内容へ

目次へ

予告された世界の滅びはいつ来るか

予告された世界の滅びはいつ来るか

第7章

予告された世界の滅びはいつ来るか

1 神は人類に対してどんな壮大な目的を持っておられますか。

戦争,犯罪,地球の汚染などがなくなるのを見るとすれば,それはなんと大きな安らぎでしょう。ほんとうに義に基づく管理機関のもとで生活できたら,どれほど快いことでしょう。そうした場所では,人は自分の家族とともに心ゆくまで安全を楽しむことができます。聖書は,神がこれを現実のものとしてくださることを約束しています。しかし,それはいつのことですか。

2 (イ)「エホバの日」が来る時に不意に捕われるのはどんな者たちですか。(ロ)どうすればそうしたことが自分の身に起きるのを避けられますか。

2 神の義の新秩序への道を開く世界の滅びに関して,イエス・キリストの一使徒はこう書きました。『エホバの日はまさに夜の盗人のように来る』。ついで彼は,神のことばを研究し,それに注意を払う人びとに語りかけて,「しかし,兄弟たち,あなたがたはやみにいるのではありませんから,盗人たちに対するように,その日が不意にあなたがたを襲うことはありません」とつけ加えました。(テサロニケ第一 5:2,4)警告に注意を払わない者たちは不意を突かれることになるでしょう。「エホバの日」が到来する時,彼らは,突然わなにかかってそれから逃れることのできない動物のようになります。しかし,あなたがそのような経験をする必要はありません。さきの聖句が述べるとおり,『やみにいるのではない』人びとがいます。それは決して,その人びと自身の知恵によるのではありません。むしろそれは,彼らが神のことばを研究し,それを心に留めているためです。神のことばはわたしたちの時代についてなんと述べていますか。―ルカ 21:34-36

3,4 (イ)二十世紀に起きたできごとの深い意味はどこに説明されていますか。(ロ)聖書預言の中に示されるどんな四つの大きな点をこれから調べますか。

3 それはこの二十世紀のできごとを描写しています。しかも,およそ二千年も前にそれを行なったのです! そのできごとの多くは一般に知られていますが,聖書だけがその深い意味を説明しています。

4 聖書中にある,わたしたちの時代に関する情報の中には次の点があります。(1)神が「人間の国」に対する支配権を「その望む者」に与えるのはどの年か。(2)「事物の体制の終結」として知られる時期にはそのことを示すどんなできごとがあるか。(3)「事物の体制の終結」の時が始まってから,予告された世界の滅びが来るまでの時間の長さはどれほどか。(4)世界の滅びがまさに始まろうとするその最後のしるしとして,世界の情勢はどのような著しい進展を見るか。これらの点を一つずつ調べましょう。

指定された年 ― 1914年

5 1914年が特別の意味を持つ年として聖書の中で特に指定されていることを,エホバの証人はどれほど早く悟りましたか。

5 西暦1914年は,天における大きなできごとが人間の物事に多大な影響を及ぼす年として,聖書の預言の中で特に指定されています。早くも1876年,エホバの証人(当時は“聖書研究生”として知られていた)はそれを悟り,そのことを広く告げ知らせました。あなたはご自分の聖書を使い,その点をご自身で詳しく調べることができます。

6 (イ)聖書のダニエル書第4章を開き,その3節と17節で何が述べられているかを示しなさい。(ロ)エホバが「王国」をお与えになるのはだれですか。

6 ご自分の聖書のダニエル書第4章を開いてください。そこには,地に対する主権の行使に関して神が何を意図しておられるかを啓示する預言があります。その預言の目的は,『至高者人間の〔王国〕を治めて〔その望む者〕にこれを与へたまふといふ事をすべての者に知らしめんがためなり』と述べられています。(3,17節〔新〕)わたしたちは,至高者が選んで「王国」を与えるこの「者」がイエス・キリストであることを知っています。聖書巻末の本は,「世の王国」が天の王としてのキリストに与えられる時のことについて述べています。(啓示 11:15; 12:10)つまり,ダニエルのこの預言は,至高の神が「世の王国」をご自分のみ子イエス・キリストに授けて人間の物事に介入される時のことを扱っている,という意味です。預言はそれをいつであるとしていますか。

