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エホバの証人 ― 1996 年鑑の報告

エホバの証人 ― 1996 年鑑の報告

エホバの証人 ― 1996 年鑑の報告

エホバ神は預言者イザヤを通してご自分が愛情を抱いておられる組織に呼びかけ,「あなたの子らは皆エホバに教えられる者となり,あなたの子らの平安は豊かであろう」と言われました。(イザヤ 54:10,13)イエス・キリストはこの言葉を引用して,み父がイエスを教師として行なっておられる業を説明されました。(ヨハネ 6:45)この教育の業は1,960年以上の期間にわたって続けられており,「あらゆる部族と国語と民と国民」の人々から成る小さな群れに,キリストと共にその天の王国で仕える備えをさせるものとなっています。(啓示 5:9,10。ルカ 12:32)しかし,神の教育プログラムは小さな群れだけに限られてはいません。

エホバはイザヤに,すべての国から来る大群衆 ― 神の子供となる見込みのある人々 ― が神の道について教え諭してもらうためにエホバの山に上って行くという幻もお与えになりました。(イザヤ 2:2-4)その幻に調和して,イエスはご自分の追随者たちに,「すべての国の人々を弟子[または,学ぶ者]とし」,ご自分がみ父から聞いて,彼らに教えた「事柄すべてを守り行なうように教えなさい」とお命じになりました。(マタイ 28:19,20)今日,この教育の業は目を見張るような速度で進展しています。

昨奉仕年度中,平均して毎月495万344人がエホバの王国に関する公の証言活動にあずかりました。1年間の伝道者最高数は519万9,895人でした。その中にはほとんどすべての国の,あらゆる人種の人々が含まれていました。良いたよりの宣明者であるこれらの人たちの中には,80歳,90歳,また100歳に達している人さえいます。米国ペンシルバニア州に住む一人の忠実な油そそがれた兄弟は102歳になりますが,過去46年間開拓奉仕を続けています。また,学校を自分の区域とみなしているドイツの13歳の少女や,担任の先生とクラスメート各人が「王国ニュース」第34号を確実に受け取るようにしたイタリアの若い奉仕者など,若者たちも大勢います。

年の報告を見ると,神の教育プログラムが現在232の国や群島や地域で実施されていることが分かります。そして,この業にあずかっている人々は多忙を極めています。1995奉仕年度中,野外奉仕に11億5,035万3,444時間が費やされ,4億2,182万7,907件の再訪問が行なわれ,平均486万5,060件の家庭聖書研究が司会されました。少なからぬ人々が,教えられたことを心に深く刻みました。その結果,33万8,491人がエホバへの献身の象徴としてバプテスマを受けました。それらの人はさまざまな背景を持っています。ポーランドの報告によると,バプテスマを受けた人の「大部分は若者たち」でした。アルバニアの事務所によると,以前カトリックの修道女だったイタリア人の証人は,無神論者で活発な共産党員だったアルバニア人の女性がバプテスマを受けたエホバの崇拝者となるよう援助しました。この姉妹たち二人は現在,アルバニアで合計50件余りの聖書研究を司会しており,そうすることを非常に楽しんでいます。

「ものみの塔」誌と「目ざめよ!」誌は長年にわたり,エホバの証人が実施している世界的な教育プログラムにおける効果的な道具となってきました。これらの雑誌は,おもに聖書と,聖書が人類に対する神の目的に関連して明らかにしている驚嘆すべき事柄に焦点を合わせています。これらの雑誌は真に国際的な視野に立ち,世界で生じている重要な出来事や,どこに住んでいるかにかかわりなく生活上の圧力に首尾よく対処できる方法に読者の注意を喚起しています。今年は4億5,699万5,181冊の雑誌が関心を持つ人々に実際に配布されました。1995年9月1日現在で,「ものみの塔」誌は120の言語で,「目ざめよ!」誌は75の言語で印刷されています。4月の初めに特別な雑誌配布の日を取り決めて,雑誌配布に特別な努力を注いだ会衆もあります。ギリシャのピレウスのある会衆は普段,90人の伝道者を報告していますが,その特別な日に野外奉仕のための集会を四つ計画しました。一丸となって努力した結果,その日一日で700冊の雑誌を配布することができました。4月中,アルバニアの538人の奉仕者たちは,5万6,049冊の雑誌を配布しました。奉仕者一人当たり104冊配布したことになります。グアテマラ,チリ,トリニダード,フィジーなどの支部も,そうした特別な雑誌配布の日の取り決めにすばらしい反響があったことを報告しています。

ビデオを用いた教育

近年,エホバの証人は教育の道具としてビデオも用いてきました。これまでに,ほぼ400万本のビデオテープが30余りの言語で製作されました。昨奉仕年度中に発表された新しいビデオは,「神の教えによって結ばれる」(1993年から1994年にかけての一連の国際大会に基づく),「地の果てにまで」(ギレアデ学校と,その卒業生である宣教者たちの活動を取り上げている),「躍進する新しい世の社会」(現代の組織が現在の10分の1の規模だったころの様子をかいま見る),およびアメリカ手話による「永遠の命に導く知識」の本の最初の3章です。

優れた内容のビデオは,学識のある人々から感謝されています。それらのビデオは読み書きのできない人々や読み書きをまだ教わっていない子供たちや集中力が長続きしない人々,また耳の聞こえない人々を教えるのにも用いることができます。ある十代の少女は証人である親戚から贈られた「神の教えによって結ばれる」というビデオを見てたいへん心を動かされ,早速,王国会館に連れて行ってほしいと義父に言いました。レバノンの長老たちは,奉仕者たちが司会するすべての進歩的な家庭聖書研究に参加するよう努め,可能な場合には「エホバの証人 ― その名前の背後にある組織」というビデオを見せています。それにより,すばらしい成果が得られてきました。

