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『彼らはもはや飢えることがない』

『彼らはもはや飢えることがない』

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『彼らはもはや飢えることがない』

1 食物にかかわる世界の問題はどれほど深刻ですか。

今日,世界が直面している主要な問題の一つは食糧にかかわる問題です。食物の価格が高いために多くの人々は困っています。他の人々は現実の飢餓に直面しています。最近の報告によれば,必要な食物がないために,毎年4,000万人 ― ある年には5,000万人もの多くの人々 ― が亡くなっています。この人数のおよそ10倍もの人々はひどい栄養不良のために苦しんでいます。中には食べきれないほどの食物を生産している国もありますが,政治的な抗争や商業上の貪欲のために多くの場合,食べ物を最も必要としている人たちに余剰食糧を届けようとする努力が妨げられています。―啓示 6:5,6と比べてください。

2 物が豊富な国でさえ,どうして人々には憂慮すべき理由がありますか。

2 物が豊富にあるように見える国でも,人々は不穏な将来に直面しています。それはなぜですか。多くの場合,農業の現行の生産方法は石油に依存しており,地球のその供給量には限度があるからです。また,市販の肥料に依存するあまり,地球の水資源は汚染されています。作物を守るはずの殺虫剤が余りにも大量に用いられているため,土壌の将来の生産性の頼みの綱である有機質が破壊されています。人間が努力を払っている,ほとんどあらゆる分野で重大な問題が増大し続けています。ある知識人の国際的な公開討論会の議長を務めたアウレリオ・ペッチェイは,この世界を「大災害から大災害へと傾きながら跳ね返って飛んでゆく弾丸」に例えました。このような記録を持つ世界に将来に対する希望をかけるのは現実的なことでしょうか。―エレミヤ 10:23。箴言 14:12

3 全人類が十分の食物に恵まれるようにすることを保証できるのはだれですか。何があなたにそのような確信を抱かせますか。

3 何百万もの人々は,ただ神のみが与え得る助けを自分たちが必要としていることを認めてきましたが,それは分別のあることです。それらの人たちは聖書の預言を調べた結果,エホバ神がすでにその天的なみ子,イエス・キリストを即位させ,その方に地球全部を所有物としてお与えになられたことを知っています。(詩編 2:7,8)その方は,地の産物が全人類に寛大に供給されるようになることを保証する知恵と能力とを持っておられます。(詩編 72:7,8,16。コロサイ 1:15-17)現在の利己的な体制が取り除かれる時,キリストは生き残る人間の努力を導いて,全地が物をよく産する楽園となるようにされます。

4 そのような物質の備えから益を受けるには,わたしたちは今,何をしなければなりませんか。

4 しかし,その方の支配の益にいつまでもあずかる人たちは,人はパンだけで生きるのではないことを識別する人たち,つまり霊的な価値や,神のご意志を学んでこれを行なうことから力をくみ取る重大な必要性を正しく評価する人たちです。聖書は繰り返しこのことの重要性を強調しています。(ヨハネ 4:34; 6:27。エレミヤ 15:16)イエスも次のように述べてその点を強調されました。「『人は,パンだけによらず,エホバの口から出るすべてのことばによって生きなければならない』と書いてあります」。(マタイ 4:4)わたしたちも現在の世の終わりを生き残りたいなら,今そのような霊的な食物が必要です。ヨセフとその兄弟たちに関する聖書の記述は,どうすればそれを得ることができるかということをわたしたちのために例証するものとなっています。

「ヨセフのところに行け」

5 ヨセフはどのようにしてエジプトで奴隷になりましたか。

5 神は,アブラハムのひ孫,ヨセフに,ヨセフが生活の中で際立った役割を果たすようになることを示す夢をお与えになりました。この事と,彼がその父によって特別に愛されていたこととのために,ヨセフの10人の異母兄弟はヨセフを憎みました。彼らはヨセフを殺そうと謀りましたが,ついに彼を奴隷として売り渡し,彼はエジプトに連れて行かれました。さて,ヨセフに関する神の目的はどのようにして達成されることになりましたか。―創世記 37:3-11,28

6 (イ)ヨセフはどうしてファラオの注意を引くようになりましたか。(ロ)ファラオを当惑させたのはどんな夢でしたか。

6 ヨセフが30歳の時,エホバはエジプトの支配者,ファラオに二つの夢を見させ,そのために彼は悩まされました。最初の夢の中で彼は「姿が美しく肉づきの良い」7頭の雌牛と,同時に「姿が醜く,肉づきも悪い」他の7頭の雌牛を見ました。すると,そのやせた雌牛は肥えた雌牛を食べてしまいました。もう一つの夢の中でファラオは,1本の茎についた「丸く膨れた良い」七つの穂と,「やせて東風に焦がされた」ほかの七つの穂を見ました。またもや,そのやせたのが丸く膨れたのを食い尽くしてしまいました。このすべては何を意味していましたか。エジプトの知者はだれ一人,その夢を解き明かすことはできませんでした。しかし,ファラオの献酌人が,かつて獄にいた時,仲間の囚人,ヨセフが夢を正確に解き明かしたことを思い起こしました。ファラオは早速ヨセフを呼び出しました。―創世記 41:1-15

