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わたしの服装は自分の本当の姿を示しているだろうか

わたしの服装は自分の本当の姿を示しているだろうか

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わたしの服装は自分の本当の姿を示しているだろうか

「そんなに短くないわ。お父さんもお母さんも時代遅れなのよ!」大声でそう言うと,ペギーは自分の部屋へ駆け込みます。ペギーがはきたいと思っているスカートがもとで起きた争いの華々しい幕切れです。あなたも,親や教師または雇用者から自分の好みの服装を批判されて,似たような言い争いの渦中に置かれたことがあるかもしれません。あなたがカジュアルと呼ぶものを,その人たちはだらしがないと言います。あなたがシックな装いと呼ぶものを,彼らは派手だとか挑発的だと言います。

確かに,人によって好みは異なり,あなたには自分の意見を述べる権利があります。しかしそれは,自分の身繕いも『どんなふうでも構わない』という意味でしょうか。

正しいメッセージ?

「着る物は,実際に,自分のひととなりや自分が自分をどう思っているかを表わします」と,パムという少女は言います。確かに服装はあなたに関するメッセージを,一つの主張を他の人に送ります。服装は,良心的であること,安定性,高い道徳規準などをささやくこともできれば,反抗や不満を叫ぶこともできます。身分証明の役目を果たすことさえあります。若者の中には,破れた服やパンク風のスタイル,有名デザイナーの高価な服を一種のトレードマークにしている人もいれば,異性を引きつけるために,あるいは自分の年齢を実際より上に見せるために衣服を利用する人もいます。

ですから,多くの若者にとって服装がなぜそれほど重要であるかは容易に理解できます。それでも,「成功するための服装」の著者,ジョン・T・モロイは,「服装は,会う人々に驚くべき影響を及ぼし,人々からどうあしらわれるかを大きく左右する」と警告しています。

ご両親があなたの服装について大変心配なさるのも不思議ではありません。ご両親にとって,それは個人の好み以上の問題だからです。ご両親は,あなたが平衡の取れた,責任を果たす若者であることを明確に示す正しいメッセージを送り出すことを願っておられます。しかし,あなたの服装はその目的を果たしているでしょうか。あなたは何を導きにして服装を選んでいますか。

「何でも友達がしたいと言うことは私もします」

多くの若者にとって,服装は独立と個性の主張です。しかし若者なので,あなたの人格はまだ流動的です。つまりまだ成長段階にあって変化しているのです。あなたは自分について一つの主張をしたいと思いますが,何を主張するか,どのように主張したらよいのかもはっきり分からないかもしれません。それである若者たちは,奇抜で,突飛な服装をします。しかし,そのような若者は『個性』を打ち出すというより,単に自分の未熟さに注意を引いているのです。もちろん親は困惑します。

また,単純に仲間と同じような服装を選ぶ若者もいます。それによって安心感やグループとの一体感が得られるようです。むろん,人々の中に溶け込むことを願うのは必ずしも悪いことではありません。(コリント第一 9:22と比較してください。)しかし,クリスチャンであれば,未信者の若者と同じように見られることを実際に願うでしょうか。どんな犠牲を払ってでも仲間に認められようとするのは賢明なことですか。一人の少女はこう言いました。「友達から何か言われないように,何でも友達がしたいと言うことは私もします」。しかし,人の意のままになり,人の気まぐれに振り回される人のことを何と呼びますか。聖書はこう答えます。『あなた方は,自分をだれかに差し出してそれに従ってゆくなら,その者に従うがゆえにその奴隷となることを知らないのですか』― ローマ 6:16

若い人の間では,「追従することが非常に強調される場合がある。その結果グループのメンバーはグループの規準のとりことも言える状態になり,着る物,話し方,行なう事柄,さらには考えることや信じることに関してさえ彼ら[仲間]に頼って助言を求める」。―「思春期: 子供から成人への過渡期」

しかしあなたの友達には,そのような助言を与える資格がどれほどあるでしょうか。(マタイ 15:14と比較してください。)友達もあなたと同様に感情面での成長の痛みを経験しているのではありませんか。では,自分の良識や価値観,そしてあなたのご両親の意志に反している場合でさえ,友人に規準を定めてもらい,それにおとなしく従うのは賢明なことでしょうか。

