今日,神の民を導いているのはだれですか
「あなた方の間で指導の任に当たっている人々……のことを覚えていなさい」。―ヘブ 13:7。
歌: 125,43
1,2. イエスが天に上げられた後,使徒たちはどのように考えたかもしれませんか。
イエスの使徒たちはオリーブ山で空を見上げています。たった今,主人また友であるイエスが天に上げられ,雲に隠れて見えなくなってしまいました。(使徒 1:9,10)これまで約2年にわたって教え,励まし,導いてくれたイエスはもういません。これからどうすればよいのでしょうか。
2 イエスは追随者たちに,「エルサレムでも,ユダヤとサマリアの全土でも,また地の最も遠い所にまで,わたしの証人となる」という任務をお与えになりました。(使徒 1:8)でも,どのようにしてそれを果たせるのでしょうか。確かにイエスは彼らが間もなく聖霊を受けると約束しました。(使徒 1:5)とはいえ,世界的な伝道活動を行なうには,だれかが指示を与え,物事を組織することが必要です。古代においてエホバは,目に見える代表者たちを用いて指示を与え,物事を組織しました。ですから使徒たちは,「エホバは新しい指導者を任命されるのだろうか」と考えたかもしれません。
3. (イ)イエスの昇天後,忠実な使徒たちはどんな重要な決定を下しましたか。(ロ)この記事ではどんなことを考えますか。
3 それから2週間足らずのうちに,イエスの弟子たちは聖書を調べ,神の導きを祈り求めた後,ユダ・イスカリオテの代わりとしてマッテヤを12人目の使徒に選びました。(使徒 1:15‐26)このことが使徒たちにとってもエホバにとっても重要だったのは,なぜですか。組織上の物事を推し進めるために,12人の使徒が必要だったからです。 * イエスが使徒たちを選んだのは,単に宣教に伴うためではなく,神の民の中で重要な役割を果たさせるためでした。それはどんな役割でしたか。その役割を果たせるよう,エホバはイエスを通して使徒たちをどのように助けましたか。今日の神の民にもどのような助けが与えられているでしょうか。「指導の任に当たっている人々」,特に「忠実で思慮深い奴隷」を構成する人々を「覚えて」いることをどのように示せるでしょうか。―ヘブ 13:7。マタ 24:45。
イエスは統治体を指導する
4. 1世紀において,エルサレムの使徒と他の長老たちは,どんな役割を果たしましたか。
4 使徒たちは,西暦33年のペンテコステ以降,クリスチャン会衆を指導するようになりました。その日,「ペテロは十一人の者と一緒に立ち上がり」,ユダヤ人と改宗者から成る群衆に,命を救う真理を伝えました。(使徒 2:14,15)その多くが信者となりました。新たにクリスチャンとなった人たちは,「使徒たちの教え……にその後も専念し」ました。(使徒 2:42)使徒たちは会衆の基金の管理もしました。(使徒 4:34,35)また,神の民を教え,彼らのために祈りました。こう述べています。「わたしたちのほうは,祈りとみ言葉の奉仕とに専念することにします」。(使徒 6:4)使徒たちは,宣教活動を推し進めるために,経験あるクリスチャンを新しい区域に派遣しました。(使徒 8:14,15)やがて,油そそがれた他の長老たちも使徒たちに加わり,会衆を指導するようになりました。それらの使徒と長老たちは統治体として,すべての会衆に指示を与えたのです。―使徒 15:2。
5,6. (イ)統治体はどのように聖霊によって強められましたか。(冒頭の挿絵を参照。)(ロ)統治体はどのようにみ使いの援助を受けましたか。(ハ)統治体はどのように神の言葉に従いましたか。
5 1世紀のクリスチャンは,エホバが指導者イエスを通して統治体を導いておられることを理解していました。なぜでしょうか。第一に,統治体は聖霊によって強められていました。(ヨハ 16:13)油そそがれたクリスチャンすべてに聖霊が注がれていたとはいえ,エルサレムにいた使徒と他の長老たちは,監督としての役割を果たせるよう,聖霊の特別な助けを与えられました。例えば西暦49年,統治体は聖霊の導きにより,割礼の問題について決定を下すことができました。諸会衆は統治体の指示に従い,「信仰において堅くされ,日ごとに人数を増して」いきました。(使徒 16:4,5)諸会衆にその決定を伝える手紙からは,統治体が愛や信仰など,神の霊の実を表わしていたこともうかがえます。―使徒 15:11,25‐29。ガラ 5:22,23。
