内容へ

目次へ

予告された世界の滅びはいつ来るか

予告された世界の滅びはいつ来るか

第7

予告された世界の滅びはいつ来るか

1 神は人類のためにどんな壮大な目的を持っておられますか。

戦争,犯罪,地球の汚染などが一掃されるのを見ることができるとすれば,それは何と大きな安らぎでしょう。ほんとうに義に基づく管理のもとで生活できたら,どんなにか快いことでしょう。そうした場所では,人は自分の家族と共に心ゆくまで安全を楽しむことができます。聖書は,神がこれを現実のものとしてくださることを示しています。しかし,それはいつのことでしょうか。

2 (イ)「エホバの日」が来る時に不意を襲われるのはどんな人たちですか。(ロ)どうすればそうした事が自分に起きるのを避けられますか。

2 神の新秩序への道を開く世界の滅びに関して,使徒パウロは,「エホバの日がまさに夜の盗人のように来る」と述べています。そして,さらにこう付け加えています。「しかし,兄弟たち,あなた方は闇にいるのではありませんから,盗人たちに対するように,その日が不意にあなた方を襲うことはありません」。(テサロニケ第一 5:2,4)ですから,「エホバの日」が到来する時,警告に注意を払っていなかった人たちは,突然わなにかかった動物のようになります。しかし,そのような事があなたに起きる必要はありません。聖句が述べているとおり,『闇にいるのではない』人々がいます。その人々は,神の言葉がわたしたちの時代について述べている事柄を調べ,それを心に留めているのです。―ルカ 21:34-36

3,4 (イ)20世紀に起きた出来事の深い意味はどこに説明されていますか。(ロ)聖書預言の中に示されているどんな五つの重要な点についてこれから調べますか。

3 聖書は,この20世紀の出来事を明確に描写していました。しかも,およそ2,000年も前にそれを行なっていたのです。そうした出来事の多くは一般に知られてはいますが,聖書だけがその事の深い意味を説明しています。

4 聖書中にある,わたしたちの時代についての預言的な情報には,次のような詳細な点が含まれています。(1)神が「人間の王国」を「ご自分の望む者」に与えるのはどの年か。(2)「事物の体制の終結」として知られる時期には,そのことを示すどんな出来事が起きるか。(3)その時には,注目すべき点として宗教面でどんな動向が見られるか。(4)「事物の体制の終結」の始まりを見た世代のうち少なくとも幾らかの人々が生き残ること。(5)世界の滅びがまさに差し迫ったその最終的なしるしとして,世界の情勢はどのような著しい展開を見せるか。これらの点について調べましょう。

(1)指定された年 ― 西暦1914年

5 1914年が特別の意味を持つ年として聖書の中で特に指定されていることを,エホバの証人はどれほど早く悟りましたか。

5 早くも1876年,エホバの証人は,聖書の預言が,特に西暦1914年を人間の物事に深遠な影響を与える重要な出来事の起きる年として指定していることを悟りました。証人たちは,その事の根拠となる事柄を広く知らせました。

6 (イ)ダニエル 4章2,3,17節にはどんなことが述べられていますか。(ロ)エホバが「王国」をお与えになる「者」とはだれですか。

6 聖書のダニエル書 4章を開いてご覧になれば,そこには,地に対する主権に関して神が何を意図しておられるかを啓示する預言のあることに気づかれるでしょう。その預言の成就の背後にある目的は,『至高者が人間の王国の支配者であり,ご自分の望む者にそれを与えるということを,生ける者が知るため』である,と述べられています。(2,3,17節)至高者が「王国」を与える「者」とは,イエス・キリストです。そして,聖書巻末の書は,「世の王国」が天の王としてのキリストに与えられる時のことについて述べています。(啓示 11:15; 12:10)つまり,ダニエルのこの預言は,神が「世の王国」をイエス・キリストに与えて人間の物事に介入される時のことを扱っているのです。預言は,それをいつのことであるとしていますか。

