聖書の壮大な主題
2章
聖書の壮大な主題
聖書を解き明かすこと 啓示の書に秘められた秘義は,聖書の誠実な研究者たちを長い間当惑させてきました。それらの秘密は神のご予定の時に解かれなければなりませんでした。では,どのようにして,いつ,まただれに対してそうされましたか。定められた時が近づいたとき,ただ神の霊だけがその意味を知らせることができました。(啓示 1:3)それら神聖な秘密は,地上にいる神の熱心な奴隷たちに明らかにされることになりました。それは,神の裁きを知らせることができるよう,それらの奴隷たちを強めるためでした。(マタイ 13:10,11)しかし,この出版物の説明が絶対確実だと唱えているわけではありません。昔のヨセフと同様,わたしたちも,「解き明かしは神によるのではありませんか」と言います。(創世記 40:8)しかし同時に,わたしたちは,この本の述べる説明が聖書全体と調和しており,神からの預言が,破局に向かう現代の世界の出来事のうちにいかに著しい仕方で成就してきたかを示していることを確信しています。
1 エホバはどんな壮大な目的を持っておられますか。
聖書の格言は,「事の後の終わりはその初めに勝る」と述べています。(伝道の書 7:8)全創造物の前でご自分のみ名を神聖なものにするエホバの壮大な目的が,劇的な仕方で達成されることについて述べているのは,啓示の書です。神がご自分の昔の預言者の一人を用いて何度も言明された通り,「彼らはわたしがエホバであることを知らなければならなくなる」のです。―エゼキエル 25:17; 38:23。
2 聖書の初めのほうの書と共に,啓示の書は,深い満足をもたらすどんな知識を得る助けとなりますか。
2 啓示の書が物事の見事な終わりについてはっきりと説明しているように,その始まりについてはわたしたちのために聖書の初めのほうの書の中で説明されています。その記録を調べると,関係する種々の論争を理解し,神の目的を概観することができます。それは何と深い満足をもたらすことなのでしょう。その上,人類を待ち受けている,すばらしい将来にあずかれるよう,詩編 145:16,20)今や全人類が直面している最も重要な論争はもとより,はっきりと述べられている,その論争を解決する神の目的を銘記するため,ここで聖書全体の背景や主題について論じるのは適切なことと思われます。
わたしたちに行動を促すものとなるはずです。(3 創世記のどんな預言は,啓示の書を含め,聖書全体の主題を示すものとなっていますか。
3 聖書巻頭の書である創世記は,事の「初め」について述べ,地上の最高の創造物である人間を含め,神の創造の業について説明しています。創世記はまた,6,000年ほど前にエデンの園で神ご自身が話された,神からの最初の預言をはっきりと述べています。その少し前のこと,最初の女エバを欺くのに一匹の蛇が用いられました。次いで,彼女は夫を説得し,自分と行動を共にして,「善悪の知識の木」から取って食べることにより,エホバの律法を夫に破らせました。神はその罪深い夫婦に対する裁きを下す際,その蛇に向かって,「わたしは,お前と女との間,またお前の胤と女の胤との間に敵意を置く。彼はお前の頭を砕き,お前は彼のかかとを砕くであろう」と言われました。(創世記 1:1; 2:17; 3:1-6,14,15)この預言は,啓示の書を含め,聖書全体の主題を示すものとなっています。
4 (イ)神が最初の預言を述べられた後,わたしたちの最初の二親はどうなりましたか。(ロ)その最初の預言に関してどんな疑問が生じますか。わたしたちはどうしてその答えを知る必要がありますか。
4 神はこの預言を述べた後,直ちにわたしたちの最初の二親をエデンから追放されました。その二人は楽園<パラダイス>で永遠の命を享受することをもはや期待できなくなりました。二人は整えられていない外の地で一生を終えなければならなくなり,死の宣告を受けた状態で,罪に苦しむ子供を産み出すことになりました。(創世記 3:23–4:1。ローマ 5:12)しかし,エデンで語られたその預言は何を意味していますか。だれが関係していますか。それはどのように啓示の書と結びつけられていますか。その預言には,今日のわたしたちに対するどんな音信が含まれていますか。エホバがその預言を述べる原因となった,その悲劇的な出来事の影響から個人的に解放されるために,これらの疑問に対する答えを知るのはたいへん重要なことです。
