ベテルの兄きょう弟だいたちは，ニューヨーク市しスタテン島とうにWBBRのラジオ局きょくを建たてるため，1年ねん以い上じょう働はたらいてきました。木きを切きり倒たおして整せい地ちし，作さ業ぎょうする兄きょう弟だいたちのための大おおきな家いえと装そう置ちのための建たて物ものを作つくった後あと，放ほう送そうするのに必ひつ要ような装そう置ちを組くみ立たて始はじめます。ところが，いろいろな問もん題だいが待まち構かまえていました。

兄きょう弟だいたちは主しゅ要ようアンテナの設せっ置ちに頭あたまを抱かかえました。アンテナは91㍍もの長ながさがありました。そして，そのアンテナを高たかさ61㍍の2本ほんの木もく製せいの柱はしらの間あいだに架かける必ひつ要ようがありました。初はじめの設せっ置ち作さ業ぎょうは失しっ敗ぱいに終おわります。しかし兄きょう弟だいたちはエホバが助たすけてくれることを信しんじて，ついに設せっ置ちに成せい功こうします。このプロジェクトに携たずさわったカルバン･プロッサー兄きょう弟だいはこう述のべています。「もし最さい初しょから成せい功こうしていたら，『僕ぼくたち，やったぞ！』と得とく意いげになっていたかもしれません」。兄きょう弟だいたちは，成せい功こうできたのはエホバのおかげだということを実じっ感かんしました。しかし，取とり組くむべき問もん題だいはほかにもありました。

当とう時じ，ラジオ放ほう送そうは始はじまったばかりで，本ほん格かく的てきな放ほう送そう機き材ざいは手てに入はいりづらいものでした。兄きょう弟だいたちは，中ちゅう古こで粗そ末まつな造つくりの500㍗送そう信しん機きが地じ元もとで手てに入はいったので，それを使つかうことにしました。マイクを買かう代かわりに，電でん話わの送そう話わ器きを使つかいました。2月がつのある晩ばんに，いよいよこの寄よせ集あつめの装そう置ちのテストをしてみようということになりました。試ためしに何なにかを流ながす必ひつ要ようがあったので，兄きょう弟だいたちは王おう国こくの歌うたを歌うたうことにします。この時ときの出で来き事ごとをアーネスト･ロー兄きょう弟だいは楽たのしそうに語かたってくれました。ロー兄きょう弟だいによると，兄きょう弟だいたちが歌うたって いる最さい中ちゅうに，25㌔離はなれたブルックリンでこの放ほう送そうを聞きいていたラザフォード判はん事じ bが電でん話わをかけてきたそうです。

ラザフォード兄きょう弟だいはこう言いいました。「猫ねこたちがギャーギャー鳴ないているのかと思おもいました。いいかげんにしなさい！」兄きょう弟だいたちは送そう信しん機きの電でん源げんをすぐに落おとしました。少すこし恥はずかしい思おもいをしましたが，いつでもラジオ放ほう送そうが始はじめられるということが分わかりました。

1924年ねん2月がつ24日か，初はじめての正せい式しきな放ほう送そうでラザフォード兄きょう弟だいは，このラジオ局きょくを「メシアの王おう国こくの関かん心しん事じのために」献けん堂どうすることを発はっ表ぴょうしました。そして，ラジオ局きょくの目もく的てきについてこう述のべました。「宗しゅう教きょうや宗しゅう派はに関かかわりなく，私わたしたちが今いま生いきている時じ代だいの意い味みを聖せい書しょと照てらし合あわせて理り解かいできるよう人ひと々びとを助たすけることです」。

最さい初しょの放ほう送そうは大だい成せい功こうでした。その後ごの33年ねん間かん，WBBRは組そ織しきのラジオ放ほう送そうにおいて中ちゅう心しん的てきな役やく割わりを果はたしました。