7 (イ)ダニエル 4章10-16節にはどんな預言的な夢のことが記されていますか。(ロ)それはどのようにネブカドネザル王に当てはまりましたか。

7 ダニエル書に記されている預言的な夢は,一本の巨大な木が切り倒され,「七つの時」が過ぎるまでそれに鉄と銅のたがが掛けられたことに関するものです。その「七つの時」の間,それには「獣の心」が与えられます。(ダニエル 4:10-16)これはどういう意味でしたか。神はダニエルにそれを説明させました。つまり,バビロンの王ネブカドネザルは正気を失ってその王座から外され,人々の中から追われて獣のような生活をします。7年ののち,王は正気を取り戻します。このとおりの事がまさに王の身に起こり,王は,神の支配権の至上性を認めた者として王位に復帰しました。(ダニエル 4:20-37)しかし,このすべてには,さらに大きな意味がありました。それが聖書に記録されているのはそのためです。

8 (イ)その預言のさらに大きな意味はどんな王国に関するものですか。(ロ)このさらに大きな成就において,木が切り倒されることは何を表わしていますか。どのような意味で『それに獣の心が与えられ』ましたか。

8 さらに大きな意味は,地上に生きるものすべてに益を与える,より強大な支配と関連しています。その預言が述べるとおり,そのもとでは「すべてのもののために食物」があり,動物や鳥さえそこから保護を得ます。(ダニエル 4:12)こうした益を真実に与えることができるのは,神の王国の支配だけです。この政府が守る義の原則は,エルサレムに王を置いたユダの歴史を通して例証されていました。しかしエホバは,ユダの不忠実のゆえに,この国がバビロンによって西暦前607年に征服されることを許されました。それはさながら,夢の中の木が切り倒され,その切り株に拘束のたがが掛けられたかのようでした。それ以後,国々の政府が神の干渉を受けずに世界の覇権を行使してきました。それら諸国民の王国は聖書の中では「獣」として表わされており,「その心を人の心から変わらせ,獣の心をそれに与えて,七つの時をその上に過ぎさせよ」という,天からの使いの発表がなされたかのようになりました。(ダニエル 4:16; 8:1-8,20-22)しかし,獣のような諸政府による支配がなされる「七つの時」はやがて終了します。その後,「たが」は取り除かれ,エホバが「世の王国」を授けた者が世界の覇権を行使してゆくにつれ,その「木」は再び大きくなってゆきます。

9,10 (イ)「七つの時」の長さの算定において,「一時」はどれほどの長さになりますか。聖書はそれをどのように示していますか。(ロ)「七つの時」はいつ始まりましたか。それはどれほどの年数に及びますか。いつ終わりますか。

9 その「七つの時」はどれほどの期間でしたか。それは7年よりはるかに長い期間です。なぜなら,何世紀も後に,イエス・キリストは,その「諸国民の定められた時」がなお続いていることを示されたからです。諸国民は,西暦前607年のバビロンによるエルサレム征服以来世界の覇権を保持していましたが,それはまだしばらくは続行することになっていたのです。―ルカ 21:24

10 聖書が預言的な「時」についてどのように述べているかに注意を払ってください。啓示 11章2,3節は1,260日が42か月,つまり3年半であることを示しています。啓示 12章6,14節は,同じ日数(1,260日)のことを述べていますが,それを「一時と二時と半時」,つまり『三時半』としています。したがって,『一時』は360日です。(3 1/2×360=1,260)『一日を一年とする』という原則にしたがえば,預言的な「時」の各1日はまる1年を表わすことになります。(民数記 14:34。エゼキエル 4:6)ですから,「七つの時」は2,520年(7×360)に相当します。ユダにおける神の模型的な王国がバビロンによって倒された西暦前607年の秋から2,520年を数えると,それは1914年の秋になります。(606 1/4+1913 3/4=2,520)「世の王国」がイエス・キリストにゆだねられることになっていたのはその年です。