7 ダニエル書 4章にある預言的な夢の要旨を述べなさい。それはネブカデネザル王にどのように当てはまりましたか。

7 ダニエルの記録した預言的な夢は,一本の巨大な木が切り倒され,『七つの時』が過ぎるまでそれに鉄と銅のたががかけられることに関するものです。その『七つの時』の間それには「獣の心」が与えられる,と述べられています。(ダニエル 4:10-17)これは何を意味していますか。神はご自分の預言者ダニエルを立ててこう説明させました。つまり,バビロンの王ネブカデネザルはその王座からはずされ,人びとの中から追われて獣のような生活をします。七年ののち,王は正気を取り戻して神の支配権の至上性を認め,彼自身は王位に復します。(ダニエル 4:20-37)しかし,このすべてにはさらに大きな意味があります。それが聖書に記録されているのはそのためです。

8 (イ)その預言のさらに大きな意味はどんな王国に関するものですか。(ロ)このさらに大きな成就において,木が切り倒されることは何を表わしていますか。どのような意味で『それに獣の心が与えられ』ましたか。

8 このさらに大きな意味は,地上に生きるものすべてが益を受ける支配に関連したものです。その預言が述べるとおり,『すべての者がそれから食を得』,動物や鳥さえそれから保護を得ます。(ダニエル 4:12。マタイ 13:31,32と比べてください。)こうしたものを真実に備えることができるのは神の王国の支配だけです。その王国支配の義の原則はユダの統治を通して幾世紀もの間表明されていました。ユダには,ダビデの王統を引く王がエルサレムにいました。しかし,その民の不忠実さのゆえに,エホバは,彼らがバビロニアの王ネブカデネザルによって征服されることを許されました。それはあたかも,夢に出てきた巨大な木が切り倒され,その切り株にたががかけられたかのようでした。それ以後,異邦の諸政府が世界の覇権を握り,ネブカデネザルの支配したバビロンがその筆頭でした。これら異邦の諸王国は聖書の中で「獣」として表わされています。(ダニエル 8:1-8,20-22)したがって,統治という点で起きていた事がらは天からの使いが発表したとおりでした。『その心は変はりて人間の心のごとくならず 獣の心をうけて七つの時を経ん』。(ダニエル 4:16)しかし,やがてその『七つの時』は終了して『たが』は取り除かれ,エホバの言われたとおり「世の王国」を授けられた者が世界の覇権を行使しはじめるにつれ,その「木」は大きくなってゆきます。

9,10 (イ)『七つの時』の長さの算定において,『一時』はどれほどの長さになりますか。聖書はそれをどのように示していますか。(ロ)『七つの時』はいつ始まりましたか。それはどれほどの年数に及びますか。いつ終わりますか。

9 その『七つの時』はどれほどの期間になるのですか。それは文字どおりの七年よりはるかに長い期間でした。なぜなら,その数百年のちに,イエス・キリストは,それがまだ終了していないことを示したからです。西暦第一世紀に,イエスはそれを,「諸国民の定められた時」と呼ばれました。「諸国民」とは,紀元前607年に起きたバビロンのエルサレム征服以来世界の覇権を保持してきた異邦の諸国民です。―ルカ 21:24

10 聖書が預言的な「時」に関してどのように述べているかに注意を払ってください。啓示 11章2,3節は,1,260日が四十二か月,つまり3年半となることを示しています。啓示 12章6,14節は同じ日数(1,260)のことを述べていますが,それを「一時と二時と半時」,つまり『三時半』としています。したがって,『一時』は360日であるはずです(3 1/2×360=1,260)。さらに,霊感のもとに神の別々の預言者ふたりによって記された,『一日を一年とする』定めにしたがえば,ダニエルの預言にある預言的な「時」の各一日はまる一年を表わすことになります。(民数記 14:34。エゼキエル 4:6)この点が定まれば,その『七つの時』を2,520年(7×360)と算定することは難しくありません。ユダにおける神の模型的な王国がバビロンによって倒された紀元前607年の秋から数えれば,それから2,520年めは1914年の秋になります。(606 1/4+1913 3/4=2,520)。「世の王国」が,天の王座についたイエス・キリストに託されるのはその時です。