全世界で「王国ニュース」を配布する

証人たちが1995年に行なった際立った活動の一つに,「王国ニュース」第34号というパンフレットの配布があります。期待は数か月前から高まっていました。そして,4月23日の日曜日,「偽りの宗教の終わりは近い」と題する公開講演の後に,「王国ニュース」が発表され,111の言語での同時配布が始まりました。この「王国ニュース」はその年の後半に,さらに25の言語で配布されました。定められた配布期間中に,伝道者数と時間が新最高数に達した国や地域は少なくありません。

メキシコのある開拓者は足を骨折していたので,自分の分を果たせないのではないかと心配していました。しかし,彼女は車椅子を手に入れ,朝7時30分から11時まで自宅の前に座り,通行人に大声で呼びかけました。彼女は持っていたパンフレットを三日間ですべて配布してしまい,もっと欲しいと言いました。

イタリアのナポリの兄弟たちは,生徒たちに「王国ニュース」を配布するために特別な努力を払いました。ある特別開拓者の報告によると,校長である一人の女性はすぐに彼がエホバの証人の一人であることに気づきました。彼女はそのパンフレットを読んで,次のように言いました。「不適当な点は何もありませんね。841部ください。生徒にも一部ずつ渡したいと思います」。その後,下校時には,何百人もの生徒たちがそのパンフレットを手にしていました。ナポリの証人たちは,ベネディクト会修道女たちによって運営されているある学校をも訪問しました。“女子修道院長”は,人間の諸問題に対する恒久的な解決策が本当にあるということを読んで驚きました。彼女は父兄に配るために「王国ニュース」を350部求め,学校で劇が上演された際に,いかにも喜ばしげにそれを配りました。

その音信に対する反応はさまざまでした。多くの人は関心を示しませんでしたし,怒った人もいました。しかし,積極的にこたえ応じた人もいます。アラスカでは,仏教徒として育った一人の大学生が喜んでパンフレットを受け取り,聖書研究をすることに同意しました。そして,その2か月後に開かれた地域大会の一部に出席しました。オーストラリアでは,ある“信仰を捨てた聖公会会員”から手紙が寄せられました。その手紙によるとこの人はずっと「真理,つまり人生の真の意味を探し求めて」きました。心を動かされたのでさらに詳しい情報を知りたいと思ったのです。ベリーズの浜辺で「王国ニュース」を読むよう勧められたある夫婦は,アラスカの人里離れたところにある小屋で再び読むよう勧められ,ついにそのパンフレットを受け取りました。ルワンダのある証人はこのパンフレットのキニャルワンダ語版をベルギーに住む実の姉妹に送り,証人たちを探すように勧めました。彼女は確かに探し当てました。証人たちは同じ出版物を配布していたからです。その週のうちに,彼女は1回目の聖書研究を司会してもらいました。

カメルーンの奉仕者たちは一丸となって努力したので,それを見ていた一部の人たちから,「何が起こったのですか。なぜこんなに大勢のエホバの証人が伝道に出ているのですか」と尋ねられました。ハルマゲドンが近いに違いないと結論した人もいました。カトリック教徒ばかりが住むある村でパンフレットを配布した開拓者が1週間後に再びその村を訪れると,数人の人は彼が来るのを待ち構えており,「エホバの証人とカトリック教徒との違いがやっと分かりました」と言いました。13の聖書研究が始まり,それらの人たちは王国会館を建ててほしいと頼みました。

デンマークのある若い女性は「王国ニュース」を受け取り,家の中に入りました。しかし,またすぐにドアを開け,「このパンフレットに書かれていることを聖書から証明できますか」と尋ねました。奉仕者は「新世界訳」を使って証明しました。すると,その女性は,「私の聖書からも同じことを示すことができますか」と尋ねました。姉妹はそのとおりにしました。その後の訪問で,定期的な研究が取り決められました。

エチオピアでは,このパンフレットがある大学の掲示板に貼られました。ドミニカ共和国では,このパンフレットの配布がラジオ放送で知らされました。ロシアでの配布に対して数多くの手紙が寄せられましたが,その一つには次のように書かれていました。「このパンフレットは聖書を熱心に研究し始めるよう勧めています。こちらには研究したがっている人が大勢います。その中には若者もたくさんいます」。彼らはできるだけ早く援助してほしいと述べています。

南アフリカでは,「王国ニュース」を読んだある年配の男性が,それを配布した奉仕者に電話をかけ,「わたしはついに真理を見つけましたよ」と叫びました。この人はその同じ日に3㌔ほど歩いて王国会館に出かけ,その時以来一度も集会を欠かしたことがありません。

熱心な全時間奉仕者たち

証しの業の最前線にいるのは,事情を調整して開拓奉仕を行なっている大勢の人たちです。平均して,毎月66万3,521人が開拓者として奉仕しました。彼らは本当にすばらしい働きをしました。大きな割合を占めたのは,毎月野外奉仕に90時間ささげることを目標にしている正規開拓者です。1万5,000人余りの人々は特別開拓者として奉仕しました。彼らの予定には毎月140時間証言することが含まれています。また,それを上回る数の人々が補助開拓者として働きました。彼らは神の王国が人類の唯一の希望であることを宣明する業に月60時間以上をささげます。あなたも昨年そうした奉仕にあずかることができましたか。

全時間奉仕者の中には,1万6,468人に上る世界中のベテル家族もいます。これらの人々のうち,5,709人は世界本部で奉仕しています。その全員が,特別な全時間奉仕を行なう団体の一員です。加えて,割り当てられた地域内の大会から大会へ,あるいは一つの巡回区内の会衆から会衆へと旅行する必要のある割り当てを果たしている人が4,374人います。こうした旅行する監督たち全員のおもな活動の一つは,野外奉仕において率先することです。

