かんがあり，気きに食くわないことをしている人ひとがいれば誰だれにでも突つっかかっていました。でも本ほん当とうは，暴ぼう力りょくを振ふるいたかっただけで，自じ分ぶんを抑おさえられなくなっていました。

 ある日ひのこと，私わたしは家いえの地ち下か室しつで，友とも達だちとドラッグで気き分ぶんを上あげながら，マリフアナを売うる準じゅん備びをしていました。すると友とも達だちから，神かみを信しんじるかと聞きかれました。私わたしは，「神かみのせいで世よの中なかがこんなにひどいなら，そんな神かみなんかどうでもいい」と答こたえました。翌よく日じつ，新あたらしい職しょく場ばでの最さい初しょの日ひに，エホバの証しょう人にんの同どう僚りょうが，「世よの中なかがひどいのは神かみのせいだと思おもいますか」と聞きいてきました。タイミングがタイミングだったのでびっくりし，興きょう味みを引ひかれました。それから半はん年とし，同どう僚りょうはいろんなことを教おしえてくれました。ずっと分わからなかった人じん生せいの疑ぎ問もんについても，聖せい書しょから答こたえてくれました。

 当とう時じ，私わたしには同どう棲せい中ちゅうの婚こん約やく者しゃがいました。学まなんだことを話はなそうとしても，彼かの女じょは聞きいてくれませんでした。ある日にち曜よう日び，私わたしは「エホバの証しょう人にんが家いえに来きてくれるから，一いっ緒しょに聖せい書しょを勉べん強きょうしよう」と言いいました。次つぎの日ひ，仕し事ごとから帰かえると，家いえは空からっぽでした。彼かの女じょは家いえの物ものを全ぜん部ぶ持もち，私わたしを置おいて出でていったのです。私わたしは外そとに出でて泣なきました。そして，助たすけてくださいと神かみに祈いのりました。その時とき初はじめて，エホバという名な前まえで神かみに呼よび掛かけました。（詩し編へん 83:18）

 2日ふつか後ご，エホバの証しょう人にんの夫ふう婦ふが来きてくれて，一いっ緒しょに初はじめて聖せい書しょ研けん究きゅうをしました。2人ふたりが帰かえった後のち，研けん究きゅう用ようの本ほん「あなたは地ち上じょうの楽らく園えんで永えい遠えんに生いきられます」 a の続つづきを読よみ始はじめ，夜よるまでに読よみ切きりました。エホバ神かみや神かみの子こイエス･キリストについて学まなんで，心こころが温あたたかくなりました。エホバが思おもいやり深ぶかい神かみで，私わたしたちがつらいときには同おなじようにつらく感かんじているということを知しりました。（イザヤ 63:9）特とくに感かん動どうしたのは，神かみが私わたしを愛あいしてくれているということ，イエスが私わたしのために命いのちを犠ぎ牲せいにしてくれたということです。（ヨハネ第だい一いち 4:10）エホバは「一人ひとりも滅ほろぼされることなく，全すべての人ひとが悔くい改あらためることを望のぞんでいる」ので，私わたしのためにもこれまで辛しん抱ぼうしてくれたのだと思おもいました。（ペテロ第だい二に 3:9）エホバが「私わたしのもとに来きなさい」と言いってくれているように感かんじました。（ヨハネ 6:44）

 その週しゅうから集しゅう会かいに行いくようになりました。長ちょう髪はつでイヤリングをしていた私わたしは，かなり怖こわく見みえたと思おもいます。でも，兄きょう弟だい姉し妹まいは久ひさしぶりに会あった家か族ぞくに接せっするかのように私わたしに接せっしてくれました。この人ひとたちは本ほん物もののクリスチャンだと思おもいました。昔むかし住すんでいた祖そ父ふ母ぼの家いえのような，いや，それ以い上じょうに幸しあわせな場ば所しょだと感かんじました。

 聖せい書しょを学まなび始はじめてすぐに自じ分ぶんを変かえていきました。髪かみを切きり，性せい的てきに不ふ道どう徳とくなことをやめ，薬やく物ぶつを使つかったり飲のみ過すぎたりするのもやめました。（コリント第だい一いち 6:9，10; 11:14）エホバに喜よろこばれることをしたいと思おもいました。自じ分ぶんのしていたことがエホバに喜よろこばれないと分わかるたびに心こころが痛いたみ，「こんなことをしていてはいけない」と思おもいました。言いい訳わけはせずに，なるべく早はやく自じ分ぶんの考かんがえ方かたや行おこないを改あらためようとしました。そうしていくと，エホバに喜よろこばれることをするのは自じ分ぶんのためにもなるということが分わかるようになりました。1989年ねん7月がつ29日にち，研けん究きゅうを始はじめてから半はん年とし後ごにバプテスマを受うけてエホバの証しょう人にんになりました。

 聖せい書しょのおかげで私わたしの性せい格かくは変かわりました。前まえは，気きに入いらない人ひとは暴ぼう力りょくで黙だまらせていました。でも今いまは，「どんな人ひととも平へい和わな関かん係けいでいるように」しています。（ローマ 12:18）こうして変かわれたのは，私わたしの努ど力りょくというより，神かみの言こと葉ばと聖せいなる力ちからのおかげです。（ガラテア 5:22，23。ヘブライ 4:12）

 今いまの生せい活かつは，薬やく物ぶつや暴ぼう力りょくや不ふ道どう徳とくにまみれていた頃ころとは全まったく違ちがいます。エホバに喜よろこばれることをし，エホバのために精せい一いっ杯ぱい働はたらいています。伝でん道どうに行いき，みんなにエホバについて知しらせています。バプテスマを受うけてから数すう年ねん後ご，伝でん道どう者しゃがもっと必ひつ要ような国くにに引ひっ越こしました。これまでたくさんの人ひとたちに聖せい書しょについて教おしえ，聖せい書しょのおかげで幸しあわせになった人ひとたちを見みることができています。本ほん当とうにうれしいです。私わたしの態たい度どが良よくなったこともあって母ははが聖せい書しょを学まなび始はじめ，エホバの証しょう人にんになったのも，とてもうれしいことです。

 1999年ねん，私わたしはエルサルバドルで，現げん在ざいは「王おう国こく福ふく音いん伝でん道どう者しゃのための学がっ校こう」と呼よばれている学がっ校こうを卒そつ業ぎょうしました。この学がっ校こうで，熱ねっ心しんに伝でん道どうすることや会かい衆しゅうの兄きょう弟だい姉し妹まいを教おしえて温あたたかく世せ話わすることについて学まなびました。同おなじ年とし，大だい好すきなエウヘニアと結けっ婚こんしました。グアテマラで夫ふう婦ふで全ぜん時じ間かん奉ほう仕しをしています。

 もう人じん生せいに失しつ望ぼうしてはいません。本ほん当とうに幸しあわせです。聖せい書しょの教おしえのおかげで不ふ道どう徳とくや暴ぼう力りょくから自じ由ゆうになり，愛あいでいっぱいの穏おだやかな毎まい日にちを送おくっています。