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性 ― 実際に役立つのはどの助言か

性 ― 実際に役立つのはどの助言か

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性 ― 実際に役立つのはどの助言か

「幸福に寄与するものは何か」ということについて世論調査を行なうとすれば,性に関係した答えが多いに違いありません。正常で健康な人にはすべて,神から与えられた性的感覚や欲望がありますから,それも当然のことです。

2 性を話題にすることは昔に比べてずっと自由になりました。また性行為も変化しました。早くも十代の初めに性交渉を持つ若者が増加の傾向をたどっています。同棲して結婚関係外の性関係を持つ男女も非常に多くいます。その中には年配になって退職した人々もいます。既婚者の中には,結婚外の性関係を持つことを夫婦合意の上で,グループ・セックス,妻の交換,“開かれた結婚”を試みている人が少なくありません。

3 こうした事柄に関しては,各方面から助言が与えられます。今日,一般的と考えられている事柄は,多くの医師や結婚問題のカウンセラー,牧師などによって勧められたか,少なくとも認められてきたものです。“手引き”書や雑誌の記事を読んでそのようなことを思いつく人々もいますし,学校で行なわれる性教育の影響を受けている人々もいます。さらには,あからさまに性を扱った小説や映画やテレビを見て覚えただけの人もいます。

4 ほとんどの人の知る通り,聖書もこの問題について論じています。しかし,現在多くの人は,聖書の規準を厳し過ぎるとして避ける傾向にあります。しかし,本当にそうでしょうか。それとも,聖書の助言を適用すれば,実際に多くの心痛から守られ,それによって人生をより幸福に過ごせるでしょうか。

結婚前の性関係 ― なぜいけないか

5 性的欲望に目覚め,性的能力が発達するのは普通十代です。結婚前に性行為を行なう若い人は昔から少なくありません。(創世 34:1-4)しかし,近年,婚前交渉は次第に一般的になっており,ごく当たり前のことになっている所さえあります。それはなぜでしょうか。

6 婚前交渉が増えている一つの理由として,映画や大衆小説で性が広く取り上げられていることが挙げられます。若い人の多くは好奇心が強く,『どういうものかやってみたい』という気持ちがあります。それがひいては仲間の圧力を生み,その好奇心を満たすよう,グループの者たちを動かすのです。婚前交渉や結婚関係外の性交が広く行なわれるようになったので,いま多くの僧職者は,当事者双方が『互いに愛し合っている』限りそれは許されると述べています。ですから未婚の男女で『避妊具を使えば,性交したってかまわないではないか』と考える人が多くなっています。

7 医学関係の特別欄執筆者サウル・カペル博士は,婚前交渉の背後にある他の理由とその結果について次のように述べています。

『性は,親に対する反抗の手段として誤用されている。また,一種の“SOS”として注意を引くために誤用される。さらに男らしさや女らしさを“証明”する方法として誤用される。受け入れてもらおうとしてむなしい試みをする際の社交上の支えとして誤用される。

『性がこのように誤用されるなら,その原因となった問題は決して解決されない。大抵は,あいまいになるばかりである』。

8 婚前交渉の理由が何であろうと,婚前交渉がどれほど一般的になっていようと,またいかに多くのカウンセラーや僧職者に認められていようと,聖書の助言は次の通りです。

これが神のご意志で(す)。すなわち,……あなたがたが淫行を避けることです。また,だれもこの点で(他の人)の権利を害するようなことをせず,またそれを侵さないことです」― テサロニケ第一 4:3-6

神はこの点で不必要な制限を課していると感じる人がいるかもしれません。しかし,性そのものがエホバ神からの贈り物で,神こそ生殖能力を持つ人間を創造された方であるということを忘れないようにしましょう。(創世 1:28)人間の性的能力の創造者がそれに関して最も良い助言,人間を悲しみから実際に保護する助言を与えることができるのは理にかなっていないでしょうか。

