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子供を持つことに伴う責任と報い

子供を持つことに伴う責任と報い

7章

子供を持つことに伴う責任と報い

1-4 (イ)胎児の発育で驚嘆すべき点を幾つかあげなさい。(ロ)そうした事柄を知っていると,詩篇 127篇3節を理解するのにどのように役立ちますか。

子供が生まれて来ると思うと,胸がはずむと同時に厳粛な気持ちになるものです。子供の誕生は確かに人間の間で日常起きている事柄です。しかし,どの子供の誕生も驚くべき複雑な過程を経た結果です。その過程をいくらかでも理解するなら,霊感を受けた詩篇作者が感動して次のように語った理由がいっそうよくわかります。「見よ! 息子たちはエホバからの相続財産,胎の実は報いである」。(詩 127:3,新)では,その点を考えてみましょう。

2 男子の精子が女子の卵子と結合します。二つの細胞は一つになり,それが分裂を始めて二つの細胞になります。そして二つが四つになり,四つが八つになりして,ついにはこの一つの細胞は,成人で推定60兆個の細胞になります。初め新しい細胞はどれも同じですが,やがて骨の細胞,筋肉の細胞,神経の細胞,肝臓の細胞,目の細胞,皮膚の細胞等々に変化しはじめます。

3 生殖と分化の神秘はいくらか解明されていますが,多くは依然としてなぞに包まれています。最初の細胞に分裂を開始させるのは何でしょうか。分裂が続いているときに,細胞を多くの異なる種類に変化させ始めるのは何でしょうか。それら異なる種類の細胞がいっしょになって特定の形や大きさや機能を有するようになり,肝臓,鼻,小さな足指などになりますが,何がそうさせるのでしょうか。しかも,その変化は前もって調節されている時間に生じ始めます。その時間表をコントロールしているのは何でしょうか。さらに母親の胎内で成長している胎芽は,母親と異なる遺伝的構成を持つ一個の個体です。普通,母親の体は異質の組織を拒否します。他人の皮膚や器官を移植された場合がその例です。それなのに,なぜ母体は,遺伝的に異質な胎芽を拒否せず,約280日間も養うのでしょうか。

4 エホバ神は,精子と卵子が結合してできた一つの細胞の中に活動のプログラムを組み込まれたので,それら驚くべき活動はすべて予定通りに起きます。詩篇作者は次のように述べてそのことを言い表わしています。「あなたの目は胎児のわたしをさえご覧になりました。そしてあなたの書の中にそのすべての部分は書き記されていました。それらが形造られた日々に関して,そしてそれらの中の一つもまだなかった時に」― 詩 139:16,新。

発育と誕生

5-8 妊娠4週間目から出産までの間に,子宮内で起きる事柄をあげなさい。

5 胎芽は急速に発育します。4週間で,脳,神経組織,循環組織が備わり,心臓は,すでにできている血管に血液を送っています。血液は,6週間は卵黄嚢によって作られ,次いで肝臓がその働きを引き継ぎ,最終的に骨髄がそれを引き受けます。5週間目には腕と脚が形成され始め,さらに3週間たつと,手足の指が現われます。7週間目までには,目,耳,鼻,口のほかに,主要な筋肉グループができあがります。

6 詩篇作者は言葉を続けて,「わたしの骨はあなたから隠されてはいませんでした。わたしがひそかに造られた時」とエホバに語っています。(詩 139:15,新)9週間目には,軟骨が硬い骨になって骨格が形成されます。発育途上の赤ちゃんは今や胎芽ではなくて胎児と呼ばれます。『あなた自らがわたしの腎を作り出されました』。(詩 139:13,新)神によって定められた過程を経て腎臓が形成されるのは4か月目で,そのときから腎臓は血液をろ過します。

7 そのころになると,胎児は,手のひらや足の裏がむずむずすると体を動かしたりねじったり,手足の指を曲げたりします。一本の指と親指とで物をつかむとか,親指を吸うようなこともします。そのようにして,後日母親の乳を吸う時に使う筋肉を運動させるのです。胎児はしゃっくりをします。母親はそれをおなかの子供が飛び上がっているように感じます。6か月目までには多くの器官はほぼ完成しています。鼻腔が開き,まゆ毛も現われました。間もなく目が開き,耳も聞こえるようになるでしょう。ですから,子宮の中にいても大きな音にびっくりすることがあるのです。