11 1914年の意味について歴史家はなんと述べていますか。

11 エホバの証人は,聖書が1914年を明確に指定していることを悟ったのち,それがどのような年になるかを見るために何十年か待たなければなりませんでした。1914年の初め,世界の平和な情勢は,世界の指導者たちを含む多くの人びとに,何ごとも起こらないかのように思わせました。しかし,その年の夏が終わらないうちに,世界は,人類史上例のない大戦争に投げ込まれていました。その年のできごとについて,オックスフォード大学の歴史学者A・L・ロウスはこう書いています。

「一つの時代から別の時代へと,その変わりめとなった年を求めるとすれば,それは1914年であった。それは,安心感のあった古い世界を終わらせ,われわれが今日日ごとにいだく不安をその特色とする現代の始まりとなった年である」。23

また,英国の政治家ウインストン・チャーチルの生涯を扱った本の書評の中にも次の一文があります。

「1914年6月28日にサラエボで起きた銃撃事件は,安全と創造的理性とを備えた世界を打ち砕いた……以来世界は決して元の状態に戻っていない……それは転向点であり,魅力と静穏と美しさのあったきのうの世界は消え去って二度とやって来ない」― ランドルフ・チャーチル著「ウインストン・S・チャーチル伝」第2巻の書評。24

聖書預言によって2,500年も前に指定されたその年は,確かに歴史の転向点となりました。さらにほかのできごとが展開するにつれ,その真の意味はいよいよ明らかになりました。

12 1914年およびその後の人間の物事の大変動にはどんな理由がありますか。

12 キリストが王座について人類世界に対する支配を始める時に地上において前例のない大戦争が起きるということは,初めのうち多少不可解に思えるかもしれません。しかし,神から離れた人類の「世の支配者」は悪魔サタンであることを忘れないでください。(ヨハネ 14:30)彼は,新たに誕生してキリストの手中に置かれた神の王国が地上の物事を制御するようになることを望みませんでした。明らかに,宇宙的に重要なこのできごとから人間の注意をそらせようとしたサタンは,人間世界を駆り立てて,主権をめぐる戦争へと至らせました。さらに,聖書が示すとおり,王国が誕生して十分な活動を始めた時,サタンと配下の悪霊たちはその新たに生まれた政府を食い尽くそうとして立ち構えました。その結果はどうなりましたか。「天で戦争が起こった」。「大いなる龍,すなわち,初めからのへびで,悪魔またサタンと呼ばれ,人の住む全地を惑わしている者は投げ落とされた。彼は地に投げ落とされ,その使いたちもともに投げ落とされた」。サタンは,自分に残されている「時の短いこと」を知り,大きな怒りをいだきました。(啓示 12:3-12)このことの結果はどのようになりますか。聖書は十九世紀も前にそれを正確に描写しました。

特別の意味を持つできごと

13 イエスが『自分の臨在と事物の体制の終結のしるし』について語られたことにはどのような背景がありましたか。

13 西暦33年の昔に,イエスは『自分の臨在と事物の体制の終結のしるし』を詳細に描写しました。それは聖書のマタイ 24,25章,マルコ 13章,ルカ 21章に記録されています。エルサレムで一群れの弟子たちとともにいたさい,イエスはそこに立つ壮麗な神殿が倒壊することについて予告されました。そのしばらくのち,彼が市の外の丘の中腹に腰を下ろすと,弟子たちがさらに知ろうとしてこう尋ねました。「わたしたちにお話しください。そうしたことはいつあるのでしょうか。そして,あなたの臨在と事物の体制の終結のしるしには何がありますか」。―マタイ 24:1-3

