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聖書の実際に教えている事柄を教える

聖書の実際に教えている事柄を教える

聖書の実際に教えている事柄を教える

「すべての国の人々を弟子とし,……教えなさい」。―マタイ 28:19,20

1 どれほど多くの人々が聖書を入手できるようになっていますか。

エホバの言葉 聖書は,世界の数ある書物の中でも非常に古いものであり,極めて広く配布されています。聖書は,一部だけのものも含めると,すでに2,300以上の言語に翻訳されています。世界人口の90%余りが自分の母語で書かれた聖書を入手できます。

2,3 (イ)聖書の教えについて混乱が見られるのはなぜですか。(ロ)これからどんな点について考えますか。

2 幾百万という人々が,毎日,聖書を読んでいます。全巻を何回となく通読した人もいます。幾千もの宗教グループが自分たちの教えは聖書に基づいていると唱えていますが,聖書が何を教えているかについて,意見は一致していません。その混乱に拍車をかけているのが,同じ宗派の信者の間に見られる根強い不一致です。聖書とその起源や価値に疑念を抱いている人もいれば,単に誓約を交わす時や法廷で真実を語ると誓う時に用いるだけの,聖なる書とみなしている人も少なくありません。

3 実のところ,聖書には人類に対する神の力強い言葉すなわち音信が収められています。(ヘブライ 4:12)ですから,エホバの証人であるわたしたちは人々に,聖書の教えている事柄を知ってほしいと思います。それゆえに,イエス・キリストが「行って,すべての国の人々を弟子とし,……教えなさい」と追随者たちに命じて与えた任務を,喜んで遂行しています。(マタイ 28:19,20)公の宣教奉仕をしていて出会う,心の正直な人たちは,世界じゅうに広まっている宗教上の混乱に当惑しており,創造者についての真理や人生の意義について聖書が何と述べているのかを知りたいと思っています。それで,多くの人が関心を持っている,三つの点について考えましょう。(1)神は人間のことを気遣っておられるか,(2)人間がこの地上に存在しているのはなぜか,(3)人は死ぬとどうなるか,という点です。それぞれについて,まず宗教指導者の誤った見解に注目し,それから聖書が実際にどう教えているかを見てゆきます。

神は気遣っておられるか

4,5 人々が神は気遣ってくれていないと考えるのはなぜですか。

4 まず,神は人間のことを気遣っておられるのか,という点から始めましょう。残念なことに多くの人が,神は気遣っていない,と考えています。なぜでしょうか。一つの理由は,世界じゅうに憎しみ,戦争,苦しみが見られることにあります。『もし本当に気遣っているのであれば,神はそのような悲惨なことが起きないようにするはずだ』と考えるのです。

5 人々が神は気遣ってくれていないと考えるもう一つの理由は,宗教指導者たちがそう思わせてきたことにあります。悲惨なことが起こると,僧職者はしばしば何と言うでしょうか。自動車事故で二人の幼子を亡くした母親に,ある牧師は,「それは神の御旨だったのです。神は,さらに二人の天使を必要とされたのです」と言いました。そのような僧職者は実際には,悪いことが起こるのは神のせいだ,と言っていることになります。しかし,イエスの弟子ヤコブは,こう書いています。「試練に遭うとき,だれも,『わたしは神から試練を受けている』と言ってはなりません。悪い事柄で神が試練に遭うということはありえませんし,そのようにしてご自身がだれかに試練を与えることもないからです」。(ヤコブ 1:13)悪い事をエホバ神が引き起こすなどということはありません。実際,「まことの神が邪悪なことを行なったり……することなど決してない」のです。―ヨブ 34:10

6 この世界に見られる悪や苦しみの背後にいるのはだれですか。

6 では,悪や苦しみがこれほど多いのはなぜでしょうか。一つの理由は,人類一般が神の義にかなった律法と原則に従うことを望まず,支配者としての神を退けてきたことにあります。人間は神の敵対者サタンにそれと知らずに従ってきました。「全世界が邪悪な者の配下にある」からです。(ヨハネ第一 5:19)この事実を知れば,悪い状態がなぜ存在しているのかを理解しやすくなります。サタンは邪悪で,憎しみを抱いており,欺きの名手であり,残酷です。ですから,その支配者の性格が世界に反映されているのは当然でしょう。多くの悪が見られるのも不思議ではありません。