最も大切な集会

4月14日の日没後に祝われたキリストの死の記念式は,一年のうちで霊的に最も重要な行事でした。信仰を働かせる人すべての救いのために,エホバがイエス・キリストを通して設けてくださった愛ある備えに注意が向けられました。(マタイ 26:26-30。使徒 4:12)全世界で1,314万7,201人が出席しました。幾つかの場所の出席者数はたいへん際立っていました。マラウイのリロングウェにある約150人の奉仕者から成る会衆は,1,202人の出席者を報告しました。ロシアのウゾールでは25人の奉仕者に対して,247人が記念式に出席しましたし,トルクメニスタンのアシハバードにある103人の奉仕者から成る会衆では,1,053人が出席したということです。西アフリカのベニンにある,45人の奉仕者から成る会衆では,901人がこの大切な行事に出席しました。リベリアのブカナンでは,その時内戦の戦闘が目と鼻の先で行なわれていましたが,50人の奉仕者から成る会衆で705人の出席者がありました。

ペルーのシビアで奉仕している二人の特別開拓者は,記念式のためにある会館を借り,地元の政府当局者を含め,誠実で敬虔な人々を招待しました。開拓者たちは93人もの人が出席したので,非常に喜びました。そのほとんどが男性でした。地元のカトリック教会はその晩に行列行進を計画していましたが,それを取りやめなければならなくなりました。というのは,“聖人”を運ぶ予定の人たちがエホバの証人の記念式に出席していたからです。教会の支持者たちは欲求不満のあまりに,証人たちが集まっていた建物に石を投げました。

記念式は神権的な予定のうちで最も重要な行事ですが,エホバの証人が神からの教えを求めて集まる唯一の時だというわけではありません。わたしたちは毎週,「ものみの塔」誌の助けを借りて聖書を研究するために集まります。1995年9月1日現在で,同誌は100の言語で同時に出版されています。このことはエホバの証人の霊的な一致に貢献しています。「ものみの塔」誌は116年間にわたり,忠実で思慮深い奴隷がエホバの僕たちに霊的な食物を供給する主要な手段として用いられてきました。そして,この1年間,「ものみの塔」誌は実に豊かな教えを与えてくれました。加えて,ほかにも毎週四つの集会があります。毎年,巡回大会と特別一日大会も一度ずつ開かれます。さらに,わたしたちは年に一度の地域大会をたいそう心待ちにしています。

全世界で開かれた大会

1994年に始まった一連の「敬虔な恐れ」地域大会は,1995奉仕年度の初めまで続きました。例えば,ザンビアでは,そうした大会が49か所で開かれ,出席者最高数の合計は32万7,856人でした。大家族にとって公共の乗り物を使って遠距離を移動するのはしばしば非常に出費がかさむので,大会会場は国のあちこちに設けられました。それでも,ろばや牛の引く荷車に頼っている人たちの中には,大会会場へ片道8日間もかけて旅行しなければならない人たちもいました。多くの人たちは頭の上に荷物を載せて歩きました。自転車を使った人もいますし,たくさんの荷を積んだトラックの荷台に乗ってきた人もいます。さらに,バスや列車や何であれ利用できる公共の輸送手段を使った人もいます。大会に参加するために彼らが一致して払った努力は,信仰の際立った表明となりました。

1995奉仕年度の後半に,「喜びに満ちた賛美者」と題する一連の大会が始まりました。デンマークでこの大会に出席した兄弟たちの一人は,次のような感想を述べました。「自分の生活をエホバが備えてくださった指針に調和させ,真理にふさわしい生き方をするよう,今一度愛情深い訴えがなされました。サタンの圧力は増大し続けています。しかし,試練や病気に直面した時でさえ喜びに満ちていられる数多くの理由を思い出させていただき,良かったと思います。兄弟姉妹たちの個人的な経験をお聞きするのは非常に感動的でした。この大会のプログラムが終わった今,わたしたちはエホバの組織に属していることをより一層特権に感じています」。

ロシアの事務所の報告によると,チェチニヤから約500㌔のところにあるボルゴグラード地区では,その時起きていた戦争のために大きな公の催し物はすべて公式に中止されました。しかし,エホバの証人の「喜びに満ちた賛美者」地域大会は中止されませんでした。1日目には50人ないし60人の警察官が警備していました。日曜日になると,10人ないし15人だけになり,そのほとんどは出版物を欲しがり,聖書からさらに多くの情報を得ることを望みました。

スウェーデンでは,ストレングネスの広々とした大会ホールで10の地域大会が開かれました。今年は国際大会は計画されませんでしたが,スウェーデンにはさまざまな国から来た人々が住んでいます。その結果,英語の大会に出席した1,102人の人々の中には,少なくとも60の国を代表する人々がいました。

プログラムのハイライトの一つは,「永遠の命に導く知識」という新しい本の発表でした。1982年に発表された,「あなたは地上の楽園で永遠に生きられます」という本は126の言語で出版され,それらすべての言語における価値ある教材となってきました。しかし,「知識」の本と関連して,いっそう速いスピードで弟子を作るためのプログラムの概要が示されると,大会出席者たちは鋭い関心を示し,そのような備えが時宜にかなっていることを理解しました。この新しい本はすでに131の言語へ翻訳することが承認されており,英語版に加えて,そのうちの86の言語は発表されたか,印刷が終わって残りの「喜びに満ちた賛美者」大会の間に発表されるのを待っているかのどちらかです。英国のある男性は「知識」の本を持ってベッドに入りました。翌朝の8時になって,この人は研究したいと妻に言いました。アルバニアに住む別の男性はこの本を読み通し,その内容が重要であることを認め,週に3回研究してもらえないかと頼みました。この新しい本は,エホバの大いなる日が到来する前に成し遂げられる神の教育プログラムの最終部分において価値ある道具になると思われます。

エホバはずっと昔に預言者イザヤを通して,ご自分の僕たちが享受する霊的な豊かさと他の人たちとの対比を予告しておられました。(イザヤ 65:13,14)確かに,エホバの証人たちは霊的によく養われており,幸福な民です。そして,彼らは真理に飢え渇いている他の人々に自分たちの霊的な豊かさを熱心に分け与えています。

