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「千年」― 見せかけの希望ではない

「千年」― 見せかけの希望ではない

1章

「千年」― 見せかけの希望ではない

1 人間の建てる王国が千年間持続できるかどうかについては何といわねばなりませんか。

王国が千年間持続するには,それはほんとうにしっかりした ― 強力な王国でなければなりません。そのような王国政府は,一介の人間またはその継承者などによって立案,創設,維持できるものではありません。ある家系の歴代の王の支配する,人間の建てた王国で,かつて千年近くですら持ちこたえた王国は一つもありません。

2 ただひとりの人間の君主による王国支配というようなことはどうして問題になりませんか。

2 では,ただひとりの君主が10世紀間支配を継続する王国についてはどうですか。それは不可能です! いまだかつてそれほど長生きした人はひとりもいません。記録にとどめられている最古の系図によれば,西南アジアに住んだメトセラという人は地上の被造物である人間の中で最も長生きをした人ですが,それでも千年までにはなお31年を残して一生を終えました。 * 現代の人間の平均寿命は前述の並はずれた寿命からはほど遠いものになりました。今日の先進諸国は医学の恩恵に浴しながらも,人びとの平均寿命は70歳にも及びません。女子の平均寿命は男子のそれをおよそ6年上回っています。ゆえに,ただひとりの男子あるいは女子による千年間の王国支配などということは,その臣民が自分たちの支配者をどんなに良い人物と考えようが問題になりません。

3 ごく最近に作られた「千年計画」は人類に対して何をもくろむものでしたか。

3 したがって,無論ここではそうした人間的見地から千年王国について論じているのではありません。わたしたちはもとより,今なお生存している他の何百万もの人びとは個人的観察者として,一国の政府を千年間持続させようとする努力が払われたごく最近の実例を思い起こせます。その「千年計画」とは,西暦1933-1945年まで支配したナチ・ドイツの独裁者アドルフ・ヒトラーの計画です。アメリカが第二次世界大戦に突入した後,ほどなくして押収されたナチ文書や拘置されたドイツ人スパイその他種々の出所から,そのナチ計画に関する情報が少しずつ収集されました。同計画は,もしヒトラーが第二次世界大戦で首尾よく勝ちを得た暁には人類世界に情け容赦なく強制する予定であったナチ世界秩序をねらいとした事実上の奴隷計画で,そのための労働者はドイツ以外の諸国から補充されることになっていました。同計画は千年先にまで及ぶものでした。

4 ヒトラーは明らかに昔のどんな帝国のことを考えていましたか。一司祭はその点をどのように証言しましたか。

4 オーストリアのハプスブルク王家の土地の出身者であった,ナチの指導者ヒトラーは明らかに,962年から1806年まで続いたゲルマン民族の神聖ローマ帝国のことを考えていました。事実,その趣意のことばを述べたローマ・カトリックのある司祭の例があります。1940年2月16日の夜,ワシントン市のメモリアル・コンチネンタル・ホールで満員の聴衆を前にして,ジョージタウン大学の海外勤務学部の評議員エドモンド・A・ウォルシ博士は,「神聖ローマ帝国の再興」を目ざすドイツの戦争目的のあらましを述べました。こう伝えられています。「ウォルシ博士は,アドルフ・ヒトラーがゲルマン民族の帝国であった神聖ローマ帝国は再興されなければならないと語るのを聞いたと述べた」― 1940年2月17日付,ニューヨーク・タイムズ紙。

5 ヒトラーはナチ帝国に関して何を誇りましたか。その計画はどうなりましたか。

5 ナチ総統ヒトラーは高慢にもこう言いました。「国家社会主義ドイツ帝国は千年間持続するであろう」。ところが,ナチの秘密警察の長官ハインリッヒ・ヒムラーはそれ以上に自信満々で,「一万年までも!」と答え応じました。その自己中心的な計画をひとたび実行に移したヒトラーは,世界支配さもなくば世界の破壊以外の何ものによっても満足できなかったのです。「ヒトラーの最後の日」という本の中で著者H・R・トレボァ-ロパーはこう述べています。「ヒトラーが,世界強国さもなければ破滅という最初の計画をあくまでも堅持するであろうことは言うまでもないことであった。もし世界強国になれないのであれば,(彼のことを知っている人はすべてこの点で意見を同じくしたが)彼は破滅をできるかぎり大きくするつもりであった」。これを読んで,なかには,「なんと悪魔に似ているのだろう!」と叫びたい気持ちになる人がいるかもしれませんが,それはもっともなことです。いずれにしても,ヒトラーの宗教の多くの信奉者の期待した神聖ローマ帝国の再興は成らず,ナチ「千年計画」は12年を経ずして失敗しました。

