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滅びる運命にある不安定な「バビロン」

滅びる運命にある不安定な「バビロン」

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滅びる運命にある不安定な「バビロン」

1 (イ)「バビロン」という言葉は何を意味していますか。その名称で呼ばれた都市を建設したのはだれですか。(ロ)野心を抱いたニムロデは,どんな建築計画を企てましたか。どんな結果になりましたか。

混乱,そうです,今日の世界を印づけているのは,政治的,社会的,宗教的な混乱です。混乱を意味する聖書のヘブライ語は,英語では“babylon”と訳されています。創世記ではバビロンのことがバベルと呼ばれていますが,この名称もやはり「混乱」を意味しています。その名称で呼ばれる都市を建設したのは,エホバに逆らった反逆者ニムロデです。(創世記 10:8-10)人々はその都市で,野心を抱いたニムロデの指導のもとでエホバに挑戦し,天高くそびえる塔の建造に取りかかりました。エホバは建築者たちの同一の言語を混乱させ,人々が一緒に働こうにも互いに理解し合えないようにさせて,神を辱めるその計画を覆させました。―創世記 11:1-9

2 (イ)世界強国バビロンは西暦前539年にどうなりましたか。それはその名称で呼ばれる都市の終わりをしるし付けるものとなりましたか。(ロ)その古代の都市バビロンは,どんなものではありませんか。

2 それから長い期間を経た後,ユーフラテス河畔にバビロンという名称を持つ都市の存在したことが,記録に残されています。(列王第二 17:24。歴代第一 9:1)西暦前539年のこと,バビロニア世界強国はイザヤ 45章1節から6節のエホバの預言の成就として,メディア-ペルシャの皇帝,キュロス大王により倒されました。バビロンは重大な倒壊を被りましたが,その後も都市として存続するのを許されました。しかも,西暦1世紀の後半のころでさえ存続していたことが報告されています。(ペテロ第一 5:13)しかし,その古代の都市は,啓示の書の17章で使徒ヨハネが書き記した「大いなるバビロン」のことではありません。

3 大いなるバビロンの真の正体は何ですか。

3 「緋色の野獣」に乗った不道徳な女として描写されている黙示録の「大いなるバビロン」は,いわゆるキリスト教世界の諸宗教すべてを含む,偽りの宗教の世界帝国を表わしています。 *啓示 17:3-5)使徒ヨハネがその女を観察したところによれば,この象徴的な組織は,地上の政治上の支配者たちすべてと霊的な淫行を犯してきました。偽りの宗教の世界帝国,つまり大いなるバビロンは,依然として恐るべき影響を及ぼしています。

「世の友」で,神の友ではない

4 第一次世界大戦の際,大いなるバビロンは人類に対する罪をどのように増し加えましたか。

4 しかし,大いなるバビロンの立場は非常に不安定です。それも,第一次世界大戦の終わり以来,特にそう言えます。その戦争の際,同バビロンは人類に対する罪を増し加えました。イエス・キリストの追随者と称するキリスト教世界の僧職者たちは,戦場に行くことを若者たちに説き勧めました。プロテスタントの著名な牧師,故ハリー・エマソン・フォズディックは戦争遂行に傾ける努力を支持しましたが,後日,「われわれは教会の中にさえ軍旗を掲げた。……一方では平和の君を賛美しながら,他方では戦争を美化した」と認めました。キリスト教世界の司祭や牧師たちは宗教的な集まりで戦闘部隊のために祈りをささげ,陸軍や海軍や空軍の従軍牧師を務めました。 *

5 (イ)キリスト教世界は,ヤコブ 4章4節のどんな言葉を心に留めてきませんでしたか。(ロ)神は同世界に対してどんな裁きを下されるに違いありませんか。

5 それら宗教指導者たちに導かれるキリスト教世界は,ヤコブ 4章4節の次のような言葉を心に留めてきませんでした。「姦婦たちよ,あなた方は世との交友が神との敵対であることを知らないのですか。したがって,だれでも世の友になろうとする人は,自分を神の敵としているのです」。ですから,キリスト教世界は至高者なる神の敵として,まさしく今日に至るまで,ふしだらな振る舞いをしてきました。確かに同世界は神の保護を受けていません。このような重大な理由で,同世界の存続は相変わらず不安定です。同世界の政治上の友は信頼できませんし,反宗教的な風潮は強まっています。「あなた方はわたしの油そそがれた者たちに触れてはならない」と神が言われたのは,同世界のためではありませんでした。―歴代第一 16:22

