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聖書の11番目の書 ― 列王記第一

聖書の11番目の書 ― 列王記第一

聖書の11番目の書 ― 列王記第一

筆者: エレミヤ

書かれた場所: エルサレムとユダ

書き終えられた年代: 西暦前580年

扱われている期間: 西暦前1040年ごろ-911年

1 (イ)イスラエルの輝かしい繁栄はどのように衰退し,損なわれましたか。(ロ)それにもかかわらず,どうして列王記第一は『霊感を受けたもので,有益』であると言えますか。

ダビデは何度か征服を行なって,イスラエルの領土を天与の境界線まで,つまり北はユーフラテス川から南はエジプトの川まで拡張しました。(サムエル第二 8:3。列王第一 4:21)ダビデが死んで,その子ソロモンが彼に代わって支配するころまでには,「ユダとイスラエルは,おびただしさの点で海辺にある砂粒のように多くて,食べたり飲んだりして,歓んで」いました。(列王第一 4:20)ソロモンは大いなる知恵,すなわち古代ギリシャ人のそれをはるかにしのぐ知恵をもって支配しました。彼はエホバのために壮大な神殿を建てました。しかし,ソロモンでさえ堕落して,偽りの神々を崇拝するようになりました。その死に際して,王国は二つに分裂し,張り合うイスラエルとユダの両王国の歴代の邪悪な王たちは滅びをもたらすことを行ない,サムエルが予告した通り,民に苦難をもたらしました。(サムエル第一 8:10-18)ソロモンの死後,ユダとイスラエルで支配した14人の王たちのうち,列王記第一の書で回顧されている通り,エホバの目に正しいことを首尾よく行なえたのは,ただ二人の王だけでした。では,この記録は『霊感を受けたもので,有益』ですか。まさしくその通りです。というのは,その訓戒,その預言や型,および「聖書全体」の王国という主要な主題とのその関係からも,それが分かるからです。

2 列王記第一および第二の記録はどのようにして二つの巻き物の形を取るようになりましたか。それらはどのようにして編集されましたか。

2 列王記は元々一つの巻き物,つまり一巻でできており,ヘブライ語で「メラキーム」(「王たち」)と呼ばれていました。セプトゥアギンタ訳の翻訳者たちはそれをバシレイオーン,つまり「王国」と呼び,それを初めて便宜上二つの巻き物に分けました。これらの書は後に列王記第三および第四と呼ばれるようになり,この名称は今日でもカトリックの聖書で引き続き用いられています。しかし,これらの書は今では一般に列王記第一および第二として知られています。これらの書は,以前の記録を編集者のための資料として挙げている点で,サムエル記第一および第二とは異なっています。その一人の編集者は,この二つの書の中で,「ユダの王たちの時代の事績の書」に15回,そして「イスラエルの王たちの時代の事績の書」に18回言及し,また「ソロモンの事績の書」にも言及しています。(列王第一 15:7; 14:19; 11:41)これらほかの昔の記録は完全に失われてしまいましたが,霊感を受けて編集された書 ― 列王記第一および第二という有益な記述 ― は残っています。