8 40週間して,陣痛が始まります。母親の子宮の筋肉が収縮し,赤ちゃんはこの世に現われ始めます。分べん中に,赤ちゃんの頭は圧迫されて変形することがよくありますが,頭がい骨はまだ固まっていないので,分べん後に正常な形にもどります。この時まで,母親は赤ちゃんのために一切のことをしてきました。酸素や食物を供給し,保護し,温め,廃せつ物を除くこともしました。これからは赤ちゃんは自力で活動しなければなりません。しかも,すぐにです。でなければ死んでしまいます。

9 赤ちゃんが子宮の外で生きるには,どんな変化が直ちに起きなければなりませんか。

9 肺が酸素を血液に送れるように,赤ちゃんは呼吸を始める必要があります。しかし,それをするには,もう一つの大きな変化が即時に起こらねばなりません。つまり血液の循環経路が変化しなければならないわけです。子宮内にいるあいだ,胎児の心臓の壁には一つの穴がありました。その壁は心房を左右に分け,胎児の血液の多くを肺の方へ行かせないようにしています。肺の方へ行った血液は,大きな血管によって肺には行かないようにされています。子宮内では,血液の約1割ばかりが肺を通ります。ところが,誕生後は全部の血液が,しかも直ちに,肺に行かねばなりません。それで,肺に行かない別の道を通っていた大きな血管は誕生後数秒以内に萎縮し,その中を通っていた血液は肺へ行きます。そのうちに,心臓の壁の穴は閉鎖し,心臓の右側から送り出された血液は全部肺へ行って酸素を受け取ります。赤ちゃんが呼吸をし血液に酸素が取り入れられ劇的な変化が生じて,赤ちゃんは生き続けます。詩篇作者はそれを次のように見事に要約しています。「あなたはわたしをわたしの母の胎の中で仕切られた状態に保たれました。わたしはあなたをほめたたえます。わたしは恐るべく,くすしく造られているからです」― 詩 139:13,14,新。

10 胎児の驚嘆すべき発育を考えると,親は子供たちのことをどのように感じるべきでしょうか。

10 夫と妻は,エホバのこの賜物をどれほど深い感謝を抱いて見ることでしょう。夫婦の一部でありながらどちらとも異なるひとりの子供を生み出す力は,なんとすばらしいのでしょう。確かに子供は「エホバからの相続財産」です!

「相続財産」をはぐくむ

11 子供を持つことを考えている人々は何を自問すべきですか。それはなぜでしょうか。

11 エホバ神が,性関係を夫婦だけに限られるものとする律法を設けられたのは,道徳的な理由からだけではありませんでした。エホバは子供の誕生のことも念頭に置いておられたのです。互いに愛し合い,自分たちの子供をも愛しいつくしむ父親と母親の両方を子供は必要とします。生まれたばかりの子供は,その子供を望んでいて,子供の成長と人格形成に必要な環境を備える両親のいる家庭の,温かさと安全を必要とします。子供を持つことを考えている夫婦は次の点を自問してみなければなりません。自分たちは子供が欲しいと思っているだろうか。子供が身体的に必要とするものだけでなく,感情的に,また霊的に必要とするものを与える力があるだろうか。子供を正しく訓練し,子供が見ならえる正しい模範を示すだろうか。親としての責任を喜んで受け入れ,それに伴う犠牲を払う気持ちがあるだろうか。わたしたちは子供のときには,親に縛りつけられるように感じたかもしれませんが,自分が親になってみると,子供を育てることがどれほど時間のかかる仕事であるかよくわかります。しかし,親の責任には大きな喜びが伴い得るのです。

12-14 妊娠した女性は,赤ちゃんの健康な発育を助けるために,(イ)食事(ロ)酒,たばこ,薬剤(ハ)感情の制御などについてどのように気をつけることができますか。

12 夫婦の意志によってであれ,生物学的状況によってであれ,ともかく決定は下され,妻であるあなたは妊娠しました。「エホバからの相続財産」をはぐくむあなたの仕事は始まりました! 食べなくてはならない食物もあれば,避けたり制限したりしなければならない食物もあります。鉄分 *の豊富な食物は重要です。赤ちゃんは子宮の中で,誕生後6か月もつだけの鉄分を蓄えつつあるからです。骨を作るのに必要なカルシウムを赤ちゃんに供給するために,牛乳を普段よりたくさん飲む必要があります。炭水化物 *の摂取に平衡を保てば,太り過ぎを防ぐのに役立ちます。子供の分とふたりの分食べていることは確かですが,でも,ひとりの方はまだとても小さいのです。

