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宇宙はどのようにして生じたか ― 創世をめぐる論議

宇宙はどのようにして生じたか ― 創世をめぐる論議

第2章

宇宙はどのようにして生じたか ― 創世をめぐる論議

宇宙飛行士にとってとりわけ感動となるのは,宇宙船の窓から,大きく迫る地球のすがたをカメラに収める時です。「それが宇宙飛行で最高の瞬間だ」と,一飛行士は語りました。とはいえ,太陽系と比べると,わたしたちの地球はいかにも小さく見えます。太陽は,100万個の地球を中に入れてもなお余裕のある大きさです。しかし,宇宙に関するこうした事実は,あなたの人生に,また人生の意味に何かのかかわりがあるでしょうか。

頭の中で宇宙への短い旅をして,わたしたちの地球と太陽を大きな視野の中で眺めてみましょう。太陽は,天の川銀河の,渦巻き状になった腕の一つにある,おそろしいほど多くの星の中の一つにすぎません。 * それでも,この銀河系そのものは,宇宙のほんの小部分にすぎないのです。肉眼で幾つかぼんやりした光として見えるものがありますが,それは実際には他の銀河で,その一つに,大きくて美しいアンドロメダ銀河があります。天の川銀河,アンドロメダ銀河,および20ほどの他の銀河は重力によって房状に結び合っています。このすべては,ずっと大きな超銀河団の中の小さな範囲に位置する隣人同士なのです。宇宙には,そのような超銀河団が無数に存在しています。しかし,これが話の終わりではありません。

銀河団は宇宙空間に一様に分布しているわけではありません。広い視野で見ると,それら銀河団は,泡状の巨大な空洞<ボイド>の周囲にある平らなひも,またフィラメントのように見えます。そのある部分は非常に長くて幅もあり,万里の長城<グレートウォール>に似ています。これは,わたしたちの周囲の森羅万象が宇宙の偶然性の爆発によって独りでに造り出されたと考える多くの人にとって,とても不思議に思えることでしょう。サイエンティフィック・アメリカン誌(Scientific American)の熟練記者は,「宇宙のさん然たる細部がはっきり見えてくるにつれ,それがどうしてそうなったかを単純な理論で説明することはいよいよ難しくなるだろう」と述べています。

始まりがあった証拠

わたしたちに一つ一つ見える星はすべて天の川銀河内の星です。1920年代までは,それが唯一の銀河のように思われていました。しかし,ご存じのように,大型の望遠鏡による観測がなされるようになって,実はそうではないことが分かってきました。この宇宙には,少なくとも500億もの銀河があります。500億個のではありません。それぞれが太陽と同じような星を幾十幾百億個も持つ銀河が,少なくとも500億存在するのです。とはいえ,1920年代にそれまでの科学上の概念を揺るがせたものは,巨大な銀河がとてつもなく多く存在するということではありません。そのすべてが運動している,ということでした。

天文学者たちは,注目すべき事実を発見しました。つまり,銀河からの光をプリズムに通すと,その光の波長が引き伸ばされて見えました。これは,猛スピードでわたしたちから遠ざかる運動を暗示するものでした。遠くにある銀河ほど速い速度で後退している様子が見えました。これは,この宇宙が膨張していることを示しているのです。 *

専門の天文学者やアマチュアの天文家ではなくても,宇宙が膨張しているということが,人間の過去について,そして恐らくはわたしたち各人の将来についても,深い意味を持つであろうことを理解できるはずです。何らかのものがその過程を始動させたはずであり,それは全宇宙の測り難いほどの引力に打ち勝つだけの強力な力です。『そうしたダイナミックなエネルギーの源はいったい何なのか』と問うのはもっともです。

たいていの科学者は,宇宙の歴史を非常に小さくて高密度の始まり(特異点)にまでさかのぼりますが,わたしたちは次の重要な問題を避けることはできません。つまり,「過去のある時点で,宇宙がかつて無限に小さく,無限に密度の高い特異状態に近かったなら,それ以前には,また宇宙の外には何があったのかと問わなければならない。……我々は,始まりの問題に直面しなければならないのである」。―バーナード・ラベル卿。