1924年ねん7月がつ，聖せい書しょ研けん究きゅう者しゃたちはオハイオ州しゅうコロンバスで開ひらかれた大たい会かいのために集あつまりました。世せ界かい中じゅうから来きた代だい表ひょう者しゃたちのために，アラビア語ご，イタリア語ご，ウクライナ語ご，英えい語ご，ギリシャ語ご，スカンディナビア諸しょ語ご，ドイツ語ご，ハンガリー語ご，フランス語ご，ポーランド語ご，リトアニア語ご，ロシア語ごで話はなしがされました。話はなしの一いち部ぶはラジオでも放ほう送そうされました。また，兄きょう弟だいたちはオハイオ･ステート･ジャーナル誌し（英えい語ご）に大たい会かいについての記き事じを毎まい日にち掲けい載さいしてもらえるよう依い頼らいしました。

7月がつ24日かの木もく曜よう日びには，5000人にん以い上じょうの出しゅっ席せき者しゃが伝でん道どうに参さん加かしました。そして約やく3万まん冊さつの書しょ籍せきが配はい布ふされ，数すう千せん件けんもの聖せい書しょ研けん究きゅうが始はじまりました。その日ひについて，「ものみの塔とう」誌しには「大たい会かい期き間かん中ちゅうで最もっとも喜よろこばしい日ひ」と書かかれています。

7月がつ25日にち金きん曜よう日びに，別べつの際きわ立だった出で来き事ごとがありました。ラザフォード兄きょう弟だいが聖せい職しょく者しゃたちに対たいする大だい胆たんな告こく発はつ状じょうを読よみ上あげたのです。この告こく発はつ状じょうは法ほう的てき文ぶん書しょの形けい式しきで，政せい治じ，宗しゅう教きょう，商しょう業ぎょうのリーダーたちが「命いのちという祝しゅく福ふくを与あたえるための神かみの備そなえについて，諸しょ国こく民みんを無む知ちの状じょう態たいに置おいている」と断だん罪ざいするものでした。さらに，それらのリーダーたちは「国こく際さい連れん盟めいを公おおやけに支し持じしており，それが『地ち上じょうにおける神かみの王おう国こくの政せい治じ的てき表ひょう現げん』であると宣せん言げんしている」と指し摘てきしました。聖せい書しょ研けん究きゅう者しゃ たちがこのメッセージを人ひと々びとに伝つたえるためには，大だい胆たんさと粘ねばり強づよさが必ひつ要ようでした。

当とう時じの「ものみの塔とう」誌しは大たい会かいに出しゅっ席せきした人ひとたちの様よう子すについてこう述のべています。「コロンバス大たい会かいに集あつまった主しゅの小ちいさな軍ぐん隊たいは信しん仰こうを強つよめられ，敵てきが放はなついかなる火ひ矢やや攻こう撃げきにも屈くっしない者ものとして出でて行いった」。大たい会かいに出しゅっ席せきしたレオ･クラウス兄きょう弟だいは当とう時じを振ふり返かえってこう言いっています。「私わたしたちは，自じ分ぶんたちの区く域いきで告こく発はつ状じょうを配はい布ふするんだ，という熱あつい思おもいで大たい会かいを後あとにしました」。

10月がつには，ラザフォード兄きょう弟だいが発はっ表ぴょうした告こく発はつ文ぶんが「聖せい職しょく者しゃに対たいする告こく発はつ」というパンフレットとなり，配はい布ふが始はじまりました。このパンフレットは何なん百びゃく万まん部ぶも配はい布ふされました。ある日ひ，フランク･ジョンソン兄きょう弟だいは，オクラホマ州しゅうクリーブランドの小ちいさな町まちでこのパンフレットを配くばりました。割わり当あてられた区く域いきが終おわりましたが，兄きょう弟だいたちが迎むかえに来くる約やく束そくの時じ間かんまで，まだ20分ぷんありました。しかし，人ひと目めにつく所ところで待まっているのは危き険けんでした。伝でん道どう活かつ動どうに腹はらを立たてた町まちの人ひとたちがフランク兄きょう弟だいを捜さがし回まわっていたからです。それでフランク兄きょう弟だいは近ちかくの教きょう会かいに隠かくれることにしました。中なかには誰だれもいなかったので，「聖せい職しょく者しゃに対たいする告こく発はつ」を牧ぼく師しの聖せい書しょに挟はさみ，各かく座ざ席せきにも1部ぶずつ置おいておきました。そして急いそいで出でていきました。待まち合あわせまでまだ時じ間かんが残のこっていたので，さらに2つの教きょう会かいを回まわって同おなじことをしました。