14 イエスが「しるし」として述べられた意味あるできごとのうち,その幾つかを挙げなさい。

14 追随者を得ようとしてキリストの名をかたる者たちに惑わされないようにと警告したのち,イエスはこう答えました。「あなたがたは戦争のこと,また戦争の知らせを聞きます。恐れおののかないようにしなさい。これらは必ず起きる事だからです。しかし終わりはまだなのです[あるいは,すぐには起こりません]。というのは,国民は国民に,王国は王国に敵対して立ち上がり,またそこからここへと食糧不足や地震があるからです。これらすべては苦しみの劇痛のはじまりです」。ルカ 21章11節は,イエスが『そこからここへと疫病がある』とも言われたことを示しています。イエスは「不法が増す」ことを警告し,そのために「大半の者の愛が冷える」と言われました。そして,意味深いことにも,「王国のこの良いたよりは,あらゆる国民に対する証しのために,人の住む全地で宣べ伝えられるでしょう。それから終わりが来るのです」と予告されました。―マタイ 24:4-14

15,16 (イ)その中には西暦70年のエルサレムの滅びよりも前に起きたものがありますか。(ロ)別のさらに重要な成就があることはどんなことからわかりますか。

15 しかし,『こうした預言の中には,エルサレムがローマ人の手で滅ぼされた西暦70年より前の時代に成就したものがあるのではないか』という質問が出されるかもしれません。そうです,そのようなものもあります。しかし,預言そのものが示しているように,さらに多くのことが含まれていました。イエスは,弟子たちが当面関心を持つ質問に答えながら,その機会を使って,遠い先のさらに重要な問題に関する情報を与えられました。イエスは,「人の子」が「力と大いなる栄光」を伴って到来する時についても語っておられること,またそこで話していることが「神の王国」の到来と関係のあるものであることを示されました。―ルカ 21:27,31

16 これらのことは西暦70年のエルサレムの滅びまでには起こりませんでした。第一世紀の終わり近くに書かれた聖書巻末の書「ヨハネへの啓示」は,神の王国に関係したこれらのできごとがまだ将来のものであることを示しました。(啓示 1:1; 11:15-18; 12:3-12)「ヨハネへの啓示」はまた,象徴的な表現のもとに,イエスの予告した戦争・食糧不足・疫病が将来に異例な規模で成就することを示しました。それは,キリストが神の王国に敵対する者すべてに対する征服を始め,またそれを完了する時です。(啓示 6:1-8)しかし,弟子たちに対するイエスの預言の大部分が第一世紀に確かに成就したということは,それが真実なものであるという証印となり,また,その預言に含まれるほかのすべての点の成就を確信するたしかな根拠となります。

17 今日の世界の状態は1914年以前の状態とほんとうに大きく異なっていますか。

17 これらの預言は,この二十世紀に,そのさらに大規模で完全な成就を見ましたか。七十歳以下で,事情を十分に知らない人びとにとって,周囲にある今日の世界の状態はそれほど意味のあるものに思えないかもしれません。今とは大いに違った時代の記憶がないために,われわれの時代はこれでしごく“正常”なのだろう,と感じるかもしれません。しかし,さらに年長の人びと,また歴史に通じた人びとは,決してそうではないことを知っています。たとえば,1914年に世界に生じたできごとに関して,スイスの教育機関で使われている歴史の一教科書はこう述べています。

「その戦争に巻き込まれなかった国はわずかに15か国であった……しかし,それらの国の中に,調停役を果たせるほどの大国は一つもなかった。こうしたことは世界史上に例のないことであった。これほど規模の大きな戦争はかつてなかった。『民は民に,国は国に逆らって立つ』という聖書の預言がまさに成就した」。―グスタフ・ウイゲット著「三州同盟から民衆同盟に至るスイス史」。25