6 第二に,統治体はみ使いの援助を受けました。コルネリオが無割礼の異邦人として初めてバプテスマを受け,クリスチャンになる前,み使いはコルネリオに使徒ペテロを呼び寄せるよう指示しました。コルネリオと親族は割礼を受けていなかったにもかかわらず,ペテロの証言を聞いている間に聖霊を注がれました。この出来事をきっかけに,使徒や他の兄弟たちは神のご意志に従って,無割礼の異邦人をクリスチャン会衆に受け入れるようになりました。(使徒 11:13‐18)またみ使いは,統治体が監督していた伝道活動を積極的に後押しし,加速させました。(使徒 5:19,20)第三に,統治体は神の言葉 聖書に従いました。教理上の問題を扱う時にも,組織上の指示を与える時にも,聖書を指針としました。―使徒 1:20‐22; 15:15‐20。
7. 初期クリスチャンを導いていたのがイエスである,と言えるのはなぜですか。
7 統治体は初期クリスチャン会衆で権威を与えられていましたが,自分たちの指導者がイエスであることを認めていました。使徒パウロはこう述べています。「彼[キリスト]は,ある者を使徒……として与えました。……愛により,すべての事において,頭であるキリストを目ざして成長してゆきましょう」。(エフェ 4:11,15)「弟子たち[は]神慮によってクリスチャンと呼ばれ」ました。自分たちを著名な使徒の名前で呼ぶことなどなかったのです。(使徒 11:26)確かに,パウロは「伝統をしっかり守[る]」こと,つまり会衆を指導していた使徒や他の兄弟たちから伝えられた,聖書に基づく教えを守ることの大切さを認めていました。とはいえ,こうも述べています。「あなた方に次のことを知って欲しいと思います。[統治体の成員を含む]すべての男の頭はキリストであり,……キリストの頭は神です」。(コリ一 11:2,3)頭であるエホバ神のもとで,目に見えない,栄光を受けたキリスト・イエスが会衆を導いていたのです。
「これは人間がしている業ではありません」
8,9. 19世紀後半以降,ラッセル兄弟はどんな重要な役割を果たしましたか。
8 19世紀後半,チャールズ・テイズ・ラッセルと幾人かの仲間たちは,真のキリスト教の崇拝を再確立しようとしました。聖書の真理を様々な言語で広めるため,1884年にシオンのものみの塔冊子協会が法人化され,ラッセル兄弟が会長になりました。 * 兄弟は聖書を熱心に研究し,三位一体や魂の不滅などの教えが偽りであることを大胆に暴露しました。キリストの再来が目に見えないものであること,「諸国民の定められた時」が1914年に終わることも理解しました。(ルカ 21:24)ラッセル兄弟は,時間やエネルギーやお金を惜しみなく費やして,そうした真理を伝えました。この重要な時期に,エホバと会衆の頭イエスがラッセル兄弟を用いておられたことは明らかです。
9 ラッセル兄弟は人からの栄光を求めませんでした。1896年にこう書いています。「我々は……我々自身や我々の著作に対する賛辞や崇敬を求めてはおらず,師あるいはラビと呼ばれることを望んでいない。また,何であれ我々の名で呼ばれることを……望まない」。後に,「これは人間がしている業ではありません」とも言いました。
10. (イ)イエスが「忠実で思慮深い奴隷」を任命したのはいつですか。(ロ)統治体がものみの塔協会とは異なることは,どのように明らかになりましたか。