これは,単なる膨大なエネルギーの源以上のものを暗示しています。先見と知能もまた必要なのです。膨張の割合がきわめて微妙に調整されていることがうかがえるからです。ラベルはこう述べています。「もしも宇宙が1兆分の1ほど速い速度で膨張していたなら,宇宙内のすべての物質は現在までに消散してしまっていたであろう。……また,もし1兆分の1ほど遅かったなら,重力の作用により,宇宙は存在しはじめてから最初の10億年かそこらで崩壊していたであろう。長命の星も,生命体も全く存在しなかったであろう」。

始まりについて説明する試み

今日,専門の研究者は,宇宙の起源について説明できますか。多くの科学者は,宇宙が高度の知能によって創造されたという考えを受け入れにくく感じ,何らかの仕組みでそれは無から独りでに造り出されたという推測をしています。それは筋の通ったことに思えますか。その種の推測はおおむね,1979年に物理学者アラン・グースが想定した理論(インフレーション宇宙モデル) * を基にして,それを多少言い換えたものです。しかし最近グース博士は,自分の理論が「宇宙がどのように無から生じたかを説明するものではない」ことを認めました。アンドレイ・リンデ博士は,サイエンティフィック・アメリカン誌の一記事の中で,さらにはっきりとこう述べています。「この当初の特異点について説明すること,つまりそのすべてがどこで,いつ始まったかは,依然現代宇宙論の最も扱いにくい難問である」。

専門の研究者たちが宇宙の起源や初期の段階について実際には説明できないのであれば,わたしたちはどこかほかの所に説明を求めるべきではないでしょうか。実のところ,多くの人に見過ごされていますが,この問題に関して真に洞察を与え得る幾つかの証拠があり,それは十分に検討してみるべきものです。その証拠とは,物質に影響するあらゆる特性や変化に関与する四つの基本的な力の精密な測定値にかかわるものです。基本的な力と聞いただけで,『それは物理学者の問題だ』と考えて,しりごみしてしまう人がいるかもしれません。しかし,そうではありません。基礎的な事実として検討してみる価値があります。それはわたしたちと関係があるからです。

微妙な調和

広大な宇宙にも,極微の原子の構造にも,四つの基本的な力が作用しています。そうです,わたしたちの周囲に見られるすべての物に,それはかかわっています。

わたしたちの生命に欠くことのできない元素(とりわけ,炭素,酸素,鉄)は,宇宙内に見られる四つの力が微妙に調和していなければ存在できません。そのうちの一つである重力についてはすでに触れました。もう一つは電磁力です。仮にそれがずっと弱かったなら,電子は原子核の周りにとどまってはいないでしょう。『それが重大な事なのだろうか』と尋ねる方もおられるでしょう。重大なのです。原子と原子が結合して分子を構成することができなくなるからです。逆に,もしこの力がもっと強かったなら,電子は原子核にとらえられて動けないでしょう。原子相互の化学反応は何も起きず,生命は生じないことになります。ただこの点だけから見ても,わたしたちの存在と生命とは,電磁力の強さが微妙に調整されていることの上に成り立っていることは明らかです。

宇宙的な規模でこれを考えてみてください。電磁力のわずかな違いが太陽の活動に影響し,それが地球に達する光に変化を来たらせ,植物の光合成を起きにくく,もしくは不可能にします。それはまた,生命活動に必須な水の特異な特性を失わせることにもなります。ここでも,電磁力の精密な調整が,わたしたちの生存を決定しているのです。

電磁力の強さの度合いは,他の三つの力との関係という点から見てもきわめて重要です。一例を挙げると,物理学者はふつう,電磁力を,重力の10,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000(1040)と計算しています。このような数字にゼロをあと一つ足しても(1041)それほどの違いではないように思えるかもしれません。しかしそれは,重力がその分だけ電磁力より弱いということになります。ラインハルト・ブリューア博士は,それによって生じ得る状況についてこう述べています。「重力の値が今より低ければ,星の大きさは小さくなり,その内部で重力のために生じる圧力は,核融合反応を始動させるほどの高温を発生させることができない。つまり,太陽は照り輝くことができない」。これがわたしたちにとってどういう意味になるかは,容易に想像できるはずです。