11 1914年の意味について歴史家は何と述べていますか。

11 エホバの証人は,聖書が1914年を特に指定していることを公に知らせた後,それが実際にどのような年になるかを見るために何十年か待たなければなりませんでした。1914年の初め,世界は平和な状態にあり,多くの人は何事も起こらないかのように考えていました。しかし,その年の夏が終わらないうちに,世界は前例のない大戦争に投げ込まれ,エホバの証人の確信の正しさが立証されました。歴史家A・L・ロウスは,「1914年」と題する本の書評の中でこう書いています。「一つの時代から別の時代への変わり目となった年があるとすれば,それは1914年であった。それは,安心感のあった古い世界を終わらせ,我々が今日日ごとに抱く不安を特色とする現代の始まりとなった年である」。44 英国の政治家ウィンストン・チャーチルに関するある記録の中にはこう述べられています。「1914年6月28日にサラエボで起きた銃撃事件は,安全と創造的理性とを備えた世界を打ち砕いた。……以来世界は決して元の状態に戻ってはいない。……それは転向点であり,魅力と静穏と美しさのあった昨日の世界は消えて,二度と戻っては来ない」。45 聖書預言によって幾世紀も前から指定されていたその年は,確かに歴史の転向点となりました。

12 1914年およびその後の人間の物事の大変動にはどんな理由がありますか。

12 キリストが王位に就いた印として地上で前例のない大戦争が起きるということは,初めのうち多少不可解に思えるかもしれません。しかし,この「世の支配者」は悪魔サタンであることを忘れないでください。(ヨハネ 14:30)サタンは,神の王国が地上の物事を制御するようになるのを見ることを望みませんでした。注意を神の王国からそれさせようとしたサタンは,人間世界を動かして,自分たちが唱える主権を守るための戦争へと至らせました。さらに,聖書が示すとおり,王国が誕生した時,サタンと配下の悪霊たちはその王国政府を食い尽くそうと努めました。結果はどうなりましたか。「天で戦争が起こった。……大いなる龍,すなわち,初めからの蛇で,悪魔またサタンと呼ばれ,人の住む全地を惑わしている者は投げ落とされた。彼は地に投げ落とされ,その使いたちも共に投げ落とされた」。自分に残されている『時が短い』ため,サタンは大きな怒りを抱いています。(啓示 12:3-12)聖書は19世紀も前にその結果を正確に描写していました。

(2)特別の意味を持つ出来事

13 イエスが『自分の臨在と事物の体制の終結のしるし』について話されたことにはどのような背景がありましたか。

13 西暦33年に,イエスは,『自分の臨在と事物の体制の終結のしるし』について詳細に述べられました。それは,聖書のマタイ 24,25章,マルコ 13章,ルカ 21章の中に記録されています。エルサレムで一群の弟子たちと共にいた際,イエスはそこにある神殿が倒壊することを予告されました。それで,弟子たちはこう尋ねました。「わたしたちにお話しください。そのようなことはいつあるのでしょうか。そして,あなたの臨在と事物の体制の終結のしるしには何がありますか」― マタイ 24:1-3

14 イエスが「しるし」として述べられた意味ある事柄の中にはどんなものがありますか。

14 イエスはこう答えました。「あなた方は戦争のこと,また戦争の知らせを聞きます。恐れおののかないようにしなさい。これらは必ず起きる事だからです。しかし終わりはまだなのです。というのは,国民は国民に,王国は王国に敵対して立ち上がり,またそこからここへと食糧不足や地震があるからです。これらすべては苦しみの劇痛の始まりです」。ルカ 21章11節が示すとおり,イエスは,『そこからここへと疫病がある』とも言われました。イエスは「不法が増す」ことを警告し,そのために「大半の者の愛が冷える」とも言われました。そして,意味深い点として,「王国のこの良いたよりは,あらゆる国民に対する証しのために,人の住む全地で宣べ伝えられるでしょう。それから終わりが来るのです」と予告されました。―マタイ 24:4-14