13 他の点は,あなたの生活の仕方によって,考慮すべき場合もありますし,その必要のない場合もあります。アルコール飲料は胎児にアルコールを運びますから注意を要します。過度のアルコールは精神的また身体的な障害を招くことがあります。母親が大酒家だったために,酔って生まれてきた子供たちもいます。喫煙は胎児の血流中にニコチンを入れます。また,喫煙によって血液中の酸素は一酸化炭素に取って代わられます。こうして,誕生以前にすでに,その子供が健康体を持つ者になる見込みが全くなくなることもあるのです。流産や死産はたばこを吸う女性の間に比較的多く見られます。母親が惑でき性の薬を飲んでいると,子供がその中毒にかかって生まれてくることがあります。病気の治療のために飲んだ,惑でき性のない薬でも危険で,子供を奇形にすることがあります。コーヒーの飲み過ぎでさえ,何らかの悪影響があるのではないかと考えられています。

14 さらに母親に感情的なストレスがあると,母体のホルモンの分泌量が変化して,胎児がひどく活動的になり,生まれたときには落ち着きがなくていらいらした子供になっていることもあります。発育途上の胎児は『母の胎の中で仕切られている』と言えますが,周囲の世界から全くしゃ断されていると考えるのは間違いでしょう。胎児は母親を通して外界の影響を受けます。母親は胎児と外界とを結び付けている唯一のものです。したがって,影響の良し悪しに関していわば“運転席”に置かれているのは主に母親です。母親が自分の体にどのように気をつけるか,また種々の状況にどう反応するかは相違をもたらします。ですからその点で母親が周囲の人々の協力,特に夫の愛と世話を必要とすることはいうまでもありません。―サムエル前書 4章19節と比較してください。

決めなければならない事柄

15,16 お産をする場所や方法について何を決めねばならないことがありますか。

15 あなたは病院でお産をされますか。それとも自宅でされますか。選択の余地がほとんどない場合もあるでしょう。病院さえない所も少なくないかもしれません。また地域によっては自宅でお産をする人がめったにいないために,助産婦などの経験者の助けが得られず,自宅分べんには危険が伴うかもしれません。できることなら,妊娠中に医師の診断を受け,正常な分べんを期待できるか,あるいは合併症の起こる可能性があるかどうか調べておくのはいつの場合でも良いことです。

16 麻酔法による分べんをしますか,それとも自然分べんをしますか。これは長所と短所をよく比較検討してから夫婦が決めなければならない問題です。自然分べんなら,夫はその一大事に直接関与できますし,赤ちゃんは直ちに母親のそばに置かれます。検査して正常に分べんできることがわかれば,それらの点は重視すべき長所である,と考える人々もいます。また,研究者の中には,自然分べんの,より穏やかな状態の下で生まれた赤ちゃんの方が,感情的な問題をかかえたり精神身体症にかかったりすることが少ないと主張する人々もいます。

17-19 誕生後できるだけ早く赤ちゃんを母親のそばに置くのが良いかどうかについて,研究は何を明らかにしていますか。

17 1977年12月号の「サイコロジー・ツデイ」誌は次のように述べています。

「子供の生涯の最初の一年が,その後の精神と身体の発育に永続的な影響を与え得ることは,心理学者たちによって何十年も前から知られていた。しかし現在では生まれた最初の日も ― もしかしたら最初の一時間でさえ ― も同じく,極めて重要な時であるように思われる。母親が子供に対して作り上げる感情的なきずな,そして母親が子供にどんな気遣いを示し始めるかは,分べん後とくに重要である。最初の幾時間かが,子供に対する母親の態度の形成,子供に対する母親の責任感の強さ,母親として尽くす能力などと大きなかかわりを持ち得ることも最近の研究によって明らかにされている」。