仮に,重力が相対的にやや強く,上の数字のゼロが39個だけ(1039)であるとしたらどうでしょうか。ブリューア博士はこう続けています。「そのようなごくわずかな調整だけで,太陽のような星の寿命は著しく短くなるだろう」。このような微妙な調整をもっともっと精密なものと見ている科学者たちもいます。

実際のところ,わたしたちの太陽その他の恒星が持つ二つの注目すべき特性は,長期的効率と安定性です。簡単な例えで考えてください。わたしたちもよく知るとおり,自動車が効率的に走るには,エンジンの中で燃料と空気の比率が適正になっていることが必要です。技術者たちは性能を最適なものにするために,入り組んだ機械とコンピューターの装置を設計します。ただのエンジンでもそうであれば,太陽のように効率よく“燃焼している”星については何と言えるでしょうか。そこに基本的に関係している各種の力のバランスは精密に調整され,生命のために最適な状態になっているのです。そうした精密さはたまたまそのようになったのでしょうか。古代の人ヨブは,「天の法則を知り その支配を地上に及ぼす者はお前か」と問いかけられました。(ヨブ 38:33,新共同訳聖書)人間がこれを行なったのではありません。では,そのような精密さはどこから来ているのでしょうか。

二つの核力

宇宙の組み立てに関係しているのは,単に重力と電磁力との微妙な調和だけではありません。物理学的に見ると,あと二つの力があって,それがわたしたちの生命とかかわりを持っています。

その二つの力は原子の核の中で作用しており,あらかじめそのように考量されたことを十分に証拠立てるものとなっています。強い核力について考えてください。それが,原子の核内で陽子と中性子を結び付けています。この結び付きによって,軽い元素(ヘリウム,酸素など)から重い元素(金,鉛など)まで,各種の元素が構成されています。もしその結合力がほんの2%ほど弱かったなら,水素以外の元素は存在していないでしょう。逆に,もしこの力がわずかに強かったなら,重い元素だけができ,水素は全く存在していないでしょう。わたしたちの命に影響があるでしょうか。この宇宙内に水素がなければ,太陽は,生命のもととなるエネルギーを発散するための燃料がないことになります。そしてもちろん,わたしたちには,水も食物もないことになります。水素はこれら二つに必須の構成要素です。

ここで論議する四番目の力は弱い核力と呼ばれるもので,放射性崩壊を制御しています。それは,太陽内部での熱核反応にも影響を与えています。『この力も微妙に調整されているのだろうか』とお尋ねになるでしょうか。数学者で物理学者でもあるフリーマン・ダイソンはこう説明しています。「この弱い[力]は,もう一方の核力の幾百万分の一と極めて弱い。太陽内の水素がゆっくりと安定した割合で燃焼するのにほどよい弱さである。この弱い[力]がもっと強かったり弱かったりしても,太陽のような星に依存している生物すべてはやはり生存しにくいことになる」。そうです,こうして精密な割合で燃焼しているおかげで,地球は温暖に保たれ,焼けて灰になってしまうことはなく,わたしたちは生き続けているのです。

科学者たちはまた,弱い力が超新星の爆発にもかかわっていると考えています。それが,たいていの元素の生成され,放出される仕組みである,と言うのです。「もしそれらの核力が何らかのかたちで今日あるところとは多少とも異なっていたならば,星々はわたしたちを形造っている諸元素を造り出すことができないであろう」と,物理学者ジョン・ポルキンホーンは述べています。

ほかにも多くの点を挙げることができますが,あなたはすでに要点を理解されたことでしょう。これら四つの基本的な力について,驚くほどに微妙な調整がなされているのです。「わたしたちは,自然界が実にみごとに適合している証拠を,周囲のいたるところに見ているようだ」と,ポール・デーヴィス教授は書いています。そうです,基本的な力が精密に調整されていることによって,太陽の存在と運行が可能になり,生命を維持する水をたたえた快適な惑星である地球,また生物に欠くことのできない大気と,地上の多彩で貴重な種々の元素が生じることになったのです。しかし,考えてください。『どうしてこのように精密な調整がなされているのか,それはどこから来ているのか』と。

