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ハワイのルアウにいらっしゃいませんか

ハワイのルアウにいらっしゃいませんか

ハワイのルアウにいらっしゃいませんか

ハワイの「目ざめよ!」執筆員

花を連ねたレイ,フラダンス,風にそよぐヤシの木。ハワイと言えば,そうしたものが頭に浮かびます。それらを見るため,また世界的に有名なハワイ式宴会,ルアウに参加するために,世界中から大勢の人がハワイにやって来ます。 *

暖かく穏やかな夕暮れ。涼しい海風が吹き,ハワイの大きな夕日がゆっくりと太平洋に沈んでいきます。さあ,典型的なハワイのルアウを定期的に催しているホテルの一つに皆さんをご招待しましょう。男性は伝統的なアロハシャツを,女性はすてきなムームーを着て,皆さんはもうすっかりルアウの気分になっておられるようですね。早めに到着したので,料理を準備しているところを見に行くことにしましょう。

ルアウの会場に入ると,ティ・リーフ(センネンボクの葉)の腰みのを着けた若い女性がわたしたちを迎え,ひとりひとりにレイを掛け,渇いたのどを潤すトロピカル・ドリンクを出してくれます。観光や砂浜での日光浴で一日ずっと過ごしたあとの飲み物は,うれしいものです。目の前のテーブルには,ポイ,サツマイモ,ロミロミサーモンなど,ハワイではおなじみの食べ物が並んでいます。

見ると,食事をする場所から離れた所に土が盛ってあり,そこから湯気がのぼっています。腰布をつけた体格のよい男性数人がその土と幾重にも敷かれた植物の葉を注意深く脇へ移すのを見ていると,やがて,地中から豚の丸焼きが出てきました。それが今晩のルアウの主菜です。『これを食べるのだろうか。いいにおいがするけど,どう見ても,おいしそうじゃないし,衛生的でもなさそうだ』と思う方もいらっしゃるでしょう。でも,帰ろうとお考えになる前に,この料理の作り方を説明させてください。そうすれば,不衛生なところは何もないことが分かっていただけるでしょう。この一風変わった料理法が分かれば,ハワイ古来のこのおいしい料理を食べてみる気になりますよ。

イムとは何ですか

イムとは,先住のハワイ人がさまざまな食物を調理するのに使ったもので,簡単に言うと,地面を掘って作ったオーブンです。豚のほかに,魚,鶏や小型の鳥,またサツマイモ,タロイモ,パンノキの実,プディングなどもイムで調理しました。サツマイモやタロイモの葉も調理に使われました。

比較的小さな材料の場合は,ティ・リーフに包んで蒸し焼きにしたようです。そのような料理法をラウラウと言います。イムで調理することは“カルア”と呼ばれています。“カルア”とは字義的には「穴」という意味です。ですから,今晩のルアウの主菜はカルアピッグとして知られています。この調理法も,あとで分かりますが,蒸し焼きにほかなりません。

昔のハワイ人は,材料全部が入る大きさの穴を地面に掘りました。作業は,夕食に料理が出せるよう,たいてい早朝から始められました。穴の底に,大きなキャンプファイアをする時のような要領で,まきを並べます。火口とたきつけを入れ,3時間から4時間燃やせる量のまきを注意深く加えます。

垂直に立てた1本の棒の周りにまきを並べます。それから,その棒を取り除き,くすぶっている灰を穴の中に落とすことによって,火をつけます。火は,2本の棒をこすり合わせて起こしました。次いで,まきの上に滑らかな玄武岩の石を置きます。玄武岩を使うのは,熱しても破裂しないからです。使われるのは,こぶし大からボウリングのボールくらいの大きさの石で,沢山必要でした。調理の熱源になるのはその石とおき火だけだからです。石が真っ赤に焼けると,燃えさしのまきは取り除かれました。

石から灰を払い落としたあと,内臓を抜いて塩をした豚の腹や胸の中に石を幾つか詰め,完全に火が通るようにします。ニワトリの腹の中にも,比較的小さな円錐状の石を詰めます。残りの石とおき火は穴の底と内側に平らに敷きつめ,草とティ・リーフを積み重ねるか,バナナの葉で覆うかします。バナナの木の切り株を砕いて石の上にばらまくこともありました。そうすれば,高温のために食物が真っ黒焦げになるのを防げますし,食物を蒸し焼きにするための水分を補うこともできます。