18 広範囲な戦争だけが「しるし」であると考えるのはなぜ誤りですか。

18 しかし,イエスが「しるし」として述べられたのは,『民は民に,国は国に逆らって立つ』ということだけではありません。イエスは一つの例えを使ってこう話されました。「いちじくの木やほかのすべての木をよく見なさい。それらがすでに芽ぐんでいれば,あなたがたはそれを観察して,もう夏の近いことを自分で知ります。このように,あなたがたはまた,これらの事が起きているのを見たなら,神の王国の近いことを知りなさい。あなたがたに真実に言いますが,すべての事が起こるまで,この世代は決して過ぎ去りません」。(ルカ 21:29-32)ただ一本の木が季節はずれに葉を出すのを見るとしても,あなたはそれによって,夏が近いと思い込むことはないでしょう。しかし,すべての木が芽を出しているのを見れば,あなたはその意味を理解します。イエスの予告したことはこれと同じであり,その「臨在」と「事物の体制の終結」とは,ただ戦争だけでなく,同一の世代に起きる多くの事がらによって証拠づけられます。

19 (イ)ここの表に示されるとおり,「しるし」のいろいろな面は1914年以来どのように成就してきましたか。(ロ)なぜ以前の戦争,食糧不足,地震などはイエスの語られた「しるし」とはなりませんか。

19 そうした事がらは起きましたか。次に掲げた,「しるしには何がありますか」という表を調べてください。それを調べてゆくさい,あなたはそれ以前の時代の戦争に関して何かで読んだ事がらを思い出すかもしれません。しかし,第一次世界大戦が他のすべての戦争とはっきり異なった性格を持ち,歴史の大きな転向点となったことは明瞭です。またあなたは,1914年以前にも,目だった食糧不足,疫病,地震,不法の時代などがあったと,歴史家によって伝えられているのを思い出すかもしれません。しかし,これらすべてがこれほど圧倒的な規模で同一の世代に起きた時代はほかにありません。福音書の筆者によって記録された「しるし」のほかの面も明らかに見ることができます。全く正直に考える場合,1914年以来のできごとがしるしの成就でないのであれば,このうえさらに何が必要なのでしょうか。明らかに,わたしたちはイエスの語られた世代に生きています。

20,21 第一次世界大戦に伴ったできごとが,イエスの予告したとおり,「苦しみの劇痛のはじまり」にすぎなかったことを述べなさい。

20 「しるし」のこれらの面が出現したことは,神の王国がその後直ちに地上のいっさいの悪を除き去るという意味ではありませんでした。イエスが予告したとおり,「これらすべては苦しみの劇痛のはじまり」でした。(マタイ 24:8)さらにほかのできごとが続くはずでした。その後に発展した事態について,「ワールドブック百科事典」はこう述べます。「第一次世界大戦とその余波は,1930年代初めの空前の不景気を招いた。戦争の結果および平和時代への調整上の問題は,ほとんどすべての国に動揺をもたらした」。26 その後多年を経ずして第二次世界大戦が起こりましたが,それは最初の大戦より幾倍も恐ろしいものでした。以来,生命や資産を軽視する風潮が高まり,犯罪に対する不安は日常のものとなりました。道徳心はわきへ押しやられました。“人口爆発”は,指導者もなんら現実的な解決のないことを認めるほどの問題を投げかけています。環境の汚染は生命の特性をそこない,絶滅の脅威をさえ忍ばせています。そのため,国連人間環境会議に関する報告は,人間家族が「かつて人類の遭遇したいかなる危機より急激で,広範で,不可避的,また困惑的な危機」の門口に立っていると伝えました。27

21 こうした「苦しみの劇痛」が始まったのはいつでしたか。ロンドンのスター紙は,「来世紀の歴史家は,世界の狂気が始まったのは1914年……だと言うであろう」と述べました。28 わたしたちがすでに見たとおり,その年,1914年は,聖書預言の中でずっと以前に指定されていました。

注目すべき宗教上の動向

22 (イ)イエスはご自分の予測の中で,不法の増すことや愛の冷えることをほかのどんなことと結びつけましたか。(ロ)キリスト教世界の牧師の教えがこうした状態の一因となってきたことを述べなさい。