フランク兄きょう弟だいは，急いそいで待まち合あわせの場ば所しょに戻もどりました。自じ分ぶんを捜さがしている人ひとたちに見みつからないように，給きゅう油ゆ所じょの後うしろに隠かくれて見み張はっていました。フランク兄きょう弟だいを捜さがしている人ひとたちの車くるまがすぐそばを通とおりましたが，フランク兄きょう弟だいの姿すがたが見みえなかったので，そのまま走はしり去さっていきました。そのすぐ後あと，近ちかくで伝でん道どうしていた兄きょう弟だいたちが迎むかえに来きてくれて，町まちを去さることができました。

兄きょう弟だいたちの1人ひとりはこう言いいました。「町まちを出でる時とき，3つの教きょう会かいの前まえを通とおりました。どの教きょう会かいの前まえにも50人にんぐらいの人ひとが立たっていて，パンフレットを読よんでいる人ひともいれば，牧ぼく師しに見みえるように掲かかげている人ひともいました。巻まき込こまれていたら危あぶないところでした。エホバが私わたしたちを保ほ護ごし，王おう国こくに敵てき対たいする人ひとたちにメッセージを伝つたえるための知ち恵えを与あたえてくれたことに感かん謝しゃしました」。

ほかの国くにでも，聖せい書しょ研けん究きゅう者しゃたちは同おなじように大だい胆たんに伝でん道どうしました。ヨーゼフ･クレット兄きょう弟だいは北きたフランスで，ポーランドからの鉱こう山ざん労ろう働どう者しゃに伝でん道どうしました。兄きょう弟だいは「間まもなく死し者しゃは復ふっ活かつする」という題だいの話はなしをすることになっていました。その講こう演えんの招しょう待たいビラが町まちの住じゅう民みんに配くばられると，ある司し祭さいは教きょう区く民みんに出しゅっ席せきしないようにと警けい告こくしました。でもその警けい告こくは逆ぎゃく効こう果かでした。5000人にん以い上じょうの人ひとがその講こう演えんを聞ききにやって来きました。そして，その司し祭さいも来きていたのです！ クレット兄きょう弟だいは司し祭さいのために弁べん明めいの機き会かいを設もうけましたが，断ことわられました。講こう演えんを聞ききに来きた人ひとたちが神かみの言こと葉ばに飢うえているのは明あきらかだったので，クレット兄きょう弟だいは持もっていた文ぶん書しょを全すべて配はい布ふしました。（アモ 8:11）

アフリカではクロード･ブラウン兄きょう弟だいが，現げん在ざいガーナとして知しられる黄おう金ごん海かい岸がんで良よい知しらせを広ひろめました。兄きょう弟だいの講こう演えんや文ぶん書しょの配はい布ふによって，国くに中じゅうで真しん理りが急きゅう速そくに広ひろまりました。ブラウン兄きょう弟だいの講こう演えんを聞きいた人ひとの1人ひとりに，薬やく剤ざい師しになるための勉べん強きょうをしていたジョン･ブランクソン兄きょう弟だいがいます。ジョン兄きょう弟だいは話はなしを聞きいてすぐに，これは真しん理りだと感かんじました。当とう時じを振ふり返かえり，こう言いっています。「気き持もちが高こう揚ようしました。聞きいたことを学がっ校こうでみんなに話はなしました」。

 ジョン兄きょう弟だいは，三さん位み一いっ体たいの教おしえが間ま違ちがっていることをはっきり理り解かいするようになりました。それである日ひ，聖せい公こう会かいの教きょう会かいに行いってその教きょう理りについて司し祭さいに尋たずねました。話はなしを聞きいた司し祭さいはジョン兄きょう弟だいを追おい出だし，大おお声ごえでこう言いいました。「おまえはクリスチャンではない。悪あく魔まの手て先さきだ。ここから出でていけ！」

