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すでに何百万もの人々の益となっている,神がその「友」と結ばれた契約

すでに何百万もの人々の益となっている,神がその「友」と結ばれた契約

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すでに何百万もの人々の益となっている,神がその「友」と結ばれた契約

1,2 (イ)どんな友好関係がすでに何百万もの人々に益をもたらし始めていますか。(ロ)アブラハムはどうして神の友となることができましたか。

1950年以上の昔のこと,全人類の真の友は,「友のために自分の魂をなげうつこと,これより大きな愛を持つ者はいません」と言われました。(ヨハネ 15:13)そのように話されたイエスは,全宇宙で最も傑出した方であられるエホバ神の友と呼ばれた人の子孫でした。そのような友好関係は不釣り合いのように思えるかもしれませんが,すでに何百万もの人々に益をもたらし始めています。

2 神との友情のゆえに,わたしたちのために多くのものを勝ち得た,その古代の人物とはだれのことですか。それは,ノアの時代の世界的な大洪水の生存者の一人であったセムという人の子孫アブラハムでした。アブラハムは真の友としての特質を表わして,神とのある関係に入りました。アブラハムは愛と信仰に動かされて,神のご意志と調和して行動しました。それゆえに,聖書筆者ヤコブはこう述べています。「『アブラハムはエホバに信仰を置き,彼に対してそれは義とみなされた』と述べる聖句が成就され,彼は『エホバの友』と呼ばれるようになりました」― ヤコブ 2:23

3,4 (イ)アブラハムが神に置いた信仰と信頼をエホバがどれほど高く評価しておられたかを,何が例証していますか。(ロ)エホバはイザヤ 41章8節のどんな言葉をもって,ご自分の発言をすばらしい最高潮にもってゆかれましたか。

3 その信仰と行動の人はカルデア人のウルの都の出身者で,初めてヘブライ人と呼ばれた人でした。(創世記 14:13)この名称はその子孫であるイスラエル国民を指して用いられるようになりました。(フィリピ 3:5)エホバ神はまた,アブラハムをご自分の友にしたゆえに,ご自身の内に秘めた事柄のある点をアブラハムに知らされました。それは創世記 18章17節から19節に記されている事柄からも分かります。

4 それは,アブラハムが神に置いた信仰と信頼をエホバ神がどれほど高く評価しておられたかを例証しています。その信仰と信頼のゆえに,アブラハムは絶対的な従順を示すことができました。ですから,エホバは当惑したり弁解したりすることなく,「しかし,イスラエルよ,あなたはわたしの僕であり,ヤコブよ,わたしが選んだあなたは,わたしの友アブラハムの胤である」と述べて,イスラエル国民に対するご自分の発言を最高潮にもってゆかれました。―イザヤ 41:8

アブラハム契約は実施される

5,6 (イ)エホバはご自分の友アブラハムとどんな契約を結ばれましたか。(ロ)神はどんな不利な状況にもかかわらず,ご自分の友に「胤」に関する約束をなさいましたか。

5 宇宙の主権者エホバが一介の人間にすぎないこのアブラハムと契約を結ばれたことは,人が愛ある友とのきずなによってどの程度心を動かされるものかを例示しています。創世記 15章18節にはこう記されています。「その日,エホバはアブラム[アブラハム]と契約を結んで,こう言われた。『あなたの胤にわたしはこの地を与える。エジプトの川から,かの大川,ユーフラテス川まで[の地を]』」。

6 ユーフラテス川は,アブラハムとその家の者たちが約束の地に入るために渡った川でした。その川を渡った当時,アブラハムはすでに75歳に達しており,その妻は出産年齢を過ぎていましたが,アブラハムには子供がいませんでした。(創世記 12:1-5)ところが,このような不利な状況にもかかわらず,神は従順なアブラハムにこう言われました。「どうか,天を見上げて,数えることができるものなら,星を数えてみるように。……あなたの胤もそのようになるであろう」― 創世記 15:2-5

7 (イ)この契約は何と呼ばれていますか。(ロ)それは何年に,またアブラハムの生涯のどんな出来事と相まって実施されましたか。(ハ)それは,律法契約がイスラエル国民と結ばれる何年ほど前のことでしたか。

7 エホバがその「友」と結ばれた契約を,わたしたちはアブラハム契約と呼んでいます。その契約は,アブラハムが神の契約の要求に従って行動し,約束の地に向かう途中,ユーフラテス川を渡った,西暦前1943年に実施されました。その年に,エホバ神は,子供のいないアブラハムに胤を与えて祝福する責任を負われるようになりました。シナイ山でイスラエル国民と結ばれた契約に属する律法は,430年後の西暦前1513年に存在するようになりました。―創世記 12:1-7。出エジプト記 24:3-8