22 「事物の体制の終結」の時に起こるべき事がらとしてイエスが挙げた意味あるできごとの中に次の点があります。「多くの偽預言者が起こって,多くの者を惑わすでしょう。また不法が増すために,大半の者の愛が冷えるでしょう」。(マタイ 24:11,12)イエスが,不法の増すことや愛の冷えることと,偽預言者つまり神を代弁すると虚偽の主張をする宗教教師の影響とを結びつけている点に注目すべきです。キリスト教世界の牧師たちが諸国家の戦争に祝福を与え,聖書の道徳規準は時代遅れであるという考えを唱道し,聖書のある部分を“神話”としてきた証拠は本書の中ですでに取り上げました。こうした態度はどのような結果をもたらしましたか。神への愛,またその律法に対する関心が冷えたことです。これこそ,権威の軽視や仲間の人間に対する関心の欠如を含め,全体的な道徳崩壊の大きな要素となってきました。―テモテ第二 3:1-5

23,24 結果として,諸教会には近年どんなことが起きていますか。

23 こうして発展した状態のために,幾千幾万という人びとがキリスト教世界の宗教組織を離れています。聖書に頼るようになって自分の生活を聖書の道に合わせる人たちもいますが,他の人びとは,教会が真の霊的な援助を与えていないのを見,失望と嫌悪をいだいてただ身を引いています。教会に敵対するようになる人びとも多くいます。

24 ニューヨーク・ポスト紙が,「従来の秩序がわれわれの前を光のような速さでよろめき去って行くかのように思える分野は宗教である」と述べたのはこのためです。29 そしてニューヨーク・タイムズ紙はこう伝えました。「制度化した宗教は消滅しつつあると,ドイツの宗教社会学の権威は語った」。30 バチカンの週刊誌「ロセルバトル・デラ・ドメニカ」は,アメリカのローマ・カトリック教会が「大規模な地震」によって揺り動かされていることを認めました。31 同誌は,司祭の辞任,修道女の離脱,カトリック学校や神学校の閉鎖など,ほとんど毎日「何かの新しい災い」が同教会に降りかかっていると述べました。キリスト教世界のすべての教派において,神学校に入る若者が減り,宗教系の学校が門を閉じ,多数の宗教雑誌が廃刊になるといった現象が見られます。教会はおおむね,その出席者数が減少していることに気づいています。売りに出されている教会堂も少なくありません。

25 (イ)それと対照的に,聖書は真の崇拝に関してこの時代に何が起きることを示していますか。(ロ)真の神の崇拝者を集めるこの業はだれの指揮のもとに,また何に基づいて行なわれますか。(ハ)こうして,あらゆる国の人びとの前にどんな論争が提出されていますか。

25 これとは対照的なこととして,聖書は,あらゆる国民から来た「大群衆」がこの終わりの時に真の崇拝のもとに引き寄せられることを示しています。(啓示 7:9,10,14)この,真の神の崇拝者を集める業はキリスト・イエスの指揮のもとに行なわれています。イエスは,ご自分が「その栄光のうちに」戻る時,あらゆる国民に注意を向け,「大患難」を生き延びる者ととこしえの滅びを受ける者とをひとりひとり分けると予告されました。(マタイ 25:31-33)彼らは何に基づいてそのように分けられるのですか。イエスは,この地上にいるご自分の霊的な『兄弟たち』に対して取る態度に基づいてそれがなされると言われました。それはなぜですか。なぜなら,それらはイエス・キリストの手にある神の王国の代表者だからです。彼らがキリストに従って宣べ伝える音信は,「王国のこの良いたより」です。彼らはそれを,「あらゆる国民に対する証しのために,人の住む全地で」行なっています。(マタイ 24:14)この王国のたよりはあらゆる国の人びとの前に宇宙主権に関する論争を提出します。神の支配を支持しますか。それとも,エデンにおけるサタンの勧めにしたがって,人間の独立した支配を求めますか。エホバ神はみ子を通してこの選択の機会を人びとに与えます。

