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オリンピアからシドニーまで

オリンピアからシドニーまで

オリンピアからシドニーまで

オリンピックを世界で最も重要な運動競技会とみなす人は少なくありません。「これほど注目を集めるスポーツイベントはほかにない」と,ワールドブック百科事典(英語)は述べています。「幾百万という人々が競技場に足を運び,世界中の幾億という人々がテレビで見ている」のです。

オリンピック小史

オリンピックの起源は幾千年も前にさかのぼります。運動競技が死者の霊を喜ばせると信じていた古代ギリシャ人は,宗教とスポーツ競技を融合した幾つもの国家的な祭典を催しました。イストミア,ネメア,オリンピア,ピュティアなどの競技会がそうです。中でも,オリンピア競技会は最も重んじられていました。ギリシャ人に神々の王とみなされていたゼウスを崇める祭典だったからです。

初期オリンピア競技会の種目はただ一つ,競走だけだったようです。しかしやがて,戦車競走や持久力を試す過酷な競技など,他の競技も行なわれるようになりました。各地から人々がこの祭典につめかけました。それら訪れる人々の安全を図るため,競技会前後の期間中は戦争が禁じられ,休戦協定が実施されました。

ローマが覇権を握ると,オリンピア競技会は衰退し始めました。実際,運動競技を幾分さげすむローマ人も少なくありませんでした。例外は皇帝ネロでした。ネロは西暦67年にオリンピア競技会に出場し,参加したすべての種目で優勝しました。どうすればネロが喜ぶかを他の出場者たちは知っていたようです。それはともかく,古代オリンピックは西暦394年までに途絶えてしまいました。

オリンピックの復興

およそ15世紀のちのこと,ドイツ人考古学者たちが古代オリンピアの平原で発掘調査を行なうと,オリンピックへの新たな関心が沸き起こりました。その後,29歳のフランス人ピエール・ド・クーベルタン男爵がこの大会の復興を提唱します。こうして1896年に,近代オリンピックの第1回大会がアテネで開催されることになりました。その年以降,ごくまれな例外を除き,オリンピックは4年に1度開催されてきました。

今日,多くの人がオリンピックを心待ちにしています。オリンピックは今年,9月15日から10月1日までオーストラリアのシドニーで開かれる予定です。1万300人以上の選手が参加し,28競技,292種目,635のセッションが行なわれるでしょう。

しかし,近年,オリンピックは議論の的となっています。オリンピックの理想は危機に直面している,という声も少なからず聞かれます。オリンピックの舞台裏を見てみれば,その穏やかならぬ内情が明らかになるでしょう。

[3ページの図版のクレジット]

Scala/Art Resource, NY