地球の特徴的条件が理想的なこと

わたしたちの生存のためには,物事が他の面でも精密に調整されていることが必要です。地球の各種の測定値,また太陽系内の他の天体との位置関係について考えてください。聖書のヨブ記には,人を謙虚な気持ちにならせる次のような問いかけがあります。「わたしが地の基を置いたとき,あなたはどこにいたのか。……だれがその度量衡を定めたのか。もしあなたが知っているのなら」。(ヨブ 38:4,5)これらの問いは,これまでにもまして答えを求めています。なぜでしょうか。わたしたちの地球,とりわけその大きさ,また太陽系内での位置に関して見いだされている数々の目ざましい事柄のためです。

地球のような惑星は,宇宙内の他のどこにも見いだされていません。確かに,間接的な証拠によるとはいえ,地球の何百倍も大きい天体を周囲の軌道に乗せている星が幾つかあるとする科学者たちもいます。しかし,地球は,わたしたちの生存のためにちょうど良い大きさなのです。どうしてそう言えますか。もし地球が今より多少とも大きかったなら,その引力は今より強くなり,軽い気体である水素も集められて,地球の引力から抜け出せないでしょう。そうなると,大気は生物にとっては好適ではないのです。一方,わたしたちの地球が多少とも小さければ,生命を維持する酸素は地球から抜け出し,地表の水は蒸発してしまうでしょう。いずれの場合にも,わたしたちは生存できないでしょう。

地球は,太陽からの距離という点でも理想的な位置にあります。これも,生物が生きるのに欠かせない要素です。天文学者ジョン・バローと数学者フランク・ティプラーは,「地球の半径と太陽からの距離との比」について研究しました。「この比が今日観察されるところと多少とも異なっていたなら」,人間の生命は存在し得ない,というのがその結論です。デービッド・L・ブロック教授はこう述べています。「計算からすると,地球が今よりわずか5%太陽に近い位置にあったなら,とどめようのない地球の温暖化[地球の過熱]がおよそ40億年も前に起きていたであろう。逆に,地球が今よりほんの1%だけ太陽から離れた位置にあったなら,とどめようのない氷結現象[巨大な氷の板が地球の多くの面を覆ってしまうこと]が20億年ほども前に起きていたであろう」。―「我らの宇宙: 偶発的なもの,それとも設計されたもの?」(Our Universe: Accident or Design?

精密さの例として,地球が地軸を中心にして一日に一回自転するという点も挙げることができるでしょう。これは,温度を穏やかに保つのにちょうど良い速度です。金星は一回自転するのに243日かかります。地球の自転にそれほどかかるならどうなるかを想像してください。昼と夜があまりに長いために生じる極端な暑さと寒さを,わたしたちは生き延びられないでしょう。

もう一つ重要な点は,太陽を回る地球の道筋です。彗星は横長の楕円状に動きます。幸いなことに,地球はそうではありません。その軌道はほぼ円形です。ここでもわたしたちは,致命的な甚だしい寒暖の差を免れているのです。

わたしたちの太陽系の置かれた位置関係も見落とすべきではありません。それが天の川銀河の中心にもっと近かったなら,近隣の星による引力の影響で,地球の軌道はゆがめられていたことでしょう。逆に,銀河系のごく端に位置していたなら,夜空に星はほとんど見えなかったでしょう。星の光は生命に不可欠なものではありませんが,それはわたしたちの夜空を大いに美しくしているのではないでしょうか。そして,宇宙に対する今日の科学者たちの概念に基づく計算によれば,天の川の端のほうでは,今あるような太陽系を構成するに必要なだけの化学元素はできなかったでしょう。 *

法則と秩序

ご自身の経験からも知っておられるはずですが,すべてのものは秩序の失われる方向に向かいます。家を持つ人ならだれもが観察しているとおり,何も構わずにおけば,事物はだんだん分解し,崩壊してゆきます。科学者はこのような傾向を,「熱力学の第二法則」と呼んでいます。この法則の働く様子は日常的に見られます。新しい自動車でも自転車でも,ほうっておけばやがてがらくたになります。建物は,放置しておけば廃墟になります。宇宙についてはどうでしょうか。そこにも同じ法則が働いています。ですから,宇宙全体にわたる秩序は全く無秩序の方向に変わってゆくはずだと思われないでしょうか。