引き続き聖書そのものを強調する

神の教育のための最も重要な教科書は聖書そのものです。エホバの証人は聖書を配布するために非常に多くの活動を行なってきました。そのためにしばしば,何であれその言語で入手できる翻訳聖書を使用してきました。しかし,1950年には「新世界訳」聖書の配布が始まりました。この優れた翻訳聖書は現在25の言語で入手することができます。そのうちの13の言語(英語の点字版とポルトガル語の点字版に加えて)では,聖書全巻が出版されています。他の12の言語では,クリスチャン・ギリシャ語聖書が印刷されてきました。現在までに,8,440万冊の聖書が生産されました。

16年に及ぶ労苦の末に,「新世界訳」全巻のフィンランド語版が完成しました。今年この聖書が発表されたとき,フィンランドの六つの地域大会では拍手喝采がわき起こりました。さらに,大文字版も入手できることが分かった時は,多くのお年寄りが喜びの涙を流しました。8月の香港<ホンコン>台湾省の大会では,中国人の証人たちも中国語の「クリスチャン・ギリシャ語聖書 新世界訳」を手にして感激しました。この聖書は中国の一般のヘブライ語聖書と一緒に製本されています。ほかにもアフリカの二つの言語の版が完成し,印刷と製本を待っている最中です。現在,他の五つの言語でも聖書の翻訳が進められています。

パタソンにあるものみの塔教育センター

1988年に,ものみの塔教育センターの建設作業が始まりました。このセンターは,ニューヨーク州パタソンの,樹木の茂った丘陵地とその谷あいという風光明媚な場所にあります。ブルックリン・ベテルから北に112㌔ほどのところです。完成すると,おもな宿舎棟に1,200人が住めるようになります。

1995年の春までに,当面の必要を満たせるだけの施設が完成したので,ものみの塔ギレアデ聖書学校の第99期のクラスをこの新しい場所で開くことができました。授業は4月17日に,「新世界訳」の特色に関する講義で始まりました。話し手は,統治体の教育委員会の成員であり,ギレアデ学校が1943年に開設されて以来,教訓者を務めてきたアルバート・シュローダーです。

第99期のクラスが開設されてから数週間の間に,協会の本部の事務所にあった幾つかの部門がパタソンの施設に引っ越しました。それ以前から移転していた部門もあります。9月1日現在,パタソンには奉仕部門,執筆・読者返信係,翻訳サービス,アート部門,写真部門,ビデオ・サービスの各部門があり,それに加えて法律,設計,点字の各部門に関連した仕事の一部がここで行なわれています。

敬虔な進歩を促す王国宣教学校

使徒パウロは仲間の奉仕者テモテに,与えられた霊感による助言についてよく考え,それを当てはめて,自分の進歩を明らかにするよう訓戒しました。パウロは,自分の教えに絶えず注意を払うよう,テモテに強く勧めました。(テモテ第一 4:15,16)神権的な教育の国際的な計画の一環を成す王国宣教学校は,まさにそのとおりのことを行なうよう,世界中の長老や奉仕の僕たちを助けてきました。この学校では,神権政治,つまり神による支配は,神が愛であることを踏まえ,愛による管理である,という事実が強調されてきました。―ヨハネ第一 4:8

昨奉仕年度中,米国だけでも71のクラスが開かれ,合計13万6,480人の兄弟たち(長老は6万9,771人,奉仕の僕は6万6,709人)が出席しました。米国で開かれたクラスでは,ベテルからの35人の代表者と,500人余りの旅行する監督たちが教えることにあずかりました。ザンビアでは,王国宣教学校に先立って,76人の旅行する監督たちとの特別な集まりが開かれました。その後,ザンビア各地で57のクラスが開かれ,合わせて長老が6,418人,奉仕の僕が4,349人出席しました。マラウイの兄弟たちも益を得ました。28人の旅行する監督たち,ほかに1,573人の長老たち,1,424人の奉仕の僕たちに貴重な教えが与えられました。1995奉仕年度中,この学校は世界のほとんどの国で開催されました。

この学校に対する期待は高まり,そして出席した何千人もの人たちの期待は裏切られませんでした。与えられた教えや助言はどれも聖書に基づいていました。長老や奉仕の僕たちは,最初の授業から最後の授業に至るまで,『忠実な奴隷』を通して与えられた指示や指針を,ベレアの人々のようなきわめて意欲的な態度で受け入れました。―マタイ 24:45-47。使徒 17:11

学校に対する感謝の言葉が世界各地から寄せられています。カリブ海の兄弟たちはこう述べています。「エホバがご自分の羊たちを本当に気遣っておられ,従属の牧者であるわたしたちが愛の精神をもって最大限の支えと励ましを羊に与えることを望んでおられるという点は,開会の祈りのときからすでに見て取れました」。太平洋の島々からは,このような率直な意見が寄せられました。「すでに知っていた資料,というよりも,知っていると思っていた資料からこれほど多くのものが得られるとは,ただただ驚くばかりでした」。新たに任命された僕たちの多くも益を受けました。例えばある場所では,出席していた奉仕の僕たちの85%は,王国宣教学校に初めて出席した人たちでした。確かに,王国宣教学校の課程は組織全体にとって祝福となってきましたし,この課程の及ぼす良い影響によって今後も良い実がふんだんに生み出されることは間違いないでしょう。

宣教訓練学校による良い影響

昨年も,宣教訓練学校のクラスが引き続き開かれました。独自の8週間の課程を持つこの学校は,今ではニューヨーク州パタソンの,ものみの塔教育センターに本拠を置く,ギレアデ学校の分校として機能しています。これまでのどの奉仕年度をも上回る人数の生徒が宣教訓練学校に出席しました。

1995年5月までに,この学校は中央アフリカ共和国,ドミニカ共和国,インド,ニューカレドニア,ペルー,ポルトガル,ザイールで開設されました。こうして現在では合計34の国でこの学校が開設されたことになります。昨奉仕年度だけでも79のクラスが開かれ,1,836人の生徒が卒業しました。大会ホール,支部事務所の施設,王国会館などが,そうしたクラスにぴったりの教室となりました。

