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敵のまっただ中で行なわれる「平和の君」による支配

敵のまっただ中で行なわれる「平和の君」による支配

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敵のまっただ中で行なわれる「平和の君」による支配

1,2 (イ)イエス・キリストは一群の弟子たちにどんな別れの言葉を語られましたか。(ロ)それは,キリストが「平和の君」として支配する前に,世界の人々を改宗させることを求めましたか。

19世紀以上も前のこと,当時,将来の「平和の君」であられたイエス・キリストは昇天する少し前,一群の忠実な弟子たちに次のような別れの言葉を語られました。「それゆえ,行って,すべての国の人々を弟子とし,父と子と聖霊との名において彼らにバプテスマを施し(なさい)……そして,見よ,わたしは事物の体制の終結の時までいつの日もあなた方と共にいるのです」― マタイ 28:19,20

2 イエスのこの言葉は,1914年に始まった「事物の体制の終結の時」以前に世界の人々を改宗させることを求めていましたか。いいえ,そうではありません。20世紀も終わりに近づいた今日,人類の世は,その救い主で,正当な王であられるイエス・キリストの教えに改宗しているとはとても言えません。しかし,そのために,エホバが聖書の預言の中で予告された事柄を達成するのが遅れているわけではありません。イエス・キリストが「平和の君」として支配を始める前に世界の全人類の改宗を図ることは,決して神の目的ではありませんでした。それとは全く反対に,キリストは敵のただ中で支配を始めることが予告されていました。

3 イエスが詩編 110編に言及されたことは,敵のまっただ中で治めることをどのように示唆していますか。

3 イエス・キリストはこの地上におられた時でさえ,その事をご存じでした。殉教者としての死を遂げる少し前のこと,イエスは宗教上の反対者と論争し,詩編 110編に言及されました。そのことがルカ 20章41節から44節にこう記されています。「かわってイエスが彼らに言われた,『人々が,キリストはダビデの子だと言うのはどうしてですか。ダビデ自身が詩編の書の中で,「エホバがわたしの主に言われた,わたしがあなたの敵をあなたの足台として据えるまで,わたしの右に座していなさい」と言っています。それゆえ,ダビデは彼を「主」と呼んでいるのです。それで,どうして彼の子でしょうか』」。

4-6 (イ)同様に,詩編 2編も,イエスが「平和の君」としての支配を始める前に,世界の人々が改宗させられるのを待たなければならなかったわけではないことを,どのように示していますか。(ロ)詩編 2編7節はいつ成就しましたか。

4 ですから,ダビデの子であられるイエス・キリストは,世界の人々を改宗させた後に支配を始めるのでないことは明らかです。むしろ,エホバ神がやがて戦って,即位したみ子が足を置く足台にする敵の中で支配を始めることになっていました。同様に,詩編 2編も次のように述べて,イエスが敵のまっただ中で「平和の君」として支配を始めることを示唆しています。

5 「なぜ諸国の民は騒ぎ立ち,国たみはむなしいことをつぶやきつづけたのか。地の王たちは立ち構え,高官たちも一団となってエホバとその油そそがれた者[キリスト]に敵対し,こう言う。『彼らの縛り縄を引きちぎり,その綱を我々から振り捨てよう』。天に座しておられる方が笑う。エホバご自身が彼らをあざ笑う。その時,神は怒りのうちに彼らに語り,憤激して彼らをかき乱し,こう言われる。『わたしは,まさしくわたしは,わたしの聖なる山シオンにわたしの王を立てた』。

6 「わたしはエホバの布告について述べよう。神はわたし[キリスト]に言われた,『あなたはわたしの子。わたしは,今日,あなたの父となった。[詩編 2編7節は,エホバがみ子を死人の中から復活させて,イエスの永遠の父となられた時に成就しました。(ローマ 1:4)] わたしに求めよ。わたしは諸国の民をあなたの相続物として,地の果てをあなたの所有物として与えよう。あなたは鉄の笏をもって彼らを砕き,彼らを陶器師の器であるかのように粉々にする』。それで今,王たちよ,洞察力を働かせよ。地の裁き人たちよ,矯正を受けよ。恐れを抱いてエホバに仕え,おののきつつ喜べ。子に口づけせよ。神がいきり立ち,あなた方が道から滅びうせないためである。その怒りは容易に燃え上がるからだ。すべて神のもとに避難する者たちは幸いだ」。