6 ゲルマン人ではない昔のどんな支配者は,ヒトラーが学ばなかったと思われる教訓を学び取りましたか。その支配者の夢をだれが正しく解き明かしましたか。

6 この自称世界支配者ヒトラーは教訓を学ばなかったかもしれませんが,遠い昔の世界支配者が苦しい思いをして学ばざるを得なかった厳とした動かせない事実にまともに直面しました。その支配者はヒトラーよりも長く,すなわち43年間(西暦前624-581年)支配しました。彼はゲルマン人つまりアーリヤ人ではありません。彼はバビロンの王で,ネブカデネザルという長い名前の持ち主でした。西暦前607年にユダヤ人の都エルサレムを滅ぼし,生き残ったユダヤ人の大半を遠くバビロニアの地方に流刑囚として連れ去り,ヒトラーがしたように住民をそっくり国外に追放したセム人種の世界征服者といえば,その人物を思い起こせるでしょう。国外に追放された当時の人びとの中には,ユダヤ人のユダの支族の,セム人種の預言者ダニエルがいました。ネブカデネザル王は不思議な夢を見,それを非常に重視しました。その夢を解き明かすことができたのは,奴隷であった預言者ダニエルだけでしたが,その解き明かしは適中しました。

7 その夢はいつ実現し始めましたか。その支配者は卑められたことからどんな教訓を学ぶことになりましたか。

7 夢を見てから1年後,バビロニア世界強国の首位者ネブカデネザルは自ら誇り,ユーフラテス河畔の自国の首都バビロンを自慢しはじめたところ,その誇りのことばを述べ終えるか終えないうちに彼は,目に見えない所から ― 天からの ― 声が,かつてその夢の中で聞いたことばを述べるのを聞きました。ネブカデネザルはそのことに関する自分の記述の中でこう述べています。預言者ダニエルはその記述を保存しました。「ネブカデネザル王よ,あなたに告げる。『王国はあなたから離れ去った。あなたは人間の中から追い出され,野の獣とともに住み,雄牛のごとくに草を食べ,こうして七つの時があなたの上に過ぎ,ついにあなたは,いと高き方が人間の王国の支配者であり,ご自分の望む者にそれをお与えになることを知るようになる』」― ダニエル 4:29-32,新。

8 その高慢な王を打ったのはだれですか。だれが彼を癒しましたか。

8 その直後何が生じましたか。その時のできごとに関する記述がバビロニアの歴史の記録中に保存されていないにしても,あるいはバビロニアの年代記作者の記録から削除もしくは抹殺されたとしても,それはもっともな話です。しかし,その問題に個人的に関係した,事実に忠実で正直な預言者ダニエルは霊感を受けてその記録を残したので,2,500年余の後代のわたしたちはそれを調べることができます。高慢な王ネブカデネザルはたちどころに狂気に打たれました。が,彼がこのうえなく敬っていた神,マルドゥク(もしくはメロダク)に打たれたのではありません。西暦前607年にエルサレムの聖なる神殿を崩壊させたこの高慢な王を打ったのは,その狂気を予告した全能の神です。そして,預言され,定められていたとおり,ネブカデネザルの身の上に文字どおり「七つの時」が経過し,彼はその間,付近の原野で雄牛のように狂気のごとく草を食みました。狂気した王は,1945年に首都ベルリンがソ連の赤軍の手に落ちる直前自殺したアドルフ・ヒトラーのように自殺したりはしませんでした。ネブカデネザルを打った真の神は,その狂気の7年の終わりに彼を癒し,正気を取り戻させました。

9,10 ダニエルによって保存された記述(4:34-37)は,神の絶対的支配権に関してバビロンの王が教訓をよく学んだかどうかについてどのように示していますか。

9 バビロンの王は教訓を学びましたか。それは預言者ダニエルによってわたしたちのために保存された,王自身の記述からわかります。一人称の形で書かれているその記述はこう述べています。