ある教訓者は,ドミニカ共和国で開かれたクラスについてこう語りました。「立派な生徒たちで,……熱意や心からの感謝の気持ちにあふれ,学ぶ意欲のある若者たちです。……そのことは行状,話し方,態度,服装などから明らかでした。これらの若者たちのためにこうした教育を施してくださったエホバと忠実な奴隷とに感謝せずにはいられません」。ポルトガルの第1期生の一人は,資料を全部扱うことはできないだろう,と初めのうちは思っていました。しかし後日この生徒は,自分が慣れている方法ではなく,忠実で思慮深い奴隷が勧めている方法で研究し,仕事をこなすことを学んだのが益になった,と述べました。

教訓者の働きに生徒たちがどれほど深く感謝しているか,ということを示す典型的な例として,次のような言葉が寄せられています。米国の第19期生一同からの手紙には,こうあります。「わたしたちを教えるために霊的な男子を遣わしてくださり,本当にありがとうございます。教訓者の長年の経験,辛抱,勤勉さ,エホバに対する忠節な専心の念などから受けた影響は,ずっとなくならないでしょう。深くお礼申し上げます」。また,第20期生一同はこう述べています。「教訓者たちが心を込めて教えてくださったおかげで,わたしたちの偉大な教訓者と,その方の組織とに対する愛が成長しました」。生徒たちについては,その目が『偉大な教訓者を見る目となった』と,事実に即して言うことができます。―イザヤ 30:20

学校が開かれてきた34の国とは別に,この学校の卒業生たちは67の国や地域で奉仕しています。生徒は,東ヨーロッパのほとんどの地域や旧ユーゴスラビアの国々に加え,マラウイモザンビークといった,業が長年禁令下にあった場所に割り当てられました。この学校を通して施された神権的な教育は,多大の益を及ぼしています。

特別な必要を満たすブロシュアー

近年,わたしたちは教えるための道具として各種のブロシュアーを用いてきました。最近の地域大会で,わたしたちは「エホバの証人と教育」と題する,もう一つの時宜にかなったブロシュアーを受け取りました。このブロシュアーは,これまでの「学校」のブロシュアーよりも国際色豊かです。この新しいブロシュアーは,学校での活動に関連した証人の若者たちの疑問に答えるものではなく,おもに教育関係者を対象としています。教育関係者たちが,わたしたちの掲げる道徳上の原則について理解し,一般教育に対するわたしたちの見方について認識し,エホバの証人であるわたしたちが多岐にわたる教育計画から益を得ているということについて知っていただくために書かれています。きっと多くの若者は,すでにこのブロシュアーを先生や生活指導の担当者に渡していることでしょう。

ニューヨーク市で開催された中国語大会では,「永続する平和と幸福 ― どうすれば見いだせますか」という題の新しいブロシュアーが発表されました。このブロシュアーは繁体字版でも簡体字版でも入手できます。このブロシュアーは,中国語を話す人たちを対象に書かれており,可能な場合にはいつでも広く配布されることになるでしょう。現時点で,英語版の翻訳は計画されていません。

ここ数年,特別な目的を念頭に置いたブロシュアーも準備されてきました。僧職者や背教者が当局やマスコミに対し,エホバの証人に関する事実をひどく歪めた情報を流しており,そうした動きに対抗するためのものです。その種のブロシュアーは,ハンガリー,チェコ共和国,オーストリア,ブルガリアで,政府の役人や法曹界の人たちや他の専門家たちの手に渡りました。ギリシャでは,そうした資料が役人の手に渡っただけでなく,一般市民にも提供されました。

ドイツでは,宗教界の反対者たちがマスコミを利用してエホバを冒とくし,その民の評判を損なうことに特に熱心です。(ローマ 2:24と比較してください。)統治体の承認のもとに,「エホバの証人 ― あなたの隣人。どんな人たちですか」と題するブロシュアーが作成されました。これはドイツ語で印刷されています。兄弟たちはこのブロシュアーを初めて配布したとき,野外奉仕で会う人たちのうち,益を得そうな人にはだれにでも渡しました。このブロシュアーはまた,役人,裁判官,弁護士,教師,さらにはとりわけ,エホバの証人について否定的な見方をするよう僧職者から圧力をかけられている人にとって,大いに役立つことでしょう。多くの人は,事実を知ることができて喜んでいます。ある兄弟はこう伝えています。「娘の学校の校長先生を訪ねたとき,先生は次回の職員会議で討議したいということで,もう20冊ブロシュアーが欲しいと言われました」。

政府の役人と接触を保ち,わたしたちがどういう者で,どんな活動を行なっているかを知っていてもらうことには益があります。メキシコの兄弟たちはそうしてきました。兄弟たちは,エホバが自分たちの歩みを導いてくださることを信頼しつつ,政府の様々な方面の人たちに文書を渡してきました。このことは,良い結果につながっています。

医療関係者,裁判官,ソーシャルワーカーへの教育

1988年に設立されたホスピタル・インフォメーション・サービス(HIS)は,教育を施すこと,それも高度の専門教育の計画を実施することを目的としていました。まず,選任された長老たちに訓練が施されましたが,それは彼らが主要都市にある病院を訪問して,輸血を用いないでエホバの証人を治療する方法について医師や病院管理者と話し合えるようにするためのものでした。これら長老たちはまた,仲間の証人たちが信仰の試みとなる医療上の事態に直面するときにどのように援助できるか,ということも教わりました。彼らは使用可能な代替療法について医師たちと論じ合ったり,十分の説明を受けたうえで決定を下せるよう,当事者である証人に種々の医療処置法や製剤について説明したりすることによって援助します。現在,世界中で6,465人の訓練を受けた長老たちが,医療機関連絡委員会(HLC)の委員として奉仕しています。