15,16 (イ)イエスの預言した事柄のうち,西暦70年のエルサレムの滅びよりも前に成就したものがありますか。(ロ)別のさらに重要な成就があることは,どんな事から分かりますか。

15 しかし,『こうした預言の中には,エルサレムがローマ人によって滅ぼされた西暦70年より前に成就したものがあるのではないか』という質問が出されるかもしれません。そうです,そのようなものもあります。しかし,預言そのものが示しているように,さらに多くの事が含まれていました。確かにイエスは,弟子たちが当面関心を抱いていた質問に答えました。しかし,その機会を用いて,遠い先のこと,つまり「人の子」が「力と大いなる栄光」を伴って到来する時代,また「神の王国」が近づいた時代に関する情報をお与えになったのです。―ルカ 21:27,31

16 もちろん,これらの事は西暦70年のエルサレムの滅びまでには起こりませんでした。西暦96年ごろに書かれた聖書巻末の書は,神の王国に関するこれらの事柄がその時よりも将来のものであったことを示しています。(啓示 1:1; 11:15-18; 12:3-12)その啓示の書は,象徴的な表現を用いつつ,イエスの予告した戦争・食糧不足・疫病がなお将来の事であり,かつてない規模で成就するものであることを示しています。それらは,キリストが神の王国に敵対する者すべてに対する征服を開始して,それを完了する時代をしるし付けるものとなります。(啓示 6:1-8)イエスの預言のある部分が第一世紀にまさに成就したということは,その預言が真実なものであるという証印となり,また,イエスが,起こるであろうと言われたほかのすべての事柄の成就を確信させる確かな根拠ともなります。

17 今日の世界の状態は1914年以前の状態と大きく異なっていますか。

17 これらの預言は,この20世紀に,大規模で完全な成就を見てきたでしょうか。70歳以下で,事情を十分に知らない人々は,今とは違った時代の記憶がないために,この時代はこれで正常なのだ,と感じているかもしれません。しかし,さらに年長の人々,また歴史に通じた人々は,そうではないことを知っています。1914年に起きた事に関して一歴史書はこう述べています。「その戦争に巻き込まれなかった国はわずかに15か国であった。……しかし,それらの国の中に,調停役を果たせるほどの大国は一つもなかった。こうしたことは世界史上に例のないことであった。それほどの規模でなされた戦争はかつてなかった。『民は民に,国は国に逆らって立つ』という聖書の預言が文字通り成就したのである」。46

18 広範囲な戦争だけが「しるし」であると考えるのはなぜ誤りですか。

18 しかし,イエスが「しるし」として述べられたのはそのような事柄だけではありませんでした。イエスは一つの例えを使ってこう話されました。「いちじくの木やほかのすべての木をよく見なさい。それらが既に芽ぐんでいれば,あなた方はそれを観察して,もう夏の近いことを自分で知ります。このように,あなた方はまた,これらの事が起きているのを見たなら,神の王国の近いことを知りなさい。あなた方に真実に言いますが,すべての事が起こるまで,この世代は決して過ぎ去りません」。(ルカ 21:29-32)ただ一本の木が季節はずれに葉を出すのを見るとしても,あなたはそれによって,夏が近いと思うことはないでしょう。しかし,すべての木がちょうどふさわしい時季に芽を出しているのを見れば,あなたはそのことの意味を理解します。イエスが予告したことはこれと同じであり,ご自分の「臨在」と「事物の体制の終結」とは,ただ戦争だけでなく,すべてが一世代の人々の生涯中に起きる多くの事柄によって証拠づけられるということを示されたのです。

19 (イ)次のページの表に示されているとおり,「しるし」のいろいろな面は1914年以来どのように成就してきましたか。(ロ)それ以前の戦争,食糧不足,地震などがイエスの語られた「しるし」とならないのはなぜですか。