7 人が苦しみに遭う原因として,どんなことがありますか。

7 また,人間の不完全さも,人が苦しみに遭う原因の一つです。罪を受け継いでいる人間には支配的立場を得ようとする傾向があり,その結果しばしば戦争や抑圧,苦しみが生じます。伝道の書 8章9節には,「人が人を支配してこれに害を及ぼした」とあり,まさにそのとおりです。さらに,「時と予見しえない出来事」も,苦しみの原因になります。(伝道の書 9:11)人がたまたま悪い時に悪い場所にいて災難に遭う,というのはよくあることです。

8,9 エホバが本当に気遣ってくださっていることは,どうして分かりますか。

8 こうして,苦しみをエホバが引き起こしているわけではないことが分かると,ほっとします。それにしても,わたしたちの生活の中で生じている事柄を神は本当に気にかけてくださっているのでしょうか。うれしいことに,確かに気にかけておられます。人間の悪い歩みをなぜ許してきたのかを,霊感のもとに書かせたみ言葉を通して告げることにより,エホバは気遣いを示しておられるのです。神が悪を許してきた理由には,二つの論争が関係しています。神の主権をめぐる論争と人間の忠誠をめぐる論争です。エホバは全能の創造者なのですから,苦しみを許している理由を人間に告げる義務などはありません。それでも告げてくださるのは,わたしたちを気遣っておられるからなのです。

9 神がわたしたちを気遣っておられる証拠は,ほかにもあります。神は,ノアの時代に地に悪が満ちた時,「その心に痛みを覚えられ」ました。(創世記 6:5,6)今の時代は違うのでしょうか。いいえ,違いません。神は変わることがないからです。(マラキ 3:6)今も,不公正を憎み,人々の苦しみを見て辛く感じておられます。神は間もなく,人間の支配と悪魔の影響による害を一掃される,と聖書は教えています。これは,神がわたしたちを気遣っておられる,納得のいく証拠ではないでしょうか。

10 エホバは人間の苦しみについてどう感じておられますか。

10 宗教の指導者は,人間の経験する悲惨な事柄は神のご意志であると言うとき,神について誤り伝えていることになります。しかし実際はその反対で,エホバは人間の苦しみを終わらせることを強く願っておられます。「神はあなた方を顧みてくださる」と,ペテロ第一 5章7節は述べており,これこそ聖書が実際に教えていることなのです。

人間がこの地上に存在しているのはなぜか

11 人間がこの地上に生存している理由について,世の諸宗教はしばしばどんなことを言いますか。

11 では次に,多くの人が疑問に思う,二つ目の点について考えましょう。人間がこの地上に存在しているのはなぜか,という点です。世の諸宗教はしばしば,人間にとって地上は仮の住まいにすぎない,と答えます。地球を単に,人間がほかの領域で生きるようになる過程で立ち寄る所,もしくはそのための足掛かりとみなしているのです。神はいつの日かこの惑星を滅ぼされる,という偽りを教える僧職者もいます。多くの人々はそのような教えに影響されて,結局いつかは死ぬのだから,楽しめるうちに十分楽しもう,と考えるようになりました。では,人間がこの地上に存在している理由について聖書は実際に何を教えているでしょうか。

12-14 聖書は,地球と人類に対する神の目的に関して,何を教えていますか。

12 神は,この地球と人類に対する素晴らしい目的を持っておられます。「[地球]をいたずらに創造せず,人が住むために形造られ」ました。(イザヤ 45:18)それだけでなく,エホバは「地の基をその定まった場所に置かれました。それは定めのない時に至るまで,まさに永久によろめかされることがありません」。(詩編 104:5)地球と人類に対する神の目的についてそれらの点を知れば,人間が地上に存在している理由も分かってきます。

