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世界展望

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火星探査機が抱える問題

昨年12月,マーズ・ポーラー・ランダーは火星の大気圏に突入したが,そのあとNASAはこの探査機との交信を再開することができなかった。わずか2か月ほど前にも,ランダーからの情報を地球に中継するはずだったマーズ・クライメット・オービターとの交信に失敗している。ランダーと交信できない理由は不明である。だが,オービターが失われた理由は,何よりもまず,探査機のナビゲーション・コマンドが一般に用いられているメートル法ではなく,ヤード・ポンド法だったことにある。この違いのためナビゲーション・データが正確に伝わらなかった。NASAの科学者たちは失敗に肩を落としているが,それでも目標を追いつづけるつもりでいるとCNNは報じている。その目標とは,「赤い惑星の気候や地質の歴史を知ること,生命のしるしを探すこと,有人探査の基礎を築くこと」である。

命取りになる食べ物

インドのケララ州で発行されているウィーク誌によると,インド西部のカッチ地方で,ある獣医は最近,一頭の病気の牛の胃袋からビニール袋を45㌔も取り除いた。ビニール袋のほかにも,布,やしの殻,針金の輪,ネジなどが見つかった。インドでは飼い主のいない牛はおもに残飯をあさって生きているため,捨てられたビニール袋は牛たちにとって危険なものになる。個人で飼っている牛でさえ,牧草地に行く途中で,よく道端のごみを食べる。獣医のジャデジャー博士は,牛にとって,ビニールを食べることは口蹄疫に次ぐ大きな問題だと言う。消化されない物が腹部に詰まると,牛は反芻することができなくなる。そのような牛はたいてい死ぬに任されている。ジャデジャー博士は靴屋から,死んだ牛の皮をはぐ際に胃の中に大量のビニールが見つかることを知らされ,こうした状況が分かった。

暴力的なテレビゲーム

カナダのブリティッシュコロンビア州にあるサイモン・フレーザー大学の研究者ブレント・スタフォードは,テレビゲームを行なう若者600人を対象にした調査をもとに,テレビゲームの多くが,「子どもたちに暴力を楽しむことを教え込んでいる」と警告した。「最も暴力的で臨場感のあるゲームを好む,病みつきのプレーヤーの中には,一晩で1,000人もの『化身』(画面上の登場人物)を『殺す』人もいる。それもたいてい,血だらけのリアルな場面においてである」と,マクレアンズ誌は言う。暴力的なテレビゲームは,プレーヤーの感情に働きかけて,「若者の思いを,暴力や殺人にさえ鈍感にならせる世界にのめり込ませる」ように作られていることが,この調査で実証された。年間170億㌦(約1兆8,700億円)もの収益を上げるテレビゲーム産業は,「映画とテレビを合わせたよりも多くの収益を上げている」。スタフォードは,子どもがどんなゲームで遊んでいるかを知るよう,また子どものどんな衝動的傾向にも気をつけるよう,親たちに強く勧めている。

戦争に関する報告

「現在世界では27の戦争が行なわれている」と「今日の心理学」誌は述べている。ストックホルム国際平和研究所の報告によれば,7年に及ぶ内戦で15万人のリベリア人が殺され,15年に及んだアンゴラの内戦で50万人が死亡している。トルコ国内の紛争では,1984年以来3万7,000人以上が殺され,スリランカにおける戦争では,1983年以来約6万人の命が奪われた。「第二次世界大戦終結以来,合計2,000万人以上 ― 大半が民間人 ― が戦争で命を落としている」と同誌は言う。「経済が絡んでいるため……今後とも戦争は避けられないものと思われる。戦争は地球上最大級の産業である。年間8,000億㌦[約88兆円]もの費用を要するが,獲得するものも莫大である」。同誌の社説は,「仲間の人間に対して非常に残酷な我々人類は,なんと奇怪な,奇怪な存在なのであろう」と述べている。国際連合は,今年を国際平和年と宣言した。