19 そうした事柄は起きましたか。次に掲げた,「しるしには何がありますか」と題する表を調べてゆかれれば,あなたはそれ以前の時代の戦争について何かで読んだ事柄を思い出されるかもしれません。しかし,第一次世界大戦は他のすべての戦争とはっきり異なった性格を持っており,歴史の大きな転向点となりました。またあなたは,1914年以前にも,食糧不足,疫病,地震,不法の時代,また平和と安全を推し進めようとする特異な運動などがあったことを思い出されるかもしれません。しかし,これらすべてがこれほど圧倒的な規模で同一の世代に起きたことは歴史上ほかに例がありません。全く正直に考える場合,1914年以来の出来事がしるしの成就でないのであれば,このうえさらにどんな事が必要なのでしょうか。明らかに,わたしたちはイエスが王国の権能をもって「臨在」しておられる時代に生きているのです。

20,21 第一次世界大戦に伴う出来事が,イエスの予告したとおり,「苦しみの劇痛の始まり」にすぎなかったことを述べなさい。

20 「しるし」のさまざまな面が現われたことは,神の王国が直ちに地上の悪を一掃するという意味ではありませんでした。イエスが予告したとおり,「これらすべては苦しみの劇痛の始まり」でした。(マタイ 24:8)さらにほかの事柄が続くはずでした。ワールドブック百科事典はこう述べています。「第一次世界大戦とその余波は,1930年代初めの空前の不景気を招いた。戦争の結果および平和時代への調整上の問題は,ほとんどすべての国に動揺をもたらした」。47 その後何年もたたないうちに第二次世界大戦が起こりました。それは最初の大戦より幾倍も恐ろしいものとなりました。以来,人の生命や資産を軽く見る風潮が高まり,犯罪に対する不安は日常のこととなりました。道徳心はわきへ押しやられました。人口爆発はさまざまな難問を生み出し,それは解決されていません。汚染の問題は生活の質を損ない,生命を危険にさらしてさえいます。加えて,核による絶滅の脅威もあります。

21 こうした「苦しみの劇痛」はいつ始まりましたか。ロンドンのスター紙は,「来世紀の歴史家は,世界の狂気が始まったのは1914年……だと言うであろう」と述べました。48 その1914年は,聖書預言の中でずっと以前に指定されていた年でした。

(3)注目すべき宗教上の動向

22 (イ)イエスはご自分の予測の中で,不法の増すことや愛の冷えることをほかのどんなことと結び付けましたか。(ロ)僧職者の教えがこうした状態の一因となってきたことを述べなさい。

22 「事物の体制の終結」の時期をしるし付ける事柄としてイエスが予告された意味ある出来事の中には,次のようなものもあります。「多くの偽預言者が起こって,多くの者を惑わすでしょう。また不法が増すために,大半の者の愛が冷えるでしょう」。(マタイ 24:11,12)イエスは,不法が増すことや愛が冷えることと,偽預言者,つまり神を代弁すると虚偽の主張をする宗教教師の影響とを結び付けています。すでに本書の中で証拠を挙げて示したとおり,僧職者たちは諸国家の戦争を支持し,聖書の道徳規準を時代遅れであるとして軽視し,聖書のある部分を真実ではないとしてきました。それはどんな結果となっていますか。神とその律法に対する愛が『冷えた』ことです。これこそ,権威の軽視や仲間の人間に対する関心の欠如などと共に,道徳崩壊の大きな要因となってきました。―テモテ第二 3:1-5

