韓国では，2015年7月に行なわれた憲法裁判所での公判以降，新たな社会的コンセンサスが形成されています。裁判所による判決も新しい法律の制定もない中で，良心的兵役拒否に関する見方に変化が生じているのです。下級法院，一般社会，法曹界，また国内外の人権団体が，良心の自由の行使を処罰しない方向での解決策を支持しています。

2017年8月7日の週，良心的兵役拒否に関する裁判において7人の若者が無罪判決を受けました。これはかつてない進展でした。韓国の法制史では，これまで1万9000人以上の良心的兵役拒否者が有罪とされてきました。無罪判決が言い渡されたのは42件に過ぎませんが，そのうち38件は2015年5月以降のもので，しかも25件は2017年のものです。

幾つかの裁判所は憲法裁判所の判決を待っているため，この件に関する未決の裁判数が増加しています。多くの良心的拒否者の代理人を務めてきた弁護士のオー･ドゥジン氏によると，未決の裁判がわずか数年前と比較して今では5倍以上になっています。

多くの人は，韓国の裁判官たちの考え方の変化に注目しています。無罪判決を言い渡した多くの裁判所は，代替の市民奉仕プログラムを設けずに良心的拒否者を罰することは憲法で保障されている良心の自由の侵害であることに言及しました。良心的兵役拒否が，兵役法に規定されている兵役拒否の「正当な事由」に当たると判断した裁判所もあります。

世論は人権を認めたり守ったりする決定的要素でないとはいえ，国防部は国民の支持がないことを理由に，この問題を放置するのを正当化してきました。しかし，世論は変化しています。2005年の調査では，良心的拒否の権利を認めるという考えに同意した人はわずか10％でした。しかし2016年5月の世論調査によると，良心的拒否の権利を認めるだけでなく，代替奉仕の導入を支持する回答者が70％に上りました。また，2016年7月に行なわれたソウル弁護士会に対する調査では，代替奉仕の導入に賛成する意見が80％を超えました。

韓国の国家人権委員会（NHRC）は次の点に注目しました。世論の変化を受け，韓国の国会議員が2017年6月に始まる国会で代替奉仕を3つの異なる改正案に含める動きを見せたことです。同委員会はまた，代替奉仕の法整備を強く薦める国際社会の意見や決定にも注目し，国会に提出された改正案が代替の市民的奉仕の国際基準にかなっているかどうかを調べました。そして，国際基準にかない，エホバの証人や他の人が受け入れられる代替の市民的奉仕プログラムについての結論を韓国政府に提出しました。

2017年5月10日に大統領として就任した際，文在寅（ムン･ジェイン）氏は，人権弁護士としての経験をもとに以下の公約を行ないました。「良心の自由は，憲法の下にあるすべての基本的権利の中で最も高い権利である。ゆえにわたしは，良心的拒否者を投獄するという現在の実務慣行を取り除き，代替奉仕を導入することを約束する」。

2017年8月11日，904人の良心的拒否者を代表した一団が新しい大統領に請願書を提出しました。請願書は，政府が良心的拒否者の権利を認め，投獄されている人たちを釈放し代替の市民的奉仕プログラムを導入することを求める内容です。請願書の提出時点で，請願者のうち360人が投獄されており，544人は各段階の裁判所で係争中です。

請願者の一人，キム･ヒュンスは，請願書を提出した自分の気持ちについてこのようにコメントしています。「国際的な基準と調和する代替奉仕が導入されることを待ち望んでいます。軍に関係していたり監督されたりしていない，純粋に市民的な代替奉仕です。わたしは社会福祉であれ，災害救援であれ，割り当てられるどんな分野でも喜んで奉仕したいと思っています。地域社会に貢献する仕事は，やりがいがあります」。

エホバの証人と他の人たちは，世論が変化しているのを見てうれしく感じています。これによって，70年以上にわたり大勢の男子を罰してきた政策に変化がもたらされようとしています。証人たちは，文大統領，国会議員，および韓国の裁判官が，兵役を良心的に拒否する人たちを尊重し，好意的に扱うことに純粋な関心を示してくださっていることに感謝しています。