ところが,このことは宇宙に生じていないように思われます。数学者ロジャー・ペンローズは,観測しうる宇宙の無秩序さ(つまり,エントロピー)について研究しようとしてそのことを見いだしました。このような研究の結果を論理的に解釈すれば,宇宙は整然としたかたちで始まり,依然として高度に組織的な状態を保ってきた,ということになります。天文物理学者アラン・ライトマンの言葉を借りれば,科学者たちは「宇宙がこれほど整然たる姿に出来上がっていることを不思議に思って」います。さらにライトマンは,「宇宙論としてしっかり成り立つものは,エントロピーにかかわるこの問題点を」,つまりなぜ宇宙が混沌に至っていないのかを「究極的に説明するものでなければならない」と述べています。

現に人間の存在そのものが,はっきり認められているこの法則に逆行しているのです。それで,わたしたちがいま地上に生存しているのはなぜなのでしょうか。すでに述べたとおり,これは,ぜひとも答えを得るべき基本的な疑問です。

[脚注]

^ 4節 天の川銀河は直径が約100京(けい)㌔,つまり1,000,000,000,000,000,000㌔もあります。これを光が横切るのに10万かかり,この銀河系だけで1,000億個以上の星があります。

^ 8節 1995年,科学者たちは,それまで観測された中で最も遠い星(SN 1995K)がその銀河内で爆発した時の奇妙な動きに注目しました。近くにある銀河内の超新星の場合と同じように,この星も非常に明るくなり,それから徐々に薄れてゆきましたが,その時間がこれまで検知されてきたものよりずっと長くかかりました。ニュー・サイエンティスト誌(New Scientist)はその模様をグラフで示してこう説明しました。「その光が示す曲線は……時間と共に引き伸ばされ,その度合いは,その銀河が光のほぼ半分の速さで我々から遠ざかっているとすれば想定されるものとまさに一致する」。結論はどういうことですか。「宇宙がまさしく膨張しているというこれまでで最大の証拠」です。

^ 13節 インフレーション理論は,宇宙が始まってから1秒のほんの何分の1かの間にどのような事柄が生じたかを推測しています。インフレーションを唱える人たちは,宇宙は初めは超顕微鏡的で,その後,光より速い速度で膨張(インフレート)したと考えていますが,研究室では検証しにくい議論です。インフレーションは依然論議の的とされている理論です。

^ 34節 科学者の発見のとおり,各種の元素の間には驚くほどの秩序と調和が見られます。26ページの付録,「宇宙の基本的構成単位」に,この点の興味深い資料があります。

[15ページの囲み記事]

星の数を数える

天の川銀河には100,000,000,000(1,000億)個以上の星があると推定されています。これらの星一つ一つについて1ページを充てている百科事典を想像してみてください。太陽も太陽系の残りの部分も合わせて1ページとします。天の川にあるすべての星を取り上げるのに合計何巻の百科事典にしなければならないでしょうか。

普通の厚さの書巻にすると,その百科事典は,全長412㌔の書架を持つニューヨーク公共図書館にも収まりきらないだろうとされています。

その百科事典のページを調べてゆくのにどれくらいの時間がかかるでしょうか。「1秒に1ページの割でページをめくるだけで1万年以上はかかるであろう」と,「銀河系の中でようやく大人に」(Coming of Age in the Milky Way)という本は述べています。それでも,わたしたちの銀河系を構成している星の数は,宇宙の推定50,000,000,000(500億)の銀河にある星全体のごくわずかな部分でしかありません。仮にそれらの星の一つ一つに1ページずつを充てるとすれば,その百科事典は,地上のすべての図書館の書架を合わせても収まりきらないでしょう。「宇宙について知れば知るほど,我々の知っていることがいかに少ないかが分かってくる」と上記の本は述べています。

[16ページの囲み記事]

ジャストロー ― 始まりについて

コロンビア大学の天文学および地質学の教授ロバート・ジャストローは次のように書きました。「この出来事が,つまり宇宙の突然の誕生が,科学上の事実として立証されるだろうと予想できた天文学者はほとんどいなかったと思われる。しかし,各種の望遠鏡による天体の観測は,どうしてもそのような結論に至らせたのである」。