18 分べん中に母親が全身麻酔をかけられていなければ,赤ちゃんは機敏で,目を開き,あたりを見回すような動作をし,物が動く方向に目を向け,人の声がする方を向き,とりわけ女性の高い声に敏感です。母親と子供の目の接触はすぐに行なわれるようになります。そのことは大切なことのようです。ある研究調査の際に母親たちは,赤ちゃんが自分を見ると赤ちゃんにいっそう親近感を感じると報告しています。誕生直後の母子の身体的接触,膚と膚のふれ合いは,母子双方に益があると考えられています。

19 研究者たちによれば,医学センターで扱われる子供の問題を調べて行くと,誕生直後の数時間に原因を見つけることが時々あるということです。生まれてから病院の標準的な手当てを受けた子供たちと,すぐ母親のそばに置かれた子供たちを比較したところ,一か月後には自然分べんで生まれた子供たちのほうが発育が良好でした。「さらに顕著な点として,母親と長時間接触した子供は五歳のとき,病院の標準的な手順で手当てを受けた子供よりIQ[知能指数]がきわめて高く,言語能力のテストでも良い成績を収めた」と,「サイコロジー・ツデイ」誌は述べています。

20 こうした事柄について賢明な決定を下すには,ほかにどんなことを念頭に置いていなければなりませんか。

20 しかし,こうした事柄すべてにおいて,種々の事情を慎重に検討する必要があります。わたしたちが見失ってならないことは,人間の最初の両親がわたしたちに不完全さという遺産を残した事実です。そのために,今日の“自然分べん”には必然的にその自然さが幾分欠けていますし,またわたしたちが持っている遺伝的な欠陥がいろいろな問題を引き起こさないとは言えません。(創世 3:16; 35:16-19; 38:27-29)ですからそれが他の人々の望む“理想的な”分べんの方法であっても,あるいはなくても,あなたはあなた個人の事情と,あなたが自分にとって最善と考える事柄とに従って決定することです。

21,22 母乳を与えることにはどんな利点がありますか。

21 あなたは赤ちゃんを母乳で育てるつもりでしょうか。母乳を与えることには母子双方に多くの利点があります。母乳は乳児にとって完全な食物です。消化しやすく,病気の感染や腸の異常,呼吸障害を予防します。最初の数日間は乳房から初乳が出ます。初乳は黄色の液体で次の理由から新生児に特に適しています。(1)脂肪と炭水化物の含有量が少ないので消化しやすい。(2)数日後に出て来る母乳よりも免疫体の含有量が多い。(3)初乳にはいくらか下剤の作用があるので,誕生前に赤ちゃんのおなかにたまっていた細胞や粘液や胆汁を除去する役目を果たす。

22 母乳を与えると母親にも益があります。赤ちゃんがお乳を吸うと,子宮が刺激されて収縮するために出血が少なくなります。また乳房も乳汁をたくさん出すように刺激されます。乳が十分出ないのではないかと心配していた母親はその心配がないことを知ります。母乳を定期的に与えると,排卵と月経の再開が延びる場合があります。ですから母乳を与えることは,その間自然の避妊になることが多いのです。アメリカがん協会は,「母乳を与える母親が乳がんにかかる例は比較的に少ない」と述べています。さらに母乳は家計の助けにもなります。

子供の発育 ― あなたは矢のねらいをどこに定めますか

23 詩篇 127篇4,5節には子供のしつけに関するどんな原則が示唆されていますか。

23 「人の若い時の子供たちは,戦士の手にある矢のようだ。矢筒に矢が満ちている人は幸いである」。(詩 127:4,5,アメリカ訳)矢の価値は,それが弓を離れる前にどれだけうまくねらいを定められているかによって決まります。的を射るには注意深く上手に矢のねらいを定めなければなりません。それと同様に,親が,子供に人生への出発をどのようにさせるかを祈りを込めて賢明に熟考することはたいへん重要です。子供が自分の手もとを離れるとき,他の人々から尊敬される平衡の取れた円熟した大人になり,神に誉れをもたらすでしょうか。