劇の主役たち
5 蛇がエバを欺いた時,神の主権とそのみ名に関して,どんな事が生じましたか。その論争はどのようにして解決されますか。
5 創世記 3章15節の預言は,エバに対してうそをつき,不従順になっても死ぬことはなく,かえって独立して,女神になると言って彼女をそそのかした蛇に向かって語られました。こうして,その蛇はエホバのことをまるでうそつきのように言い,人間はエホバの最高の支配権を退ければ,自分の運命を好転させることができるのだとほのめかしました。(創世記 3:1-5)エホバの主権は挑戦を受け,その良い名は汚されました。啓示の書は,義にかなった裁き主であられるエホバが,ご自分のみ子イエス・キリストの王国の支配によって,ご自身の主権の正しさをどのように立証し,またご自分のみ名に浴びせられたそしりをどのように一掃されるかを述べています。―啓示 12:10; 14:7。
6 啓示の書は,一匹のへびを通してエバに話しかけた者の実体をどのように明らかにしていますか。
6 その「蛇」という言葉は,単に文字通りのへびだけに当てはまるのでしょうか。決してそうではありません! 啓示の書はわたしたちのために,そのへびを通して話をした,悪名高い,霊の被造物の実体を明らかにしています。「そのこうかつさによってエバをたぶらかした」のは,「大いなる龍……初めからの蛇で,悪魔またサタンと呼ばれ,人の住む全地を惑わしている者」でした。―コリント第二 11:3。啓示 12:9。
7 創世記 3章15節の女が霊の領域に属していることを何が示唆していますか。
7 創世記 3章15節は次に,「女」について述べています。その女とはエバのことでしたか。恐らく彼女はそう考えたことでしょう。(創世記 4:1と比較してください。)しかし,エバは5,000年余り前に死んだので,エバとサタンとの間で敵意が長期間続くのは,不可能なことでした。その上,エホバから語りかけられた蛇は,目に見えないひとりの霊者ですから,その女もやはり霊の領域に属していると考えるべきでしょう。啓示 12章1,2節はこの点を裏書きして,その比喩的な女とは,霊の被造物で成る,エホバの天的な組織であることを示しています。―イザヤ 54:1,5,13もご覧ください。
対立する二人の胤
8 ここで二人の胤に関して述べられている事柄に,わたしたちはどうして深い関心を抱くべきでしょうか。
8 次に,創世記 3章15節には二人の胤が出て来ます。わたしたちはそれらの胤に深い関心を抱くべきです。なぜなら,それらの胤は,この地に対する正当な主権に関する大論争と関係しているからです。これは,老若を問わず,わたしたち各人に影響を及ぼします。あなたはそれらの胤のどちらを支持しますか。
9 蛇の胤には確かに何が含まれていますか。
9 まず第一に,蛇の胤,つまり子孫がいます。それはだれですか。それには確かに,サタンに加わって一緒に反逆し,ついに地の領域に「投げ落とされた」,他の霊の被造物が含まれています。(啓示 12:9)サタン,つまりベエルゼブブは「悪霊たちの支配者」ですから,それら悪霊たちは明らかに,目に見えないサタンの組織を構成しています。―マルコ 3:22。エフェソス 6:12。
10 聖書はサタンの胤の一部となっている他の者たちの実体をどのように明らかにしていますか。
10 さらに,イエスは当時のユダヤ人の宗教指導者たちに向かって,「あなた方は,あなた方の父,悪魔からの者であって,自分たちの父の欲望を遂げようと願っているのです」と言われました。(ヨハネ 8:44)それら宗教指導者たちは,神のみ子であるイエスに反対することによって,自分たちもまたサタンの子孫であることを示しました。彼らはサタンの胤の一部であって,自分たちの比喩的な父であるサタンに仕えていました。歴史を通して,ほかにも数多くの人間が,とりわけイエスの弟子たちに反対したり迫害を加えたりして,サタンの意志を行なうことにより,同様に自分たちの実体を明らかにしてきました。それらの人間は全体として,地上のサタンの見える組織を構成していると言えるでしょう。―ヨハネ 15:20; 16:33; 17:15をご覧ください。