アブラハム契約に付け加えられた律法契約

8 (イ)律法契約の目的は何でしたか。(ロ)律法契約はアブラハム契約を無効にしましたか。

8 その当時までには,アブラハムの子イサクの子孫は自由な民となっていました。イスラエル国民はエジプトから救い出されて,アラビアのシナイ山に導かれ,仲介者モーセを通して,エホバ神との律法契約に入れられていました。それらイスラエル人はすでにエホバの「友」アブラハムの生来の子孫であった以上,そのような律法契約には一体どんな目的があったのでしょうか。それはエホバの選ばれた民を保護するものとなるはずでした。律法契約は,イスラエル国民が神の完全な律法に照らして見れば,違犯の罪を持つ者であることを確かに明らかにしたとはいえ,アブラハム契約を無効にするものとはなりませんでした。―ガラテア 3:19-23

9,10 (イ)アブラハムの子孫は普通,すべての国の民が自らを祝福する手だてである「胤」についてどう考えましたか。(ロ)それは筋の通った考え方でしたか。

9 比喩的に言って,イスラエル人はその律法の「子ら」となりました。イスラエル人はアブラハムの生来の子孫だったため,自分たちは自動的に,すべての国の民が自らを祝福する手だてである「胤」になったと考えました。果たしてそうでしたか。そうではありません! およそ3,500年後の今日,この世の独立したイスラエル共和国は確かに存在していますが,敵意のある多くの国々の中で自らの生存のために戦っています。

10 ですから,今日,人が改宗してユダヤ人になり,人類の残りの人々すべてを祝福するアブラハムの「胤」になるのは,エホバ神の方法ではありません。では,どんなことが起きてきましたか。

11 使徒パウロは,アブラハムの生来の子孫に起きた事柄をどのように説明しましたか。

11 使徒パウロはこの問題をわたしたちのために説明し,こう述べています。「アブラハムは二人の子を得たと書いてあります。ひとりは下女[ハガル]により,ひとりは自由の女[サラ]によってです。しかし,下女による子は実際には肉の方法で生まれ,自由の女による子は約束によって生まれました。これらの事は象徴的な劇となっています。この女たちは二つの契約を表わしているからです。一方はシナイ山から出ていて,奴隷となる子供たちを生み出すもの,すなわちハガルです。そこで,このハガルは,アラビアにある山シナイを表わし,今日のエルサレムに当たります。彼女は自分の子供たちと共に奴隷の身分にあるからです。それに対し,上なるエルサレムは自由であって,それがわたしたちの母です」― ガラテア 4:22-26

12 下女ハガルはだれに相当しましたか。

12 下女ハガルに相当したエルサレムは,肉のユダヤ人の居住した地上の都市でした。イエス・キリストの時代には,それはイスラエル国民の首都で,律法契約のもとにありました。(マタイ 23:37,38)モーセの仲介により成立した律法契約がなお有効であった間,生来のイスラエルはエホバの見える組織の一部でした。ですから,それは一人の女,つまりサラの下女ハガルによって表わすことができました。

アブラハム契約の真の子ら

13 (イ)何がアブラハムの妻サラに相当しましたか。(ロ)「上なるエルサレム」はどうして『自由である』と言えますか。

13 一方,「上なるエルサレム」は,エホバの見えない天の組織でした。したがって,それはアブラハムの真の妻サラによって表わすことができました。律法契約はその組織と結ばれたのではありませんでしたから,「上なるエルサレム」は昔のサラのように自由でした。これこそ約束の「胤」を産み出す組織です。ですから,パウロはそれを「わたしたちの母」と呼ぶことができました。

14 アブラハム契約は「上なるエルサレム」に適用されますか。したがって,イエス・キリストの霊によって生み出された弟子たちは何と呼ぶことができますか。

14 ですから,確かにアブラハム契約は,大いなるアブラハムの象徴的な妻としての「わたしたちの母」,そうです,あの天にあるエホバの宇宙的な組織に適用されます。それで当然,イエス・キリストの霊によって生み出された弟子たちは,使徒パウロのように,アブラハム契約の子ら,つまり子供たちです。パウロはさらにそのように論じて,こう述べています。