3 (イ)列王記の書を書いたのは疑いもなくだれでしたか。どうしてそう答えますか。(ロ)それはいつ書き終えられましたか。列王記第一はどんな期間を扱っていますか。

3 列王記の書を書いたのはだれですか。これらの書の中で預言者たち,特にエリヤやエリシャの業が強調されていることは,筆者がエホバの預言者であることを示しています。言葉遣い,文章構成,および文体に見られる類似性は,エレミヤ書と同じ筆者であることを示唆しています。列王記やエレミヤ書にだけ出ていて,聖書のほかの書には出て来ないヘブライ語の言葉や表現は少なくありません。しかし,もしエレミヤが列王記を書いたのなら,どうしてエレミヤのことがその中で述べられていないのでしょうか。そうする必要はありませんでした。なぜなら,彼の業はその名の付されている書の中で扱われていたからです。その上,列王記はエレミヤの評判を高めるためではなく,エホバとその崇拝を大いなるものとするために書き著わされたのです。実際のところ,列王記とエレミヤ書は大半の部分で互いに補い合っており,一方が省いている点を他方が埋め合わせています。その上,例えば列王第二 24章18節から25章30節とエレミヤ 39章1節から10節; 40章7節から41章10節; 52章1節から34節の場合のように,並行記述もあります。ユダヤ人の伝承はエレミヤが列王記第一および第二の筆者であることを確証しています。確かに,筆者はこの両書の編集をエルサレムで開始し,第二の書は西暦前580年ごろにエジプトで書き終えられたようです。というのは,筆者はその記録の結論の箇所でその年の出来事に言及しているからです。(列王第二 25:27)列王記第一は,サムエル記第二の終わりから始めて,エホシャファトが死んだ西暦前911年に至るまでのイスラエルの歴史をたどったものです。―列王第一 22:50

4 一般の歴史と考古学は,列王記第一をどのように確証していますか。

4 列王記第一はすべての権威者によって受け入れられているので,聖書の正典の中で正当な場所を占めています。その上,列王記第一の中の出来事はエジプトやアッシリアの一般の歴史によっても確証されています。考古学もまた,この書の中の陳述の多くを支持しています。例えば,列王第一 7章45節と46節には,ヒラムがソロモンの神殿のための銅の器具を鋳造したのは,「ヨルダンの地域,スコトとツァレタンの間で」あったと記されています。昔のスコトの遺跡を発掘した考古学者たちは,そこで製錬活動がなされていたことを示す証拠を発見しました。 * その上,カルナク(古代テーベ)の神殿の壁の浮き彫りには,列王第一 14章25節と26節で言及されている,エジプト人の王シェションク(シシャク)によるユダ侵攻について誇らしげに述べた言葉が記されています。 *

5 霊感を受けたどんな証言が列王記第一の信ぴょう性を証拠立てていますか。

5 聖書の他の筆者たちによる言及と預言の成就は,列王記第一の信ぴょう性を裏付けています。イエスはエリヤやザレパテのやもめにまつわる出来事を歴史的事実として述べられました。(ルカ 4:24-26)イエスはバプテスマを施す人ヨハネについて話し,「彼こそ,『来ることに定められているエリヤ』なのです」と言われました。(マタイ 11:13,14)ここでイエスは,これまた将来の時代について,「見よ,エホバの大いなる,畏怖の念を抱かせる日の来る前に,わたしはあなた方に預言者エリヤを遣わす」と語ったマラキの預言に言及しておられました。(マラキ 4:5)さらにイエスは,ソロモン,それに南の女王に関して列王記第一に記されている事柄に言及することにより,この書の正典性を保証されました。―マタイ 6:29; 12:42。列王第一 10:1-9と比較してください。

列王記第一の内容

6 ソロモンはどんな事情のもとで王位につきますか。彼はどのようにしてその王国で堅く立てられるようになりますか。

6 ソロモンが王となる1:1-2:46)。列王記第一の記録は,40年にわたる治世の終わりに近づいて,死期の迫ったダビデのことで始まります。その子アドニヤは,軍の長ヨアブと祭司アビヤタルの助けを得て,王権を引き継ぐために陰謀を企てます。預言者ナタンはそのことをダビデに知らせ,その死に際してはソロモンを王とするよう既に指名していたことを遠回しに思い起こさせます。そこで,ダビデは,陰謀を企てる者たちがアドニヤの即位を祝っているにもかかわらず,祭司ザドクを用いてソロモンに油をそそがせてこれを王とします。さて,ダビデはソロモンに,強くあって,男らしくし,その神エホバの道に歩むよう命じます。その後,ダビデは死んで,「ダビデの都市」に葬られます。(2:10)やがて,ソロモンはアビヤタルを追放し,いざこざを起こす人物であるアドニヤとヨアブを処刑します。後に,シムイはその命を容赦するために設けられた憐れみ深い取り決めに対する不敬の態度を示したために処刑されます。今や,王国はソロモンの手に堅く立てられます。