「わたしの民よ……彼女から出なさい」

6,7 (イ)啓示 18章4節ではどんな緊急な呼び声が出されていますか。それはだれに向かって語られていますか。(ロ)ずっと前の同様の呼び声は,昔のバビロンで思い悩んでいたユダヤ人に,どのように適用されるようになりましたか。

6 現在の事物の体制の終結の時期のそれらの油そそがれた者とその仲間に対して,神からの次のような緊急な呼び声が響き渡っています。「わたしの民よ,彼女の罪にあずかることを望まず,彼女の災厄を共に受けることを望まないなら,彼女から出なさい」。(啓示 18:4)そうです,偽りの宗教の世界帝国,つまり大いなるバビロンから出てください。

7 この呼び声は,エレミヤ 50章8節および51章6節と45節の言葉を繰り返したものとなっています。それは,バビロンの地で捕囚と流刑の身となって70年間過ごすよう,エホバから宣告された,ユダヤ人の残りの者に対して語られた言葉です。その言葉は,予告されたキュロス大王がユーフラテス川のほとんど干上がった川床を通り,配下のメディア-ペルシャ軍を進めてバビロンの都に入った後,西暦前537年にバビロニアで思い悩んでいたユダヤ人に適用され始めました。

8 (イ)キュロス大王はイザヤ 45章1-6節をどのように成就しましたか。(ロ)キュロス大王によって予表されていた方は,なぜ物事のこの預言的な型にしたがって行動する必要がありましたか。

8 キュロス大王は支配し始めた最初の年に,イザヤ 45章1節から6節の預言を成就する行動を起こしました。同様に,キュロス帝によって予表された,同皇帝よりもはるかに力のあるイエス・キリストは,物事のこの預言的な型にしたがって行動されました。それは,「諸国民の定められた時」が1914年の10月に終了して,キリストが天のエホバの右で王として統治を開始した後の予定の時に起きました。(ルカ 21:24)1914年から同18年に及んだ第一次世界大戦中,霊的なイスラエル人の残りの者は,大いなるバビロンとその政治上の情夫の手で捕らわれの身となっていました。

9,10 (イ)協会の本部職員の8人の成員に対してどんな処置が取られましたか。(ロ)エホバの民の業をやめさせようとする運動の背後に大いなるバビロンがいたことを示すどんな証拠がありますか。

9 例えば,米国では当時,ものみの塔協会の発行した「終了した秘義」と題する最新の書籍が,扇動的であるとして出版を禁止されました。その本の二人の著者はニューヨーク市ブルックリンの連邦裁判所に出頭させられ,不当にも20年の禁固刑を宣告されて,ジョージア州アトランタ市の連邦刑務所に入れられました。その判決を受けたのは,同出版協会の会長と会計秘書および本部の他の三人の職員でした。同僚の一翻訳者はその禁固刑の半分の刑を宣告されて連邦刑務所に入れられました。

10 こうして,1918年7月4日,それら8人の献身したクリスチャンは列車でジョージア州アトランタ市に連れて行かれ,そこで自由をはく奪されました。当時,ものみの塔協会のブルックリン本部の成員は,できる限り事を処理しなければなりませんでした。そのような事態を招いたのはだれのせいでしたか。前述の「捧げ銃をする説教師たち」という本は,こう答えています。「この事件の全体を分析すると,ラッセル派[エホバの証人]を撲滅する運動の背後には当初から諸教会と聖職者がいたという結論に到達する。……20年の刑の宣告を伝えるニュースが宗教刊行物の編集者のもとに届くと,大小を問わずそれら刊行物のほとんどすべてがその出来事を歓んだ。伝統的な宗教雑誌の中に同情の言葉らしきものは一かけらも見られなかった」― レイ・H・アブラムズ著,183,184ページ。