これらHLCは,世界の先端を行く医療センターで説明会を行なってきました。ほとんどの医師や病院職員は,意思の疎通を図り,協力しようとするこうした働きかけに対して心からの感謝の言葉を述べています。それ以前には,意見が対立して不快な思いをすることも時折ありました。多くの医師は,輸血に代わるすべての治療法に通じているとは限りませんでした。

代替療法について医師たちに知ってもらうため,また説明会で提出する事実を裏づけるため,委員会は医学文献から取られた多くの資料を提供して,有能な医師たちが長年にわたり,供血血液を用いずに,どのように治療を成功裏に行なってきたかを示してきました。今では,こうした記事の合本が多くの主要医療機関の図書棚に置かれています。それに加え,ブルックリンのHISには,世界各地からの緊急な要請に応じて用いることができるよう,記事のファイルが保管されています。

この教育計画からどんな結果が生じていますか。多くの国では,成人に輸血を強行しようとする動きが事実上なくなりました。今ではほとんどの医療センターがわたしたちに対して友好的で,協力を惜しまなくなっています。チリのある公共医療施設の院長はこう言っています。「何年か前には,皆さんの立場がどう見ても独断的に思えたのは確かですが,時の経過と共に,皆さんの立場には科学的な裏づけがあるということが明らかになりました。……皆さんの国際的な情報網のほうが,わたしたちのものよりもずっと円滑に機能しています」。

今では世界中の5万8,900人余りの外科医や他の医師が,血のことを問題にしないでエホバの証人を親切に治療しています。全世界で102の病院は,現行のシステムの枠内で,無輸血による治療や手術のための特別なプログラムをも実施して,エホバの証人や,証人以外の輸血を望まない人たちに対する配慮を払っています。これら二つの進展に伴い,HLCは医学界に対して別のサービスを提供できるようになりました。それは,わたしたちに関連した医療上の問題を扱うことができるよう,経験豊かな専門医や病院に無料で相談が行なえるというサービスです。

今なお問題になっているのは,子供たち,それもとりわけ新生児に関連した事柄です。そのため,HLCの委員を訓練するための2回目の一連のセミナーが企画されました。それは彼らが少年裁判所や家庭裁判所の判事,ソーシャルワーカー,また輸血を強行するために子供を親から引き離す際に取られる手続きに関与する,それ以外の人たちを対象に説明会を行ない,教育を施せるようにするためです。利用可能な治療法は輸血しかないとそれらの人が思い込むことがないように援助する必要があったのです。この問題に対処する方法に関するセミナーは,これまでに米国,西ヨーロッパ,太平洋沿岸の地域で開かれてきました。

こうした事例を扱う裁判官や他の関係者に対する説明会を行なう際,「エホバの証人の家族の世話と医療」と題する,特別に企画製作されたハンドブックを提供することも行なわれてきました。索引付きのこのマニュアルには,会衆の長老たち,HLC,支部のHIS事務所,ブルックリンのHISを結ぶ支援システムの詳細が紹介されています。また,法律や倫理に関連した資料に加え,血を用いることなく子供の病気や医療上の問題がどのように扱われているかを説明した,定評ある医学誌から転載された資料も収録されています。こうして裁判官やソーシャルワーカーや他の人たちは,エホバの証人はあらゆる医療を拒んで子供を殉教させようとする宗教的な狂信者ではない,ということを認識できるようになっています。彼らは,どんな医療処置を施すかを決める権利を持っているのは愛ある親かどうか,というのが真の争点であることを認めるようになっています。

米国の一法学教授はこう言いました。「医療機関連絡委員会とエホバの証人の弁護士たちは,裁判所や医学界の考え方を変化させるために膨大な仕事を果たしてきました。最初のころに下された,エホバの証人の権利を認めていない決定の大部分は,エホバの証人の信条に対する偏った見方,米国医学界は絶対に正しいという偏った見方に基づいたものです。エホバの証人の信条が信用に値し,医療においていかに輸血が過剰に施されてきたか,という点に関するエホバの証人による医師や裁判官に対する教育の効果として,判例法の傾向に変化が生じています」。

もちろん,医療や法律上の権利に関する教育を施すことは,わたしたちのおもな務めではありません。しかしこの教育計画は,血を用いてはならないという神の命令に従う決意をエホバの証人が貫けるようにするうえで,大いに貢献しています。―使徒 15:28,29

緊急な必要を満たす新しい施設

聖書教育の業の速度が速まり,王国宣明者の人数が増えるにつれて,新しい会衆に加え,大会や種々の学校,また支部事務所のための建物がさらに多く必要になります。

1995奉仕年度中,世界中で幾百もの新しい王国会館が建てられました。その多くは,愛に基づいた「世界的な業のための寄付」によって資金が賄われました。(コリント第二 8:14,15)以下に挙げるのは,そのうちの幾つかの例にすぎません。ウクライナでは30軒の王国会館が完成しました。6年前には王国会館が1軒もなかったチェコ共和国には,今では35軒の王国会館があります。ドイツでは昨年,58軒の新しい王国会館が建てられ,うち15軒は国の東部に建てられたものです。ギリシャのある村で1軒の王国会館が建てられましたが,その村ではわずか600人の人口に対し,エホバの証人の会衆が二つあり,伝道者は合計128人います。ポーランドでは,1年半の間に81軒の王国会館が建てられ,献堂されました。しかし,さらに多くが必要とされています。ポーランドのある地方では,兄弟たちはいずれ王国会館を建てられるようにと,借りた畑で育てた作物を売ったり,ベリーを集めたりしてお金を貯めています。南アフリカでは,この1年間に40軒の王国会館が建てられました。お金が乏しい南アフリカの農村部の会衆では,セメントを買うために家畜を幾らか売るような兄弟たちもいれば,れんがや屋根ふき材,その他のものを買ったりする兄弟たちもいます。ある王国会館は,このようにして,また地区建設委員会による援助も相まって,速やかに完成しました。

