私わたしは1955年ねんに3人にん兄きょう弟だいの末すえっ子ことして生うまれました。今いまはバンターと呼よばれているフィンランド南なん部ぶの海うみ辺べの都と市しで育そだちました。

母ははは，私わたしが生うまれる数すう年ねん前まえにバプテスマを受うけてエホバの証しょう人にんになりました。父ちちはそのことを快こころよく思おもっていなかったので，母ははが子こ供どもたちに聖せい書しょを教おしえることや集しゅう会かいに連つれていくことを許ゆるしませんでした。それで私わたしたち子こ供どもは，父ちちがいない時ときに聖せい書しょについて母ははから教おしえてもらいました。

私わたしは子こ供どもの頃ころからずっとエホバに従したがってきました。こんなこともありました。7歳さいの時とき，ベリオフカイネンというフィンランド料りょう理り（血ちの入はいったパンケーキ）を食たべなかったので，学がっ校こうの先せん生せいからとても怒おこられました。先せん生せいは私わたしの顔かおをつかみ，パンケーキの刺ささったフォークを無む理りやり口くちに入いれようとしました。私わたしはなんとかフォークを払はらいのけました。

12歳さいの時とき，父ちちが亡なくなり，集しゅう会かいに行いけるようになりました。兄きょう弟だいたちが優やさしく気き遣づかってくれたので，エホバともっと親したしくなりたいと思おもいました。毎まい日にち聖せい書しょを読よみ，エホバの証しょう人にんの出しゅっ版ぱん物ぶつを真しん剣けんに学まなび始はじめました。このような良よい習しゅう慣かんのおかげで，1969年ねん8月がつ8日か，14歳さいの時ときにバプテスマを受うけることができました。

学がっ校こうを卒そつ業ぎょうしてすぐに正せい規き開かい拓たく奉ほう仕しを始はじめまし た。そして数すう週しゅう間かん後ご，伝でん道どう者しゃがさらに必ひつ要ようなピエラベシに移い動どうしました。フィンランドの中ちゅう央おう近ちかくにある町まちです。

ピエラベシで，後のちに妻つまとなるシルッカと出で会あいました。彼かの女じょは謙けん虚きょでエホバを深ふかく愛あいしていました。また，目め立だった立たち場ばや安あん定ていした暮くらしを追おい求もとめるような人ひとではありませんでした。そういうところにとても魅み力りょくを感かんじました。2人ふたりともエホバのためにできる限かぎりのことをしたいと思おもっていたので，どんな奉ほう仕しもするつもりでした。私わたしたちは1974年ねん3月がつ23日にちに結けっ婚こんしました。新しん婚こん旅りょ行こうへ行いく代かわりに，伝でん道どう者しゃがかなり必ひつ要ようとされていたカルットゥラという場ば所しょに引ひっ越こしました。

エホバは，王おう国こくを第だい一いちにすれば必ひつ要ようなものを必かならず与あたえるという約やく束そくを私わたしたちが結けっ婚こんした当とう初しょから果はたしてくださいました。（マタ 6:33）カルットゥラに来きた時とき，私わたしたちには車くるまがなくて自じ転てん車しゃで移い動どうしていました。冬ふゆの気き温おんは氷ひょう点てん下かまで下さがり，伝でん道どうする区く域いきも広ひろかったので車くるまが必ひつ要ようでした。でも，買かうお金かねはありませんでした。

ある日ひ，兄あにがやって来きて，車くるまを譲ゆずると言いってくれました。保ほ険けん料りょうもすでに支し払はらわれていたので，後あとは燃ねん料りょうを入いれるだけでした。こうして，思おもいがけず車くるまが与あたえられました。

エホバご自じ身しんが支ささえてくださったので，私わたしたちは生せい活かつに必ひつ要ようなものについて心しん配ぱいせずに済すみました。私わたしたちにとってやるべきことは，ただ王おう国こくを第だい一いちにすることでした。