結果は喜ばしいものですか,それとも苦しいものですか

9 性的魅力や欲望は,しかるべき状態の下ではすばらしい結果を生みます。その一つは,むろん子供です。性関係の一番古い記録には,「さて,アダムはその妻エバと交わり,彼女は妊娠した」とあります。(創世 4:1,新)家庭では産まれる子供は真の喜びとなります。しかし,結婚していない者が性関係を結ぶ場合はどうでしょうか。その結果も,たいてい妊娠と出産です。

10 結婚前に性関係を持つ人の多くは,そんなことをひどく心配する必要はないと感じています。避妊具や避妊薬を使えばいいという気があるからです。所によっては,十代の若者が親の知らないうちにそのような物を手に入れることができるのかもしれません。しかし,「わたしはそんなへまはやらない」と言う大人びた十代の若者の間にさえ,妊娠する例が少なくありません。その証拠に,次のようなニュースが伝えられています。

「昨年ニュージーランドで産まれた赤ん坊の20%余りは,未婚の親の子供だった」。

「結婚式で結婚の誓いを復唱する20歳未満の英国女性3人のうち一人はすでに妊娠している」。

「[アメリカで]十代の少女5人につき一人は,高等学校を卒業しないうちに妊娠する」。

11 婚前交渉から生じる悲痛な結果に,多くの若い男女は苦しんできました。堕胎しようとする人もいますが,感受性の強い人たちは,母親の胎内で発育している子供を殺すということに非常に動揺します。(出エジプト 20:13)女性としての感情や良心も関係してきます。それらは非常に強いので,堕胎をしてしまったあとで多くの人がひどく後悔します。―ローマ 2:14,15

12 十代の妊娠は,成熟した女性の妊娠よりも母子にとって危険です。出産中に死亡する恐れがあるばかりでなく,貧血症や中毒症あるいは異常出血を起こしたり,陣痛が長引いたり,人工分べんをしなければならなくなるなどの危険が大きいのです。16歳未満の母親から産まれた赤ちゃんの場合,生後1年以内に死ぬ可能性は2倍になります。私生児をもうけた親は多くの個人的・社会的・経済的な問題を抱えるようになります。さらに,子供の安全と発育は,安定した家庭環境に大きく依存しているのです。私生児であるためにそういう環境に恵まれない子供は,一生続く深刻な障害を身に負うことになるかもしれません。では,婚前交渉の全般的な結果は喜ばしいものでしょうか。それとも苦しいものでしょうか。『淫行を避けなさい』という聖書の助言は賢明な身の守りとなりますか。

13 聖書のこの助言を無視したために別の面でひどい目に遭った人,つまり病気に冒された人は少なくありません。十代で多数の男性を相手に性生活を始めるようになった女性は子宮頸部のガンにかかる率がずっと高いのです。また,性病にかかる危険も間違いなく存在します。淋病や梅毒はすぐに発見でき治療できるという考え違いをしている人がいますが,国連世界保健機構の専門家たちの報告によれば,今では性病の中に抗生物質の効かないものもあるということです。また医師たちは陰部ほう疹の急増を憂慮しています。それにかかっている女性から産まれる子供は,その害を受ける場合が少なくないからです。聖書の次の警告が真実であることを,悲しい目に遭って学んでいる若者は大勢いるのです。

人が犯すかもしれないほかの罪はすべてその体の外にありますが,淫行をならわしにする者は自分の体に対して罪を犯しているのです」― コリント第一 6:18

14 結婚前に性を経験していれば,結婚後の性生活への適応が容易になると考えている人がいます。ある国では,金持ちの父親が,“教育する”ために息子を売春婦のところへ連れて行くのが普通になっています。それは名案だと考える人があるかもしれませんが,人類のすべての経験を観察してこられた創造者によれば,そうではありません。結婚前に純潔を保つことの方が幸福な結婚のためのはるかに良い土台となります。カナダで行なわれた幾つかの調査によれば,早くから婚前交渉をした十代の若者は,いったん結婚すると配偶者に対して不貞を働く可能性が大きいということです。しかし結婚前に純潔を保つ人は結婚後も貞潔である可能性は大きく,結婚式後もそれ以前と同様結婚を尊重します。