次いで同教授は,そのことの意味をこう述べています。「始まりに関する天文学上の証拠は,科学者たちを不都合な状況に立たせる。どんな結果にもそれなりの原因があると信じているからである。……英国の天文学者E・A・ミルンはこう書いた。『我々は[創世における]事の次第については何も説を立てられない。神の創造の行為のさいにその様子を観察した者はおらず,そのことの証人はいないのである』」―「魅せられた織り機: 宇宙に見られる知能」(The Enchanted Loom--Mind in the Universe)。

[17ページの囲み記事]

物理学上の四つの基本的な力

1. 重力 ― 原子のレベルで働く非常に弱い力。惑星,星,銀河など大きな物体にも影響を及ぼす。

2. 電磁力 ― 陽子と電子の間の引き合う主要な力で,分子を構成させる。稲妻はその力の一つの証拠。

3. 強い核力 ― 原子核の中で陽子と中性子を結合させる力。

4. 弱い核力 ― 放射性元素の自然崩壊,また太陽の効率的な熱核反応を制御している力。

[20ページの囲み記事]

「種々の同時発生的な組み合わせ」

「その弱い力が少し強くなるだけで,ヘリウムは造られなかったであろう。それが少し弱くなるだけで,水素はほとんどすべてヘリウムに変換してしまっただろう」。

「ヘリウムが幾らかあり,しかも爆発している超新星もあるような宇宙が存在するチャンスの幅は非常に狭い。我々の存在は,この種々の同時発生的な組み合わせに,そして[天文学者フレッド・]ホイルの予言した,異なる核エネルギー・レベルの同時共存というさらに劇的な一致に依存している。我々は,これまでのどの世代にもまして,自分たちがいかにしてここに存在するに至ったかを知っている。しかし,これまでのどの世代とも同じように,それがなぜなのかをまだ知らない」― ニュー・サイエンティスト誌。

[22ページの囲み記事]

「地球の大きさが理想的であること,その元素構成,また長命の星である太陽から申し分のない距離で円に近い軌道を回っていることなどから来る,地球の特別な条件が,地表面に水を集めることを可能にしている」。(「統合動物学原理」[Integrated Principles of Zoology],第7版)水がなければ,地上に生物は出現できませんでした。

[24ページの囲み記事]

見えるものだけを信じる?

多くの理性ある人々が,目では見ることのできないものの存在を受け入れています。1997年1月号のディスカバー誌(Discover)は,天文学者たちが,遠くの星の周りを回っている合計12ほどの惑星と判断できるものを探知した,と伝えました。

「これまでのところ,それらの新しい惑星については,その引力が親星の運行を乱していることからのみ知られている」。そうです,それら天文学者たちにとっては,引力による目に見える影響が,見えない天体の存在を信じる根拠となりました。

直接の観察ではなく,関連した証拠だけでも,科学者が,まだ目に見えない物事を受け入れるに十分な根拠となりました。創造者を信じる多くの人たちも,目で見ることのできないものを受け入れるだけの同様の根拠がある,と判断しています。

[25ページの囲み記事]

フレッド・ホイル卿は「宇宙の本質」(The Nature of the Universe)の中でこう説明しています。「創造をめぐる論争を避けるためには,宇宙のすべての物質は無限に古いということにせざるを得ないが,そのような事はあり得ない。……水素は徐々にヘリウムに,また他の元素に変換されてゆく。……では,一体なぜ宇宙はほとんどすべて水素で成り立っているのか。物質が無限に古いのであれば,このようなことは全く起き得ない。それで,宇宙の今日ある姿からすると,創造をめぐる論争をただ避けては通れない」。

[12,13ページの写真]

この渦巻き銀河NGC5236を例にして示せば,わたしたちの太陽(四角の部分に相当)は,天の川銀河の中でごく小さな存在でしかない

天の川には1,000億個以上の星があるが,これは現在知られている宇宙にある500億以上の銀河の一つにすぎない

[14ページの写真]

天文学者エドウィン・ハッブル(1889-1953年)は,遠くの銀河から来る光の赤方偏移(せきほうへんい)から,この宇宙が膨張していること,またそれゆえに宇宙に始まりのあったことを知った

[19ページの写真]

太陽を制御している幾つもの力の微妙な調和が,地上でのわたしたちの生活に好適な状態をかもし出している