女の胤の実体が明らかにされる
11 神は何世紀にもわたって,女の胤に関して何を啓示してこられましたか。
11 創世記 3章15節の預言は最後に,女の胤に言及しています。サタンが自分の胤をはぐくんでいた時,エホバはご自分の「女」,つまり妻のような天界の組織が胤を産み出すよう準備しておられました。エホバはおよそ4,000年にわたり,その胤の到来にかかわる詳細を神を恐れる従順な人々に漸進的に啓示してこられました。(イザヤ 46:9,10)ですから,アブラハム,イサク,ヤコブ,および他の人々は,その胤が彼らの家系から出るという約束に対する信仰を築くことができました。(創世記 22:15-18; 26:4; 28:14)サタンとその追従者たちは,それらエホバの僕たちをその不動の信仰のゆえに,しばしば迫害しました。―ヘブライ 11:1,2,32-38。
12 (イ)女の胤の主要な方はいつ,またどんな出来事を伴って到来しましたか。(ロ)イエスはどんな目的のために油そそがれましたか。
12 ついに西暦29年,完全な人間イエスがヨルダン川でご自身を差し出して,バプテスマをお受けになりました。エホバはその場で聖霊をもってイエスを生み出し,「これはわたしの子,わたしの愛する者である。この者をわたしは是認した」と言われました。(マタイ 3:17)イエスはその場で,天にある神の霊的な組織から遣わされた方であることが明らかにされました。イエスはまた,エホバの名によって地に対する支配権の回復を図り,こうして統治権もしくは主権にかかわる論争を一度限り解決する天の王国の指名された王として油そそがれました。(啓示 11:15)ですから,イエスは女の胤の主要な方,つまり予告されたメシアなのです。―ガラテア 3:16; ダニエル 9:25と比較してください。
13,14 (イ)女の胤とはただ一人の傑出した人物だけではないことを知っても,どうして驚くには当たりませんか。(ロ)神はその胤の二次的な部分となる人々を人類の中から何人選んでこられましたか。それらの人々はどんな組織を構成しますか。(ハ)ほかのだれがその胤と一致して仕えますか。
13 その女の胤となるのは,ただ一人の傑出した人物だけだったのでしょうか。では,サタンの胤についてはどうですか。聖書は,サタンの胤に大勢の邪悪なみ使いや,神を辱める大勢の人間が含まれることを明らかにしています。では,忠誠を保つ14万4,000人の人々を人類の中から選んで,メシアなる胤であるイエス・キリストと共に治める共同支配者ならびに祭司とする神の目的について知っても驚くには当たりません。啓示の書は,悪魔が神の女のような組織に対して敵意を抱くあまり,「彼女の胤のうちの残っている者たち……と啓示 12:17; 14:1-4。
戦うために出て行った」と述べている箇所で,それらの人たちに言及しています。―14 聖書では油そそがれたクリスチャンはイエスの兄弟と呼ばれていますから,イエスの兄弟であるそれらのクリスチャンは,同じみ父と同じ母を共有しています。(ヘブライ 2:11)彼らのみ父はエホバ神です。したがって,彼らの母は,神の妻のような天界の組織である,その「女」であるに違いありません。それらのクリスチャンはその胤の二次的な部分となります。キリスト・イエスが主要な部分だからです。霊によって生み出された,地上にいるそれらクリスチャンの会衆は,天にある,神の女のような組織のもとで仕える,神の見える組織を構成しています。それらのクリスチャンは復活させられる時,その天でキリスト・イエスと結ばれることになります。(ローマ 8:14-17。ガラテア 3:16,29)すべての国の民の中から来る,何百万人ものほかの羊は,その胤の一部ではありませんが,地上で神の組織と共に仕えるよう結び合わされています。あなたはそれらのほかの羊の一人ですか。では,あなたの喜ばしい希望は,楽園<パラダイス>となる地上で永遠の命を受けることです。―ヨハネ 10:16; 17:1-3。