7 エホバはソロモンのどんな祈りに答えられますか。その結果,イスラエルはどうなりますか。

7 ソロモンの賢明な支配3:1-4:34)。ソロモンはファラオの娘と結婚して,エジプトと姻戚関係を結びます。彼は識別力をもってエホバの民を裁くために,従順な心をエホバに祈り求めます。彼は長寿や富を願い求めなかったので,エホバは彼に識別力のある賢い心と共に富や栄光をも与えることを約束されます。ソロモンはその治世の初めのころ,二人の女がその前に出て,同じ子供をそれぞれ我が子だと主張した時,その知恵を示します。ソロモンは,「生きている子供を二つに断ち切り」,各々の女に半分ずつ与えるよう部下に命じます。(3:25)ここで,本当の母親はその子のために助命を請い,その子を相手の女に与えて欲しいと言います。こうして,ソロモンはその正当な母親がだれかを見分け,母親はその子を取り戻します。神から与えられたソロモンの知恵のゆえに,全イスラエルは繁栄し,幸福で安全な生活を営みます。人々はソロモンの賢い言葉を聞こうとして多くの国々からやって来ます。

8 (イ)ソロモンはどのようにして神殿の建築を行ないますか。その特徴の幾つかを述べなさい。(ロ)さらにどんな建築計画を遂行しますか。

8 ソロモンの神殿5:1-10:29)。ソロモンはその父ダビデに対するエホバの次のような言葉を思い起こします。「わたしがあなたの代わりにあなたの王座に就かせるあなたの子が,わたしの名のために家を建てるであろう」。(5:5)そこで,ソロモンはそのための準備をします。ティルスの王ヒラムは,レバノンから出る杉やねずの素材を送ったり,熟練した働き人を提供したりして援助します。それらの人たちと,ソロモンが徴用した働き人たちが一緒になって,イスラエル人がエジプトを去ってから480年目,ソロモンの治世の第4年にエホバの家の工事を始めます。(6:1)建築現場では,つちや斧,あるいは他のどんな鉄製の道具も使用されません。というのは,石はみな,組み立てるために神殿の敷地に運ばれる前に,石切り場で用意され,寸法に合わせて整えられたからです。神殿の内部全体は,まず壁は杉で,床はねず材で覆われ,それから金が美しくかぶせられます。ケルブの姿を刻んだ二つの像が油の木で造られます。それらは各々高さが10キュビト(4.5㍍),翼の端から翼の端までがやはり10キュビトあって,一番奥の部屋に置かれます。ほかにも,やしの木の模様や花と共にケルブが神殿の壁に刻まれます。ついに,7年余りにわたる工事の後,壮大な神殿が完成します。ソロモンはその建築計画を続行します。つまり,自分自身のための家,レバノンの森の家,柱の玄関,王座の玄関,およびファラオの娘のための家を建てます。彼はまた,エホバの家の玄関のための2本の大きな銅の柱,中庭のための鋳物の海と銅の運び台,それに銅の水盤と金の器具を造ります。 *

9 エホバのどんな顕現やソロモンのささげたどんな祈りが,契約の箱を運び入れた日を特色づけていますか。

9 さて,祭司たちはエホバの契約の箱を運び上って,それを一番奥の部屋,つまり至聖所のケルブの翼の下に置く時が来ます。祭司たちが出て来ると,「エホバの栄光がエホバの家に満ち」て,祭司たちはもはや立って奉仕することができなくなります。(8:11)ソロモンはイスラエルの会衆を祝福し,エホバをほめたたえ,エホバを賛美します。彼はひざをかがめ,そのたなごころを天に伸べて,天の天もエホバを入れることはできないので,まして自分の建てた地上の家など,なおさらであると祈りの中で認めます。彼は,エホバを恐れる人たちがその家に向かって祈るとき,それらすべての人の祈りを聴いてくださるようエホバに祈ります。そうです,遠い国から来る異国の人の祈りをさえ聴いてくださるよう祈ります。「それは,地のすべての民があなたのみ名を知って,あなたの民イスラエルと同じようにあなたを恐れるようにな(る)ためです」― 8:43