倒壊したが,滅亡したわけではない

11,12 (イ)大いなるバビロンは何をしようと考えましたか。(ロ)同世界は滅亡したわけではありませんが,どのように重大な倒壊を被りましたか。(ハ)エホバの解放された民はどんな影響を受けましたか。

11 しかし,大いなるバビロンの喜びは長続きしませんでした。1919年の春,大いなるバビロンは重大な倒壊を被ったので,その後,同世界が完全に滅ぼされる前に,ある宗教情勢が生じなければなりませんでした。大いなるバビロンは,エホバの民の活動を禁じ,永久に捕らわれたままにさせようと考えました。しかし,1919年3月には,ものみの塔協会の8人の代表者のために刑務所の扉を開くことを余儀なくされ,それら代表者たちは保釈され,後日,すべての嫌疑を完全に晴らしました。

12 今や,大いなるバビロンの喜びは絶えました! 前述の「捧げ銃をする説教師たち」という本は,証人たちを釈放する裁判所の決定に関して,「諸教会はこの判決を沈黙をもって迎えた」と述べています。しかし,エホバの民は大いに喜び,その世界的な組織は修復されました。1919年に米国オハイオ州シーダー・ポイントで開かれた証人たちの大会で,協会の会長は,「王国をふれ告げる」と題する話をして,何千人もの出席者を奮起させました。エホバの証人は再び自由になり,神の王国を公に勇敢にふれ告げることになりました! 大いなるバビロンは倒壊しました。ただし,滅亡したわけではありません。大いなるキュロス,イエス・キリストは,すでに大いなるバビロンを打ち破り,ご自分の忠実な追随者たちを解放されました。

13 国際連盟が舞台に登場した時,大いなるバビロンはどうしましたか。

13 こうして,大いなるバビロンは大戦後の時代に生き残るのを許されました。国際連盟が世界の平和維持機関として提唱された時,アメリカ・キリスト教会連邦協議会は連盟を支持し,同連盟は「地上における神の王国の政治的な表現」であるとの見解を公表しました。提唱された連盟がついに設立された時,大いなるバビロンはその背に上り,こうしてこの象徴的な「緋色の野獣」に乗り始めました。―啓示 17:3

14 (イ)第二次世界大戦中,大いなるバビロンはどんな行動を取りましたか。(ロ)人間の作った平和維持機構が第二次世界大戦後,底知れぬ深みから上って来た時,大いなるバビロンは何をしましたか。

14 第二次世界大戦の勃発と共に,この無力な平和維持機構が無活動という底知れぬ深みに陥った時,大いなるバビロンは乗り物を失ったままにされました。(啓示 17:8)しかし同バビロンは,第二次世界大戦に巻き込まれた57の国々と共にその戦いの場に居合わせました。同バビロンは幾百もの宗教上の分派や宗派に分かれて混乱していても決して当惑しなかったように,戦い合う党派間で忠節心を分かたざるを得なくなっても平気でした。人間の作った平和維持機構が,第二次世界大戦の終わりに国際連合という形を取って,無活動という底知れぬ深みから上って来た時,大いなるバビロンは直ちにその背に上り,同機構に対して影響力を行使し始めました。

バビロンに立ち向かう政治上の諸強国

15,16 (イ)人類は今や,畏怖の念を抱かせる,どんな壮絶な光景に直面しようとしていますか。(ロ)全能の神は啓示 17章15-18節と調和して,どんな結論を下されましたか。

15 全世界の人々は今や,畏怖の念を抱かせる壮絶な光景に直面しようとしています。それは,政治上の諸強国が大いなるバビロンを絶滅させるために同バビロンに立ち向かう光景なのです。それは,宗教はすべて良いものだと誠実に考えている人々にとって,心臓麻痺を起こさせかねない情景のように思えるかもしれません。しかし,宇宙の主権者であられるエホバ神は,大いなるバビロンには全宇宙内のどこにも存在する場所がないばかりか,同バビロンは創造物の領域を十分の期間辱めてきたという結論を下されました。同バビロンは激烈な全き滅びを被らなければなりません。