7 (イ)ヨセフはどのようにしてエジプトの食糧管理者となりましたか。(ロ)飢きんがひどくなった時,エジプト人は生きてゆくために何をしましたか。

7 ヨセフは己に誉れを求めることなく,ファラオにこう語りました。「ファラオの夢はただ一つのことです。まことの神はその行なおうとしておられる事をファラオにお告げになったのです」。(創世記 41:16,25)ヨセフは,2番目の夢も最初の夢と同じ意味であることを説明し,その確かさを強調しました。エジプトで7年の豊作の後に7年の飢きんが続くことになっていました。彼は飢きんに備えて豊作の年の間に穀物を貯蔵して管理する有能な人を立てるようファラオに勧めました。ファラオは確かに神がこのすべてをヨセフに明らかにしたことを認め,ヨセフを食糧管理者として任じ,エジプトにおいてファラオの権威に次ぐ権威を彼に与えました。予言どおり,異常なまでの豊作の7年が訪れ,ヨセフは膨大な量の食糧を貯蔵させました。それから,予告されていた飢きんがその地を固く捕らえました。人々がパンを求めてファラオに嘆願すると,彼は,「ヨセフのところに行け。何でも彼の言うところを行なうのだ」と答えました。それでヨセフは彼らに穀物を売り,最初は金で支払わせ,やがて家畜で支払わせ,そしてついには身柄と土地とを引き換えにして支払わせました。彼らは生き続けるために,その身をファラオへの奉仕のために完全に引き渡さなければなりませんでした。―創世記 41:26-49,53-56; 47:13-26

8 (イ)ヨセフの異母兄弟は,必要な食糧を得るために何をしなければなりませんでしたか。(ロ)この記録はなぜ保存されてきましたか。

8 同時に,その飢きんはエジプトの周りの土地にも影響を及ぼしました。やがてヨセフ自身の異母兄弟がカナンから下って来ました。彼らがヨセフを奴隷として売り渡してから20年余りたっていたので,彼らはその兄弟を見分けることができませんでした。彼らはヨセフの夢の中でずっと前に予告されていたとおり,彼の前で身をかがめ,食糧を請い求めました。(創世記 37:6,7; 42:5-7)ヨセフは巧みに兄弟たちを試み,自分と父に対する彼らの態度が本当に変化したことを示す,納得のゆく証拠を見いだしました。ついに彼は自分がだれであるかを明らかにし,神が彼らに先立って自分をエジプトに遣わしてくださったのは,実際,「命を長らえさせるため」であったということを説明しました。ヨセフの指図で彼らは父と家族の者たちをエジプトに移動させました。(創世記 45:1-11)このすべてはわたしたちの益のために記録されており,その預言的な意義は今日の出来事と関係があります。―ローマ 15:4

わたしたちの飢えと渇きを今充足させる

9 (イ)今日の世界はどうして霊的な飢きんに見舞われているのでしょうか。(ロ)これはなぜ人類の諸問題の根本原因の一つですか。

9 人類の諸問題の根本原因の一つは霊的な飢きんです。人類はエホバを見捨てたために,エホバはそのみ言葉を理解することを人類に許しておられません。その結果,彼らは『パンの飢きんではなく,水の飢きんでもなく,エホバの言葉を聞くことの飢きん』に遭っています。(アモス 8:11)霊的に飢えた人々は,人生にはどんな意味があるのか,人々はなぜ死ぬのか,将来に対する真の希望が果たしてあるのか,などという重要な疑問の答えを模索しています。そのような人々は霊的な飢えのために正気を失い,多くの場合,自分たちの渇望を充足させようとするあまり,不道徳な行為や犯罪行為にかかわって,自分自身と他の人々を傷つけています。

10 (イ)イザヤ 65章13,14節の成就として,エホバの僕たちの間にはどんな状態が見られますか。(ロ)霊的な飢きんと霊的な豊作の期間は,いつの時期に当たりますか。

10 これとは対照的に,エホバはご自分の忠節な僕たちのために霊的に豊かなものを与えてこられ,彼らの間には純粋の愛があります。エホバは,ご自分が霊感を与えて記させたみ言葉の中の人に満足を与える真理を明らかにして,彼らが理解できるようにさせ,ご自分の証人として行なうべき仕事を彼らにお与えになりました。彼らはそれらの真理を,霊的に飢え渇いて,神との関係において命を求める他の人たちと喜んで分かち合います。(イザヤ 65:13,14。ルカ 6:21)古代エジプトでは当時,7年の豊作に続いて7年の飢きんが生じました。しかし,現代においては霊的な飢きんと霊的に豊かに恵まれている期間は時を同じくして進行しています。