23,24 宗教には近年どんな事が起きていますか。

23 このような状態のために,幾百万もの人々が宗教組織から離れています。聖書に頼り,その道に合わせようとする人たちもいますが,他の人々は失望と嫌悪を抱いて全く退いています。宗教に敵対するようになる人々も少なくありません。ある新聞寄稿家は次のように述べました。「世界の難儀の多くが宗教に根ざしていることには驚かざるを得ない。一般の政治的対抗関係で,宗教戦争ほどに血に飢えたような熱情を発揮するものは少ない」。こうした点に基づいて,この人は,「どうして宗教をなくしてしまわないのだろうか」とさえ問いかけました。49

24 主要宗教の衰退ぶりについては沢山の証拠があります。例えば,イタリアに関する一報道によると,その国民の95%は自分をカトリック教徒とみなしていますが,「日曜日の教会の出席者は20%以下と推定されて」います。50 別の報道によると,世界の司祭の数は10年間に2万5,000人も減少しました。51 米国の一教会の調査の結果は,「アメリカのカトリック教会で司祭職に携わる人の数が2000年までにさらに50%も減少する」ことを予告しました。52 US・ニューズ・アンド・ワールド・リポート誌によると,米国では「カトリックの神学校に入る人の数が激減し」,20年足らずのうちに,最高時の4万8,992名から1万1,262名にまで減りました。53 ニューヨーク・タイムズ紙が伝えるところによると,全世界で15年のうちに「尼僧の数は18万1,421人から12万1,370人に」なりました。54 多くの宗教の場合も事情は似かよっています。

25 (イ)それとは対照的に,聖書は,真の崇拝に関してこの時代にどんな事が起きることを示していますか。(ロ)真の神の崇拝者を集めるこの業はだれの指揮のもとに,また何に基づいて行なわれますか。(ハ)あらゆる国の人々の前にどんな論争点が提出されていますか。

25 対照的な点として,聖書は,あらゆる国民から来る「大群衆」がこの終わりの時にエホバの崇拝のために引き寄せられることを示しています。イエスは,ご自分が,「大患難」を生き延びる人と,「永遠の切断」に至る人とを,ひとりひとり分けることについて述べて,この集める業のことを予告しました。(啓示 7:9,10,14。イザヤ 2:2-4。マタイ 25:31-33,46)人々を取り分けて生存に至らせるものは何でしょうか。聖書はこう答えています。「世は過ぎ去りつつあり,その欲望も同じです。しかし,神のご意志を行なう者は永久にとどまります」。(ヨハネ第一 2:17)そして,人々は何が神のご意志であるかをどのようにして知るのでしょうか。イエスが,「王国のこの良いたよりは,あらゆる国民に対する証しのために,人の住む全地で宣べ伝えられるでしょう。それから終わりが来るのです」という言葉で予告された,全世界的な教育の業に答え応じることによってです。(マタイ 24:14)この宣べ伝える業によって,あらゆる国の人々の前に論争点が提出されます。すなわち,神の支配を支持しますか,それとも,エデンにおけるサタンの勧めにしたがって,人間による独立した支配を求めますか,という点です。エホバはこの選択の機会を人々にお与えになります。

26,27 (イ)この証しの業はすでにどの程度行なわれていますか。(ロ)王国の音信に対してどんな態度を取るかは,なぜ重大な事柄ですか。

26 神の王国についての全世界的な証しが,いよいよ勢いを増して行なわれています。世界の200以上の国や土地で,幾百万ものエホバの証人は,人々の家庭を訪ね,無償の聖書研究の機会を差し伸べています。証人たちが使う刊行物は,地上で最も広く頒布されている聖書文書となっています。事実,それらは他のすべての文書と比べても,とりわけ頒布数の多い刊行物となっており,世界の190ほどの言語で入手できるようになっています。

27 人々を分けるこの業は幾十年ものあいだ進められてきました。それは今や完了しようとしています。神の言葉によると,神の王国支配を退けてきた人,また神について学ぶ機会を無関心な態度で見過ごしてきた人は,断たれることになるでしょう。(マタイ 25:34,41,46。テサロニケ第二 1:6-9)神の王国の支持者であることを示す人々にとって,それは壮大な安らぎの時となるでしょう。しかし,そのような裁きはいつ来るのでしょうか。