10 「そしてその期間の終わりに,私,ネブカデネザルは目を上げて天を見た。すると私に自分の理性が戻り始めた。それで私はいと高き方をほめたたえ,定めのない時まで生きておられる方を賛美し,あがめた。なぜなら,その支配権は定めのない時まで保つ支配権であり,その王国は代々限りなく続くからである。また,地の住民すべては無きもの同然にみなされる。彼は天の軍勢や地の住民の中でご自分の意志にしたがって事を行なっておられる。その手を抑えうる,あるいは『あなたは何をしておられるのか』と彼に言いうる者はいない。……今,私,ネブカデネザルは,天の王を賛美し,たたえ,あがめる。なぜなら,そのみわざはすべて真実であり,その道は公正だからである。また,高ぶって歩む者たちを,彼は卑しめることができるからである」― ダニエル 4:34-37,新。

11 バビロンの王は,支配を行なうには不適格者となったその「七つの時」の期間に関するどんな事を少しも知りませんでしたか。

11 ネブカデネザルはバビロニア世界強国,つまり聖書の中で言及されている一連の七つの世界強国中の第三世界強国の王座に復位したことを自ら述べています。(ダニエル 4:36)しかし,支配を行なうのに不適格者となったその「七つの時」の期間が長期間にわたる「七つの時」という預言的な,より長大な期間,つまり「異邦人の時」と呼ばれる期間であることはつゆ知りませんでした。また,そのより長大な「七つの時」の間,五つの世界強国 ― バビロニア,メディア-ペルシア,ギリシャ,ローマそして現代の英米世界帝国がそれぞれ地を支配することも少しも知りませんでした。また,合計2,520年になるその「七つの時」は,ネブカデネザルがエルサレムとその神殿を荒廃させた年に始まって,人類世界が最初の世界戦争に巻き込まれた年 ― 西暦1914年に終わることなど知るよしもありませんでした。(ルカ 21:24,欽。ダニエル 4:16,23,25,32)まして,異邦人の支配するその「七つの時」の終わる1914年に,「天の王」がご自分の望む者 ― そのメシアに「人間の王国」をお与えになることなど,ネブカデネザルは少しも知りませんでした!―ダニエル 9:25,新。

神の霊感によって与えられた先見

12 この世の政治家は「人間の王国」に関して依然どんな考えを持っていますか。しかし彼らは人間の事がらに関してだれの手を抑えることができませんでしたか。

12 すべての国の政治家は依然として,「人間の王国」は自分たちの正当な関心事であり,自分たちの正当な活動領域であると考えています。昔,バビロンの王ネブカデネザルもそう考えました。かなり最近には,千年の長期政治体制を夢見たアドルフ・ヒトラーもそう考えました。しかし,『その支配権は定めのない時まで保つ支配権である』ことをネブカデネザルがついに認めざるを得なかった方,その方は依然として「人間の王国の支配者」であられます。人間の事がらを治めるその王国は依然として,その方が関心を抱き,その運営に当たるべき正当な領域なのです。キリスト教世界の僧職者の支持するこの世の政治家は「その手を抑える」ことはできませんでしたし,またその方に対して,「あなたは何をしておられるのか」と言う権限も持ってはいません。(ダニエル 4:34,35,新)その方は西暦1914年の「異邦人の時」の終わりにさいして,「人間の王国」をだれに与えるべきかに関し,それら政治家やその宗教上の支持者とは相談されませんでした。政治家やその宗教上の同盟者たちは相談相手のような重要な存在ではありませんが,その方は『いと高き方,定めのない時まで生きておられる方』なのです。

13,14 きたるべき千年に関しては,だれのことばに基づいて確信をいだいて預言できますか。なぜですか。

13 では当然,だれのことばに基づいて来たるべき千年について預言できますか。人間は明日のことさえ予告できません。19世紀余の昔の一観察者は,「あなたがたは,あす自分の命がどうなるかも知らない」と述べました。(ヤコブ 4:14)しかし,『いと高き方,定めのない時まで生きておられる方』に関しては事情は異なります。その方にとって時間はどのようなものですか。

