私わたしは1954年ねん，米べい国こくミネソタ州しゅうセントポールで，カトリックの中ちゅう流りゅう家か庭ていに生うまれました。5人にん兄きょう弟だいの上うえから2番ばん目めです。カトリックの小しょう学がっ校こうに通かよい，教きょう会かいの儀ぎ式しきでは司し祭さいの手て伝つだいをしていました。でも聖せい書しょのことはあまり知しりませんでした。万ばん物ぶつを創そう造ぞうした神かみはいるはずだと思おもっていましたが，教きょう会かいに不ふ信しん感かんを持もつようになりました。

ウィリアム･ミッチェル法ほう科か大だい学がく院いんに通かよっていた最さい初しょの年としに，エホバの証しょう人にんの訪ほう問もんを受うけました。洗せん濯たくで忙いそがしいと言いうと，訪たずねてきた夫ふう婦ふは「また来きます」と言いってくれました。再ふたたび家いえに来きた夫ふう婦ふに2つの質しつ問もんをしました。「善よいことをしても報むくわれないのはなぜか」，「どうすれば幸しあわせになれるか」という点てんです。「とこしえの命いのちに導みちびく真しん理り」の本ほんと，目めを引ひくグリーンの表ひょう紙しの「新しん世せ界かい訳やく聖せい書しょ」を受うけ取とりました。聖せい書しょを一いっ緒しょに学まなぶよう勧すすめられ，応おうじました。神かみの王おう国こくが人じん類るいを治おさめ，人ひと々びとの必ひつ要ようを満みたす，ということを知しって感かん動どうしました。まさに目めからうろこでした。人にん間げんが自じ分ぶんたちを治おさめ ようとしてもうまくいかない，苦くるしみや不ふ公こう正せいや悲ひ惨さんな出で来き事ごとが増ふえるだけだ，ということが分わかったからです。

1982年ねんの初はじめにエホバに献けん身しんし，後のちにセントポール･シビックセンターで開ひらかれた「王おう国こくの真しん理り」大たい会かいでバプテスマを受うけました。翌よく週しゅう，同おなじ会かい場じょうでミネソタ州しゅうの司し法ほう試し験けんを受うけました。10月がつ初はじめに合ごう格かく通つう知ちを受うけ取とり，弁べん護ご士しになる道みちが開ひらかれました。

「王おう国こくの真しん理り」大たい会かいで，ブルックリン･ベテルで奉ほう仕ししているマイク･リチャードソン兄きょう弟だいに会あいました。兄きょう弟だいは，本ほん部ぶに法ほう律りつ部ぶ門もんが設せっ置ちされたことを話はなしてくれました。使し徒と 8章しょう36節せつのエチオピアの高こう官かんの言こと葉ばを思おもい出だし，「法ほう律りつ部ぶ門もんで働はたらけない理り由ゆうが何なにかあるだろうか」と考かんがえました。それでベテル奉ほう仕しを申もうし込こみました。

親おやは私わたしがエホバの証しょう人にんになったことを快こころよく思おもいませんでした。父ちちから，「ものみの塔とうのために働はたらいて弁べん護ご士しとして何なにかメリットがあるのかね」と聞きかれました。私わたしは，「ボランティアとして働はたらいて，毎まい月つき75㌦の給きゅう付ふ金きんを受うけ取とります」と言いいました。他たのベテル奉ほう仕し者しゃと同おなじ額がくです。

弁べん護ご士しとしての仕し事ごとの契けい約やくが終しゅう了りょうしてから，1984年ねんにニューヨーク市しブルックリンでベテル奉ほう仕しを始はじめました。法ほう律りつ部ぶ門もんで働はたらくことになり，それまでの仕し事ごとがベテル奉ほう仕しで役やく立だつことになりました。