(4)『この世代は過ぎ去らない』

28 イエスは,予告された世界の滅びが到来する時をどんな期間内に限定されましたか。

28 イエスは,「その日と時刻についてはだれも知りません。天のみ使いたちも子も知らず,ただ父だけが知っておられます」と言われました。しかしイエスは,「これらのすべての事が起こるまで,この世代は決して過ぎ去りません」と述べて,その時を判断する目安となるものを与えてくださいました。(マタイ 24:34,36)つまり,「しるし」のいろいろな面すべて,および「大患難」は,一つの世代の生涯のうちに起きるに違いありません。それは1914年の世代であり,「事物の体制の終結」の時代が始まった1914年の出来事を見た人々の中には,「大患難」が到来する時にも生きていてその時代の終わりを見る人がいる,という意味になります。1914年の出来事を覚えている人々は今ではずっと年を取っています。その年代に属する人々の多くはすでに死にました。しかしイエスは,この邪悪な事物の体制の滅びが到来しないうちは『この世代は決して過ぎ去らない』と保証されました。―マタイ 24:21

29 1914年以来の出来事がここまで発展するのを許してこられた神は,人間が正しい決定をするのをどのように助けてこられたことになりますか。

29 悔い改めのための機会をこれほど長く延ばされた神は,何と辛抱してくださったのでしょう。(ペテロ第二 3:9)いま,歴史上初めて,戦争,汚染,人口過剰その他の問題が,次から次へと超大な規模に達しました。そのどれにしても,完全な破滅をもたらしかねないものです。こうして証拠を累積させることによって,神は,人間が答えを持ち合わせてはいないということがいっそう容易に理解できるようにしてこられました。同時に,「王国の良いたより」を宣べ伝える業を通して,心の正直な人々は,神の王国こそ真の平和と安全のための唯一の希望であることを悟るように助けられてきました。こうして神は,大論争において自分の立場を神の側にはっきり定めるための時間を人々に与えておられるのです。

(5)最終的なしるし

30 世界の滅びが接近したことを示す最終的な合図として,聖書はどんなことを明記していますか。

30 世界の滅びが差し迫っている紛れもない合図となる,もう一つの出来事が生じます。そのことについて使徒パウロはこう書きました。『エホバの日はまさに夜の盗人のように来ます。人々が,「平和だ,安全だ」と言っているその時,突然の滅びが臨みます。彼らは決して逃れられません』― テサロニケ第一 5:2,3。ルカ 21:34,35

31,32 (イ)政治支配者たちのふれ告げる『平和と安全』は真実のものですか。(ロ)それに誤導されることはどうして危険ですか。

31 世界の指導者たちは,核戦争が事実上絶滅を意味することを知っています。さらに,環境汚染,人口爆発などの危機的な問題,また国内の他の種々の難問が資金と配慮とを要求しています。そうした理由のために,指導者たちは国際関係の緊張緩和を願っています。1986年を『国際的な平和と安全の年』とするという国際連合による布告もその一つの表われです。これは,疑いなく,上に引用したパウロの言葉の成就へと向かう一歩であるに違いありません。言うまでもなく,政治上の交渉や条約は,人々が互いに愛し合うようになるほどの真の変化をもたらしてはいません。人々は犯罪をなくしたり,病気や死を除き去ったりはしていません。ですが,この預言は,諸国民が,ある程度の『平和と安全』に達したと宣言する時の来ることを示しています。そうした事が起こるその時,「突然の滅び」が,人類を誤導している者たち,またそれに信頼を託している人々すべてに「突如」臨みます。

32 しかし,生き残る人々がいるのです。あなたはその一人となるでしょうか。

[研究用の質問]

[78,79ページの囲み記事]