7 ペンテコステの日の後,イエス・キリストの使徒たちは詩編 2編にどのように言及しましたか。

7 使徒 4章24節から27節によれば,イエス・キリストの使徒たちは西暦33年のペンテコステの日の後,この詩編 2編に言及しました。こう記されています。「彼らは思いを一つにし,神に向かい声を上げてこう言った。『主権者なる主よ,あなたは,天と地と海とその中のすべてのものを造られた方であり,また,聖霊を通じ,あなたの僕,わたしたちの父祖ダビデの口によって言われました,「なぜ諸国民は騒ぎ立ち,もろもろの民はむなしい事柄を思い巡らしたのか。地の王たちは立ち構え,支配者たちは一団となってエホバに逆らい,その油そそがれた者に逆らった」と。まさしく,ヘロデとポンテオ・ピラトの両人は,諸国の人々と共に,またイスラエルの諸民と共に,あなたの聖なる僕イエス,あなたが油そそいだ方に逆らってこの都市に実際に集まりました』」。

詩編 2編の主要な成就

8 (イ)詩編 2編1,2節の最初の成就は,いつ起きましたか。(ロ)詩編 2編の主要な成就は,いつから起きましたか。

8 詩編 2編1,2節のこれらの言葉が最初に成就したのは,西暦33年のことでした。それは,地上におられたイエス・キリストその人に関連して成就しました。イエスは,バプテスマを施す人ヨハネからバプテスマを受けた時,エホバの聖霊によって油そそがれたのです。しかし,詩編 2編の主要な成就は1914年における異邦人の時の終わり以来起きてきました。(ルカ 21:24)西暦前607年におけるエルサレムの都の最初の滅亡の時に始まった「諸国民の定められた時」が,1914年に終わったことは,すでに十分確証されています。 * その時,キリスト教世界を含む,この世の諸国家の終わりを告げる鐘の音が響きました。

9 エルサレムが最初に滅ぼされた時,ダビデ王の王統によって代表される神の王国は,どうなりましたか。

9 バビロニア人によってエルサレムが最初に滅ぼされた時,ダビデ王の王統によって代表される,イスラエル国民を治めるエホバ神の王国は,終わりを告げました。その時以来,生来のユダヤ人には,自分たちを治める,ダビデ王家の家系の王がいませんでした。しかし,ダビデの子孫の手による至高の神の王国は,地上で永久に倒れたままにはされませんでした。エホバはダビデと,その家系の子孫による永遠の王国のための契約を結んでおられたのです。

10,11 (イ)神はダビデの王座に関して預言者エゼキエルを通して何と言われましたか。(ロ)だれがその「法的権利」を持ってダビデの王座に就きましたか。(ハ)イエスがご自身を正当な相続人として紹介された時,ユダヤ人の群衆は何と言いましたか。

10 古代のエルサレムが最初の滅びを被る少し前のこと,エホバはご自分の預言者エゼキエルを通して次のような言葉をその都の王に伝えさせました。「致命的な傷を負ったイスラエルの邪悪な長よ,その日が終わりのとがの時に来たあなたについて,主権者なる主エホバはこのように言われた。『ターバンを取り除き,冠を取り外せ。これは同じではなくなるであろう。低いものを高くし,高い者を低くせよ。わたしはそれを破滅,破滅,破滅とする。これについてもまた,それは法的権利を持つ者が来るまで,決してだれのものにもならない。わたしはその者にこれを必ず与える』」 ― エゼキエル 21:25-27

11 その「法的権利」をもつ者は,イエス・キリストとして出現しました。ダビデからのその系譜は,マタイ 1章1節から16節とルカ 3章23節から31節に記されています。イエスは普通,「ダビデの子」と呼ばれました。イエスが預言の成就として,ろばに乗ってエルサレムに勝利の入城をした日に,イエスとその使徒たちに同伴した,喜びにあふれたユダヤ人の群衆は,歓呼してこう叫びました。「救いたまえ,ダビデの子を!エホバのみ名によって来るのは祝福された者!彼を救いたまえ,上なる高き所にて!」―マタイ 21:9

「ダビデの子」は天で即位させられる

12 異邦人の時が1914年に終わったとき,ダビデの永久相続人イエス・キリストはどこで即位しましたか。

12 ダビデの家にゆだねられた神の王国が異邦人により踏みにじられていた2,520年の期間は,1914年に終わりました。それから,この地上の王座ではなく,最も高い天のエホバ神の右で,「ダビデの子」イエス・キリストの即位する時が到来しました!―ダニエル 7:9,10,13,14

13 (イ)1914年のことは,何年以来,だれによって,異邦人の時の終わりとして指し示されてきましたか。(ロ)地上の諸国民は,新たに即位した「ダビデの子」に対してどんな態度を取りましたか。