14 この方に向かって,ちょうど120年生きたある人はいみじくも述べました。「あなたの目には,千年も,過ぎ去れば昨日のごとく,夜の間のひと時[古代ユダヤ人の4時間のひと時]のようです」。(詩篇 90:4および表題,新)その方は,単なる一夜の夢とネブカデネザル王に対する預言者ダニエルのその夢の解き明かしとによって,西暦1914年に終わる2,520年の期間の後に世界史に生ずる事がらを予告できました。ではその方は,西暦1914年以後のある時点から始まる千年の期間に起こる事がらを同様に容易に,また正確に予告できるのではないでしょうか。まさにそのとおりです! しかも,そのような千年の期間に関する説明をすでに与えておられるとしたらどうですか。そうであれば,そのことばを根拠にして,きたるべき千年について確信を抱いて語れるでしょう。

15 ラテン語あるいはギリシャ語の語根を用いる人たちは,その千年の期間を何と呼びますか。その到来を信ずる人たちは何と呼ばれていますか。

15 英語では古代ラテン語に由来することばを用いる人は,千年のその期間をミレニアムと呼びます。このことばの二つの語根であるラテン語のミレは「千」を,アヌスは「年」を意味するからです。ギリシャの人びとはその期間<ピアリアド>のことをキリアスティック・ピアリアドといいます。ギリシャ語のキリアは「千」を意味するからです。それで千年のこの特別の期間の到来を信ずる人たちはミレニアリストまたはミレネアリアンあるいはキリエスト(千年期説信奉者)と呼ばれました。キリスト教世界の人びとはこれらの語を非難がましい仕方で用いています。

16,17 (イ)西暦1000年に関する人間のどんな経験は,西暦2000年が近づいているゆえにわたしたちが千年期に関心を持っているのではないことを示していますか。(ロ)人類生存の第七千年紀が西暦2000年より何年も前に始まるのはどうして幸いなことですか。

16 無理解な人びとからの非難に身をさらそうとも,近づく千年のこの期間に対して真の関心をいだいて然るべきです。そのことに関する情報は,『いと高き方,定めのない時まで生きておられる方』の記されたことばの中に収められています。そのことに対するわたしたちの関心が高まっているのは,西暦2000年つまり西暦2,000年紀の終わりが近づいているからではありません。これは重大な事がらではありません。わたしたちは,人類が西暦1000年つまり西暦1,000年紀の終わりに近づいたとき何が起きたかを思い起こします。このことに関して新カトリック百科事典はその853ページで「千年期説」の題目のもとにこう述べています。「西暦1000年が近づくにつれ,千年期説はいっそう優勢になった。なぜなら,多数の終末論者は創造の第七日が人類史上西暦1000年に満了し,十世紀間にわたるキリストの輝かしい統治がそれに続くということを信じていたからである」― 1967年,版権取得。

17 一つには,地上における人類生存の6,000年の終わりと人類生存の7,000年紀の始まりは西暦2000年よりも何年も前に訪れると考えられます。これは幸いなことです。今日,人類世界はかくも嘆かわしい状態にあり,多方面から破滅の脅威を受けているため,人類の存続を脅かす種々の問題を調査,研究している識者の中には,人類が西暦2000年まで生存できるかどうかに対する事実上の疑問を表明する向きは少なくありません。それら識者は最も広く読まれているあの聖なる書物つまり聖書の何らかの年表に基づいて人類の将来に対する暗い見通しをいだいているのではなく,今日の厳然とした事実や,わたしたちすべてを包含している今や逆転不能の物事のすう勢に基づいて論じているのです。権威をもって語るそれらの人びとは人類の今後の生存年数を1,000年よりもはるかに少なく見積っています。このことを信じまいとするどんな理由を読者はお持ちですか。

18,19 (イ)この情報はなぜ,その道の人で成るある種の終末論者秘密結社に局限されてはいませんか。(ロ)その情報を収めた書物はだれの名を署して著わされていますか。なぜですか。

18 純粋に人間的見地から語るそれら陰気な予言者とは正反対に,『いと高き方,定めのない時まで生きておられる方』は,人類のなお前途に控えている千年,さらには人類史全体の中でも最もすばらしい何年かに関して楽しく語っておられます。この希望を鼓吹する情報は,「事情」に詳しい特殊なその道の人びとで成る,ある種の終末論者秘密結社がひそかに入手したものではありません。1,500の言語や方言を用いる全地の何十億もの人びとは,その貴重な情報の出典を公に手に入れられます。どこの人でも聖書を1冊持っていれば,人生を明るくするその情報を入手できるのです。

19 聖書は書記もしくは筆記者としての,それも単なる不完全な人間によって書かれましたが,その聖なる書物は人間のことばではないことを随所で述べています。それは神の霊感による著作ですから,『いと高き方,定めのない時まで生きておられる方』のみ名を署して著わされた書物です。その方は現代に至るまで,その書物が過去について,またわたしたちの将来について述べる事がらに対して責任を負っておられます。それはまさに本の中のです!

