家族のために | 結婚生活
許すには
現実の問題
夫婦で言い争いになると,よくどちらかが過去のことを持ち出し,ずっと前に解決したはずの不平不満を並べ立てます。そうなるのは,夫婦の片方あるいは両方が,許すことを知らないからかもしれません。
許すことは習得できます。ではまず,夫婦で許し合うことが難しいのはなぜかを考えてみましょう。
なぜそうなるのか
力。配偶者に対してある種の力を保っておくために許さない,という人もいます。口論になった時に,過去の出来事を切り札として使って優位に立とうとするのです。
恨み。感情を害された時の心の傷は,癒えるまでに時間のかかる場合があります。口では「許す」と言っても,まだ恨みを抱いていて,仕返ししたいとさえ思っているかもしれません。
失望。結婚生活は夢のようなロマンチックなものになる,と思い込んでいた人もいます。そのため,意見の不一致が生じると,『“理想の夫婦”なんだから,異なった見方をするなんてあり得ない』と考え,一歩も譲りません。現実離れした期待を抱いていると,落ち度が目につき,許しにくくなりがちです。
誤解。許すとどうなるかについて誤解しているために許そうとしない,という人も少なくありません。例えば,次のような誤解があります。
許したら,過ちを大目に見ていることになる。
許したら,起きた事を忘れなければならない。
許したら,今後もまた嫌なことをされる。
しかし,許したとしても,そのようなことにはなりません。それでも,許すことは難しい場合があります。夫婦という親密な間柄では特にそうです。
どうすればよいか
許しに関係している事柄を理解する。聖書の「許す」という語には「手放す」という意味もあります。ですから,許すとは必ずしも,起きた事を忘れなければならないとか,過ちを大目に見なければならない,というわけではありません。二人とも幸福でいられるよう単にその件から手を引くだけのことを意味する場合もあるのです。
許さないとどうなるかを覚えておく。恨みを抱くと,結婚生活がうまくゆかなくなるだけでなく,うつ病や高血圧など身体面や感情面の様々な問題を抱える危険が大きくなる,と言う専門家もいます。聖書が,「互いに親切にし,優しい同情心を示し,……互いに惜しみなく許し合いなさい」と述べているのは,もっともなことです。―エフェソス 4:32。
許すならどんな良いことがあるかを覚えておく。進んで許す気持ちがあれば,夫婦が互いに,過ちの“記録”をつけ合うのではなく,何事も善意に解釈することができます。そうすると,悪感情の生じにくい雰囲気になり,愛を育んでゆけます。―聖書の原則: コロサイ 3:13。
現実的な見方をする。配偶者の人となり,つまり欠点も含めてすべてを受け入れるなら,許しやすくなります。「結婚の絆を守る」(英語)という本には,こう述べられています。「自分が得られなかったもののことばかり考えると,得られたものすべてを忘れてしまいがちである。あなたはこれまでの人生を振り返って今どちらのことをじっくり考えたいだろうか」。自分も含めだれも完全な人はいない,ということを忘れてはなりません。―聖書の原則: ヤコブ 3:2。
理性的になる。配偶者の言ったことやしたことで腹が立ったら,こう考えてください。『本当にそれほど重大なことだろうか。謝ることを求める必要があるのだろうか。ただ見過ごして済ませることはできないだろうか』。―聖書の原則: ペテロ第一 4:8。
必要なら,話し合う。何に腹が立ったのか,またなぜそういう気持ちになったのかを穏やかに話します。動機を悪く言ったり,決めつけた言い方をしたりしてはなりません。そうするなら,相手は自己弁護するようになるだけだからです。単に,相手の言動によってどんな気持ちになったかを説明するだけにしましょう。