10 エホバはどんな約束と預言的な警告の言葉をもってソロモンの祈りに答えられますか。

10 それに続く14日間の宴の間,ソロモンは牛2万2,000頭と羊12万頭を犠牲としてささげます。エホバは,ソロモンの祈りを聞き届けられたことと,『定めのない時までもその名をそこに』置いて,神殿を神聖なものとされたこととをソロモンにお告げになります。さて,もしソロモンがエホバのみ前に廉直さをもって歩んで行くなら,その王国の王座は存続するでしょう。しかし,もしソロモンとその後の子らがエホバの崇拝を捨てて,ほかの神々に仕えるなら,その時にはエホバはこう言われます。「わたしもまた,彼らに与えた土地の表からイスラエルを断とう。わたしの名のために神聖なものとした家を,わたしはわたしの前から投げ捨てるであろう。イスラエルは確かにすべての民の中で語りぐさとなり,嘲弄されるものとなろう。それにこの家も,廃虚の山となろう」。―9:3,7,8

11 ソロモンの富と知恵はどれほど大きなものとなりますか。

11 ソロモンは二つの家,つまりエホバの家と王の家を完成させるのに20年を要しました。今や,彼はその領地の至る所に多くの都市を建て,遠い国々と交易を行なうために使う船も建造しはじめます。こうして,シェバの女王はエホバがソロモンに与えられた大いなる知恵について聞き,難問で彼を試そうとしてやって来ます。彼女はソロモンが話すのを聞き,その民の繁栄と幸福な状態を見,「私はその半分も告げられていませんでした」と叫びます。(10:7)エホバは引き続きイスラエルに対して愛を示されるので,ソロモンは「富と知恵とにおいて,地のほかのどんな王よりも偉大」な者となります。―10:23

12 (イ)ソロモンはどんな点で失敗しますか。どんな反逆の種が現われはじめますか。(ロ)アヒヤはどんなことを預言しますか。

12 ソロモンの不忠実な行ないと死11:1-43)。ソロモンはエホバの命令に反して,ほかの国々から多くの妻 ― 700人の妻と300人のそばめたち ― をめとります。(申命記 17:17)彼の心は引き離され,ほかの神々に仕えるようになります。エホバは,王国がソロモンの時代ではなく,その息子の時代に彼から裂き取られることをソロモンにお告げになります。けれども,その王国の一部,つまりユダのほかにもう一つの部族がソロモンの子らによって支配されることになります。神は近隣の諸国民の中からソロモンに対する反抗者を起こしはじめられます。エフライムの部族のヤラベアムも王に逆らって身を起こします。預言者アヒヤはヤラベアムがイスラエルの10部族を治める王となることを彼に告げ,ヤラベアムは命を守るためにエジプトに逃げます。ソロモンは40年の治世の後に死に,その子レハベアムが西暦前997年に王となります。

13 レハベアムがその統治をはじめた時,その王国にはどのように分裂が生じますか。ヤラベアムはどのようにしてその王権を確保しようとしますか。

13 王国は分裂する12:1-14:20)。ヤラベアムはエジプトから戻り,民と共に上って行き,ソロモンが彼らに課したすべての重荷を軽減するようレハベアムに頼みます。レハベアムはイスラエルの長老たちの賢明な助言の代わりに,若者たちの言うことに聞き従い,その苦難を増大させます。イスラエルは反乱を起こし,ヤラベアムを北の10部族の王とします。ただ,ユダとベニヤミンを残すのみとなったレハベアムは,軍勢を集めて反抗者たちと戦おうとしますが,エホバの命令に従って帰って行きます。ヤラベアムはシェケムを自分の首都として築きますが,それでもなお不安に感じます。彼は,民がエホバを崇拝するためにエルサレムに戻って,再びレハベアムのもとに行きはしまいかと恐れます。そうさせないようにするため,彼はダンとベテルにそれぞれ金の子牛を立て,レビ族からではなく,一般の民の間から祭司たちを選んで,崇拝を指導させます。 *