26,27 (イ)この証しの業はすでにどの程度行なわれてきましたか。(ロ)王国の音信に対してどのような態度を取るかはなぜ重大な事がらですか。

26 全世界的な証しがなされてきました。世界208の土地で,エホバのクリスチャン証人は人びとの家庭を訪ね,どんな家族にも個人にも,無償の聖書研究を申し出ています。神の王国を宣明する目的で証人たちが使う刊行物は,地上で最も広く頒布されている書物の中に数えられており,160以上の言語で手に入れることができます。

27 この分ける業はすでに幾年ものあいだ続けられてきました。それは今や完了しようとしています。神のことばによれば,神の王国支配を故意に退けた者,また神について学ぶ機会を無関心な態度で放棄する者は,その時に存在を断たれて永遠の滅びに至ります。(マタイ 25:34,41,46。テサロニケ第二 1:6-9)神の王国の真実の支持者であることを自らすすんで,また喜んで示す人びとにとって,それは壮大な安らぎの時となります。では,聖書はその裁きの表明をどれほど間近なものとしていますか。

『この世代は決して過ぎ去らない』

28 イエスは,予告された世界の滅びをどれほど間近なものとしておられますか。

28 イエスは,「その日と時刻についてはだれも知りません。天の使いたちも子も知らず,ただ父だけが知っておられます」と言われました。(マタイ 24:36)しかしイエスは,「これらのすべての事が起こるまで,この世代は決して過ぎ去りません」と語って,その時を判断する目安となるものを与えられました。(マタイ 24:34)これらのすべての事とはなんですか。イエスが語っておられた「しるし」のいろいろな面すべて,そしてまたイエスがそこで言及された「大患難」をさしています。これらの事がらが一つの世代のうちに起きるとすれば,「事物の体制の終結」の時が始まった1914年に生きていてその年に起きた事がらを見た人びとが,この期間の終わり,「大患難」の襲来する時にも生きていなければならない,ということになります。1914年のできごとを覚えている人びとは今ではずっと年を取っています。その年代に属する人びとの中にはすでに死んだ人も多くいます。しかしイエスは,「この世代」のうちに,と保証しておられます。その人びとすべてが死ぬ以前に,この邪悪な事物の体制の滅びが到来します。

29 1914年以来のできごとがここまで発展するのを許した神は,人間が正しい決定をする助けをどのように備えられましたか。

29 これだけの期間を猶予された神は,多大のしんぼうを示してくださったではありませんか。この世代のうちに,歴史上はじめて,戦争,汚染,人口過剰その他の問題が,次から次へと超大な規模に達しました。そのどれにしても完全な破滅をもたらしかねないものです。こうして証拠を積み上げさせることによって,神は,人間による支配が真の解決をもたらしえないものであることをいっそう容易に悟れるようにしてくださいました。同時に神は,「王国の良いたより」を宣べ伝える業を通し,心の正直な人びとが,神の王国こそ真の平和と安全に対する唯一の希望であることを悟り,大論争において自分の立場を神の側にはっきり定めることができるように助けてこられました。

30 世界の滅びが接近したことを示す最終的なしるしとして,聖書は何を明記していますか。

30 世界の滅びが差し迫っているまぎれもないしるしとなる,もう一つの明確なできごとが起こります。そのしるしは使徒パウロの次のことばの中に示されています。『エホバの日はまさに夜の盗人のように来ます……人びとが「平和だ,安全だ」と言っているその時,突然の滅びが……彼らに突如として臨みます。彼らは決して逃れられません』。―テサロニケ第一 5:2,3。ルカ 21:34,35