13 創世記の1章と2章は,エホバが地球を人間の住まいとして整えるに当たって細かな配慮を払われたことを示しています。地球にかかわる創造の期間の終わりには,すべてのものが『非常に良い』状態にありました。(創世記 1:31)神は,最初の男女アダムとエバを美しいエデンの園に置き,良い食物を豊かに供給されました。最初のこの人間夫婦は,「子を生んで多くなり,地に満ちて,それを従わせよ」と命じられました。二人は完全な子どもたちをもうけ,住まいである園の境界を広げていって全地が楽園となるようにし,動物たちを愛情深く従わせることになっていました。―創世記 1:26-28

14 完全な人間家族を地上にとこしえに住まわせることが,エホバの目的です。「義なる者たちは地を所有し,そこに永久に住むであろう」と,神の言葉は述べています。(詩編 37:29)そうです,人類は地上の楽園<パラダイス>で永遠の命を享受することになっていました。それが神の目的であり,聖書が実際に教えている事柄なのです。

人は死ぬとどうなるか

15 人は死ぬとどうなるのかという点について,世界のほとんどの宗教はどんなことを教えていますか。

15 では次に,多くの人が知りたいと思う三つ目の点,すなわち,人は死ぬとどうなるのかという疑問を取り上げましょう。世界のほとんどの宗教は,人の中にある何かが体の死後も生き続ける,と教えています。中には,神は悪人を火の燃える地獄で永久に苦しめることによって罰する,ということを今なお固く信じている宗教グループもあります。しかし,その考えは真実でしょうか。聖書は死について実際には何を教えていますか。

16,17 聖書によれば,死んだ人はどんな状態にありますか。

16 神の言葉はこう述べています。「生きている者は自分が死ぬことを知っている。しかし,死んだ者には何の意識もなく,彼らはもはや報いを受けることもない」。死んだ人は,『何の意識もない』のですから,聞く,見る,話す,感じる,考えるといったことはできません。もはや報いつまり報酬を受けることもありません。どうして報酬を得ることなどできるでしょうか。死んだ人はどんな仕事も行なえないのです。それどころか,「その愛も憎しみもねたみも既に滅びうせ(て)」います。どんな感情も表わすことはできません。―伝道の書 9:5,6,10

17 聖書がこの点について述べている事柄は,単純明快です。人が死後もどこかで生き続ける,ということはありません。輪廻を信じる人たちは,死ぬときに体を離れて生き続ける何かがあり,それが別の体に生まれ変わると言いますが,実はそのようなものはないのです。そのことは次の例えで説明できるでしょう。わたしたちの命は,ろうそくの炎のようです。炎は,消えるときにどこかへ行くわけではありません。存在しなくなるだけです。

18 聖書研究生は,死んだ人には意識がないということを学ぶと,どんな結論を導き出せますか。

18 単純ながら強力なその真理が何を意味するか,考えてみてください。聖書研究生は,死んだ人に意識はないということを学ぶとすぐに,先祖が生前どれほど恨みを抱いていたとしても子孫を悩ませることはできない,という結論を下せるはずです。また,次のこともすぐ理解するはずです。亡くなった家族は,もはや聞く,見る,話す,感じる,考えるといったことができない,ということです。ですから,煉獄で耐え難い寂しさを味わうことも,火の燃える責め苦の場所で苦しむこともあり得ないのです。しかし聖書の教えによれば,神に記憶されている死んだ人々は復活することになっています。なんと素晴らしい希望でしょう。―ヨハネ 5:28,29

活用したい新しい本

19,20 クリスチャンであるわたしたちにはどんな責任がありますか。特に宣教奉仕で用いるために準備されたのは,聖書研究用のどんな手引き書ですか。

19 ここでは,多くの人が疑問に思う,三つの点だけについて考えてきました。どの点についても,聖書の教えは明確かつ率直です。聖書の教えを知りたいと思う人たちにそのような真理を伝えるのは,本当に喜びです。しかし,重要な質問はほかにもたくさんあり,心の正直な人は納得のゆく答えを必要としています。クリスチャンであるわたしたちには,そのような質問の答えを知るよう人々を助ける責任があります。

20 しかし,聖書に収められている真理を明快に,また心に訴える仕方で教えるのは,容易なことではありません。それで,その課題に取り組む助けとして,「忠実で思慮深い奴隷」は,わたしたちがクリスチャンとして特に宣教奉仕で用いるための本を準備しました。(マタイ 24:45-47)224ページから成るこの本の表題は,「聖書は実際に何を教えていますか」というものです。