14 ヤラベアムの家に対してどんな預言的な警告が知らされますか。どんな逆境が生じるようになりますか。

14 ヤラベアムがベテルに設けられた祭壇で犠牲をささげている時,エホバは一人の預言者を遣わして,偽りの崇拝のためのその祭壇に対して強硬な措置を取る,ヨシヤという名の王をダビデの家系から起こすことを警告されます。その一つの異兆として,祭壇はその時,その場で二つに裂けます。その預言者自身は,任務を帯びている間は食べたり飲んだりしてはならないというエホバの指図に従わなかったため,1頭のライオンによって殺されます。今や,逆境がヤラベアムの家に災いをもたらしはじめます。エホバからの裁きとしてその子供は死に,神の預言者アヒヤは,イスラエルで偽りの神々を立てたその大いなる罪のゆえにヤラベアムの家が完全に断たれることを予告します。ヤラベアムは22年間統治した後に死に,その子ナダブが彼に代わって王となります。

15 ユダでは次の3代の王の治世中,どんな出来事が生じますか。

15 ユダで: レハベアム,アビヤム,およびアサ14:21-15:24)。一方,レハベアムのもとでユダもまた偶像崇拝を行なって,エホバの目に悪いことをします。そして,エジプトの王が侵入し,神殿の宝物の多くを運び去って行きます。レハベアムは17年間支配した後,その子アビヤムが王となります。彼もまたエホバに対して罪をおかし続け,3年間治めた後に死にます。今度は,その子アサが支配し,それまでとは対照的に,全き心をもってエホバに仕え,その国から糞像を除き去ります。イスラエルとユダの間には絶えず戦いが行なわれます。アサはシリアから助けを得,イスラエルは撤退を余儀なくされます。アサは41年間支配し,その子エホシャファトが跡を継ぎます。

16 今や,イスラエルではどんな不穏な出来事が生じますか。それはどうしてですか。

16 イスラエルで: ナダブ,バアシャ,エラ,ジムリ,ティブニ,オムリ,およびアハブ15:25-16:34)。何という邪悪なやからなのでしょう。バアシャはわずか2年間治めたばかりのナダブを暗殺し,ヤラベアムの全家を完全に根絶やしにします。彼は偽りの崇拝を続け,ユダとの戦いを続けます。エホバはヤラベアムの家に対して行なった通りに,バアシャの家を完全に一掃することを予告されます。バアシャが24年間治めた後,その子エラが跡を継ぎますが,彼は2年後,その僕ジムリによって暗殺されます。ジムリは王座を奪うとすぐ,バアシャの家のすべての者を討ち倒します。人々はそれを聞くと,軍の長オムリを王として,ジムリの首都ティルツァに攻め上ります。ジムリは見込みがなくなったのを見ると,我が身の上に王の家を焼いて,自分も死にます。今度はティブニが対抗する王として治めようとしますが,しばらくして,オムリの追随者たちに圧倒され,殺されます。

17 (イ)オムリの治世はどんなことで知られていますか。(ロ)アハブの治世中に,真の崇拝はどうして衰微の極に達しますか。

17 オムリはサマリアの山を買い,そこにサマリア市を建てます。彼はすべてヤラベアムの道を歩み続け,偶像崇拝を行なってエホバを怒らせます。実際,オムリは彼より前のほかのすべての者に勝って悪い王です。12年治めた後にオムリは死に,その子アハブが王となります。アハブはシドンの王の娘イゼベルと結婚し,サマリアにバアルのための祭壇を立てます。アハブの邪悪さは彼より前のすべての王の邪悪さをしのいでいます。ベテル人ヒエルがその長子と末の子を失ってエリコの都市を再建したのはこのころのことです。真の崇拝は衰微の極に達します。