姦淫についてはどうか

15 今日行なわれる,性は自由だという考えに基づいた助言も姦淫を増やしています。ヨーロッパや北アメリカの報告は,結婚している男性の約半数が妻に対して不貞を働くことを示しています。また,今では,人生が一層ロマンチックになると考えて,姦淫を認め自らも姦淫を行なう女性が増えています。

16 聖書はこの点に関して非常にはっきりと次のように助言しています。「夫は妻に対して[性的に]その当然受けるべきものを与えなさい。また妻も夫に対して同じようにしなさい」。(コリント第一 7:3箴言 5章15-20節にも,象徴的な言葉で,結婚している人は結婚関係内で性的な喜びを得るべきであり,配偶者以外のだれかからそれを得るべきでないことが書かれています。幾世紀にもわたる経験はこの助言が身の守りとなることを証ししています。この助言は病気にかかったり,私生児を産むことになったりしないように,身の守りとなります。また姦淫にしばしば伴う心痛や悲しみを避けることができます。

17 男女は結婚の時,互いに相手のものとなることを誓います。どちらか一方が欺きによってその信頼関係を破るなら,どうなるでしょうか。次の報告は,結婚外の関係に関する一調査に基づいたものです。

「約束を破るということには,はなはだしい罪がある。だれを欺きあるいは傷つけるかをはっきりと知っているので,姦淫は個人的レベルの犯罪である」。

このことは,配偶者以外の異性と性関係を持つことを認めるのが建て前の“開かれた結婚”を勧められてそれに大勢の夫婦が従った後に一層明らかになりました。時たつうちに,“開かれた結婚”を先頭に立って唱えていた人たちが持説をひるがえさなければならなくなりました。そういうひどい結果になったので彼らは,「やはり相手の貞節に対する確信こそ,大方の結婚の重要かつ必要な特質である」と結論せざるを得ませんでした。

18 姦淫はねたみや精神の不安定を生むものです。神はそれらがもたらす害について賢明な助言を与えておられます。(箴 14:30; 27:4)ですから,自分の方がよく知っている,姦淫は正当な行為だと考える人たちもいますが,事実はそうでないことを示しています。臨床心理学者のミルトン・マツ博士は次の点を率直に認めています。

「自分の生活の中で結婚関係外の性行為が行なわれた場合,ほとんどの人はそれによって打ちのめされる。これは,それを行なった当人であれ,その配偶者であれ変わりはない。……

「結婚外の性の問題を取り扱ってみて分かったことは,結婚関係外の性行為は関係者すべてに非常な苦しみをもたらすということである。幸福になる方法としては,結婚外の性は何の役にも立たない」。

夫婦の性関係

19 聖書は,性に関して避けるべき事柄だけを述べているわけではありません。どんな事柄を積極的に行なえば,人生を実りあるものにするのに役立つかをも教えています。

20 聖書は,性を単なる生物学的機能として述べるのではなく,性が夫婦双方の喜びの源となり得ることを正しく示しています。そして,夫婦間の性的表現に『酔う』とか『陶酔する』といったことに触れています。(箴 5:19,新)そのような率直さは,夫婦間の正常でむつまじい関係に対するとりすました態度や,それを恥ずべきこととする考え方を払いのけてくれます。

21 創造者は夫に対して,「妻を愛しつづけなさい。妻に対して苦々しく怒ってはなりません」と助言しておられます。(コロサイ 3:19)性関係が真に喜びあるものであるためには,夫婦の間に苦々しい感情や憤りといった壁があってはなりません。それがなければ,夫婦関係は楽しいものとなります。それこそその本来あるべき状態です。それは深い愛や自分が相手のものとなっていることや優しさを表現する一つの方法です。

22 神はさらに,「知識にしたがって」妻と共に住むことを夫に勧めておられます。(ペテロ第一 3:7)したがって,夫は妻の感情や身体の周期を考慮に入れなければなりません。夫が無神経な要求をしたりせず,考え深くて妻の感情や必要に敏感であれば,妻も夫の感情や必要に一層敏感になることでしょう。そうすれば夫婦とも満足を得ることになります。