十分な量の葉を敷いてから,豚やほかの材料をその上に載せ,さらに葉をどっさり使って覆います。次いで,カジノキの皮から作るタパ布か,ラウハラで織ったマットをかけます。土が入り込んで食物に付くことがないようにするためです。それから全体に土を厚くかぶせて,イムから蒸気が逃げないようにします。時には,イムが乾燥しないよう,土の上に水をまくこともありました。また,料理人が必要と思えば,中をくりぬいた竹の筒を土に差し込んで,水を加えることができるようにしておく場合もありました。

料理にかかる時間は,イムに入れた食材の量や種類,使った石の数など,さまざまな要素によって違いました。豚の場合,大きさにもよりますが,すっかり火が通るには数時間かかったでしょう。ころあいを見て,土,それからマット,そして葉を注意深く取り除くと,蒸し焼きになった肉が現われます。出来上がったものは容器に入れて冷まし,冷めた状態で供しました。焼けていない部分は切り取って,別の時に調理するか,直火で焼いたりゆでたりするなど,別の仕方で調理しました。

昔の人々は,火にかけられる調理器具がなかったので,水を入れた木の鉢に食材を入れ,そこへ真っ赤に焼けた石をほうり込んで煮ました。生の肉は,後ほど使うために塩漬けにして保存することもあったでしょう。料理は重労働だったので,食事を作るのは男たちの仕事でした。当然のことですが,イムは繰り返し使用されました。雨などをしのげる場所に作られることが多く,そこは天候の悪い時に使う常設の炊事場になりました。

現代のイム

現代のルアウでは,少なくともイムの使用については昔とあまり変わっていないことに気づかれるでしょう。カルアを使って料理すると,肉がそれこそ骨から外れてしまうほどになるので,豚を穴から取り出すときに形が崩れないよう,金網を用いることもあります。現在では,織物のマットやタパ布に代わって黄麻の布が使われています。このように小さな点で新しい工夫も見られますが,イムは,ハワイの文化が様々な変化を遂げる中で変わることなく生き続けてきました。

骨から肉を全部外し,塩をさらに加えて味を調えれば,カルアピッグの出来上がりです。さあ,ルアウを始めましょう。地面に敷いたこのマットに座って低いテーブルで食事をすることもできますし,いすのある洋式のテーブルにつくこともできます。どちらにしても,帰らないで宴会に参加してよかったとお感じになるに違いありません。

[脚注]

^ 3節 ルアウはもともと偽りの宗教の慣行と何らかの関係があったようですが,現在では単にハワイ式宴会を指す言葉になっています。ですから良心に照らして,ルアウに参加しても構わないと思うクリスチャンは少なくないことでしょう。

[27ページの囲み記事]

穴を掘る必要はありません

このおいしいハワイ料理を味わいたいなら,ハワイへ来て本場のルアウに参加するほかはないかもしれません。しかし,大体似たようなものでよければ,家の台所でもカルアピッグを作れます。

ここハワイでも,カルアピッグは食べたいけれど,イムで料理する時間がない,という人もいます。ですから,時間と手間を省くために,いろいろな工夫がなされてきました。豚を1頭丸ごと使う代わりに,ももかロースの塊で我慢します。脂肪を少な目にしたい時は,鶏肉や七面鳥の肉を使うこともできます。いずれにしても,リキッド・スモークと呼ばれる調味料を肉500㌘に対して大さじ1杯の割合で,肉全体に擦り込みます。そうすると,肉に薫製のような香りと味が付きます。

緑のティ・リーフが手に入るなら,肉をそれで包んでスロークッカーに入れます。そのようにすると,イムの蒸し焼きに近い味になります。スロークッカーがなければ,普通のオーブンでも作れます。肉をティ・リーフで包んだあと,できるだけ水分が失われないよう,アルミホイルでくるみます。オーブンは摂氏160度ぐらいの低い温度に設定し,内部まで十分に火を通します。肉が骨からすぐに外れるようでなければなりません。肉を割いて肉汁をかけ,しっとりさせます。さあこれで,ルアウに出す自家製カルアピッグのでき上がりです。

このハワイ料理を試食したら,あなたもハワイへ来て本物を食べたくなるかもしれません。

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赤いハイビスカス

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ポイ,サツマイモ,ロミロミサーモンなど,ハワイでおなじみの食べ物

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フラダンス

[クレジット]

Ron Dahlquist/SuperStock

[25ページの図版]

レイを用いる伝統的な歓迎方法

[26ページの図版]

“イム”からカルアピッグを取り出す