「しるしには何がありますか」

『国民は国民に敵対して立ち上がる』―

「第一次世界大戦は総力戦の世紀を招来し,史上初めて真の意味での世界戦争となった。……1914-1918年以前に……地上のこれほど広い範囲に及んだ戦争はなかった。……殺りく行為がこれほど広範囲に,また無差別に行なわれたこともかつてなかった」― H・ボールドウィン著,「第一次世界大戦」。

第一次世界大戦で1,400万人の戦闘員と市民が死んだ。第二次世界大戦では5,500万人が死んだ。第二次大戦以来,何百ものクーデター,反乱,戦争などで約3,500万人の命が奪われた。

したがって,1914年以来,戦争のために1億以上の人命が失われたことになる。

『食糧不足がある』―

第一次および第二次世界大戦後,食糧不足が多くの国を悩ました。

今日,多年にわたる科学技術の進歩にもかかわらず,世界のほぼ四分の一は飢えている。毎年,推定1,200万人の子供たちが栄養不良のため満一歳の誕生日を迎える前に死亡する。同じ理由のために毎年さらに幾百万もの人々が死んでいる。

『疫病がある』―

記録に残る疫病で,1918年から1919年にかけて流行したスペイン風邪に匹敵するものはない。少なくとも5億人がこれにかかり,2,000万人以上が死亡した。

今日の医学研究も,心臓病が流行病的な勢いで広がるのを防止できないでいる。ガンはしだいに増大する災厄となっており,性行為によって感染する病気の例は急増している。

多くの場所で『地震がある』―

死亡者数の推定は文献によって異なってはいるが,幾つかの例を挙げれば次のとおり: 1915年,イタリアの地震で3万ないし3万2,000人が死亡。1920年,中国で10万ないし20万人。1923年,日本で9万5,000ないし15万人。1935年,インドで2万5,000ないし6万人。1968年,イランで1万2,000ないし2万人。1970年,ペルーで5万4,000ないし7万人。1976年,グアテマラで2万ないし2万3,000人。1976年,中国で10万ないし80万人。1914年以来,地上のいたるところで起きた幾百もの大地震のために,ほかにも非常に多くの人が死亡した。

種々の文献からの資料を見ると,1914年以来の大地震の年間平均数は,それ以前の2,000年間の平均を何倍も上回っている。

『不法が増す』―

あなたは事実を知っておられるはずです。犯罪の増加による影響は地上のあらゆる国に見られます。あなたご自身の生活も影響を受けています。あなたの住んでおられる土地の学校では何が起きているでしょうか。あなたの住む地域では麻薬や覚醒剤の不法な使用が行なわれていますか。商取引きの不正についてはどうでしょうか。夜の街路をどれほど安全に感じますか。

ここで述べる不法とは,単に人間の法律に関してだけでなく,それ以上に,神の律法に関してです。(テモテ第二 3:1-5,13参照。)

神の王国のたよりが全世界で宣べ伝えられる ―

この業は200以上の国や土地で,幾百万ものエホバの証人によって,たゆみなく整然と行なわれている。

この音信を公に宣べ伝えるため,過去10年間に,エホバの証人により約40億時間がささげられた。その同じ期間に,証人たちは,神の王国を人間の唯一の希望として伝える文書を,190ほどの言語で,50億部以上も出版した。

『平和と安全』に関する宣言がなされる ―

指導者たちは,核による破滅を避けるため,また増大する他の難問を処理するために,平和の必要を認めている。この方向への一歩と言えるものは,1986年を「平和と国際的安全と協調」の年とする,という国際連合の布告である。―第39回総会,議事項目第32。

これらすべては何の「しるし」か。わたしたちが今,「事物の体制の終結」の時期に生きていること; キリストが天の王座に着いて,あらゆる国民の中から神のご意志に真に従いたいと願う人々を取り分けていること; 「大患難」が非常に近いことのしるし。さらに詳しくは,マタイ 24,25章,マルコ 13章,ルカ 21章をお読みください。