1978年ねん，開かい拓たく奉ほう仕し学がっ校こうに出しゅっ席せきしていた時ときに，私わたしたちを教おしえてくれたライモ･クオカネン兄きょう弟だいがギレアデ学がっ校こうに申もうし込こむよう勧すすめてくれました。 a それで，入にゅう校こうする資し格かくを満みたすために英えい語ごを学まなび始はじめました。1980年ねん，まだギレアデに申もうし込こむことができなかった時ときに，フィンランドの支し部ぶ事じ務む所しょに招しょう待たいされました。当とう時じ，ベテル奉ほう仕し者しゃはギレアデに申もうし込こむことができませんでした。でも私わたしたちは，自じ分ぶんたちではなくエホバが一いち番ばん良よいと思おもう所ところで奉ほう仕ししたいと思おもっていたので，支し部ぶ事じ務む所しょの招しょう待たいを受うけ入いれる ことにしました。とはいえ，ギレアデに申もうし込こむチャンスがいつか来くるかもしれないと思おもい，英えい語ごの勉べん強きょうはやめませんでした。

数すう年ねん後ご，統とう治ち体たいの決けっ定ていによってベテル奉ほう仕し者しゃもギレアデに申もうし込こめるようになりました。私わたしたちはすぐに申もうし込こみ書しょを出だしました。といっても，ベテルが嫌いやだったからではありません。ベテルでの奉ほう仕しはとても楽たのしかったです。でも，エホバが遣つかわしたいと思おもう所ところであれば，どこにでも行いきたいと思おもっていました。私わたしたちはギレアデに招しょう待たいされ，1985年ねん9月がつに79期きのクラスを卒そつ業ぎょうしました。コロンビアで奉ほう仕しすることになりました。

コロンビアで最さい初しょに割わり当あてられたのは，支し部ぶ事じ務む所しょでの奉ほう仕しでした。ベストを尽つくして頑がん張ばっていましたが，1年ねんほどたった時とき，自じ分ぶんたちには調ちょう整せいが必ひつ要ようだと感かんじました。それで，割わり当あての変へん更こうをお願ねがいしました。このようなお願ねがいをしたのは，この時ときだけです。その後ご，ウィラ州しゅうにあるネイバという町まちで宣せん教きょう者しゃとして奉ほう仕しするよう割わり当あてられました。

私わたしは宣せん教きょうをいつも楽たのしんできました。フィンランドでは独どく身しんの開かい拓たく者しゃとして朝あさ早はやくから夕ゆう方がた遅おそくまで伝でん道どうしました。結けっ婚こんしてからも，シルッカと一いっ緒しょに一いち日にち中じゅう伝でん道どうしました。家いえから遠とおい場ば所しょで伝でん道どうするときには，車くるまの中なかで眠ねむることもありました。そうすることで，移い動どう時じ間かんを節せつ約やくして，次つぎの日ひの朝あさすぐに伝でん道どうを始はじめることができました。

宣せん教きょう者しゃになってから，また野や外がい奉ほう仕しに打うち込こめるようになりました。現げん地ちの兄きょう弟だい姉し妹まいは，礼れい儀ぎ正ただしくて愛あい情じょう深ぶかく，感かん謝しゃにあふれていました。私わたしたちの会かい衆しゅうは成せい長ちょうしていきました。

私わたしたちのいたネイバからそう遠とおくない所ところに，エホバの証しょう人にんのまだいない町まちが幾いくつかありました。そのようなエリアにどうやって良よい知しらせが伝つたわるのだろう，とずっと気きに掛かかっていました。そこはゲリラ戦せんが多おおく，現げん地ちの人ひと以い外がいにとっては危き険けんな場ば所しょでした。それで，誰だれか地じ元もとの人ひとがエホバの証しょう人にんになることを祈いのりました。そのような人ひとは，まずネイバに住すんで真しん理りを学まなぶ必ひつ要ようがあると思おもいました。そして，その人ひとがバプテスマを受うけてしっかりした兄きょう弟だいに成せい長ちょうしてから，地じ元もとに帰かえって伝でん道どうするようになってほしいとも祈いのりました。でも，エホバは私わたしが考かんがえていたよりももっと素す晴ばらしい方ほう法ほうをご存ぞんじでした。

祈いのった後あとすぐ，フェルナンド･ゴンザレスという若わかい男だん性せいとの聖せい書しょレッスンが始はじまりました。彼かれはアルヘシラスに住すんでいて，そこにはエホバの証しょう人にんが一人ひとりもいませんでした。フェルナンドは50㌔以い上じょう離はなれたネイバまで働はたらきに来きていました。毎まい回かいの聖せい書しょレッスンのためによく準じゅん備びし，すぐに全すべての集しゅう会かいに参さん加かするようになりました。初はじめて聖せい書しょレッスンを受うけた週しゅうから，地じ元もとの人ひとたちを集あつめて学まなんだことを伝つたえていました。