ニュージャージー州しゅうジャージーシティーのスタンレー劇げき場じょうが購こう入にゅうされたのは1983年ねん11月がつです。兄きょう弟だいたちは，劇げき場じょうの電でん気きや給きゅう排はい水すいの設せつ備びを改かい修しゅうするための許きょ可かを申しん請せいしました。市しの役やく人にんと会あい，スタンレー劇げき場じょうをエホバの証しょう人にんの大たい会かいホールとして使つかうつもりであることを説せつ明めいすると，問もん題だいが生しょうじました。市しの用よう地ち規き制せいでは，宗しゅう教きょう施し設せつは住じゅう宅たく用よう地ちにしか建たてられない，と定さだめられていました。スタンレー劇げき場じょうは商しょう業ぎょう用よう地ちにあったので，許きょ可かが下おりませんでした。兄きょう弟だいたちは不ふ服ふくを申もうし立たてましたが，認みとめられませんでした。

私わたしがベテルに来きた最さい初しょの週しゅうに，私わたしたちの組そ織しきはその件けんを連れん邦ぽう地ち方ほう裁さい判ばん所しょに提てい訴そしました。私わたしはそれまでの2年ねん間かんミネソタ州しゅうセントポールの連れん邦ぽう地ち方ほう裁さい判ばん所しょで働はたらいていたので，こうした案あん件けんに 通つうじていました。私わたしたちの側がわの弁べん護ご士しの1人ひとりは，「スタンレー劇げき場じょうが映えい画がやロック･コンサートなどさまざまなイベントで使つかわれてきたのであれば，どうして宗しゅう教きょうのイベントで使つかうことが違い法ほうになるのか」と訴うったえました。連れん邦ぽう地ち方ほう裁さい判ばん所しょはその件けんを審しん理りし，ジャージーシティーが信しん教きょうの自じ由ゆうを侵しん害がいした，という判はん決けつを下くだしました。裁さい判ばん所しょは市しに対たいして，改かい修しゅうを認にん可かするよう命めいじました。組そ織しきが活かつ動どうを推おし進すすめるために法ほう的てき手しゅ段だんを用もちいることをエホバは祝しゅく福ふくしていました。その様よう子すを目まの当あたりにし，一いっ端たんを担になえたことをうれしく思おもいました。

兄きょう弟だいたちは大だい規き模ぼな改かい装そうに取とり掛かかりました。改かい装そうが始はじまってから1年ねんもたたない1985年ねん9月がつ8日かに，ジャージーシティー大たい会かいホールでギレアデ第だい79期きの卒そつ業ぎょう式しきが行おこなわれました。仲なか間まと共ともに法ほう律りつ面めんで王おう国こくの活かつ動どうに貢こう献けんできたのは光こう栄えいなことでした。得えられた満まん足ぞく感かんは，ベテルに来くる前まえに弁べん護ご士しとして経けい験けんした達たっ成せい感かんをはるかにしのぐものでした。エホバがそのような奉ほう仕しの機き会かいをさらに用よう意いしておられるとは，その時ときはまだ知しりませんでした。

1980年ねん代だいには，輸ゆ血けつせずに治ち療りょうしてほしいという成せい人じんであるエホバの証しょう人にんの意い向こうを，医い師しや病びょう院いんが尊そん重ちょうしないことも珍めずらしくありませんでした。妊にん婦ぷの場ば合あい，このことが特とくに問もん題だいになりました。裁さい判ばん官かんたちは，妊にん婦ぷには輸ゆ血けつを拒きょ否ひする法ほう的てき権けん利りがないと考かんがえることが多おおかったからです。輸ゆ血けつを施ほどこさずに母はは親おやが死しんでしまうなら，生うまれてくる子こ供どもが後あとに残のこされる，と考かんがえたのです。

1988年ねん12月がつ29日にち，デニース･ニコロー姉し妹まいは男おとこの子こを出しゅっ産さんした後のち，大たい量りょうの出しゅっ血けつをしました。ヘモグロビン値ちは5.0を下した回まわり，担たん当とう医いは輸ゆ血けつに同どう意いするよう姉し妹まいに求もとめました。ニコロー姉し妹まいは拒きょ否ひしました。翌よく朝あさ，病びょう院いん側がわは裁さい判ばん所しょ命めい令れいの申もうし立たてをし，病びょう院いん側がわが必ひつ要ようと考かんがえる輸ゆ血けつを施ほどこす許きょ可かを求もとめました。裁さい判ばん官かんは，姉し妹まいや夫おっとに意い向こうを確たしかめたり申もうし立たてがあったことの通つう知ちをしたりすることもなく，病びょう院いん側がわに輸ゆ血けつの許きょ可かを与あたえました。