喫煙と失明

「失明の主な原因は喫煙である」と,キャンベラ・タイムズ紙は言う。オーストラリア国立大学とシドニー大学の研究者たちは,オーストラリア人の場合,50歳以上の失明の20%は喫煙が原因とみている。研究者たちは,喫煙者が加齢性黄斑変性症になる確率は非喫煙者に比べて2倍から5倍も高いことを示すオーストラリアや米国やヨーロッパでの研究結果を引き合いに出している。オーストラリア国立大学のウェイン・スミス博士は,たばこの箱に「失明の主な原因は喫煙」という警告文を載せるよう勧めた。

保護の怠慢と子ども虐待

朝日イブニングニュース紙によると,1998年度の日本における子ども虐待は,その前の年度に比べて30%も増加した。専門家たちはこの増加を,「母親たちが育児の全責任を負わされてストレスが増大している」ため,また虐待や放置の通告義務が「広くいきわたってきた」ためと見ている。読売新聞によると,日本では,家や車の中に置き去りにされて死亡する幼児の数も増加している。親がパチンコをしていたケースもある。最近まで,そうしたケースで親が刑事責任を問われることはほとんどなかった。だが今では,警察当局は悪質なケースに対して積極的に刑事責任を追及していきたいとしている。

HIVに感染している新生児

UPI通信の伝えるところによると,「アフリカの乳児全体の半数は,HIVつまりエイズへ進行するウイルスに感染した状態で生まれてくる」。国連合同エイズ計画の事務局長ピーター・ピオット博士によれば,アフリカには,HIVやエイズへの感染で平均寿命が25年短くなった地域が幾つかある。「HIV感染率が特に高いのは21か国であるが,それらはみなアフリカの国々である。そのうちの10か国では,人口の少なくとも10%が感染している」とも報告されている。世界のエイズ死亡者の約80%を占めているのはアフリカである。

ペダル・パワー

「動き回るための極めてエネルギー効率のよい方法の一つは,自転車かもしれない。自転車は,ペダル・パワーを使う上に,エネルギーをほとんど無駄にしない設計になっているからだ」と,ロイターは伝えている。ボルティモアのジョンズ・ホプキンズ大学の技師たちが,赤外線カメラを使って,コンピューター制御の自転車の動力伝達装置を調べた結果,チェーンが動くときあまり熱が発生しないことが分かった。ロイターによると,「技師たちは,チェーン駆動のエネルギー効率が98.6%であることが分かって驚いた。これは,前のスプロケットを回すのに必要な力の2%弱しか熱として消失されないということである」。「さまざまな条件下で,自転車のエネルギー効率が最も悪いときでも81%だった」。研究の主宰者ジェームズ・スパイサーは,「これには驚いた。このチェーン駆動の基本構造は100年以上も変わっていないのだからなおのこと驚きである」と述べた。

“空雨”

中国の新疆ウイグル自治区のトルファンでは,空雨として知られる自然現象が見られる。チャイナ・トゥデー誌によると,頭上を黒い雨雲が通過しても,地上は相変わらず暑く,乾燥していることがある。雨が空から落ちているように見え,手を高く上げて振ると雨を感じることさえある。ところが,トルファンの気候は非常に乾燥しているため,雨が降るより蒸発するほうが速い。それで,“空雨”は地上に落ちる前に蒸発してしまう。

消えつつある中国の文字

女書と呼ばれる,女性だけに分かる独特の文字が,中国南部の湖南省の村々で何世紀ものあいだ用いられてきた。女の子が学校教育を受けさせてもらえなかったころ,農家の女性たちがこの文字を発展させた。何万とある中国の表意文字に比べ,女書の文字は表音文字がおよそ700あり,優美な曲線や斜線で書かれる。ロンドンのサンデー・タイムズ紙によると,女書を考証した映画製作者の楊月清は,女書は「非常に女性的で美しい。……また布地に織り込まれたり,刺繍の模様にもされたりしていて,極めて絵画的である」と言う。女性たちは,女書で民間伝承を記録し,また自らの運命を歌や詩にした。1949年に中国で男女同権が認められてからは,女書を使う人が少なくなり,現在では,この古来の文字を書けることで知られている人はわずか3人しかいない。3人とも高齢の女性である。