31,32 (イ)政治支配者たちのふれ告げる『平和と安全』は真実のものですか。(ロ)それに誤導されることはどうして危険ですか。

31 世界の政治指導者たちは,ひとたび核戦争に巻き込まれるなら,だれも勝利を得られないことを知っています。それは事実上の絶滅という結果となるにすぎません。さらに,環境汚染に伴う深刻な問題,“人口爆発”その他の国内の難問が資金と配慮を要求しています。そうした理由で,彼らは国際関係の緊張緩和を達成しようと努力してきました。言うまでもなく,彼らの交渉は,人びとが互いに愛し合うほどの真の変化はもたらしていません。彼らは犯罪をなくしたり,病気や死を除き去ったりはしていません。でもこの預言は,人びとが,『平和と安全』が今やついに実現したと唱える時の来ることを示しています。そうした事が起こるその時,「突然の滅び」が人類を誤導している者たち,またそれに信頼を託している者たちすべてに,「突如として」臨みます。

32 しかし,生き残る人びとがいます。あなたはそのひとりですか。

[研究用の質問]

[80,81ページの囲み記事]

「しるしには何がありますか」

『国民は国民に敵対して立ち上がる』―

「第一次世界大戦は総力戦の世紀を招来し,史上はじめて真の意味での世界戦争となった。……1914-1918年以前……地上のこれほど広い範囲におよんだ戦争はなかった。……殺りく行為がこれほど広範囲に,また無差別に行なわれたこともかつてない」― H・ボールドウイン著「第一次世界大戦」

第一次世界大戦は900万人以上の戦闘員を殺し,さらに幾百万の市民を殺した。

第二次世界大戦は5,500万の死者を出した。

第二次世界大戦後約20年のうちに,全世界に300件以上のクーデター,動乱,反乱が起きた。

『食糧不足がある』―

第一次世界大戦後,食糧不足が多くの国を悩まし,第二次大戦後にも同様の事態が起きた。

科学技術の空前の進歩にもかかわらず,1967年には,栄養失調のために毎日10,000人が死に,毎年3,500,000人が死んでいると報告された。

「1970年代に世界は飢きんを経験するであろう。今日のあらゆる突貫生産計画にもかかわらず,幾億人もの人が餓死に向かっている」― ポール・アーリック博士著「人口爆弾」

『疫病がある』―

記録に残る疫病で,1918年から1919年にかけて流行したスペイン風邪に匹敵するものはない。少なくとも5億人がこれに冒され2千万人以上が死んだ。

今日の医学研究は心臓病が流行病的な勢いで広がるのを防ぐことができなかった。ガンは多発しており,性病患者の数は急増している。

多くの場所で『地震がある』―

1915年,イタリア,アベツアーノの地震では29,970人が死んだ。中国では1920年に180,000人,日本では1923年に143,000人,インドでは1935年に60,000人が死んだ。1960年代には,イラン,チリ,モロッコ,ユーゴスラビア,リビヤ,エルサルバドル,ソ連,コロンビア,フランス,インドネシア,トルコその他で大地震が起きた。1970年のペルーの地震では70,000人が死に,ニカラグアでは1972年には12,000人が死んだ。

『不法が増す』―

あなたは事実を知っておられます。あなたご自身の生活が影響を受けています。あなたの住む土地の学校では何が起きていますか。あなたの住む土地には麻薬の不法な使用がありますか。商取引きにおける不正についてはどうですか。夜の外出をどこまで安全に感じますか。

“犯罪による危機”があまりにも広範囲に及んでいるため,1972年,国連の事務総長は国際的な行動を呼びかけた。

不法とは,単に人間の法律に関してだけではない。それ以上に神の律法が無視されている。

神の王国が全世界で宣べ伝えられる ―

この業は世界208の土地で整然と行なわれている。

この音信を公に宣べ伝えるため,過去30年の間に,エホバのクリスチャン証人によって3,676,343,869時間がささげられた。その同じ期間に,証人たちは,神の王国を人間の唯一の希望として伝える文書を,160以上の言語で,50億部以上出版した。

これらのことは何の「しるし」か。わたしたちが今,「事物の体制の終結」の時に生きていること。キリストが天の王座につき,あらゆる国民の中から,神のご意志に真に従う人びとを取り分けていること。「大患難」が非常に近いこと!

(さらに詳しくは,マタイ 24,25章,マルコ 13章,ルカ 21章をお読みください。)