敵意はどのように高まったか
15 (イ)人間やみ使いでサタンの胤となった者が,どのように現われたかについて述べなさい。(ロ)ノアの時代の大洪水の際,サタンの胤はどうなりましたか。
15 サタンの胤となった人間は,人類の歴史のごく初期に現われ始めました。例えば,人間として最初に生まれたカインは,「邪悪な者から出て,自分の兄弟[アベル]を打ち殺しました」。(ヨハネ第一 3:12)後日,エノクはエホバが「その聖なる巨万の軍を率いて」来られることについて語りましたが,それは,「すべての者に裁きを執行するため,また,すべての不敬虔な者を,不敬虔な仕方で行なったそのすべての不敬虔な行為に関し,そして不敬虔な罪人が神に逆らって語ったすべての衝撃的な事柄に関して断罪するため」でした。(ユダ 14,15)さらに,反逆したみ使いたちはサタンに加わり,その胤の一部となりました。彼らは肉体を備えた姿で現われて,人間の娘たちと結婚するために,天の「そのあるべき居所を捨て」ました。こうして,暴れ者の超人間的な合いの子を子孫として生み出しました。当時の世界は暴虐と悪で満ちるようになったため,神は大洪水でその世を滅ぼされました。人間として生き残ったのは,忠実なノアとその家族だけでした。今やサタンの支配下に入った不従順なみ使いたちは,滅びに定められた人間の妻たちとその合いの子である子供たちを見捨てることを余儀なくされました。それらのみ使いたちは体を非物質化して,霊の領域に戻り,その領域でサタンとその胤に対する,足速に迫っている神の裁きの執行を待っています。―ユダ 6。創世記 6:4-12; 7:21-23。ペテロ第二 2:4,5。
16 (イ)大洪水後,どんな独裁者が登場しましたか。彼は自分がサタンの胤の一部であることをどのように示しましたか。(ロ)神はどのようにバビロンの塔の独り善がりな建築者たちの裏をかかれましたか。
16 その激しい大洪水のすぐ後に,ニムロデという名の独裁者が地上に現われました。聖書はその人物のことを「エホバに敵対する力ある狩人」と呼んでいますが,彼は確かに蛇の胤の一部でした。彼はサタンのように反逆の精神を表わし,人間を分散させて地に満ちるようにさせるエホバの目的を無視して,バベルもしくはバビロンと呼ばれる都市を建てました。バビロンには,中心的な建造物である,『頂が天に届く』ほどの大きな塔が建てられることになりました。神はその塔の独り善がりな建築者たちの裏をかき,彼らの言語を混乱させて,「彼らをそこから地の全面に散ら(し)」ました。しかし,バビロンそれ自体は存続するままにされました。―創世記 9:1; 10:8-12; 11:1-9。
政治強国が現われる
17 人類が増えるにつれて,人間の社会のどんな腐敗した特徴が前面に現われましたか。その結果,どんな巨大な帝国が興りましたか。
17 エホバの主権を無視して発達した人間の社会の特徴は,バビロンで現われました。その一つは,政治的な特徴でした。人類が増えるにつれて,野望を抱く他の人間がニムロデの例に従って権力を握りました。人が人を支配してこれに害を及ぼすようになったのです。(伝道の書 8:9)例えば,アブラハムの時代に,ソドムやゴモラおよびその近隣の諸都市は,シナルその他の遠い 土地の王たちの支配を受けるようになりました。(創世記 14:1-4)やがて,軍事および組織力の非凡な才能を持つ者たちが,自分自身の富と栄光のために巨大な帝国を作り上げました。聖書はエジプト,アッシリア,バビロン,メディア-ペルシャ,ギリシャ,およびローマを含め,それらの帝国の幾つかに言及しています。
18 (イ)神の民は政治支配者に対してどんな態度を取りますか。(ロ)政治権威者たちは,時にはどのように神の権益のために仕えてきましたか。(ハ)多くの支配者は自分たちが蛇の胤の一部であることをどのように示してきましたか。