フェルナンドはレッスンを始はじめてから半はん年とし後ごの1990年ねん1月がつにバプテスマを受うけました。その後ご，正せい規き開かい拓たく者しゃになりました。アルヘシラスに現げん地ちのエホバの証しょう人にんが1人ひとり誕たん生じょうしたので，支し部ぶ事じ務む所しょはそこに特とく別べつ開かい拓たく者しゃを派は遣けんしても安あん全ぜんだと判はん断だんしました。1992年ねん2月がつには会かい衆しゅうも設せつ立りつされました。

 フェルナンドが伝でん道どうしたのは地じ元もとだけではありませんでした。結けっ婚こんした後あと，夫ふう婦ふでサン･ビセンテ･デル･カグアンという町まちに引ひっ越こしました。この町まちにはエホバの証しょう人にんがまだいませんでしたが，2人ふたりが奉ほう仕しした結けっ果か，1つの会かい衆しゅうができました。2002年ねんにフェルナンドは巡じゅん回かい監かん督とくに任にん命めいされ，妻つまのオルガと一いっ緒しょに今いまでも巡じゅん回かい奉ほう仕しを続つづけています。

この経けい験けんから，割わり当あてを果はたすに当あたり，具ぐ体たい的てきに祈いのることがどれだけ大だい事じかを学まなびました。エホバは私わたしたちに何なにができて何なにができないかをよくご存ぞんじです。結けっ局きょく，この宣せん教きょうを導みちびいているのは私わたしたちではなくエホバなのです。（マタ 9:38）

私わたしたち夫ふう婦ふは1990年ねんから旅りょ行こうする奉ほう仕しを始はじめました。最さい初しょに割わり当あてられたのは，首しゅ都とのボゴタにある巡じゅん回かい区くでした。本ほん当とうに自じ分ぶんたちに務つとまるんだろうかと思おもいました。私わたしたちは特とく別べつな才さい能のうもないごく普ふ通つうの人ひとで，大だい都と市しでの生せい活かつにも慣なれていなかったからです。でもエホバは，フィリピ 2章しょう13節せつの約やく束そく通どおりに行こう動どうしてくださいました。そこにはこうあります。「神かみはご自じ分ぶんの望のぞみを実じつ現げんさせるために皆みなさんを力ちからづけてくださいます。行こう動どうするための意い欲よくと力ちからの両りょう方ほうを与あたえてくださるのです」。

しばらくして私わたしたちはメデジンにある巡じゅん回かい区くで奉ほう仕しするように割わり当あてられました。初はじめにお話はなしした通とおりこの都と市しには暴ぼう力りょくがあふれていて，人ひと々びとはそれにすっかり慣なれてしまっていました。ある日ひ，聖せい書しょレッスンをしていた時ときに，訪ほう問もんしていた家いえの外そとで銃じゅう撃げき戦せんが始はじまりました。私わたしは椅い子すから転ころげ落おちそうになりましたが，レッスン生せいは落おち着ついて節せつを読よみ続つづけました。そして読よみ終おわると，「ちょっとすみません」と言いって外そとに出でていきました。少すこしすると，2人ふたりの子こ供どもを連つれて帰かえってきました。そして何なに事ごともなかったかのようにこう言いいました。「ごめんなさいね，子こ供どもたちが外そとにいたもんで」。

危き機き一いっ髪ぱつだったことも何なん度どかあります。ある日ひ，家いえから家いえの奉ほう仕しをしている時ときに，妻つまのシルッカが青あおざめた顔かおをして私わたしの方ほうに走はしってきました。妻つまが「銃じゅうで撃うたれそうになった」と言いうので，私わたしはびっくりしてしまいました。しかし後あとから分わかったのですが，銃じゅうを持もっていた男おとこが狙ねらっていたのはシルッカではなく，彼かの女じょの真ま横よこを通とおり過すぎた男だん性せいでした。

やがて，こうした危き険けんにどのように対たい処しょしたら良よいかが分わかってきました。同おなじような状じょう況きょうやもっと大たい変へんな経けい験けんをした地じ元もとの兄きょう弟だい姉し妹まいのたくましさからも，力ちからをもらいました。エホバがそうした兄きょう弟だい姉し妹まいを助たすけているのであれば，自じ分ぶんたちのことも助たすけてくださるはずだ，と考かんがえました。いつも地じ元もとの長ちょう老ろうたちのアドバイスをよく聞きいて，用よう心じん深ぶかくあり，後あとはエホバに任まかせることにしました。