今日は“流行”でも,明日は“時代遅れ”

流行という風に翻弄される若者もいます。しかし,その風は何と気まぐれなのでしょう。「この世のありさまは変わりつつあるからです」という聖書の言葉が思い出されます。(コリント第一 7:31)ですから,今日は“流行”していても,明日になると,驚くほど突然に廃れる(言うまでもなく不経済)ことがあるのです。スカートの丈が長くなったり短くなったり,ズボンのすそが太くなったり細くなったりすることから結局得をするのは,容易に操られる大衆から大きな利益を上げる,製造業者や服飾デザイナーなのです。

一例として,何年か前に見られた有名デザイナーのジーンズの流行を考えてみましょう。ジーンズはにわかにハイファッションになりました。人々は,カルバン・クラインとかグローリア・バンダービルトなどの名前が入ったジーンズを高い値段で買い求めて,これ見よがしにはいて歩きました。「人々は名前が欲しいのです」と,「セルギオ・バレンテ」のジーンズ製造会社社長,イーライ・カプランは説明します。それにしても,ジーンズのポケットによく目立つように縫い付けてある,この格式ある名前を持つバレンテとはだれのことでしょうか。「彼は実在の人物ではない」とニューズウィーク誌は伝えました。カプラン自身も説明する際に,「イーライ・カプランのジーンズなどをだれが買ってくれるものですか」と言っています。

『でも,流行を取り入れるのは間違いですか』と尋ねる人があるかもしれません。必ずしも間違いとは限りません。聖書時代の神の僕たちは土地の人々の好みに合った装いをしました。例えば,タマルはしま模様のある衣を着ていたと聖書は述べています。当時,「処女である王の娘たちはそのように……装うのが常だった」からです。―サムエル第二 13:18

しかし,流行のとりこになってよいものでしょうか。ある少女は悲しそうに言いました。「お店にはみんなが持っているジーンズが一杯あるので,『ママ,このジーンズ買って』と言うと,ママは『だめよ,ママが家で作ってあげます』と言うの。それで,『分かんないのねえママ。わたしが欲しいのはこのジーンズなのよ』と言ったの」。しかし実際のところ,ファッション・デザイナーたちに振り回されていると,個性ははぎ取られ,本当の自分が失われるのではないでしょうか。刺激的な広告や宣伝文句,あるいはデザイナー名などにどうして支配される必要があるでしょうか。

聖書はローマ 12章2節で,「この事物の体制に合わせて形作られるのをやめなさい。むしろ,思いを作り直すことによって自分を変革しなさい。それは,神の善にして受け入れられる完全なご意志を自らわきまえ知るためです」と教えています。では,着る物を選ぶ場合の『受け入れられる神のご意志』とは何でしょうか。

『慎み深い,よく整えられた服装』

クリスチャンはテモテ第一 2章9節で,『よく整えられた服装をし,慎みと健全な思いとをもって身を飾る』よう勧められています。「よく整えられた服装」といえば,当然,きちんとした清潔な服装です。「慎み」があれば,さまざまな状況を考慮に入れます。仕立ての良いスーツは仕事には向いているかもしれませんが,浜辺では場違いな感じです。逆に,オフィスの中で水着を着ているとすれば,滑稽とみなされるでしょう。

それでエホバの年若い証人は,クリスチャンの集会に出る時や人々に宣べ伝える際に,過度にくだけたものではなく,神の年若い奉仕者であることを示す服装をするよう心がけるでしょう。パウロが,コリント第二 6章3節と4節で述べた次の言葉を思い起こしましょう。「わたしたちはどんな点でも決してつまずきの原因を作らないようにしています。わたしたちの奉仕の務めがとがめられるようなことのないためです。かえって,あらゆる点で自分を神の奉仕者として推薦するのです」。

慎みがあれば,他の人々の感情も考慮します。使徒パウロが述べたように,クリスチャンである人は,自分の良心だけでなく,「ほかの人の良心」も考慮に入れて行動すべきです。(コリント第一 10:29)あなたは,ご両親の良心に特に関心を払うべきではないでしょうか。