15 使徒パウロはアブラハム契約の「子供」たちに関して,ガラテア 4章27-31節で何と述べましたか。

15 「というのは,こう書かれているからです。『喜べ,子を産まないうまずめよ。声を上げて高らかに叫べ,産みの苦しみのない女よ。見捨てられた女の子供らは,夫のいる女の子供らよりも多いからである』。そこで,兄弟たち,わたしたちは,イサクと同じように約束に属する子供です。しかし,その当時,肉の方法で生まれた者が霊の方法で生まれた者を迫害するようになりましたが,今もそれと同じです。しかしながら,聖書は何と言っていますか。『下女とその子とを追い出しなさい。下女の子が自由の女の子と一緒に相続人となることは決してないからです』。それゆえ,兄弟たち,わたしたちは,下女の子供ではなく,自由の女の子供なのです」― ガラテア 4:27-31。イザヤ 54:1

16 古代の象徴的な劇は,律法契約に関して何を予告していましたか。こうして,何が残ることになりますか。

16 ですから,古代のその象徴的な劇は,大いなるアブラハムであられるエホバ神が,シナイ山でイスラエルと結ばれる律法契約を廃棄されることを予告していました。こうして,アブラハム契約に付け加えられたもの(律法契約)は除かれて,つまり取り去られて,地上のすべての家族が自らを祝福する手だてである「胤」に関する約束を伴うアブラハム契約だけが残ることになるのです。

17 (イ)律法契約はいつまで続くことになっていましたか。(ロ)イエス・キリストはどうしてアブラハムの主要な子孫でしたか。(ハ)イエスが地上のすべての家族を祝福する,神の主要な代理者になれるかどうかは,何にかかっていましたか。

17 それで,付け加えられた律法契約は,約束された「胤」が到来する時まで存続することになりました。その胤はイエス・キリストでした。イエスは神の奇跡によってアブラハムの肉の子孫になりました。イエスはその族長の主要な子孫になりました。イエスはアブラハムの肉の子孫だっただけでなく,神のみ子でしたから,したがって完全な人間で,「忠節で,偽りも汚れもなく,罪人から分けられ」た状態を保たれた方でした。(ヘブライ 7:26)しかし,地のすべての家族を祝福するための神の主要な代理者になれるかどうかは,ご自分の人間としての完全な命を犠牲にして,その価値を全人類のために適用するかどうかにかかっていました。そのような自己犠牲により,神のすべての要求にかなう一つの犠牲をささげて,エホバの偉大な大祭司を務めることになっていました。

イエスの苦しみの杭にくぎ付けにされた律法契約

18 (イ)贖いの犠牲の益はまず,だれにもたらされることになっていましたか。それはなぜですか。(ロ)イエスは何になられましたか。

18 この贖いの犠牲の益はまず,イエスが処女マリアを通して奇跡的に生まれて一成員となっていた,イスラエル国民のためにもたらされることになりました。それは不可欠なことでした。というのは,ユダヤ人は二重の意味で有罪宣告を受けて死に定められていたからです。それはどうしてですか。まず,彼らは罪人アダムの子孫でしたし,次に自分自身の不完全さゆえに,神との律法契約に従って行動しなかったので,のろわれた者となったからです。ところが,イエスは彼らのためにのろわれた者となられたのです。苦しみの杭にくぎ付けにされて死を遂げることにより,イエスは「イスラエルの家の失われた羊」からそののろいを解くことができました。西暦33年に律法契約はイエスの苦しみの杭にくぎ付けにされて,その一時的な律法契約のもとにあったユダヤ人の羊の囲いは閉鎖され,廃止されました。―マタイ 15:24。ガラテア 3:10-13。コロサイ 2:14

19 (イ)どんな新しい羊の囲いが開設されなければなりませんでしたか。その中には何が入れられることになっていましたか。(ロ)ですから,その新しい羊の囲いに入れられる人たちは何になりますか。

19 それで,復活させられた,りっぱな羊飼いであられるイエス・キリストの霊的な羊を収容するために,新しい羊の囲いを開設しなければなりませんでした。ご自分を犠牲にされた,そのりっぱな羊飼いはまた,この新しい羊の囲いの象徴的な戸口となっておられます。(ヨハネ 10:7)りっぱな羊飼いのもとにある,この新しい羊の囲いに入れられる人たちは,大いなるアブラハムの,霊によって生み出された子らとなり,こうしてその方の「胤」の一部となります。(ローマ 2:28,29)このことにたがわず,この終わりの日の期間中,その霊的な「胤」の残りの者は,200以上の土地の増大する何百万もの人々にとって祝福となってきました。

[研究用の質問]

[80,81ページの図版]

シナイ山で結ばれたモーセの律法契約は,イエスと共に苦しみの杭にくぎ付けにされた時,終わりを告げました