10 ラッセル兄弟が亡くなってから3年後の1919年,イエスは「忠実で思慮深い奴隷」を任命しました。何のためにですか。召使いたちに「時に応じ[た]食物」を与えるためです。(マタ 24:45)当時,ニューヨークのブルックリン本部で奉仕していた油そそがれた兄弟たちの少人数の一団は,イエスの追随者たちのために霊的食物を準備し,分配していました。「統治体」という表現がわたしたちの出版物で用いられるようになったのは,1940年代のことです。当時,統治体とはものみの塔聖書冊子協会の理事たちを指す,と一般に理解されていました。しかし1971年に,統治体はものみの塔協会やその理事とは異なることが明らかになりました。ものみの塔協会は,聖書的な根拠に基づく団体というよりも,法的な事柄を扱う団体だからです。それ以降,統治体には,協会の理事ではない油そそがれた兄弟たちも加わるようになりました。最近では,「ほかの羊」の責任ある兄弟たちが,協会の法人の理事や,神の民が用いる他の団体の理事を務めています。その結果,統治体は聖書に基づく教えや指示を与えることに専念できるようになりました。(ヨハ 10:16。使徒 6:4)「ものみの塔」2013年7月15日号では,「忠実で思慮深い奴隷」が統治体を構成する油そそがれた兄弟たちの少人数の一団である,と説明されました。
11. 統治体はどのように機能していますか。
11 統治体は重要な決定をグループとして下します。どのようにでしょうか。統治体は毎週会合を開いています。これは密接なコミュニケーションを図り,一致を保つ助けになっています。(箴 20:18)会合の司会者は毎年交替します。統治体のある成員が他の成員たちより重要である,ということはないのです。(ペテ一 5:1)統治体の6つの委員会も,司会者が毎年交替します。統治体の各成員は,自分が兄弟姉妹の指導者ではなく,忠実な奴隷によって養われる「召使いたち」の一人であることを認識しており,忠実な奴隷に従います。
「忠実で思慮深い奴隷はいったいだれでしょうか」
12. 統治体が完全ではないことを考えると,どんな質問が生じますか。
12 統治体は霊感を受けているわけでも,完全であるわけでもありません。教理上の説明や組織上の指示の点で間違いをすることがあります。実際,「ものみの塔出版物索引」の「教理の進展」という見出しには,1870年以降,聖書の理解にどんな調整が加えられてきたかが記されています。もちろん,イエスはご自分の奴隷が完全な霊的食物を与えるとは述べませんでした。では,「忠実で思慮深い奴隷はいったいだれでしょうか」というイエスの質問にどのように答えることができますか。(マタ 24:45)統治体が忠実で思慮深い奴隷の役割を果たしている,と言えるどんな根拠があるでしょうか。1世紀の統治体に関して取り上げた3つの点について考えてみましょう。
13. 統治体は聖霊によってどのように助けられてきましたか。
13 聖霊の助けを受けている証拠。統治体は聖霊によって,かつては理解していなかった聖書の真理を理解するよう助けられてきました。前の節で取り上げたとおり,数多くの点で教理の進展が見られてきました。どんな人間も自分の力でこうした「神の奥深い事柄」を理解し,説明することはできません。(コリント第一 2:10を読む。)統治体は,次のように述べたパウロと同じように感じています。「わたしたちはそれらの事も,人間の知恵に教えられた言葉ではなく,霊に教えられた言葉で話します」。(コリ一 2:13)1919年まで1000年以上の間,背教による宗教上の暗闇が続いていました。ですから,1919年以降,聖書の理解がこれほど早く進んだのは,聖霊の働きによるとしか考えられません。
14. 啓示 14章6,7節によると,み使いは今日,神の民をどのように助けていますか。
14 み使いの援助を受けている証拠。統治体は今日,800万人以上の奉仕者による世界的な伝道活動を監督する,という非常に大きな責任を担っています。この伝道活動が成功しているのはなぜでしょうか。一つには,み使いの援助があります。(啓示 14:6,7を読む。)エホバの証人が,ちょうど助けを祈り求めていた人を訪問した例はたくさんあります。 * 激しい反対を受けている国があるにもかかわらず,宣べ伝えて人々を弟子とする活動が全体として進展していることも,み使いによる助けがある証拠です。
15. 統治体はキリスト教世界の指導者たちとどのように異なっていますか。例を挙げて説明してください。
