ぴりりと辛いキムチはいかが?
ぴりりと辛いキムチはいかが?
韓国の「目ざめよ!」執筆員
韓国の人は辛いものが大好きです。中でもいちばん好きなのがキムチでしょう。多くの韓国人にとって,キムチがない食事なんて物足りないどころか,考えられません。キムチとはいったいどんな食べ物でしょうか。
キムチは世界に数多くある漬物の一つです。ドイツのサワークラウト,中国の泡菜<パオツァイ>,日本のお新香,インドのアチャール,西洋のピクルスなどに似ています。いろいろな種類があり,どの種類のキムチにも体に不可欠なビタミンだけでなく,初めて食べる人から必ずと言っていいほど強烈な反応を引き出す,独特の風味があります。キムチが嫌いな人は,にんにくや赤とうがらしがきつすぎると言います。一方,好きな人はその刺激がたまらないと言い,つい箸が進むのです。
人々が食事に香辛料を好んで加えるようになったので,キムチは世界中で知られるようになりました。西洋の軍人,移民労働者,1988年のソウルオリンピックに来た大勢の人がキムチの味を試しました。その結果,キムチは今や一部の国でファストフード業界に受け入れられつつあり,ハンバーガー,タコス,焼きそば,すし,ホットドッグなどに並ぶ食品となっています。韓国の航空会社でなくても,キムチを機内食に出すところがあります。日本のスーパーでは,韓国で製造された小さな容器入りのキムチが3年間に1,000万個も売れました。では,キムチはどのようにして作るのでしょうか。
発酵食品
まず,野菜を塩漬けにします。すると,歯触りが良くなります。塩はほとんどの有害な微生物の成長を抑え,有益な微生物の増殖を助けます。そうした発酵過程によって,アミノ酸と乳酸が生じます。それでキムチには,野菜の本来の味とはかなり違う独特の味があるのです。
次に,先ほどの材料と薬味を混ぜ合わせます。キムチのかめに入れるものは,にんにくや赤とうがらしだけではありません。他の多くの材料も ― ありふれたものからちょっと変わったものまで ― 使われます。ねぎ,にんじん,にら,しょうが,ごま,梨,牡蠣,小エビの塩辛,栗,あわび,松の実,海草などです。
キムチは副菜です。どんなにキムチが好きでも,それだけを食べることはめったにありません。キムチは他のもの,特にご飯と一緒に食べるものです。韓国の人にとって,キムチとご飯は,他の文化のパンとバター,あるいはベーコンと卵と同じほどよく合うのです。淡泊なご飯の味に,塩辛いキムチの味はぴったりです。
ビタミンとミネラルが豊富
健康食品の需要が増大したため,キムチの人気も高まっています。最近まで,キムチの栄養価はその味のために見過ごされていました。しかし,野菜を多く取ることが強調されるようになって,キムチは今では滋養分に富む食品として見直されています。例えば,
白菜,大根,赤とうがらしはビタミンAが豊富です。赤とうがらしの粉末にはビタミンCがたっぷり含まれています。にらの青い部分にはビタミンAとCが含まれています。さらに,白菜の繊維は消化を助けます。キムチに加えられる種々の塩辛には,野菜にふつう含まれていない,たんぱく質とアミノ酸が豊富です。キムチに最もよく使われる海産物の牡蠣には相当量のカルシウム,鉄分,グリコーゲン,ビタミン,必須アミノ酸が含まれています。
キムチの種類は100以上あると言われています。主な材料,副材料,作られている地域,発酵期間,漬ける際の温度や湿度などによって違ってきます。おいしいキムチを作る秘訣は母親から娘へと受け継がれ,多くの家族にとって自慢の種となっています。実際,キムチ作りが料理の腕まえをはかる尺度となることは珍しくありません。
新しいライフスタイルに合ったキムチ
今日では,家でキムチを作る必要はなくなりました。温室では野菜が一年中栽培されていますし,工場で作られたキムチは大抵どこの食料品店にも置いてあります。また,人が密集した現代の集合住宅
で大量のキムチを作るのは実際的ではありません。少量であれば,かめよりも冷蔵庫のほうが保存しやすいこともあります。キムチは試練となる状況を生き抜いてきました。長い冬だけでなく,何世紀ものあいだ,人々の変わりゆくライフスタイルを生き抜いてきたのです。今後もそれは変わらないでしょう。キムチの味を試してみませんか。においが強烈だからといって,ためらわないでください。100種類以上あるキムチの中には,きっとお口に合うものがあるでしょう。「マシッケ ドゥセヨ!」(韓国語で,「ぜひご賞味ください!」)。
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冬のキムチを作る
冷蔵庫がなかった時代,気温が零度近くまで下がる朝鮮半島の長い冬を越えるには,長期保存がきく食物を作る必要がありました。キムチがその答えでした。大量のキムチを作ることをキムジャンと言います。キムジャンのシーズンは11月の終わりごろから12月の半ばまででした。
大家族が一緒に住んでいたころ,キムジャンに100個もの白菜を使うこともありました。さまざまな種類のキムチを作るので,他の材料も膨大な量になることがありました。時には家族や友人や近所の人が集まって,ある家でキムジャンを手伝い,それが終わると全員で次の家に行ってそこでも同じようにしました。今でも多くの企業はこの時期になると社員に“キムチ・ボーナス”を出し,冬のキムチの材料を買うのに必要な多額の費用を賄っています。
大量のキムチをどのようにして保存したのでしょうか。瓶やかめに入れて保存しました。キムジャンの1か月前,かめは地中に埋められました。薬味と一緒にしたあとの白菜のキムチをかめにきちんと入れた後,重石で押さえて,ふたをしました。陶器のかめは通気性に優れていたので,キムチは長くもちました。
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かめからキムチを出しているところ
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ぴりりと辛いキムチ
基本材料
白菜 …… 500g
塩 …… 大さじ2
水 …… 1,000cc
熱湯 …… 500cc
薬味
にんにく(みじん切り) …… 大さじ1
しょうが(みじん切り) …… 大さじ1
ねぎ(粗みじん切り) ……… 大さじ1
赤とうがらし(みじん切り) … 小さじ2
砂糖 …………………………… 小さじ2
塩 ……………………………… 大さじ1
作り方: 白菜の葉をはがし,塩をふる。水を注ぎ,冷暗所に8時間,あるいは一晩おく。白菜をよく洗い,余分の水分を絞る。薬味に熱湯を加え,よく混ぜる。白菜の葉と一緒にし,大きなガラスのボウルに入れる。きちんと入れるために,必要なら葉を半分に切る。ラップをかぶせ,2日ほど冷暗所におく。水切りをし,一口サイズに切る。瓶に入れて,出来あがり。
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キムチの主な材料として,薄切りにした大根,丸ごとの大根,きゅうり,白菜などがよく使われる