13 ものみの塔聖書冊子協会と交わるようになった人々は1876年以来,その重大な年代を指し示してきました。しかし,地上の諸国民は,キリスト教世界の国民でさえ,その年が自分たちの地的な主権を新たに即位した「ダビデの子」に引き渡す時であるとは認めようとしませんでした。イエスはエホバ神の足台である全地に対する,神から与えられた主権を行使する権利を有しておられますが,諸国民はそのことを認めませんでした。(マタイ 5:35)彼らは最初の世界大戦に加わって,破廉恥なことに正当な王を退けたことをはっきりと示しました。

14 (イ)第一次世界大戦の勃発と共に,諸国民は,ものみの塔協会と交わっていたそれらのクリスチャンに対するどんな態度を表わしましたか。(ロ)このことからすれば,世界的な状態は何を示していますか。

14 ものみの塔協会と交わっていた,献身したクリスチャンは,すべての交戦国の中で,流血行為を避ける決意を捨てさせようとする大変な圧力を受けました。当時,それらの人々はクリスチャンの中立に関する要求を十分に理解していませんでした。「事物の体制の終結」に関して,「ダビデの子」イエス・キリストが弟子たちにお与えになった,「あなた方は,わたしの名のゆえにあらゆる国民の憎しみの的となるでしょう」という預言は,悲痛なまでに的中しました。(マタイ 24:9)この憎しみは,第一次世界大戦終了後も衰えませんでした。現代の歴史のこれら重要な要素からすれば,世界的な状態は何を示していますか。それは,「平和の君」が,この地上にいる敵のまっただ中で支配しておられるということです!

15 天で戦いが起きた時,悪魔サタンとその悪霊の軍勢はどうなりましたか。その結果はどの年までに決定的なものになりましたか。

15 全能の神は天と地にいたすべての敵をものともせずに,約束のメシアによる王国をご予定の時に誕生させました。啓示 12章1節から9節によれば,『男の子』のような王国が天で,いわばエホバの妻のような組織の胎から生まれた後,直ちに天で戦いが起きました。聖なる天はもはや象徴的な龍,すなわち悪魔サタンと,その使いである悪霊たちのための場所ではなくなりました。この戦いは肉眼には見えませんでしたが,王権を授けられた「ダビデの子」は勝利を収め,悪魔サタンとその悪霊の軍勢を天から追い出し,この地球の近辺に閉じ込めました。こうして,サタンの勢力は明らかに,第一次世界大戦が終わった1918年までに完全に卑しめられました。

格下げされた悪魔は,戦いを挑む

16,17 (イ)格下げされた悪魔サタンはだれに対して戦いを挑みますか。(ロ)その戦いを遂行するためにだれを用いますか。

16 格下げされた悪魔サタン,つまり象徴的な龍は,今や特にエホバ神の妻のような組織に対して憤りを抱いています。(啓示 12:17)ですから,その組織が自分たちの霊的な母であることを示す証拠を持っている,献身したクリスチャンの,霊によって生み出された残りの者に対して,サタンは猛烈な戦いを挑みます。―ガラテア 4:26

17 サタンはまた,王国が誕生したことについて証しをする点で,油そそがれた残りの者と共に従順に働く「ほかの羊」に対しても戦いを挑みます。(ヨハネ 10:16)サタンは残りの者と「ほかの羊」に対するこの戦いを遂行するため,今や地の近辺にいる格下げされた悪霊の勢力だけでなく,自分自身の組織の見える部分をも用います。

18 (イ)悪魔は油そそがれた残りの者とその仲間に対して猛烈な戦いを挑みますが,これらの人たちには自分たちを守るどんな勢力がありますか。(ロ)「平和の君」の支配のどんな面は終わろうとしていますか。

18 この地上にいる敵のまっただ中で行なわれている「平和の君」の支配は,今や終わろうとしています。この方は申し分のない仕方で事態に処してこられました。その方の忠節な聖なるみ使いたちは,王なるこの方の命令を受けしだい,それに基づいててきぱきと行動できるよう,日夜,不動の姿勢で待機しています。「平和の君」が敵のまっただ中で支配している,今や急速に縮まってきた期間中,油そそがれた残りの者と仲間の「ほかの羊」の「大群衆」が,王国の関心事のために仕え続けるとき,それらみ使いたちは,これらの人たちを守る勢力の役を果たします。―啓示 7:9

[脚注]

^ 8節 詳しくは,ものみの塔聖書冊子協会発行の「あなたは地上の楽園で永遠に生きられます」と題する本の138-141ページを参照してください。

[研究用の質問]