一いっ瞬しゅんひやりとしたけれども実じつは危き険けんではなかった，という状じょう況きょうもありました。ある家いえを訪ほう問もんしている時ときに，外そとから2人ふたりの女じょ性せいが“けんか”をしている声こえが聞きこえてきました。私わたしはけんかは見みたくないと思おもったのですが，家や主ぬしがテラスに来くるようにと言いう ので行いってみました。実じつはその“けんか”は，2羽わのオウムが近きん所じょの人ひとたちの声こえをまねしたものだったのです。

1997年ねん，私わたしは宣せん教きょう訓くん練れん学がっ校こうの教きょう訓くん者しゃとして奉ほう仕しするように割わり当あてられました。 b これまで，こうした学がっ校こうに生せい徒ととして出しゅっ席せきできることをうれしく思おもっていましたが，まさか自じ分ぶんが教おしえる側がわになるとは思おもってもみませんでした。

後のちに私わたしは地ち域いき監かん督とくとしても奉ほう仕しし，その取とり決きめがなくなると，再ふたたび巡じゅん回かい奉ほう仕しを行おこないました。合ごう計けい30年ねん以い上じょうにわたって教きょう訓くん者しゃや旅りょ行こうする監かん督とくとしての奉ほう仕しを行おこない，たくさん素す晴ばらしい経けい験けんをさせてもらいました。でも，いつでも全すべてがうまくいっていたわけではありません。

私わたしはどちらかというと熱あつい人にん間げんです。こういう性せい格かくが，難むずかしい問もん題だいに対たい処しょするために役やく立だったこともあります。でも時とき々どき，会かい衆しゅうの物もの事ごとを正ただそうとして熱ねつが入はいり過すぎてしまいました。仲なか間まに対たいして厳きびしくなり過すぎずに愛あい情じょう深ぶかく接せっするように，と強つよくアドバイスしたこともあります。でも，後あとになって気き付づいたのですが，その点てんで努ど力りょくが必ひつ要ようだったのは私わたしの方ほうでした。（ロマ 7:21-23）

自じ分ぶんの失しっ敗ぱいでひどく落おち込こんだこともあります。（ロマ 7:24）ある時とき私わたしは，宣せん教きょう者しゃ奉ほう仕しをやめてフィンランドに戻もどった方ほうがいいと思おもう，とエホバに祈いのったことがありました。でも，その日ひの夜よるの集しゅう会かいで，自じ分ぶんの弱よわい部ぶ分ぶんと向むき合あいながら今いまの奉ほう仕しの割わり当あてにとどまるべきだ，ということがはっきり分わかりました。祈いのりにエホバがすぐに答こたえてくれたことを思おもい出だすと，今いまでも心こころが温あたたかくなります。私わたしが弱よわさを克こく服ふくできるようにエホバが親しん切せつに助たすけてくださったことを心こころから感かん謝しゃしています。

妻つまも私わたしも，エホバのおかげで長なが年ねん全ぜん時じ間かん奉ほう仕しを楽たのしむことができています。そのことに本ほん当とうに感かん謝しゃしています。また，愛あい情じょう深ぶかくて忠ちゅう実じつに支ささえてくれる妻つまをエホバが与あたえてくださったことにも感かん謝しゃしています。

私わたしはもうすぐで70歳さいになり，野や外がいの教きょう訓くん者しゃと旅りょ行こうする監かん督とくの奉ほう仕しが終しゅう了りょうします。でも，それでがっかりしたりはしません。なぜなら，エホバを賛さん美びする一いち番ばんの方ほう法ほうは，慎つつしみを持もってエホバに仕つかえ，心こころからの愛あいと感かん謝しゃを伝つたえることだと考かんがえているからです。（ミカ 6:8。マル 12:32-34）どんな奉ほう仕しをしているかに関かかわりなく，エホバを賛さん美びすることができるのです。

これまでいろいろな奉ほう仕しを楽たのしんできました。でもそうした奉ほう仕しができたのは，決けっして私わたしがほかの人ひとよりも何なにか優すぐれた点てんがあるからでも才さい能のうがあるからでもありません。ひとえにエホバの惜おしみない親しん切せつのおかげです。弱よわさや欠けっ点てんがある私わたしですが，エホバが助たすけてくださったおかげでいろいろな割わり当あてを果はたすことができました。失しっ敗ぱいもありましたが，エホバの力ちからを実じっ感かんしてきました。（コリ二に 12:9）