18 エホバはそれら政治強国の存続を許容されたので,それらの強国の支配下の土地に住んだ神の民は,相対的な仕方で国家に服従しました。(ローマ 13:1,2)時には,政治権威者が神の目的の達成を促進したり,あるいは神の民を保護したりするのに一役買ったことさえありました。(エズラ 1:1-4; 7:12-26。使徒 25:11,12。啓示 12:15,16)それにしても,真の崇拝に激しく反対して,蛇の胤の一部であることを自ら示した政治支配者は少なくありませんでした。―ヨハネ第一 5:19。
19 啓示の書の中では,世界強国はどのように描写されていますか。
19 人間による支配は大抵,わたしたち人間に幸福をもたらしたり,わたしたちの諸問題を解決したりするのに惨めにも失敗してきました。エホバは人間があらゆる形態の政府を作って実験するのを許してこられましたが,腐敗,もしくは政府が人々に行なった不当な支配の仕方を是認してはおられません。(箴言 22:22,23)啓示の書の中では,世界の圧制的な諸強国は尊大で奇怪な野獣を構成するものとして描写されています。―啓示 13:1,2。
利己的な営利本位の商売人
20,21 どんな第二のグループの人々が,「軍司令官たち」や「強い者たち」と共にサタンの邪悪な胤に属する者たちの中に含まれているに違いありませんか。それはどうしてですか。
20 政治指導者と密接な結びつきを持っている者として,物質上の品物を扱う不正直な商売人が見られるようになりました。古代バビロンの遺跡から出土した種々の記録は,仲間の人間の不幸な境遇を利用して利益を上げる商取り引きが,当時たいへん盛んに行なわれていたことを示しています。世界の商人は今日に至るまで利己的な仕方で利潤を追求してきたので,多くの土地では少数の人々が非常に裕福になりましたが,住民の大半は貧困にあえいでいます。高度に産業の発達した現代では,商人や生産者は,大いに憂慮されている大量破壊兵器を含め,恐るべき破壊力を持つ武器を政治強国に供給し,備蓄させて,膨大な利益を得てきました。それら商業界の貪欲な大立て者や同類の他の者たちは,「軍司令官たち」や「強い者たち」と共に,サタンの邪悪な胤に属する者たちの中に含まれているに違いありません。彼らはすべて,処刑されるに値する者として神とキリストに裁かれる地的な組織の一部なのです。―啓示 19:18。
21 政治および貪欲な商業主義を腐敗させるものとしては,神からの不利な裁きを受けるにふさわしい人間社会の三番目の要素を付け加えておかなければなりません。それは何でしょうか。周知のその世界的な組織体について啓示の書が述べている事柄を知ったなら,あなたは驚かれるかもしれません。
大いなるバビロン
22 古代バビロンではどんな宗教が発達しましたか。
22 元のバビロンを建てるのは,政治的な企て以上のことを意味していました。その都市はエホバの主権を無視して創設されたので,宗教が関係していました。実際,古代バビロンは偶像崇拝を行なう宗教の源となりました。その祭司たちは,人間の死後,魂は悪霊たちの管理する恐ろしい場所で生き続けるという教えのような,神を辱める教理を教えました。彼らは動物やおびただしい神々や女神の崇拝を助長しました。また,地と地上の人間の起源を説明するための神話を作り上げ,多産や豊作や戦勝を保証する助けになると考えられる,下劣な儀式を執り行なったり,犠牲をささげたりしました。
23 (イ)人々がバビロンから広がって行った時,何を携えて行きましたか。その結果,どうなりましたか。(ロ)啓示の書の中では,世界を取り巻く,偽りの宗教の帝国のことがどんな名称で言及されていますか。(ハ)偽りの宗教は何に対して絶えず戦ってきましたか。