11 (イ)ファラオとヨセフはそれぞれだれを予表していますか。それはどうしてですか。(ロ)「大群衆」の取る道は,飢きんに見舞われたエジプト人のそれとどのように似ていますか。

11 今日,支配者はファラオではありません。大いなるファラオであるエホバ神は宇宙主権者です。エホバはイエス・キリストにご自分の権威に次ぐ権威をお授けになりました。大いなるヨセフであるイエスは,命を支える霊的な食物を分配する責任をエホバから委託された方です。この世の宗教的ならびに一般的な人生哲学のために人類は霊的な飢えで責めさいなまれるままにされています。ただイエス・キリストに頼り,イエスの指図なさる仕方で霊的な食物を得てはじめて,彼らは養ってもらうことができるのです。飢きんに見舞われたエジプト人によって予表されていた何百万もの人々は,そのようにして養われています。それらの人々はイエス・キリストを通してエホバに,時の限りを定めずに全く献身し,そのようにして来たるべき神の憤りの日に生き残る者となる見込みのある大群衆の中に含められています。

12 (イ)天におられるイエスは,どのようにして霊的な食物をこの地上のわたしたちが得られるようにしておられますか。(ロ)「忠実で思慮深い奴隷」の実体を,納得のゆく仕方で見分けさせるものとなるのは何ですか。

12 しかし,イエスは天におられます。どのようにして,この地上にいるわたしたちに益をもたらす霊的な食物を備えておられるのでしょうか。イエスはご自分の「忠実で思慮深い奴隷」を通してそのようにすると予告されました。(マタイ 24:45-47)それは,なお地上にとどまっている,霊によって油そそがれた者たちの会衆で成り立っている,複合的な「奴隷」です。(イザヤ 43:10と比べてください。)そのような人々の残りの者は依然として地的な舞台にとどまっています。この真のクリスチャン会衆は,その教えと行ないを聖書と比べることによって,容易に見分けることができます。その会衆は純粋に,イエスのお命じになった事柄を教えています。ですから,それは世の政治的な事柄にかかわりを持たず,かえってその成員はすべて神の王国を公にふれ告げる人たちです。それらの人々はキリスト教世界の諸教派の中で分裂したりしてはいません。それらの人々はイエスが言われたとおりに結ばれており,彼らはすべてその主に見倣ってエホバの証人となっています。(ヨハネ 17:16,20,21; マタイ 24:14; 28:19,20; 啓示 1:5を参照してください。)彼らは霊的に豊かなものを享受し,大いに喜んでそれを他の人々と分かち合っています。

13 (イ)多くの人々はどのようにして,自分がヨセフの10人の異母兄弟のような者であることを示してきましたか。(ロ)わたしたちはすべて,どうすれば,キリストが「奴隷」級を通して備えてくださる霊的な食物から益を受けられますか。

13 多くの人々はそれら油そそがれたクリスチャンをあざけって,『あなた方は自分たちのほうがわたしたちよりも勝っていると考えているのですか。自分たちだけが正しいのだと考えているのですか』と言ってきました。しかし,やがてある人々は,エホバが確かに地上に証人たちを持っておられ,それら証人たちは本当にエホバの言葉をふれ告げていることを謙遜に認めます。それらの人々は,唯一のまことのクリスチャン会衆があって,その成員は結ばれていることを聖書が示しているという事実を正しく評価するようになります。(エフェソス 4:5。ローマ 12:5)そのような人々は諸事実を正直に,また謙遜に調べて,その組織に導かれて来ました。ヨセフの10人の異母兄弟は,イエスの油そそがれた追随者たちを以前迫害したり,あるいはそうした迫害者たちを精神的に支持したりしましたが,今では本当に心を変化させたことを明らかに示している,そのような人々を予表していました。(ヨハネ 13:20)それらの人々はイエス・キリストがその『忠実な奴隷』級を通して備えてくださる霊的な食物を受け入れています。彼らは,ものみの塔の出版物の中で論じられている聖書の真理で自分を養い,エホバの証人の集会に定期的に出席し,そして神のご意志を行なう業に活発にあずかるにつれ,霊的な強さを得ています。あなたもこれらの謙遜な人たちの一人ですか。―ヘブライ 10:23-25。ヨハネ 4:34と比べてください。

14 この聖書劇から学べる原則にしたがって生活する人たちは,どんな霊的な状態を享受しますか。

14 こうして,愛の気持ちから自分の命をイエス・キリストを通して自分たちの創造者に自由に用いていただけるようにする人たちはすべて,人を幸せにし,さわやかにするものを享受します。霊的に,『彼らはもはや飢えることも渇くこともありません……み座の真ん中におられる子羊[イエス・キリスト]が,彼らを牧し,命の水の泉に彼らを導かれるからです』。―啓示 7:16,17。イザヤ 25:6-9

[研究用の質問]