24 (イ)親は子供たちのためにどんな家庭環境を作るように努力すべきですか。(ロ)それはなぜ大切ですか。

24 育児としつけに関しては,子供の誕生以前に決めておくべきです。最初に生まれた子供にとって基本的には両親がその子供の全世界です。ではその世界はどのような世界でしょうか。そこには,親が神のみ言葉の次のような助言を心に留めていることが表われているでしょうか。「すべて悪意のある苦々しさ,怒り,憤り,わめき,ののしりのことばを,あらゆる悪とともにあなたがたから除き去りなさい。そして,互いに親切にし,優しい同情心を示し,神がキリストによって惜しみなくゆるしてくださったように,あなたがたも互いに惜しみなくゆるし合いなさい」。(エフェソス 4:31,32)家庭生活がどのようなものであれ,それは幼い子供に反映します。ですから赤ちゃんの世界を平和で安全なもの,温かで愛のあるものにするように努力することが必要です。かわいがられる赤ちゃんはそれらの資質を吸収し,それらは赤ちゃんの感情を形成します。赤ちゃんはあなたの感情を感じ取り,あなたの模範に従うのです。創造者がお定めになった遺伝の法則によって,子宮内には赤ちゃんの発育のためのすばらしい備えが設けられます。では,あなたは子宮から出て来た赤ちゃんをどのような者にするでしょうか。それはあなたが作り出す家庭の状態に大きく依存しています。それは遺伝子と同じほど,赤ちゃんがどんな大人に成長するかを決定します。『少年をその道に従って訓練してください。年老いても,彼はそれからそれて行くことはないでしょう』― 箴 22:6,新。

25,26 親が子供たちに多くの時間をかけ,深い注意を払うのは,なぜ道理にかなっていますか。

25 男にしても女にしても,草の葉一枚作ることができません。ところが男女がいっしょになると,きわめて複雑で,地上の他のだれとも異なるもう一人の人間を作ることができます。これは本当に驚嘆すべき偉業です。ですから,今日非常に多くの人がそれに伴う責任の神聖さを認識していないのは信じがたいことです。人々は花を植え,水や肥料をやり,雑草がはびこらないようにします。それは美しい庭を作るためです。では子供たちが美しくなるように,それよりもっと時間をかけ,もっと多くの努力を払うべきではないでしょうか。

26 結婚した男女には子供を持つ権利があります。子供たちには,名ばかりでなくて実質を伴う親を持つ相応の権利があります。神に献身したクリスチャンは一人の弟子を作ることを望んで多くの時間と精力を費やすかもしれませんが,必ずしも成功するとは限りません。ではクリスチャンの親は,『子供をエホバの懲らしめと精神の規整とをもって育ててゆく』のにさらに多くの時間をかけるべきではないでしょうか。(エフェソス 6:4)もし一人の子供を命の与え主であられるエホバ神のりっぱな僕に育てるなら,それは大いに喜ぶべきことではないでしょうか。そうすればそのような息子あるいは娘をもうけたことは,確かに豊かに報われたことになります。―箴 23:24,25

27 子供の発育を促す際に,子供自身の個性を考慮すべきなのはなぜですか。

27 詩篇 128篇3節(新)は子供たちをオリーブの木に例えています。「あなたの妻は実を結ぶ,ぶどうの木のようだ,あなたの家の最も内なる所にあって。あなたの息子たちはあなたの食卓の周りにあってオリーブの木のさし枝のようだ」。木は,手を加えるといろいろな形になります。壁にそって平らに生えたり,低く地面をはうような形になったりします。また,盆栽の場合のように,根を切りつめて生長を抑えると,小さな木になります。「苗木を曲げると,その木は曲がった方向に育つ」という古いことわざは,子供の人格形成に幼い時のしつけも大切であることを強調しています。ここで必要なのは平衡の取れた考え方です。正しい基準に従うように子供を導くことは必要ですが,それと同時に,子供はこのような人格を持つべきだと親が考える通りの人間になるように期待すべきではありません。オリーブの木にいちじくの実をならせることはできません。子供は正しくしつけなければなりませんが,あらかじめ決めた型に子供を押し込めてその子供独自の個性を抑え,受け継いでいる賜物をのびのびと発揮できないようにすることはいけません。自分がもうけた子供を時間をかけて知るようにすることが大切です。それから,やわらかい苗木を扱うときと同じように,保護となりまた正しい方向に向ける支えとなるだけの強さと,子供に良い能力を十分に伸ばせるようなやさしさとをもって導いてください。