20 千年期に関するその情報は聖書中のどの書に見いだされますか。だれがその書を記しましたか。

20 では,きたるべき千年とそれに続く永遠の時代に関するその情報は,その本のどこに見いだせますか。いみじくも聖書巻末の書として載せられている箇所に見いだせます。それはその書名の意味するとおり啓示の書です。あるいは覆いを取り去る,または黙示の書です。そうです,その書は,ローマ帝国から犯罪者として烙印を押され,今日のトルコに当たる小アジアの海岸に近いエーゲ海上の流刑地パトモス島に幽閉されたひとりの男の人によって書き記されました。それは現に存在する場所で,伝説めいたところは少しもありません。その流刑囚は若いころ,当時のローマ領ガリラヤ州のガリラヤの海の漁師でした。彼はゼベダイの子ヨハネで,その漁師の兄弟はヤコブです。ヨハネは啓示の書を霊感を受けて記したと,その冒頭で述べていますが,それは何に関する啓示もしくは覆いを取り去る書ですか。今日のわたしたちの関心をそそるその答えを解くにさいして,その書に対する責任をヨハネがだれに帰しているかに注目しましょう。

21 ヨハネは冒頭で,啓示の書に対する責任をだれに帰していますか。

21 「これは神によりイエス・キリストに与えられた啓示である。それが彼に与えられたのは,まもなく起こるはずの事を彼がそのしもべたちに示すためであった。彼はその使いを遣わして,そのしもべヨハネにそれを知らせた。ヨハネは,自分の見た事をすべて告げるにさいして,神のことばとイエス・キリストの証言との証を行なった。この預言のことばを読む者と,それを聴いて,そこに書かれている事に注意する人たちは幸いである。成就の時が近いからである」― 啓示 1:1-3,新英語聖書(1970年)。

22 今日のわたしたちにとって,「成就の時が近いからである」ということばには,なぜ感動させるものがありますか。

22 およそ19世紀前に書かれた前述の「成就の時が近いからである」ということばには,西暦20世紀の今日のわたしたちを感動させるものがありますか。確かに時間の観点から評価すれば,およそ1,900年を経た後の今日,とりわけ予告された「千年」が始まるまでに,「まもなく起こるはずの事」が起きても早すぎはしないでしょう。問題の千年とその直前の期間に関するヨハネの記述を読めば,その始まりの時をよりよく確定できます。では,啓示 19章11節(新英)から読んでみましょう。

23 白い馬の乗り手をはっきり見分ける特色を挙げなさい。

23 「また,私は広く開かれた天を見た。すると,私の前には白い馬がいた。それに乗った方の名は,忠実また真実と称えられた。彼は正しく裁き,正しく戦う方だからである。その目は火のように燃え,その頭には数多くの王冠があった。その身には,ご自身のほかはだれにも知られていない名が書かれていた。彼は血に染まった衣をまとっていた。彼は神のことばと呼ばれた。天の軍勢は,清くて輝かしい,上等の亜麻布を着て,白い馬に乗って彼に従った。彼の口からは,諸国民を打つための鋭い剣が出ていた。この方こそ,鉄の杖をもって彼らを支配し,主権者なる主であられる神の憤りと懲罰の酒ぶねを踏む方だからである。その長服にも,そのももにも,『王の王,主の主』という名が書かれていた。

24 (イ)中天を飛んでいる鳥はどんな招待を受けましたか。(ロ)戦いに加わった者たちはどうなりましたか。

24 「また私は,太陽の中にひとりのみ使いが立っているのを見た。彼は,中天を飛ぶすべての鳥に向かって大声で叫んだ。『さあ,来て,神の大いなる夕食に集まり,王たちや司令官たち,また戦士たちの肉,馬とその乗り手たちの肉,奴隷と自由人,大いなる者と小さい者などすべての人の肉を食べよ!』 また私は,地の王たちとその軍勢が召集されて,馬に乗った方とその軍勢と戦いをまじえるのを見た。すると,獣は捕えられた。また,獣の前で奇跡を行なって,獣の印を受けた者とその像を拝んだ者たちを迷わしたその偽預言者も,同様に捕えられた。彼らは両方とも,硫黄の燃えている火の湖に,生きたままで投げ込まれた。残りの者たちは,馬に乗った方の口から出る剣で殺された。そして,すべての鳥が,彼らの肉をたらふく食べた。

