寄付はどのように使われているか

一番大切な本を作る

一番大切な本を作る

2021年1月1日

 「19年間ずっと待っていました」。何を待っていたのでしょうか。ベンガル語の「クリスチャン・ギリシャ語聖書 新世界訳」です。母語の「新世界訳聖書」が発表されると,大勢の人が同じような感想を言います。では,「新世界訳」の翻訳と生産はどのように行われているのでしょうか。

 まず,統治体の執筆委員会の指示の下,翻訳チームが編成されます。聖書の翻訳にはどれくらいの期間がかかりますか。ニューヨーク州ウォーウィックの翻訳サービス部門で奉仕するニコラス・アラディス兄弟はこう話しています。「いろんな要素が関係しています。プロジェクトで奉仕できる翻訳者がどれくらいいるか,言語がどれほど複雑か,一般の読者が聖書時代の文化をどれほどよく知っているか,言語の地域差がどれほどあるかなどです。平均すると,ギリシャ語聖書を翻訳するのに1年から3年,聖書全体では4年かそれ以上かかります。手話の場合はもっと長い時間がかかります」。

 聖書翻訳のプロジェクトに関わるのは翻訳チームだけではありません。住んでいる国など背景がさまざまな人たちがこのプロジェクトに無報酬で参加します。その人たちは訳文を読んで感想を述べます。翻訳者たちは寄せられた意見を参考に,正確で分かりやすく心に響く訳の聖書に仕上げます。聖書翻訳のトレーニングに携わる南アフリカの兄弟はこう言います。「翻訳者たちはエホバと読者に対して重い責任を感じています」。

 翻訳が終わると,聖書は印刷され,製本されます。印刷と製本には少なくとも10種類の材料が必要です。紙,インク,カバー素材,接着剤,芯紙,銀箔(ぎんぱく),しおり,花布(はなぎれ),表紙の背紙,キャッピング素材(繊維質の補強材)です。2019年,聖書の生産に必要なこれらの材料だけで2000万ドル(約21億2000万円)以上かかりました。印刷施設の奉仕者たちは聖書の生産と発送のために,その年合計30万時間以上働きました。

「聖書は私たちが生産する出版物の中で一番大切なものです」。

 聖書の生産にこれほど多くの時間とお金をかけるのはどうしてでしょうか。国際印刷部門のジョエル・ブルー兄弟はこう言います。「聖書は私たちが生産する出版物の中で一番大切なものです。それで,良い体裁の本にして,私たちが崇拝する神をたたえ,伝えているメッセージの品位を高めたいと思っています」。

 「新世界訳聖書」は普通版以外にも,読者の必要に合わせた特別なものが生産されています。例えば,点字版の「新世界訳聖書」は10の言語で入手できます。点字版の聖書1巻を打ち出すのに8時間かかることもあります。本に厚みがあるので,全巻を書棚に並べると2.3メートルにもなります。また,ペーパーカバーの本しか持ち込めない刑務所にいる受刑者のための聖書も生産しています。

 「新世界訳聖書」は読者に大きな影響を与えます。コンゴ民主共和国のトンブという場所にはルバ語の会衆があります。トンブはコンゴの首都から1700キロほどの道のりです。以前,その会衆が使える聖書は1冊しかなく,古いルバ語で書かれていました。集会のプログラムを扱う兄弟たちは準備のために,その1冊の聖書を順番に回して使っていました。でも2018年8月,全巻そろった現代ルバ語の「新世界訳聖書」を会衆みんなが入手できるようになりました。

 ドイツ語を話す姉妹は,改訂されたドイツ語の「新世界訳聖書」についてこう言っています。「以前は『聖書を読まないといけない』と思っていましたが,今では『もっと読む時間をいつ取れるだろう』と考えるようになりました」。ある受刑者はこう書きました。「『新世界訳聖書』を受け取って考え方が変わりました。『新世界訳』を読んで初めて,聖書を十分に理解できるようになりました。エホバの証人についてもっと知りたいです。それと,どうすればエホバの証人になれるか教えてほしいです」。

 聖書の生産は寄付によって支えられています。このことに「新世界訳聖書」の読者は感謝しています。世界的な活動への寄付はdonate.pr418.comで紹介されている方法で行われています。皆さんの惜しみない寄付に感謝しています。