18 エリヤはイスラエルでどんな宣告を述べて,預言の業を始めますか。彼はイスラエルが問題に陥っている真の理由を,どのように正確に指摘しますか。

18 イスラエルにおけるエリヤの預言の業17:1-22:40)。突然,エホバからの一人の使者が登場します。それはティシュベ人エリヤです。 * アハブ王に対する次のようなエリヤの宣告の冒頭の言葉はまさに驚くべきものです。「わたしがまさしくその前に立っているイスラエルの神エホバは生きておられます。わたしの言葉の命令によらなければ,ここ何年間かは露も雨もないでしょう!」(17:1)同様に突如として,エリヤはエホバの命令に従ってヨルダンの東の渓谷に退きます。干ばつがイスラエルに生じますが,渡りがらすがエリヤのもとに食物を運びます。その渓谷の水流が干上がると,エホバはその預言者をシドンのザレパテへ派遣して,そこに住まわせます。あるやもめがエリヤに親切を示したので,エホバはそのやもめのわずかな麦粉と油の蓄えを奇跡的に保持させて,彼女とその息子は飢え死にを免れます。後日,その息子は病気になって死にますが,エリヤが嘆願すると,エホバはその子供の命を回復させます。次いで,干ばつの3年目に,エホバは再びエリヤをアハブのもとに派遣されます。アハブは,イスラエルをのけ者にならせているとしてエリヤを非難しますが,バアルに従っているがゆえに「あなたとあなたの父の家がそうしたのです」と,エリヤは大胆にアハブに告げます。―18:18

19 神性に関する争点はどのように明示され,エホバの至上権はどのように立証されますか。

19 エリヤはバアルの預言者たちを皆カルメル山に集めるようアハブに求めます。もはや二つの意見の間でふらつくことはできなくなります。争点が明示されます。すなわち,エホバかバアルかという問題です! 民すべての前で,バアルの450人の祭司たちは1頭の雄牛を整え,それを祭壇の薪の上に置き,火を下らせてその供え物を焼き尽くすよう祈ります。彼らは朝から昼まで,エリヤの嘲弄の言葉を浴びながら,むなしくバアルを呼びます。彼らは絶叫したり,身を傷つけたりしますが,何の答えもありません! 次に,ただ一人の預言者エリヤがエホバの名によって一つの祭壇を築き,犠牲をささげるための薪と雄牛を整えます。それから,民にその供え物と薪に3度水を掛けてびしょぬれにさせます。それから,彼はエホバにこう祈ります。「私に答えてください。エホバよ。私に答えてください。この民が,エホバなるあなたこそまことの神であ(る)ことを知るようにしてください」。すると,天から火がきらめき,その供え物と薪と祭壇の石と塵と水とを焼き尽くします。民は皆それを見ると,直ちに顔を伏せてひれ伏し,「エホバこそまことの神です! エホバこそまことの神です!」と言います。(18:37,39)バアルの預言者たちは死刑に値します! エリヤは自らその殺害を引き受けるので,だれひとり逃れることはありません。それから,エホバは雨を与えて,イスラエルの干ばつを終わらせてくださいます。

20 (イ)エホバはホレブでどのようにしてエリヤに現われますか。どんな指図と慰めをお与えになりますか。(ロ)アハブはどんな罪をおかし,どんな犯罪を行ないますか。

20 バアルが辱められたという知らせがイゼベルのもとに届くと,彼女はエリヤを殺させようとします。恐れたエリヤは,従者と共に荒野に逃げ,エホバはこれをホレブに導かれます。エホバはそこで,風や震動や火の中で華々しい仕方ではなく,「穏やかな低い声」をもってエリヤに現われます。(19:11,12)エホバはハザエルをシリアの王,エヒウをイスラエルの王,またエリシャをエリヤの代わりの預言者として,それぞれ油そそぐよう彼に命じます。エホバはイスラエルの7,000人の者がバアルに身をかがめなかったという知らせをもってエリヤを慰めます。それから,エリヤは早速自分の職服をエリシャの上に投げかけて,彼に油をそそぎます。さて,アハブはシリア人に対して二つの勝利を得ますが,彼らの王を殺さずにこれと契約を結んだことでエホバから叱責されます。それから,ナボテの事件が起こります。アハブはナボテのぶどう園を自分のものにしたいと考えます。イゼベルは偽りの証人によってナボテを罪に陥れ,処刑させるので,アハブはそのぶどう園を奪うことができるようになります。何という許し難い犯罪なのでしょう。