16 神が大いなるバビロンの滅びをもたらすために用い得る強力な機構,すなわち世の政治上の諸分子は,すでに手元にあります。神の霊感による啓示の書の予告によれば,エホバは大いなるバビロンの愛人をこれに立ち向かわせ,これを裸にさせて,それが実際には悪霊に取りつかれた偽物であることを暴露させるのです! それから,政治上の諸分子は,同バビロンをいわば火で焼いて灰の山にしてしまいます。こうして,妥協しなかった,まことの神の崇拝者たちに同バビロンが加えたのと同様の仕打ちをこれに加えるでしょう。―啓示 17:15-18; 18:24

17 政治上の諸強国は,その反宗教的な行動のゆえにエホバ神の崇拝を行なうようになりますか。それはどうして分かりますか。

17 政治上の諸強国がそのような激しい反宗教的行動を取るからと言って,その後,エホバ神の崇拝を行なうようになるという訳ではありません。バビロンに敵対するそのような激烈な行動を取るからと言って,今度は神の友になるという意味ではありません。さもなければ,それら諸強国は,啓示の書がさらに示しているその後の行動を取るようなことはないでしょう。(啓示 17:12-14)それら諸強国は,自分たちが成し遂げるのをエホバ神に許された反宗教的な偉業を大いに喜ぶかもしれませんが,依然として,エホバ神の徹底した残忍な敵対者で,「この事物の体制の神」である悪魔サタンにより惑わされた状態のままとどまっていることでしょう。―コリント第二 4:4

18,19 (イ)何が生き残って,「平和の君」によりエホバの宇宙主権の正しさが立証されるのを見ることはありませんか。(ロ)しかし,エホバが大いなるバビロンに対してご自分の正しさを立証されるのを見て,永遠に生きる証人となるのは,だれですか。

18 大いなるバビロンが生き残って,壮大な最高潮をなす事柄,つまり「平和の君」によりエホバの宇宙主権の正しさが立証されるのを見ることはありません。この「平和の君」は今や唯一最高の全能の神エホバの右に立つ「力ある神」であられます。―イザヤ 9:6

19 エホバの証人は何ものにも貫かれることがないよう神の保護を受けて圏外にとどまります。(イザヤ 43:10,12)正しい天の指揮のもとで,証人たちは従順に大いなるバビロンから出てしまっています。(啓示 18:4)それら証人たちは自分たちの目撃する事柄から限りない正しい喜びを味わえるでしょう。その後,彼らは永久にエホバの証人となり,エホバが大いなるバビロンに対してご自分の正しさを立証されたことを永遠にわたって証言できるでしょう。―啓示 19:1-3

[脚注]

^ 3節 その実体に関する詳細については,ものみの塔聖書冊子協会発行の「『大いなるバビロンは倒れた!』神の王国は支配す!」(英文)と題する本の468-500ページをご覧ください。

^ 4節 レイ・H・アブラムズは自著,「捧げ銃をする説教師たち」(ニューヨーク,1933年,英文)の中で,僧職者が第一次世界大戦を支持したことを詳しく論じ,こう述べています。「聖職者は戦争にその情熱的な精神的意義と推進力を与えた。……戦争それ自体,地上で神の王国を推し進めるための聖戦であった。祖国のために命を捨てることは,神とその王国のために命を捨てることであり,神と祖国は同意語になった。……ドイツ側も連合国側もこの点では同様で,両者とも神を独占していると考えていた。……大抵の神学者は,戦闘の最も激しい最前線にイエスを立たせてその部隊に勝利を収めさせようとすることに何ら困難を感じなかった。……こうして,教会は戦争体制のかなめとなった。……[教会の]指導者たちは早速戦時体制に基づく組織化を図った。宣戦布告が出されて24時間以内に,アメリカ・キリスト教会連邦協議会は全面的な協力計画を立てた。……多くの教会は要請された事柄をはるかに超えて物事を行ない,新兵を部隊に入隊させる徴募本部となった」 ― 53,57,59,63,74,80,82ページ。

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