15 聖書に付き従う。(ヨハネ 17:17を読む。)1973年にあった事柄について考えましょう。「ものみの塔」1973年9月1日号は,「たばこの常用癖を直していない人に,バプテスマを受ける資格があるでしょうか」と問いかけました。そしてその答えとして,「聖書に基づく証拠は,そのような人には資格がないという結論を示しています」と述べました。同誌は幾つかの聖句を引用し,悔い改めずに喫煙を続ける人が排斥されるべき理由を説明しました。(コリ一 5:7。コリ二 7:1)こうも述べています。「これは独断的で専横な処置を講じようとする努力の表われではありません。この厳格さは実際のところ,書きしるされたみことばを通してご自身の考えを明らかにしておられる神から出ていることなのです」。一部の信者に非常に難しいことを求めることになるとしても,聖書にしっかり付き従ってきた宗教団体がほかにあるでしょうか。最近米国で出版された宗教に関する本はこう述べています。「キリスト教の指導者たちは,教会員や一般社会が支持する信条や意見に合わせて,繰り返し教義を変更してきた」。他方,統治体は人気のある意見ではなく,聖書に基づいて決定を下します。そうであれば,今日神の民を実際に導いているのはエホバである,と言えるのではないでしょうか。
「指導の任に当たっている人々……のことを覚えていなさい」
16. 統治体のことを「覚えている」方法の一つは何ですか。
16 ヘブライ 13:7を読む。「覚えている」と訳されている言葉は,「述べる」と訳すこともできます。それで,「指導の任に当たっている人々……のことを覚えてい[る]」方法の一つは,祈りの中で統治体について述べることです。(エフェ 6:18)統治体が果たしている様々な責任について考えてください。霊的食物を与え,世界的な伝道活動を監督し,寄付を管理しています。わたしたちは統治体のためにたゆまず祈る必要があります。
17,18. (イ)統治体にどのように協力できますか。(ロ)宣べ伝える活動によって,忠実な奴隷とイエスをどのように支援できますか。
17 統治体のことを覚えていることには,言葉だけではなく,行動も関係しています。統治体の指示に協力することが必要です。統治体は,出版物や集会や大会を通して指示を与えます。統治体は巡回監督を任命し,巡回監督は会衆の長老を任命します。巡回監督と長老たちは,与えられている指針にしっかり従うことにより,統治体のことを覚えていることを示せます。わたしたちすべては,イエスがわたしたちを導くために用いている兄弟たちに従い,柔順であることにより,指導者イエスに対する敬意を示します。―ヘブ 13:17。
18 統治体のことを覚えていることを示すもう一つの方法は,宣べ伝える活動に勤勉に携わることです。パウロは,指導の任に当たっている人々の信仰に倣うよう勧めました。忠実な奴隷は王国の良いたよりを熱心に伝えることによって,際立った信仰を示しています。あなたはほかの羊の一人として油そそがれた者たちを支援し,この重要な活動を共に行なっていますか。そうであれば,指導者イエスから次のように言われる時,うれしく思うことでしょう。「これらわたしの兄弟のうち最も小さな者の一人にしたのは,それだけわたしに対してしたのです」。―マタ 25:34‐40。
19. あなたが指導者イエスに従うことを決意しているのはなぜですか。
19 イエスは天に戻った時,追随者たちを見捨てたわけではありません。(マタ 28:20)イエスは地上で弟子たちを指導した際,聖霊,み使い,聖書がどれほど大きな助けになるかを実感しました。それで今日,忠実な奴隷にも同様の助けを与えておられます。忠実な奴隷の成員は油そそがれたクリスチャンとして,「子羊の行くところにはどこへでも従って行」きます。(啓 14:4)ですから,忠実な奴隷の指示に従うなら,指導者イエスに従っていることになります。イエスは間もなくわたしたちを永遠の命へと導いてくださいます。(啓 7:14‐17)人間の指導者には決して行なえない事柄です。
「ものみの塔」(研究用)