21,22 「聖書は実際に何を教えていますか」という本には,注目すべきどんな特色がありますか。

21 2005年から2006年にかけて開かれた,エホバの証人の「敬虔な従順」地域大会で発表されたこの本には,注目すべき様々な特色があります。例えば,家庭聖書研究を始めるのに大変役立つことが実証されている,5ページから成る前書きがあります。あなたもきっと,この前書きに載せられている絵や聖句を使えば話し合うのは簡単だ,とお感じになるでしょう。また,この前書きにある資料を用いて研究生に,聖書の章と節の探し方を示すこともできるでしょう。

22 この本の文体は,簡潔で明快です。ふさわしい箇所では,これは自分に関係があると感じられるように,研究生の心を動かす努力が払われています。どの章にも,初めに幾つかの導入のための質問が挙げられており,終わりに「聖書は何を教えていますか」という囲みがあります。その囲みには,導入部の質問に対する聖書の答えが記されています。この出版物に載せられている適切な挿絵と説明文,また例えは,研究生が新しい考えを把握するのに役立ちます。本文は非常に簡潔に書かれていますが,巻末には付録があり,研究生がさらに情報を必要とする場合に,14の大切な論題を掘り下げて調べることができます。

23 『聖書の教え』の本を用いた聖書研究に関して,どんなことが提案されていますか。

23 『聖書の教え』の本は,教育程度や宗教的背景が様々に異なる人々を教えるのに役立つように工夫されています。もし研究生が聖書について何も知らない人であれば,一つの章を2回以上に分けて学ぶ必要があるかもしれません。資料をざっと扱うのではなく,研究生の心を動かすように努めてください。本の中で使われている例えが理解できないという場合には,分かりやすく説明するか,代わりに別の例えを使ってみてください。よく準備して,この本を効果的に用いるよう最善を尽くすとともに,「真理の言葉を正しく扱う」ことができるように神の助けを祈り求めましょう。―テモテ第二 2:15

貴重な特権に感謝する

24,25 エホバはご自分の民にどんな貴重な特権を授けておられますか。

24 エホバはご自分の民に貴重な特権を与えておられます。ご自分についての真理を学べるようにしてこられました。わたしたちはその特権を,決して当たり前のものと考えてはなりません。何と言っても,神はご自分の目的をごう慢な人たちからは隠し,謙遜な人に啓示してこられたのです。この点に関して,イエスはこう言いました。「天地の主なる父よ,わたしはあなたを公に賛美します。あなたはこれらのことを賢くて知能のたけた者たちから隠し,それをみどりごたちに啓示されたからです」。(マタイ 11:25)宇宙主権者エホバに仕える謙遜な者の一人と数えられることは,類まれな誉れです。

25 また,神はわたしたちに,ご自分のことを他の人々に教える特権も与えてくださっています。忘れてはならないことですが,神は,ご自分について偽りを教えてきた人々によって誤り伝えられているのです。ですから,多くの人はエホバについて全く間違った印象を抱き,冷淡で無慈悲な神と考えています。そうした誤解を正すことに,あなたは進んで,そうです,ぜひとも貢献したいと思っていますか。あらゆる場所の心の正直な人に,神についての真理を知ってほしい,と思いますか。ではぜひとも,幾つもの非常に重要な点について聖書が述べている事柄を熱心に宣べ伝えて教えることにより,敬虔な従順を実証してください。真理を探し求めている人たちは,聖書の実際に教えている事柄を学ぶ必要があるのです。

どのように答えますか

● 神が気遣ってくださっていることは,どうして分かりますか

● 人間がこの地上に存在しているのはなぜですか

● 人は死ぬとどうなりますか

● 『聖書の教え』の本のどんな特色が特に優れていると思いますか

[研究用の質問]

[22ページの図版]

聖書は苦しみが終わることを教えている

[クレジット]

Top right, girl: © Bruno Morandi/age fotostock; left, woman: AP Photo/Gemunu Amarasinghe; bottom right, refugees: © Sven Torfinn/Panos Pictures

[23ページの図版]

義人は楽園<パラダイス>で永久に生きる