21 (イ)エリヤはアハブとその家に,またイゼベルにどんな最期を宣告しますか。(ロ)アハブの死に際してどんな預言が成就しますか。

21 再びエリヤが現われます。彼はアハブに,ナボテが死んだ所で,犬がアハブの血をもなめ尽くすことになり,その家はヤラベアムやバアシャの家のように完全に滅ぼし絶やされることを告げます。犬はエズレルの小地所でイゼベルを食らい尽くすことになります。こう記されています。「例外なく,だれひとりとして,身を売ってエホバの目に悪いことを行なったアハブのような者はいなかった。その妻イゼベルが彼を唆したのである」。(21:25)しかし,アハブはエリヤの言葉を聞くと,へりくだったので,その災厄は彼の時代ではなく,その息子の時代に臨むことになるとエホバは言われます。さて,アハブはシリアに対する戦いでユダの王エホシャファトと協力し,エホバの預言者ミカヤの助言に反して戦いに出かけて行きます。アハブは戦いの際に受けた傷がもとで死にます。その戦車がサマリアの池の傍らで洗われるとき,エリヤが預言した通り,犬がその血をなめ尽くします。やがて,その子アハジヤが彼に代わってイスラエルの王となります。

22 ユダのエホシャファトとイスラエルのアハジヤの治世はそれぞれ何によって特色づけられていますか。

22 ユダではエホシャファトが治める22:41-53)。アハブに同伴してシリアとの戦いに加わったエホシャファトは,その父アサのようにエホバに対して忠実な人ですが,偽りの崇拝の行なわれる高き所を完全に一掃するまでには至りません。彼は25年間支配した後に死に,その子エホラムが王となります。北のイスラエルでは,アハジヤがその父の歩みに従って,バアル崇拝を行ない,エホバを怒らせます。

なぜ有益か

23 列王記第一は祈りに関してどんな保証と励ましを与えるものとなりますか。

23 列王記第一に収められている神聖な教えからは,大きな益が得られるはずです。まず,この書の中で再三にわたり前面に出てくる祈りという事柄を考えてみてください。ソロモンは,イスラエルで王権を執るという途方もなく大きな特権に直面した時,子供のような仕方で謙遜にエホバに祈りました。彼はただ分別と従順な心だけを求めましたが,エホバはあふれるほどの知恵に加えて,富や栄光をもお与えになりました。(3:7-9,12-14)今日,わたしたちも,エホバへの奉仕において知恵と導きを求めるわたしたちの謙遜な祈りが聞き届けられずに終わることはないという確信を持てますように!(ヤコブ 1:5)ソロモンが神殿の献納式でしたように,わたしたちもエホバの善良さのすべてに対する深い感謝の念を抱いて,常に心から熱烈な祈りをささげる者でありますように!(列王第一 8:22-53)エリヤが試練の時や悪霊を崇拝する一国民と相対した時に行なった祈りのように,わたしたちの祈りも常に,エホバに対する絶対的な信頼と確信のしるしを帯びたものでありますように! エホバは祈りのうちにご自分を求める人たちのために,すばらしい仕方で必要なものを備えてくださいます。―列王第一 17:20-22; 18:36-40。ヨハネ第一 5:14