25 次いで,悪魔サタンはどんな処置を受けましたか。それはいつまで続きますか。

25 「また私は,ひとりのみ使いが底知れぬ所の鍵と大きな鎖を手にして,天から下って来るのを見た。彼は,悪魔またはサタンである竜,つまりあの年経たへびを捕えて,千年の間縛った。そして,彼を底知れぬ所に投げ込んで,そこを閉じ,その上に封印して,千年の終わるまでは,彼がもはや諸国民を唆すことのないようにした。そののち,サタンはしばらくの間,解き放されねばならない。

26 天に見えた数々の王座にはだれが座していますか。彼らは何を行ないますか。

26 「また私は,数々の座を見た。そして,その上に,裁きをする権を委ねられた者たちが座した。また私は,神のことばとイエスに対する証言のために首をはねられた人たち,つまり獣やその像を拝まず,その印を額または手に受けなかった人たちの魂を見ることができた。それらの人たちは生き返って,キリストとともに千年の間王となったが,残りの死人は,千年の終わるまでは,生き返らなかった。これが第一の復活である。この第一の復活にあずかる者は確かに幸いであり,神の民のひとりである! この人たちに対しては,第二の死は何の力も持っていない。かえって,彼らは神とキリストとの祭司となり,彼とともに千年の間統治するのである。

27 地上では,サタンの解放に続いて何が生じましたか。彼はどうなりましたか。

27 「千年が終わると,サタンはその牢から解き放され,出て行って,地の四方にある諸国民,すなわちゴグとマゴグの大群を唆し,戦いのために彼らを召集する。その数は海辺の砂のようである。そこで,彼らは地の広い所を進んで来て,神の民の陣営と神の愛しておられる都とを包囲した。しかし,火が天から彼らの上に下って来て,彼らを焼き尽くした。そして,彼らを唆した悪魔は火と硫黄との湖に投げ込まれた。そこは獣も偽預言者も投げ込まれた所で,そこでは永遠に昼も夜も責め苦しめられるのである」― 啓示 19章11節から20章10節まで。

28 (イ)それで,その千年はどんなできごとの後に始まりますか。(ロ)では,どうしてその千年は明らかにこれから始まるといえますか。

28 この記述の中には「千年」という表現が6回出ていることに気づきます。また,その千年は,「王の王」と,「獣」や「偽預言者」それに「地の王たち」との間で戦いが行なわれ,次いで悪魔サタンが鎖でつながれ,底知れぬ所に投げ込まれた後に始まることがわかります。こうしたできごとは,「まもなく起こるはずの事」の一部です。これまでのところ,世界にはそうしたできごとに匹敵する事がらは何も生じていません。したがって明らかに,その「千年」はこれから始まるに違いありません。それは正確に計れない漠然とした長い期間を意味してはいません。それは文字どおりの千年です。

29 その千年に関してはどれほどの長さの期間が,証明ずみの神の時間表とよく合致しますか。

29 その千年は無期限の期間を表わすと主張する研究者は,神がご自分の新たに組織されたエルサレムのクリスチャン会衆に聖霊を注がれた西暦33年のペンテコステの祭りの日に,その期間が始まったと言います。しかし,そのような議論は結局厄介な問題に直面し,クリスチャン会衆が霊的に生気を得たペンテコステのその日以来今日までの1,940年余の全期間中,霊によって生み出されたクリスチャンに実際に起きた事がらに反する説明を試みるものとなります。字義どおりの千年期は,証明ずみの神の時間表とよく合致します。

30 わたしたちはどうしてその千年の期間の預言的な光景を調べずにはおられませんか。

30 その千年がこの地に招来する事がらは,人類の世の永遠の生活と幸福にとって必要不可欠です。では,使徒ヨハネがわたしたちのためにたいへん美しく描写した驚嘆すべき千年期の預言的な光景を,どうして早速綿密に調べないでおれるでしょうか。

[脚注]

^ 2節 聖書の創世記 5章25-27節をご覧ください。

[研究用の質問]