家いえに帰かえってから，ジョン兄きょう弟だいは司し祭さいに手て紙がみを書かき，公おおやけの場ばで三さん位み一いっ体たいについて話はなし合あうことを提てい案あんしました。司し祭さいからの返へん事じは，学がっ校こうの事じ務む所しょへの呼よび出だしという形かたちで返かえってきました。事じ務む所しょには主しゅ任にん講こう師しがいて，司し祭さいに手て紙がみを書かいたかどうかを尋たずねてきました。

「はい，書かきました」とジョン兄きょう弟だいは答こたえます。

講こう師しはジョン兄きょう弟だいに，その場ばで司し祭さいへの謝しゃ罪ざいの手て紙がみを書かくようにと言いいました。それでジョン兄きょう弟だいはこう書かきます。

「私わたしの先せん生せいからあなたに謝しゃ罪ざいの手て紙がみを書かくよう言いわれております。私わたしとしましては，あなたが自じ分ぶんの教おしえている教きょう理りの間ま違ちがいを認みとめてくださるようでしたら，謝しゃ罪ざいの手て紙がみを書かくつもりでおります」。

信しんじられない様よう子すで講こう師しはこう尋たずねます。「ブランクソン君くん，本ほん当とうにこの内ない容ようでいいのか」。

「はい，こうとしか書かけません」。

「退たい学がくになってもいいのか。政せい府ふ公こう認にんの教きょう会かいの司し祭さいにこんなことを言いったら，仕し事ごとに就つけなくなるぞ」。

「お言こと葉ばですが，先せん生せい，授じゅ業ぎょう中ちゅうに分わからないことがあれば，生せい徒とは質しつ問もんするのではありませんか」。

「そうだね」。

「この件けんも同おなじことです。司し祭さいに聖せい書しょを教おしえてもらった時ときに分わからないことがあったので，私わたしは尋たずねただけです。司し祭さいが答こたえられなかったというだけで，私わたしが謝しゃ罪ざいの手て紙がみを書かかなければいけないのはなぜでしょうか」。

結けっ局きょく，ジョン兄きょう弟だいは退たい学がくにはならず，謝しゃ罪ざいの手て紙がみを送おくることもありませんでした。

この年としを振ふり返かえって，「ものみの塔とう」誌しは次つぎのように述のべています。「私わたしたちは，まさにダビデが述のべたようにこう言いうことができる。『なんじ戦たたかいのために力ちからをわれに帯おばしめ[たり]』。（詩し 18:39）今こ年としは大おおきな励はげましの1年ねんとなった。主しゅのみ手てを見みてきたからである。……主しゅの真しんに聖せい別べつされた者ものたちは……喜よろこびを持もって伝でん道どうした」。

兄きょう弟だいたちはその年としの終おわりごろ，ラジオ放ほう送そうによる伝でん道どうをさらに拡かく大だいするため，シカゴ近きん郊こうにもう1つのラジオ局きょくを建たてることにしました。この新あたらしい放ほう送そう局きょくには，WORDというコールサインが付ついていました。神かみの言こと葉ばをラジオで伝つたえる放ほう送そう局きょくとして，ぴったりな名な前まえでした。WORDには5000㍗の送そう信しん機きが使つかわれ，王おう国こくの知しらせが1000㌔以い上じょう離はなれた所ところにも伝つたえられました。なんとカナダ北ほく部ぶにも伝つたわっていたのです。

1925年ねんには，聖せい書しょ研けん究きゅう者しゃたちが啓けい示じ 12章しょうに関かんする画かっ期き的てきな理り解かいを得えて，真しん理りの光ひかりが輝かがやくことになります。この新あたらしい理り解かいのために，ある人ひとたちはエホバに仕つかえるのをやめてしまいます。しかし多おおくの人ひとは，目めに見みえない天てんで何なにが起おこったのか，そしてそれが地ち上じょうでエホバに仕つかえる人ひとたちにどんな影えい響きょうを与あたえるかを理り解かいし，喜よろこびました。