12月がつ30日にち，金きん曜よう日び，病びょう院いん側がわは，病びょう室しつにいた夫おっとや近きん親しん者しゃが反はん対たいしているにもかかわらず，姉し妹まいに輸ゆ血けつを施ほどこしました。その晩ばん，姉し妹まいのベッド脇わきで立たちはだかり輸ゆ血けつが施ほどこされるのを妨ぼう害がいした容よう疑ぎで，家か族ぞく数すう名めいと長ちょう老ろうが逮たい捕ほされました。12月がつ31日にち，土ど曜よう日びの朝あさ，逮たい捕ほのニュースがニューヨーク市しとロングアイランドで報ほう道どうされました。

私わたしたちは控こう訴そし，月げつ曜よう日びの午ご前ぜん，裁さい判ばん長ちょうのミルトン･ モレン氏しと話はなすことができました。私わたしは事じ件けんの概がい要ようを説せつ明めいし，第だい一いっ審しんの裁さい判ばん官かんが本ほん人にんに意い見けんを述のべる機き会かいを与あたえることなく輸ゆ血けつを許きょ可かした，ということを強きょう調ちょうしました。モレン裁さい判ばん官かんは，その日ひの午ご後ごに裁さい判ばん官かん室しつに来くるよう招まねいてくれました。事じ実じつを確かく認にんし，関かん連れんする法ほう律りつについて話はなし合あうためです。私わたしの部ぶ門もん監かん督とくであるフィリップ･ブラムリー兄きょう弟だいと共ともに，その日ひの夕ゆう方がた，モレン裁さい判ばん官かんを訪たずねました。モレン裁さい判ばん官かんは病びょう院いん側がわの弁べん護ご士しも招まねいていました。激はげしい議ぎ論ろんが交かわされました。ブラムリー兄きょう弟だいは，「冷れい静せいに」と書かいたメモを私わたしに見みせました。今いまから思おもうと，良よいアドバイスでした。相あい手ての弁べん護ご士しを論ろん破ぱしようと，熱あつくなり過すぎていたからです。

1時じ間かんほどたってからモレン裁さい判ばん官かんは，その件けんを翌よく朝あさ一いち番ばんに扱あつかうと言いいました。私わたしたちが裁さい判ばん官かん室しつから帰かえる時とき，モレン裁さい判ばん官かんは，「明日あす，彼かれらは苦く労ろうするでしょうね」と言いいました。病びょう院いん側がわの弁べん護ご士しが自じ分ぶんたちの立たち場ばの妥だ当とう性せいを示しめすのは厳きびしいだろう，と言いっていたのです。私わたしたちの方ほうが有ゆう利りであるということをエホバが教おしえてくれたように感かんじました。エホバが私わたしたちを用もちいてご自じ分ぶんの望のぞむことを行おこなっているのが分わかり，謙けん虚きょな気き持もちになりました。

私わたしたちは，夜よる遅おそくまで，翌よく日じつ午ご前ぜんの裁さい判ばんのための準じゅん備びをしました。裁さい判ばん所しょはブルックリン･ベテルのすぐ近ちかくにあったので，当とう時じ少しょう人にん数ずうだった法ほう律りつ部ぶ門もんのメンバーのほとんどは歩あるいて行いきました。4人にんの裁さい判ばん官かんは私わたしたちの主しゅ張ちょうを聞きいた後のち，輸ゆ血けつを許きょ可かする命めい令れいを取とり消けしました。ニコロー姉し妹まい勝しょう訴そのこの判はん決けつにより，本ほん人にんに意い見けんを述のべる機き会かいを与あたえずに裁さい判ばん所しょ命めい令れいを下くだすのは，憲けん法ぽうで保ほ障しょうされている基き本ほん的てき人じん権けんの侵しん害がいであることが明あきらかにされました。