23 妻は冷たい,反応を示さないといったぐちがよく聞かれます。その一つの原因は,夫が性交を望む時以外は,よそよそしかったり,むっつりしていたり,あるいは厳しい態度を取ることにあるかもしれません。しかし,夫が妻に対していつも温かで親しみやすいなら,妻が冷淡になることはあまりないのではないでしょうか。「優しい同情心,親切,へりくだった思い,柔和,そして辛抱強さ」を身に着けるようにという助言に注意を払う夫の方に妻はよりよく反応するのは当然のことです。―コロサイ 3:12,13

24 聖書は,「受けるより与えるほうが幸福である」と述べています。(使徒 20:35)この言葉はいろいろな事にあてはまり,性的な喜びを得る面でも原則として実際的な助けとなっています。どうしてそれが助けになるのでしょうか。妻が性関係から喜びを得るかどうかは,主に心と思いにかかっています。近年になって,女性が自分の肉体の快感や喜びに注意を集中することが盛んに強調されるようになりましたが,多くの人はそれでも満足を得られないようです。しかし,この問題を研究したマリー・ロビンソン博士は,妻が夫に対する敬意を培い,受けるよりも『与える』手段として性交を考えるなら,妻自身がもっと満足を得ると指摘しています。同博士はこう述べています。

「[妻は]夫に対して新たに優しさや気遣いを示すことを,性の抱擁の目的の一部にしていることに次第に気付く。そして自分が性の面で夫と打ち解けることが夫を喜ばせていることを見また感じとる。そしてこの過程は循環する。夫の喜びが増せば,それによって妻の喜びは一層大きくなる」。

以上のように,他の人に与え,他の人に関心を持つようにという聖書の助言は,こうした親密な面においても人の幸福に寄与するのです。―フィリピ 2:4

25 この助言に注意を払うことは別の面でも益になります。命を伝える能力を含む性に対する見方は,命の与え主である神との関係に影響します。ですから,淫行や姦淫を避けることが賢明であると言えるのは,それが身体的・精神的・感情的な面で益となるという理由だけにとどまらず,それらの行為は『神に対する罪』でもあるからです。(創世 39:9,新)また,配偶者に対して忠実でなければならないことに関し,ヘブライ 13章4節はこう述べています。

「結婚はすべての人の間で誉れあるものとされるべきです。また結婚の床は汚れのないものとすべきです。神は淫行の者や姦淫を行なう者を裁かれるからです」。

26 性が人の幸福とどれほど関係が深いかを考慮するなら,将来の事まで考える必要があります。聖書は,わたしたちの永続的福祉を考えに入れて,自分の行ないが自分自身と他の人々に明日,そして来年,また一生を通じて影響を与えることを考えるよう助けてくれます。

[研究用の質問]

今,性に関する聖書の助言を考えなければならないどんな理由がありますか。(箴 2:6-12)(1-4)

婚前交渉が増えたのはなぜですか。(5-7)

神は婚前交渉をどうご覧になりますか。(8)

婚前交渉はどんな結果を生みますか。(9-12)

他のどんな理由から,性に関する聖書の助言を尊重すべきだと思いますか。(13,14)

姦淫についての聖書の助言に関して,証拠からどんなことが分かりますか。(15-18)

夫婦間の性について聖書は何を勧めていますか。(19-22)

この助言に従えばどんな益がありますか。(23-26)

[70ページの囲み記事]

「新しい『性の自由』は『解放的』であるかもしれない。……しかし,どこに行っても絶えず耳にすることは,それとは大分違う事柄である。それは,フリー・セックスが確かに大部分の人に何らかの影響を与えているということである。フリー・セックスは有害である」― 特別欄執筆者G・A・ゲイヤー,「オレゴニアン」紙。

[71ページの囲み記事]

「不貞は,罪の意識・心痛・不信を生む傾向があるが,一方貞節は安心感と深い喜びをはぐくむ」― 夫婦・家族相談センターの理事C・B・ブロドリック博士。

[69ページの図版]

聖書の助言に従う人は,不道徳な行ないをしないので,望まないのに妊娠したり,性病にかかったりなどして不道徳の結果を悲しむようなことはない