ふさわしく装うことの益

聖書は,王妃エステルが夫である王の前に出る必要が生じた時のことについて述べています。けれども,招かれていないのにそのようにして王の前に出ることは命にかかわる大罪でした。エステルは神の助けを熱烈に祈り求めたに違いありません。しかし同時に容姿にも心を配り,その場にふさわしい仕方で,「王妃の盛装」をしました。そして,「王が中庭に立っている王妃エステルを見るや,彼女は王の目に恵みを得た」のです。―エステル 5:1,2

魅力的で,慎みのある服装をすれば,求職面接の時にも良い印象を与えることでしょう。職業開発センターの女性所長ビッキー・L・ボームは,「女性の中には,面接に行くときに勘違いをしている人たちがいる。デートにでも出かけるように考えて,魅惑的な装いをする」と述べています。どんな結果になりますか。「そんな服装をすると職業意識がないとみなされます」。ですからボームは,「タイトなものや挑発的なもの」は着ないようにと忠告しています。

若い男性も仕事を探すときには,整った服装をする心がけが大切です。ジョン・T・モロイによると,ビジネスマンは「髪をきれいにとかし,よく磨かれた靴を履いています。ですからほかの人にも同じことを期待」します。

一方,慎みのない服装をしていると,他の人との関係がうまくいかないことがあります。「今日の心理学」誌は,青年期の人を対象に行なわれたある調査について述べていますが,それによると「えりぐりの深いブラウスやドレス,ショーツ,ぴったりしたジーンズ,ノーブラ」などは男性から性的誘惑と取られるかもしれません。「僕自身,若い女性の服装によっては,彼女たちについて清いことばかり考えるのをとても難しく感じることがあります」とある青年は告白しました。慎み深い服装をすれば,人々はあなたの内に秘められた特質を認識することができます。ある種の服装が慎みのあるものかどうか確信が持てなければ,ご両親にアドバイスをお願いしましょう。

「内なる人」を装う

使徒ペテロは,「もの静かで温和な霊という朽ちない装いをした,心の中の秘められた人を」飾りとしなさいとクリスチャンに勧めています。「それは神の目に」,そして他の人の目にも「大いに価値のあるものです」。(ペテロ第一 3:4)流行の衣服は,仲間の目をみはらせるかもしれませんが,衣服は,心を勝ち得ることも真の友を作ることもありません。それは「内なる人」を装う,つまり内面の人を向上させることによって成し遂げられます。(コリント第二 4:16)内面の美しい人は,最新流行のスタイルの服を着ていなくても,またつまらない,デザイナーのラベルを“誇示した”衣服を着ていなくても,他の人々にとって常に魅力的に見えるものです。

次にはどんな流行が若者たちを店に殺到させるかだれに分かるでしょうか。でもあなたは自分で考えることができます。服装に関する高い規準を保ち,流行の服装や,性を強調する衣服は避けてください。流行の波に乗って最先端を行くのではなく ― かといって,最後尾になるわけでもない ― 控え目な側にとどまってください。すぐに流行遅れになる服ではなく,長続きする,良質の服を探しましょう。自分の服装が,正しいメッセージを送り出し,マスコミや仲間が作り出した特定のイメージではなく,本当の自分を示しているかどうかを確かめてください。

討論のための質問

□ 服装はどのようにメッセージを送り出しますか

□ ある若者たちが衣服を選ぶ際に,奇抜なものを好む傾向があるのはなぜですか

□ 衣服の選択に関して,あなたは仲間の影響をどれほど受けていますか

□ 常に流行に合わせようとするのは,どんな面で不利ですか

□ 『慎み深い,よく整えられた』スタイルかどうかは,何によって決まりますか

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「着る物は,実際に,自分のひととなりや自分が自分をどう思っているかを表わします」

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子供たちの着る物をめぐって,親子はしばしば衝突する。親はただ時代遅れなのだろうか

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奇抜な服装をして個性の主張を試みる若者は少なくない

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状況にふさわしい服装をしてください。衣服はあなたについてのメッセージを送り出します