23 幾つかの言語集団がバビロンから地上の各地に広がった時,人々はバビロン的な宗教を携えて行きました。こうして,古代バビロンで行なわれたのと同様の儀式や信仰が,ヨーロッパ,アフリカ,南北アメリカ大陸,極東,および南太平洋の原住民の間で盛んになりました。そのような信仰の多くは今日まで残っています。ですから,啓示の書の中で,世界を取り巻く,偽りの宗教の帝国のことが大いなるバビロンと呼ばれる都市として言及されているのは,適切なことです。(啓示 17,18章)偽りの宗教はどこで種をまかれても,圧制的な祭司制度,迷信,無知,および不道徳を生じさせてきました。偽りの宗教はサタンの手中の強力な道具となってきました。大いなるバビロンは主権者なる主エホバの真の崇拝に対して絶えず激しい戦いを行なってきました。
24 (イ)蛇はどのようにして女の主要な胤の「かかとを」砕くことができましたか。(ロ)女の胤を砕くことは,どうして単にかかとを傷つけるだけのこととして描写されているのでしょうか。
24 蛇の胤の一番責めを負うべき部分であった,1世紀のユダヤ教の書士やパリサイ人は,女の胤の主要な代表者を迫害する点で率先し,ついにはその胤を殺害しました。こうして,蛇は「彼[「胤」]のかかとを砕く」ことができました。(創世記 3:15。ヨハネ 8:39-44。使徒 3:12,15)それはどうして単にかかとを傷つけるだけのこととして描写されているのでしょうか。なぜなら,その方はこの地上でそのようにして傷つけられたものの,その影響をほんの短期間受けられたに過ぎなかったからです。それは永久に治らない傷ではありませんでした。なぜなら,エホバはイエスを三日目に復活させ,霊者としての命を受けるよう高められたからです。―使徒 2:32,33。ペテロ第一 3:18。
25 (イ)栄光を受けられたイエスは,サタンとその使いたちに対して,すでにどのように行動を起こされましたか。(ロ)サタンの地上の胤はいつ除き去られますか。(ハ)神の女の胤が,蛇であるサタンの「頭を」砕く時が来ますが,それは何を意味していますか。
25 栄光を受けられたイエス・キリストは今や神の右で仕えて,エホバの敵を裁いておられます。イエスはすでにサタンとその使いたちに対して行動を起こして,彼らを投げ落とし,その活動をこの地に限定されました。今の時代に災いが増大しているのは,そのためです。(啓示 12:9,12)しかし,神が大いなるバビロンとサタンの地上の組織の他の部分に対して裁きを執行なさる時,サタンの地上の胤は予告された通り除き去られます。最後に,神の女の胤であるイエス・キリストは,あのずる賢い年経た蛇であるサタンの「頭を」砕かれます。それはサタンが完全に絶滅され,完全に除去されて,人間の事柄に一切干渉できなくなることを意味しています。―ローマ 16:20。
26 啓示の書の預言を調べるのは,どうして大変重要なことですか。
26 このすべてはどのようにして起きるのでしょうか。それこそ啓示の書がわたしたちのために明らかにしている事柄なのです。それは,著しいしるしや象徴的な表現で際立っている,一連の幻の中で,わたしたちに啓示されています。では,この力強い預言を熱心に調べてみましょう。啓示の書の言葉を聞き,それを守り行なうなら,わたしたちは本当に幸いです! そうすることによって,わたしたちは主権者なる主エホバのみ名に誉れをもたらすことにあずかり,神からのとこしえの祝福を受け継ぐようになります。では,どうぞ,読み続け,学んだことを思慮深く適用してください。そうすれば,人類の歴史が最高潮を迎えるこの時代に,あなたは救いにあずかることができるでしょう。
[研究用の質問]
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商取り引きに関する古代の楔形文書の記録
ジェームズ・B・プリッチャードの編集した「古代近東テキスト」と題する本には,バビロニア時代にハンムラビが編さんした,およそ300条の法令が列挙されています。その法令は,当時の商業界に行き渡っていた,あくどい不正行為を禁ずる必要があったことを示しています。一例を挙げます。「もし,ある領主が証人を立てたり,契約を結んだりせずに,ある領主の息子,またはその奴隷の手から,銀であれ,金であれ,あるいは男奴隷もしくは女奴隷,雄牛あるいは羊,ろば,もしくは他の何であれ,それを買い取ったり,保管するために預かったりするならば,その領主は盗人であるから,処刑さるべし」。