リベリアのブルワービルにいる40人の伝道者たちは,ふさわしい王国会館を緊急に必要としていました。壁のない“談話小屋”で開かれる集会では,150人の聴衆のほとんどが,風雨にさらされたまま外に立つのが常でした。他の国々の愛ある兄弟たちによる金銭的な支援を受けて,彼らは必要な資材を入手してから,自分たちでコンクリート・ブロックを作り,美しい王国会館を建てました。この会館は,地域住民に対する証しとなっています。英国のエッジウェアには,壁を開けば800席の大会ホールとして使える3軒の集合型王国会館が建てられました。これは,外国語大会を開くのにぴったりの大きさです。

大会ホールの数も着実に増えています。10年にわたる交渉と作業の末,英国ではもう一つのホールが献堂されました。さらに二つがイタリアで,やはり二つが大韓民国で献堂されました。スペインでは5番目の大会ホールが献堂され,ブラジルでは15番目のホールが献堂されました。また,コートジボワールでもスリランカでも建てられました。世界各地では,このほかにも建設中のものがあります。

世界本部で行なわれている建設に加え,昨年,54の国で支部施設の新築,もしくは増築の作業が行なわれました。準備段階のものもあれば,完成したプロジェクトもあります。昨奉仕年度中,以下の六つの国の兄弟たちは,支部施設が献堂される喜びを味わいました。

大韓民国。韓国支部は,ソウルの南およそ67㌔の孔道<コンド>にあります。支部が孔道<コンド>に移転した1982年以来,4回にわたって施設を拡張しなければなりませんでした。今回の拡張により,支部の床面積はほぼ2倍になりました。新しい建物は,1994年10月8日に,統治体のロイド・バリーによる「優れた建設者のみ前にあって歓びなさい」という題の話をもって献堂されました。韓国のエホバの証人は,神が自分たちの宣教奉仕を祝福しておられる証拠を目にして歓んでいます。

聖書の真理の種が韓国に初めて達したのは,第一次世界大戦以前のことでした。支部が孔道<コンド>に移転した13年前の伝道者最高数は3万237人でした。1994年8月現在,最高数は7万7,542人となり,うち40%が開拓奉仕に携わっているのです。

支部施設を拡張する必要がありました。何が増設されましたか。事務棟全体が新築され,奉仕部門,ホスピタル・インフォメーション・デスク,通信事務所,会計事務所,翻訳部門のための広々としたスペースがあります。工場事務所に加え,電子,コンピューター,MEPS,グラフィックスの各部門は新しい場所に置かれ,工場のそのほかの作業場も広くなりました。ベテル・ホームには56の新しい部屋,新しい厨房,きれいな食堂,新しい医務室,新しい図書室,新しい洗濯室があります。また,魅力的で居心地の良い新しい王国会館もあります。

献堂式の翌日には,水原<スウォン>体育館で特別集会が催され,バリー兄弟が再び話をしました。このほかに13の会場が電話回線で結ばれ,合計出席者数は9万5,883人となりました。明らかに,韓国には,エホバの道筋を歩めるように,その道について学ぶ意欲を持つ人たちがまだ大勢いるのです。

台湾省。次の週末である10月15日には,中国沿岸から約145㌔離れた島,台湾省で新しい支部の建物が献堂されました。バリー兄弟は,これらの施設も献堂しました。兄弟が台湾省を初めて訪れたのは42年前のことで,当時は一握りのエホバの証人だけ ― 主として阿美族の人々 ― が交わっていました。

海外から来た兄弟と地元の証人が一緒に支部を建てました。事実,期間は異なりますが,地元の伝道者の50%が工事に携わりました。バスで片道9時間かけて,作業に参加した人たちもいます。食堂の外で芝を植えるのを手伝った8人の阿美族女性から成るグループについて言えば,最年少は何と60歳,最年長は84歳でした。このグループは午前4時30分から作業を始めました。4時から始めたかったのですが,外がまだ暗すぎたのです。これらの女性は,宣べ伝える活動にも同じような熱意を示しています。

今では香港<ホンコン>に住んでいるギレアデ卒業生のシリル・チャールズは,献堂式のプログラムで,1949年に台湾省で奉仕したときの様子を回顧しました。当時,兄弟は28歳でした。兄弟が阿美族の人たちと暮らした際,電気も屋内の水道もマットレスもありませんでした。しかし阿美族の人たちは聖書の真理を愛していることを示しました。チャールズ兄弟が何人かの人たちに戸別訪問の方法を教えようとしたとき,だれもが参加を希望しました。区域に向かう途中で,南から来た70人と,北から来た70人がチャールズ兄弟に会いました。やがて,このほかに100人が合流しました。その全員が,兄弟と一緒に戸別訪問をしたいと思っていたのです。それ以来,エホバに仕えたいという誠実な願いを示す人々にかなりの訓練が施されてきました。

その6年後から到着しはじめた後続の宣教者たちは,人口の大きな部分を占める中国人を対象とした業の先頭に立ちました。献堂式が開かれた週末には,26人の元宣教者たちが台湾省に駆けつけました。彼らは新しい施設だけでなく,自分たちの教えてきた人々が,エホバの賛美者になるよう他の大勢の人々を援助した証拠を目にして本当に喜びました。

支部委員会の調整者ハービー・ローガンと妻のキャスリーンは,いずれもギレアデ卒業生で,1962年以来ここで奉仕しています。この10年だけでも,二人は150%の増加を見てきました。

エクアドル。翌11月には,拡張された支部施設がエクアドルで献堂されました。この施設は,港湾都市グアヤキルからおよそ23㌔のところにあります。

この同じ敷地で支部の新しい建物が献堂されたのは,わずか7年前の1987年のことです。しかしそれ以来,平均伝道者数は130%増加しました。同じ時期に,聖書研究は120%増えました。1987年に,ダニエル・シドリックはここエクアドルのサッカー競技場で,1万4,322人の聴衆に対して話をしました。その同じ競技場で1994年11月19日に,ヘンシェル兄弟が3万5,992人に対して心を鼓舞する話をしたのです。エクアドルでは真の崇拝が前進しており,拡張された支部は,この国の隅々までエホバのご意志に関する教育を推し進めるための格好の中心地となることでしょう。

