内容へ

目次へ

容姿の悩みが頭から離れないとき

容姿の悩みが頭から離れないとき

容姿の悩みが頭から離れないとき

鏡の中の自分を見ると,気になって直したいと思うところが何かしらあるものです。そこで,服装や髪を整えたり,軽く化粧直しをしたりして,元の活動に戻ります。自分の容姿に気を遣うのは普通のことで,当然と言えます。しかし中には,外見を極端に気にして,身体醜形障害と呼ばれる疾患になる人もいます。

「メルク・マニュアル 第17版 日本語版」(福島雅典 監修,日経BP社発行)は,身体醜形障害を次のように定義しています。「著しい苦痛や,社会的,職業的または他の重要な分野での機能に重大な障害を引き起こしている,外見の欠陥へのとらわれ」。 * この障害に悩まされる人は,ありもしない欠陥を想像したり,小さな欠点を大げさに考えたりして,自分は醜いと思い込むことがよくあります。

米国,南フロリダ大学のJ・ケビン・トンプソン教授は,身体醜形障害の人はそれほど多くないと見ており,「影響を受けているのは人口の1.0%ないし2.0%,また精神科の外来患者の10%ないし15%であろう」と述べています。ただし,「診断方法が向上しており,社会がますます外見に執着するようになっているためにこの障害は増加傾向にある,と一部の研究者たちは考えている」とも付け加えています。この疾患はどの年齢層の人にも影響を及ぼしますが,症状はたいてい十代の時に始まります。成人に関して言えば,発症率の男女差はないようです。これは,女性の患者が圧倒的に多い摂食障害とは大きく異なります。

身体醜形障害の人は通常では考えられないほど外見にとらわれているため,大抵の場合,強迫感にかられて鏡を何度も確認するようになり,社会的に孤立することさえあります。さらに悪いことに,「この障害による苦悩および機能障害は,入院の繰り返しや自殺行動につながりうる」と,「メルク・マニュアル」は述べています。美容整形に頼ろうとする人がいるのも不思議ではありません。とはいえ,身体醜形障害に関する本を書いたキャサリン・フィリップス博士はこう述べています。「なるべく美容整形を避けるように勧めています。手術をすれば元に戻らないし,身体醜形障害の人の大半は,どっちみち結果に満足しないからです」。 *

時折,非常に早い年齢で身体醜形障害を発症する人もいます。ジョージ・ストリート・ジャーナル誌 *(英語)は,ある6歳の男の子についてこう報告しています。「[その子は]自分の歯が黄ばんでいて,おなかが“太って”いて,髪形がおかしいと思い込んでいた。しかしだれの目にも,そうした“欠陥”は見受けられなかった。その子は毎朝1時間近くも髪の毛にブラシをかけ,髪形が“しっくり”こないと,頭を水の中に突っ込んでブラシをかけ直し,そのせいでよく学校に遅刻していた」。ある日,この子は病院の診療室に入ると,わざわざかがみ込み,いすのメッキ部分に映る自分の姿をチェックしていたとのことです。

自分の見方を世に支配されないようにする

グラビア雑誌,新聞,テレビのコマーシャルなどは,理想とされる体のイメージで,人々にまるで集中砲火を浴びせているかのようです。広告主の考えは単純明快です。これが普通だと言わんばかりのイメージを植えつけておけば,給料をつぎ込んででもそのルックスに合わせようとするはずだというわけです。それに仲間からのちょっとした圧力や,家族や友人からの軽はずみな言葉が追い打ちをかけると,容姿に関して平衡の取れた見方ができなくなることが往々にしてあります。 * もちろん,そのような平衡の欠けた見方が強迫性精神疾患とは全く次元の異なる問題という場合もあります。

美人やハンサムでなければだれも関心を払ってくれないと考えるのは,ゆがんだ見方で間違いでもあります。人は普通,外見で友達を選ぶわけではありません。確かに,最初のうちは見た目も一つの要素となり得ますが,友情のきずなを本当に強めるのは,人格,道徳規準,価値観です。わたしたちは皆,ある意味で本のようです。表紙が魅力的でも中身がつまらなければ,人はすぐに読むのをやめてしまうでしょう。他方,表紙がどうであれ内容が興味深ければ,手放す人はいません。ですから是非とも,自分の内なる特質に注意を向けてください。神の言葉 聖書も,そうするよう勧めています。―箴言 11:22。コロサイ 3:8。ペテロ第一 3:3,4

それに,考えてみてください。わたしたちの外見は年を取るにつれて変わるのではないでしょうか。もしも人生と友情と幸福が,若い時の容姿だけにかかっているのであれば,わたしたちは皆,何と惨めな将来を送ることになるのでしょう。しかし,それとは全く違う将来が可能です。どのようにでしょうか。

朽ちない美しさ

「白髪は,義の道に見いだされるとき,美の冠である」と,箴言 16章31節は述べています。エホバ神の目に,そしてエホバと同じ見方をするすべての人の目には,神への奉仕を行ないつつ年を重ねる人の魅力は薄れることがありません。それどころか,熱心さと敬虔な専心の歩みゆえに,白髪とともに,冠のようなこの上ない美を身につけることになるのです。そのような人は貴重な存在であり,わたしたちの愛と深い敬意を受けるに値します。―レビ記 19:32

さらにエホバは,ご自分の約束した来たるべき新しい世で,老若を問わず,忠節な人すべての受け継いだ罪の作用を逆転させます。自分の体が日ごとに良くなるのを見て感じ,ついには身体面での完全さの極みに達することができるのです。(ヨブ 33:25。啓示 21:3,4)まさに胸の躍る見込みではないでしょうか。あなたも,そのような経験をしたいと思われませんか。では,本当に意味のある美しさに焦点を合わせて,世の浅はかで冷酷な風潮に自分の見方を支配されないようにしましょう。そうするなら,もっと幸福で魅力的な人になれるのです。―箴言 31:30

[脚注]

^ 3節 オーストラリア医学ジャーナル誌(英語)は,「身体的な外見へのとらわれは,複数の精神疾患に見られる一般的な症状である」と述べています。うつ病,強迫性障害,そして拒食症などの摂食障害にもこの症状が見られます。ですから,身体醜形障害であると診断するのは容易ではありません。

^ 5節 本誌の2002年8月22日号,「若い人は尋ねる…美容整形を受けるべきだろうか」という記事をご覧ください。当然ながら,深刻な精神疾患を抱えている人は精神衛生の専門家に相談する必要があるでしょう。

^ 6節 米国ロードアイランド州ブラウン大学の刊行物。

^ 8節 さらに情報を得たい方は,エホバの証人の発行した「若い人が尋ねる質問 ― 実際に役立つ答え」という本の「容姿はどれほど大切なのだろうか」という章をご覧ください。