エホバからの報い

28 創世記 33章5,13,14節にはヤコブが子供に気遣いを示したことが記録されていますが,わたしたちはそれからどんな益を得られますか。

28 昔の人ヤコブは子供たちの世話に心遣いを示しました。旅程のきつい旅をするように提案されたとき,ヤコブは提案した人に次のように言いました。「我が主もお気付きと思いますが,子供たちはか弱く,乳を与えている羊や牛はわたしが世話をしています。一日にあまりに速く進ませるようなことをすれば,きっと群れ全体が死んでしまいます。どうか,我が主は僕より先にお進みくださいますように。そして,わたしの方は,前にいる家畜の歩調で,また子供たちの歩調に合わせてゆっくりと旅を続けられますように」。この前にヤコブは,兄のエサウに会って,「この一緒にいる人たちはだれですか」と聞かれたとき,「神があなたの僕に恵みとして与えてくださった子供たちです」と答えています。(創世 33:5,13,14,新)今日でも親は,ヤコブのように,子供にやさしい思いやりを示すだけでなく,子供をエホバの恵みと見ることも大切です。いうまでもなく,男性は結婚する前に,妻子を養う力があるかどうか真剣に考慮しなければなりません。聖書はこう助言しています。「まず屋外ですべてのものを整え,地であらゆるものを用意せよ。それからあなたの家と家庭を確立せよ」。(箴 24:27,新英訳聖書)この実際的な助言に従い,男性は,結婚して家庭を持つための準備を前もってすべきです。そうすれば,たとえ計画していなかった妊娠であってもそれを喜ぶことができ,経済的な負担になると考えて心配することはないでしょう。

29 子供をもうけるかどうかの問題は,なぜ前もって真剣に考慮すべきですか。

29 子供をもうけるかどうかは,初めての子供の場合に限らずその後の子供たちの場合にも,真剣に考慮する価値のある問題です。親は,すでに生まれている子供たちの養育に困難を感じているでしょうか。もし感じているとすれば,愛の質を考えるだけでなく,創造者に対する敬意からも,家族の増加を遅らせるためにどのように自制するかをよくよく考えるはずです。

30 (イ)子供は実際には神のものだとどうして言えますか(ロ)そのことは親の見方にどう影響するはずですか。

30 実際,子供はだれのものでしょうか。ある意味では,あなたのものです。しかし別の意味では,創造者のものでもあります。あなたが子供のときにご両親がその養育を任されたのと同様に,あなたも子供の養育を任されているのです。あなたは,ご両親が自分たちの好き勝手に扱える所有物ではありませんでした。あなたのお子さんもそのような意味ではあなたのものではないのです。親は受胎の時や胎児の発育を指示することも,制御することもできません。その驚くべき過程を見たり十分に理解したりすることさえできないのです。(詩 139:13,15。伝道 11:5)身体になんらかの欠陥があって流産や死産をしても,親は死んだ子供を生き返らせることができません。したがってわたしたちは,神がわたしたちすべての命の与え主であることを謙そんに認める必要があります。わたしたちすべては神に属しているのです。「地とそれを満たすもの,産出的な地とそこに住む者とはエホバのもの」と書かれている通りです。―詩 24:1,新。

31,32 (イ)親は神のみ前にどんな責任がありますか。(ロ)その責任を正しく果たすなら,どんな結果になりますか。

31 親は,自分が世に生み出した子供たちに責任があり,子供たちの育て方について神に申し開きをしなくてはなりません。神は地球を創造され,人間がそこに住むように意図されました。そして,その目的を果たすための生殖能力を最初の両親に付与されたのです。そのふたりは,神から離反することによって大敵対者の側に立ちました。大敵対者とは,神が天と地の被造物からなる自分の家族に主権を正しく行使していないと神に挑戦した者のことです。ですから創造者に対して忠誠を尽くす大人になるようお子さんを訓練することにより,あなたとあなたのご家族は,大敵対者が偽り者であり,エホバ神が正しいことを証明できるのです。箴言 27章11節(新)に次のように述べられている通りです。「賢くあれ,わが子よ。そしてわたしの心を歓ばせよ。わたしをそしっている者にわたしが返答できるためである」。

32 子供に対する義務と神に対する責任とを果たすなら,人生において物事を真に成し遂げたという気持ちを持つことができます。そして,「胎の実は報いである」という詩篇 127篇3節(新)の言葉に心から和することができるでしょう。

[脚注]

^ 12節 肉類,黄色や緑色の野菜など。

^ 12節 でんぷん質の食品や砂糖を多量に含む食品などがある。

[研究用の質問]

[93ページの図版]

いま親密になっておくなら,後日の世代の断絶を防ぐことができる