24 列王記第一の中には警告となるどんな実例が載せられていますか。特に,監督たちはなぜ注意すべきでしょうか。

24 さらに,エホバの前にへりくだることをしなかった人たちの例はわたしたちにとって警告となるはずです。『神はそのようなごう慢な者に』,何と激しく『敵対なさる』のでしょう。(ペテロ第一 5:5)その中には,エホバの神権的な任命を無視することができると考えたアドニヤ(列王第一 1:5; 2:24,25),境界線を越えて出ても再び戻ることができると考えたシムイ(2:37,41-46),自分の不従順のために反抗する者たちをエホバから招くことになった晩年のソロモン(11:9-14,23-26),偽りの宗教を行なって悲惨な結果に陥ったイスラエルの王たち(13:33,34; 14:7-11; 16:1-4)などがいます。その上,アハブの王座の陰の権力者であった邪悪なまでに貪欲なイゼベルがいますが,その悪名高い実例は1,000年も後に,テアテラの会衆に対する警告の中で次のように用いられました。「とはいえ,わたしにはあなたを責めるべきことがある。あなたがかの女イゼベルを容認していることである。彼女は自ら女預言者と称し,わたしの奴隷たちを教えて惑わし,淫行を犯させ,偶像に犠牲としてささげられた物を食べさせる」。(啓示 2:20)監督たちは会衆を清い状態に保ち,イゼベルのような影響を一切受けないようにしなければなりません。―使徒 20:28-30と比較してください。

25 列王記第一のどんな預言は驚くべき成就を見てきましたか。今日,これらの預言を覚えておけば,わたしたちはどのように助けられますか。

25 エホバの預言の力は,列王記第一の中で述べられている数多くの預言の成就によって明らかに示されています。例えば,ヨシヤがベテルにあるヤラベアムの祭壇を引き裂く者になることを300年以上も前に予測した,驚くべき言葉があります。ヨシヤはその通りにしたのです。(列王第一 13:1-3。列王第二 23:15)しかし,大変際立っているのは,ソロモンによって建てられたエホバの家に関する預言です。堕落して,偽りの神々を支持するならば,エホバは土地の表からイスラエルを断ち,その名のために神聖なものとした家をご自分の前から投げ捨てる結果になることを,エホバはソロモンにお告げになりました。(列王第一 9:7,8歴代第二 36章17節から21節には,この預言がどのようにして完全に的中したかが記されています。その上,イエスは,ヘロデ大王によってその同じ場所に建てられた後代の神殿が全く同じ理由で同様の非運に遭うことを示されました。(ルカ 21:6)これもまた何と正確に的中したのでしょう。わたしたちはこれらの大惨事とその理由を覚えて,常にまことの神の道を歩むことの大切さを思い起こすべきでしょう。

26 列王記第一は,エホバの神殿やその王国のことを前もって描いた,人を鼓舞するどんな光景を示していますか。

26 シェバの女王は遠い国からやって来て,エホバの壮大な家を含め,ソロモンの知恵やその民の繁栄やその王国の栄華に接して驚嘆しました。しかし,ソロモンでさえエホバに向かって,「天も,いや,天の天も,あなたをお入れすることはできません。まして,私の建てたこの家など,なおさらのことです!」と告白しました。(列王第一 8:27; 10:4-9)ところが,何世紀も後に,キリスト・イエスは特にエホバの偉大な霊的な神殿における真の崇拝の回復と関係のある,霊的な築く業を遂行するために来られました。(ヘブライ 8:1-5; 9:2-10,23)ソロモンよりも大いなるものであられるこの方にとって,「わたしもまた……あなたの王国の王座をイスラエルの上に定めのない時までも本当に確立するであろう」と言われたエホバの約束は引き続き当てはまります。(列王第一 9:5。マタイ 1:1,6,7,16; 12:42。ルカ 1:32)列王記第一は,エホバの霊的な神殿の栄光や,キリスト・イエスによるエホバの王国の賢明な支配のもとで生活するようになる人々すべての繁栄と歓喜と喜ばしい幸福を前もって描いた,人を鼓舞する光景を示してくれます。真の崇拝や,胤による王国に関するエホバのすばらしい備えの重要性に対するわたしたちの認識は,引き続き深められてゆくことでしょう。

[脚注]

^ 4節 「国際標準聖書百科事典」(英文),第4巻,1988年,G・W・ブロミリ編,648ページ。

^ 4節 「聖書に対する洞察」(英文),第1巻,149,952ページ。

^ 8節 「聖書に対する洞察」(英文),第1巻,750,751ページ。

^ 13節 「聖書に対する洞察」(英文),第1巻,947,948ページ。

^ 18節 「聖書に対する洞察」(英文),第1巻,949,950ページ。

[研究用の質問]