最さい終しゅう的てきにニューヨーク州しゅうの最さい高こう裁さい判ばん所しょは，ニコロー姉し妹まいには無む輸ゆ血けつの治ち療りょうを選せん択たくする権けん利りがあるという判はん断だんを支し持じしました。私わたしは，米べい国こくの4つの州しゅう最さい高こう裁さい判ばん所しょで行おこなわれた，輸ゆ血けつに関かん連れんした裁さい判ばん で代だい理り人にんを務つとめました。そのうち，ニコロー姉し妹まいの件けんは，私わたしが最さい初しょに関かかわったものです。（「 州しゅう最さい高こう裁さい判ばん所しょでの勝しょう利り」という囲かこみを参さん照しょう。）私わたしはベテルの他たの弁べん護ご士したちと共ともに，子こ供どもの親しん権けん，離り婚こん，不ふ動どう産さん，用よう地ち規き制せいに関かかわる裁さい判ばんを扱あつかいました。

ドーンに最さい初しょに出で会あった時とき，彼かの女じょは離り婚こんし，3人にんの子こ供どもを育そだてていました。生せい計けいを立たてながら開かい拓たく奉ほう仕しをしていました。苦く労ろうを乗のり越こえ，いちずにエホバに仕つかえようとしている姿すがたに心こころを引ひかれました。1992年ねん，ニューヨーク市しで「光ひかりを掲かかげる人ひと々びと」地ち域いき大たい会かいに出しゅっ席せきした時とき，交こう際さいを申もうし込こみました。私わたしたちは1年ねん後ごに結けっ婚こんしました。エホバをいつも第だい一いちにし，ユーモアのセンスに富とむドーンは，エホバからのプレゼントです。一いっ緒しょに過すごしてきた間あいだずっと善よいことをしてくれたドーンに感かん謝しゃしています。（格かく 31:12）

結けっ婚こんした時とき，子こ供どもたちは11歳さい，13歳さい，16歳さいでした。良よい父ちち親おやになるために，ステップファミリーに関かんする出しゅっ版ぱん物ぶつの記き事じを全ぜん部ぶよく読よんで当あてはめました。難むずかしい時ときもありましたが，子こ供どもたちが私わたしを信しん頼らいできる友とも，愛あい情じょう深ぶかい父ちち親おやとして受うけ入いれてくれたことをうれしく思おもいます。子こ供どもには，友とも達だちをいつでも家いえに連つれてきていいと言いっていました。そのため，わが家やはいつも元げん気きあふれる若わか者ものたちでにぎわっていました。

2013年ねん，私わたしたちは高こう齢れいの親おやの世せ話わのためウィスコンシン州しゅうに引ひっ越こしました。驚おどろいたことに，ベテル奉ほう仕しを続つづけることになりました。組そ織しきを法ほう律りつ面めんでサポートするため，テンポラリー･ボランティアとして奉ほう仕しすることになったのです。

2018年ねん9月がつ，自じ分ぶんがせき払ばらいをすることが多おおくなったことに気き付づきました。近ちかくで医い師しの診しん察さつを受うけましたが，原げん因いんは分わかりませんでした。後のちに別べつの医い師しから，神しん経けい科か医いに診みてもらうよう勧すすめられました。2019年ねん1月がつ，進しん行こう性せい核かく上じょう性せいまひという神しん経けい系けいの難なん病びょうにかかっているのではないかと言いわれました。

3日か後ご，アイススケートをしていた時ときに右みぎ手て首くびを骨こっ折せつしました。スケートは子こ供どもの時ときからしていて得とく意いだったので，運うん動どう機き能のうが衰おとろえていることが分わかりました。症しょう状じょうは急きゅうに進すすみ，話はなしたり動うごいたり物ものをのみ込こんだりすることが難むずかしくなりました。

弁べん護ご士しとしての経けい験けんを生いかして，王おう国こくの活かつ動どうを推おし進すすめるために少すこしでも貢こう献けんできたのはうれしいことでした。専せん門もん誌しに多おおくの記き事じを寄き稿こうし，世せ界かい各かく地ちの法ほう医い学がくのセミナーで講こう演えんをし，無む輸ゆ血けつの手しゅ術じゅつや治ち療りょうを選せん択たくするエホバの証しょう人にんの権けん利りを擁よう護ごしてきました。それでもルカ 17章しょう10節せつの言こと葉ばの通とおりに感かんじています。私わたしは「役やくに立たたない奴ど隷れいです。当とう然ぜんすべきことをしたまでです」という言こと葉ばです。