スリランカ。1995年1月までに,スリランカ支部も二つの新しい立派な建物を献堂する準備を整えていました。支部が1953年に設立されて以来,借家を転々としながら事務所として使う寝室をその都度選んでいたころと比べて,実に大きな変化でした。ここにようやく,わたしたちの神にとって誉れとなる施設と,全地を楽園に変えるというエホバの目的に対するわたしたちの信念を反映するような造園の行なわれた敷地を手にすることができたのです。

プログラムには次のような人たちが出席しました。この国で1930年から1931年にかけて奉仕したクロード・グッドマン。今では90代で,この国で地元の会衆と少なくとも80年は交わり,正規開拓者として奉仕しているマティルダ・ラジャパクセ(旧姓チャップマン)。二人目の支部の僕(当時の呼び方による)ダグラス・キング。世界本部から訪れた地帯監督で,献堂式の話を行なったデービッド・マーカンティ。このほかにも大勢が出席しました。

スリランカは,インド南東沖にある大きな島で,そこには1,800万人ほどの人たちが住んでいます。ここの多くの人々にとって,“アーユボーワン”という語は普通のあいさつの言葉ですが,それには「長生きされますように」という意味が込められています。エホバの民の間では,これは単に言い習わされたあいさつの言葉ではありません。それは彼らが心から願っていることなのです。この点と調和して,エホバの民はスリランカのすべての人たちに,王国の音信を自国語で伝えたいと考えています。そのうえで,これら新しい施設は役立つことでしょう。

支部を建てることは,それ自体が教育の機会となりました。単に建設の工法だけでなく,霊的な事柄についても教育されたのです。この工事によって,スリランカの兄弟たちは,エホバの僕たちから成る世界的な家族に引き寄せられました。アメリカとオーストラリアの兄弟たちは,設計の専門技術を提供しました。海外から来た兄弟たちは,作業を監督し,地元の証人たちに仕事の方法を教えるため精一杯働きました。必要な資材や資金は,他の支部によって賄われました。自発奉仕者たちは一緒に働けるように,言語の違いを辛抱して乗り越えました。こうしてすべての人は,エホバの組織が世界的な組織であるという認識の点で,また組織の円滑な機能に資する霊的な絆に対する認識の点で成長しました。

スリナム。スリナム支部の献堂式は,1995年2月12日に行なわれました。しかし,それに先立って行なわれた事柄は目を見張るもので,その業に参加することは喜びとなりました。新しい支部施設のために購入された地所は,パラマリボ市から西に約16㌔のところにあります。いろいろな国から来た兄弟たちが建設作業を手伝いました。愛ある国際的な協力関係の証拠を見ておこうと,パラマリボ市のあちこちから住民がやって来て,姉妹たちがブルドーザーや他の重機を運転する様子を驚きのうちに見守りました。教員たちは受け持ちの生徒を連れて来ることまでして,人々が一致団結して働くなら何が成し遂げられるかを見学させました。工事が完成したとき,それに関連した番組が,スリナムの二つのテレビ局の両方で放映されました。

献堂式のプログラムには,オランダ,ドイツ,フランス領ギアナ,ガイアナ,クラサオ島,その他の国や地域から兄弟たちが出席しました。地帯監督のドメニク・ピコーニが献堂式の話をしました。これらの施設に入っている事務所は,人口40万人というこの国の隅々にまで良いたよりを宣べ伝える業を調和よく推し進めるのに助けとなるでしょう。

カメルーン。多くの国の証人たちは,カメルーンにおける事態の進展に鋭い関心を寄せています。事実,1995年4月1日には,ベニン,カナダ,フランス,ガボン,ナイジェリア,米国から訪れた人たちが献堂式に居合わせました。献堂されたのは,4棟から成る2階建ての建物です。ドゥアラのボナベリにあるこれらの建物が,新しい支部施設となります。ゲストの中には,1950年代の終わりから1960年代にかけてカメルーンで宣教者として奉仕した7人の人たちが含まれていました。フランス出身のジャン-マリー・ボカエールが献堂式の話をしました。

1948年には,カメルーンで活動していたのは81人の証人たちだけでした。証人たちは厳しい制限のもとで23年のあいだ耐えてきたにもかかわらず,今では2万4,000人余りの人々が神に栄光を帰しています。ベテルのこれら新しい施設は,兄弟たちがエホバの民の活動を監督するうえで,必ず大いに価値あるものとなることでしょう。そうした監督のもと,エホバの民はカメルーンのすべての人々に対し,新しい世で永遠にわたってエホバに神聖な奉仕をささげることができるよう,エホバの家に上り,その道について学び,その道筋を歩もうという惜しみない招待を差し伸べてゆきます。

まさにこの1年間は,全世界で聖書教育のための大々的な計画が実施された年でした。この計画は,現在の事物の体制のまさに終わりに至るまで,速度を増しながら続いてゆくことでしょう。ハルマゲドン後に,幾十億もの人たちが死からよみがえらされ,エホバの道にしたがって教育されるにつれ,この計画は新たな側面を帯びるようになるでしょう。そのとき,エホバについての知識は,かつてなかった規模で,まさしく全地に満ちるのです。

[12ページの図版]

上: 「永遠の命に導く知識」の本がドイツで発表されたところ

左: 日本で教育に関する新しいブロシュアーを読んでいるところ

[13ページの図版]

大会の劇では,忠実な年配者たちの世話のことが取り上げられた

[13ページの図版]

1年間で33万8,491人の新しい弟子たちがバプテスマを受けた

[20,21ページの図版]

ニューヨーク州パタソンにあるものみの塔教育センター

[28,29ページの図版]

それぞれの所で献堂された支部施設

1. 台湾省

2. スリナム

3. スリランカ

4. エクアドル

5. 韓国

6. カメルーン