イエスと弟で子したちがベツサイダに着つくと，人ひと々びとが盲もう目もくの男だん性せいを連つれてきて，彼かれに触ふれて癒いやしてほしいと頼たのみます。

そこでイエスはその男だん性せいの手てを取とって村むらの外そとへ連つれていきます。そして，男だん性せいの両りょう目めに唾つばを掛かけてから，「何なにか見みえますか」と尋たずねます。その人ひとは，「人ひとが見みえます。木きのように見みえますが，歩あるき回まわっています」と答こたえます。（マルコ 8:23，24）それからイエスは両りょう手てを男だん性せいの両りょう目めに当あてて視し力りょくを回かい復ふくさせます。イエスは男だん性せいを家いえに帰かえらせますが，村むらに入はいってはならないと言いいます。

その後ご，イエスと弟で子したちは北きたのカエサレア･フィリピ地ち方ほうに向むけて旅たびをします。そこまでは約やく40㌔に及およぶ上のぼり道みちで，村むらは海かい抜ばつ350㍍の所ところにあります。村むらの北ほく東とうには，頂ちょう上じょうに雪ゆきをかぶったヘルモン山ざんがそびえています。恐おそらく2日かかそれ以い上じょうの旅たびだったでしょう。

途と中ちゅう，イエスは祈いのるために独ひとりになります。自じ分ぶんが死しぬまで残のこり9カ月げつか10カ月げつです。弟で子したちのことが心しん配ぱいです。最さい近きん，大おお勢ぜいの人ひとが自じ分ぶんに従したがうのをやめてしまいました。イエスの態たい度どに納なっ得とくがいかず，失しつ望ぼうした人ひともいるようです。王おうになることをなぜイエスが拒きょ否ひしたのか，自じ分ぶんが誰だれであるかを明あきらかにするしるしをなぜイエスが示しめそうとしないのか，分わからないのかもしれません。

イエスが祈いのっていると弟で子したちがやって来きます。イエスは，「人ひと々びとは人ひとの子このことを誰だれだと言いっていますか」と尋たずねます。弟で子したちは，「バプテストのヨハネや，エリヤ，エレミヤ，預よ言げん者しゃの1人ひとり，などと言いっています」と答こたえます。人ひと々びとは，そのうちの1人ひとりが復ふっ活かつしイエスとして現あらわれた，と考かんがえています。弟で子したちの考かんがえを知しりたいイエスは，「あなたたちは，私わたしのことを誰だれだと言いいますか」と質しつ問もんします。するとすぐにペテロが，「キリスト，生いきている神かみの子こです」と答こたえます。（マタイ 16:13-16）

イエスはペテロに，あなたは幸こう福ふくだと言いいます。神かみがペテロにイエスが誰だれであるかを啓けい示じしたからです。イエスはさらにこう言いいます。「あなたはペテロであり，私わたしはこの岩いわの上うえに自じ分ぶんの会かい衆しゅうをつくります。死しの力ちからはそれを征せい服ふくできません」。これは，イエスが会かい衆しゅうをつくること，その会かい衆しゅうの成せい員いんが死しぬまで忠ちゅう実じつであるなら死しさえも彼かれらを捕とらえておくことはできないことを意い味みしています。イエスはペテロに次つぎのような約やく束そくをします。「私わたしはあなたに天てんの王おう国こくの鍵かぎを与あたえます」。（マタイ 16:18，19）

イエスはペテロに使し徒とたちの中なかで一いち番ばん良よい地ち位いを与あたえたわけでも，ペテロを会かい衆しゅうの土ど台だいとしたわけでもありません。イエス自じ身しんが岩いわであり，その上うえに会かい衆しゅうがつくられるのです。（コリント第だい一いち 3:11。エフェソス 2:20）とはいえ，ペテロには3つの鍵かぎが与あたえられることになっています。それは，3つのグループの人ひとたちに天てんの王おう国こくに入はいる機き会かいを開ひらくという特とく別べつな割わり当あてのことです。

ペテロは西せい暦れき33年ねんのペンテコステにおいて，1番ばん目め の鍵かぎを使つかいます。その時とき，ペテロは悔くい改あらためたユダヤ人じんと改かい宗しゅう者しゃたちに対たいし，救すくわれるには何なにをしなければならないかを説せつ明めいします。さらに2番ばん目めの鍵かぎを使つかって，信しん仰こうを抱いだいたサマリア人じんに王おう国こくに入はいる機き会かいを開ひらきます。そして西せい暦れき36年ねん，3番ばん目めの鍵かぎを使つかい，コルネリオなどの割かつ礼れいを受うけていない異い邦ほう人じんにも機き会かいを開ひらくのです。（使し徒と 2:37，38; 8:14-17; 10:44-48）

イエスは使し徒とたちとの話はなしの続つづきで，間まもなく自じ分ぶんはエルサレムで苦くるしみと死しを経けい験けんすることになると予よ告こくします。それを聞きいて彼かれらは動どう揺ようします。ペテロは，イエスが復ふっ活かつし天てんでの命いのちを得えることを理り解かいしていません。それでイエスを脇わきに連つれていって叱しかり，「主しゅよ，自じ分ぶんを大たい切せつにしてください。決けっしてそのような目めには遭あいません」と言いいます。するとイエスはペテロに背せを向むけて，こう答こたえます。「私わたしの後うしろに下さがれ，サタン！ あなたは私わたしの邪じゃ魔まをしています。神かみの考かんがえではなく，人にん間げんの考かんがえを抱いだいているからです」。（マタイ 16:22，23）

イエスは使し徒とたちに加くわえて他たの弟で子したちも呼よび集あつめ，自じ分ぶんの後あとに従したがうのは簡かん単たんではないということを次つぎのように説せつ明めいします。「誰だれでも私わたしに付ついてきたいと思おもうなら，自じ分ぶんを捨すて，苦くるしみの杭くいを持もち上あげ，絶たえず私わたしの後あとに従したがいなさい。自じ分ぶんの命いのちを救すくおうと思おもう人ひとはそれを失うしないますが，私わたしと良よい知しらせのために命いのちを失うしなう人ひとはそれを救すくうからです」。（マルコ 8:34，35）

イエスの恵めぐみを得えるのにふさわしい人ひととなるには，勇ゆう気きと自じ己こ犠ぎ牲せいが求もとめられます。イエスはこう言いいます。「この罪つみ深ぶかい姦かん淫いんの世せ代だいにおいて私わたしと私わたしの言こと葉ばを恥はじるようになる人ひとについては，人ひとの子こも，聖せいなる天てん使したちと共ともに，自じ分ぶんの父ちちの栄えい光こうを帯おびて来くる時とき，その人ひとを恥はじるのです」。（マルコ 8:38）イエスはその時とき，「各おの々おのの振ふる舞まいに応おうじて報むくいます」。（マタイ 16:27）