1. フィリピの会衆はどんないきさつで設立されましたか。

使徒パウロ，シラス，ルカ，テモテはローマの植民市フィリピに到着しました。そこには，良い知らせに興味を持つ人が大勢いました。それら4人の兄弟たちが熱心に働いた結果，会衆が設立されました。新しい兄弟姉妹はルデアの家で集会を開いたようです。ルデアは人をよくもてなす女性でした。（使徒 16:40）

2. フィリピの会衆はどんな問題にぶつかりましたか。

² 発足して間もないフィリピの会衆はすぐに問題にぶつかりました。サタンが真理の敵たちに，パウロたちの伝道活動を妨害させようとしたのです。パウロとシラスは逮捕され，棒で打ちたたかれ，投獄されました。しかし，牢屋から釈放されると，兄弟姉妹の所に行って励ましました。その後，パウロとシラスとテモテはフィリピを去り，ルカはそこにとどまったようです。会衆の兄弟姉妹はどうしたでしょうか。エホバの聖なる力の助けを得て，熱心に奉仕し続けました。（フィリ 2:12）パウロはうれしく思ったことでしょう。

3. フィリピ 1章9‐11節によると，パウロはどんなことを祈りましたか。

³ 10年ほど後，パウロはフィリピの会衆に手紙を書きました。その手紙を読むと，パウロがフィリピの兄弟たちを深く愛していたことがよく分かります。こうあります。「私はキリスト･イエスのような優しい愛情を抱き，皆さんに会いたいと心から願っています」。（フィリ 1:8）パウロは，フィリピの兄弟たちのために祈っている，とも書きました。兄弟たちが愛の豊かな人になり，より重要なことを見極め，純粋でいて，人の信仰を妨げず，正しい実を結び続けるようにと祈ったのです。わたしたちもパウロの温かな言葉から励みを得ることができます。では，その言葉を読みましょう。（フィリピ 1:9‐11を読む。）そして，パウロが教えた事柄をどのように実践できるかを考えましょう。

4. （ア）ヨハネ第一 4章9，10節にある通り，エホバはどのように愛を表してくださいましたか。（イ）エホバをどれほど愛するべきですか。

⁴ エホバは私たちに豊かな愛を表してくださいました。ご自分の子イエスを地上に遣わし，私たちの罪のために死ぬようにされたのです。（ヨハネ第一 4:9，10を読む。）エホバの無私の愛について考えると，エホバを愛さずにはいられません。（ロマ 5:8）では，どれほど愛するべきでしょうか。答えは，イエスがパリサイ派の人に述べた言葉の中にあります。「あなたは，心を尽くし，知力を尽くし，自分の全てを尽くして，あなたの神エホバを愛さなければならない」。（マタ 22:36，37）私たちは，中途半端にではなく，心を尽くしてエホバを愛したいと思います。その愛を日ごとに深めたいとも思っています。パウロはフィリピのクリスチャンに，「いっそう愛の豊かな人」になるよう勧めました。どうすればエホバをいっそう深く愛せるでしょうか。

5. どうすればエホバへの愛が深まりますか。

⁵ エホバを愛するためにはエホバを知る必要があります。聖書はこう述べています。「愛さない人は，神をよく知りません。神は愛だからです」。（ヨハ一 4:8）パウロの言葉によると，エホバについての「正確な知識と十分な識別力」を得るなら，エホバをいっそう深く愛することができます。（フィリ 1:9）私たちが聖書を学び始めた頃，エホバの素晴らしいご性格についての知識は限られていました。それでもエホバを愛するようになりました。その後，エホバについてさらに学んでいくにつれ，エホバへの愛は深まりました。ですから，聖書を定期的に学び，学んだことを思い巡らすのは，生活の中で特に重要なことです。（フィリ 2:16）

6. ヨハネ第一 4章11，20，21節にある通り，誰に豊かな愛を表さなければなりませんか。

⁶ エホバが豊かな愛を表してくださったのですから，私たちも愛し合わなければなりません。（ヨハネ第一 4:11，20，21を読む。）兄弟姉妹を愛するのは簡単だと思うかもしれません。私たちは皆，エホバを崇拝し，エホバの素晴らしいご性格に倣おうと努めています。私たちに深い愛を示し，命をなげうってくださったイエスの手本にも倣っています。それでも，兄弟たちを愛するようにというおきてに従うのが難しいと感じることがあるかもしれません。フィリピの会衆の例を考えましょう。

7. ユウオデアとスントケに対するパウロのアドバイスから，どんなことを学べますか。

⁷ ユウオデアとスントケは，パウロと「肩を並べて」奉仕した熱心な女性です。それでも，2人は仲たがいしてしまいました。きっと性格が合わなかったのでしょう。パウロはフィリピの会衆への手紙の中でユウオデアとスントケの名前を挙げ，「同じ思いを持ってください」と勧めました。（フィリ 4:2，3）パウロは会衆の全ての人にもこう勧めました。「何事も，不満を口にしたり言い争ったりせずに行っていきましょう」。（フィリ 2:14）パウロの率直なアドバイスは，ユウオデアとスントケだけではなく，会衆の全ての人にとって，愛の絆を強める助けになったに違いありません。

8. 兄弟たちを愛する上で，どんなことが障害になりますか。どのように克服できますか。

⁸ 私たちも，仲間との愛の絆を強める上で大きな障害に直面することがあります。それは，人の不完全さに注目することです。私たちは皆，毎日，間違いを犯します。人の不完全さに注目し続けるなら，その人に対する愛は冷めてしまうでしょう。例えば，ある兄弟が王国会館の掃除を真面目にしていないように見えます。いらいらします。そして，その兄弟がこれまでにしたミスが次々と頭に浮かんできます。ますますいらいらして，その兄弟への愛が冷めてしまいます。あなたもそんな気持ちになったことがありますか。もしそうなら，次の点を思い出してください。エホバはあなたの不完全さも，あなたをいらいらさせた兄弟の不完全さも知っている，ということです。それでも，エホバはあなたとその兄弟を愛し続けています。ですから，エホバの愛に倣い，兄弟たちの良い点に注目しましょう。兄弟たちを愛するよう一生懸命に努力するなら，一致の絆は強まります。（フィリ 2:1，2）

9. パウロがフィリピのクリスチャンへの手紙で述べた「より重要なこと」にはどんなものが含まれますか。

⁹ パウロは神の聖なる力に導かれ，フィリピのクリスチャン，そして全てのクリスチャンに，「より重要なことを見極め」るよう勧めました。（フィリ 1:10）「より重要なこと」には，エホバの名が神聖なものにされること，エホバの目的の実現，会衆の平和と一致などが含まれます。（マタ 6:9，10。ヨハ 13:35）そうしたことを大切にして生活しているなら，エホバを深く愛していることになります。

10. どうすれば純粋な者になれますか。

¹⁰ パウロは，「純粋でい[る]」ことも勧めました。これは，欠けたところのない，完全な者でなければならないという意味ではありません。私たちはエホバ神とは違い，全く傷のない者になることはできません。それでもエホバは，私たちが愛を深め，より重要なことを見極めるためにベストを尽くすなら，純粋な者と見てくださいます。愛を表す1つの方法は，人の信仰を妨げないようにすることです。

11. 人の信仰を妨げるべきでないのはなぜですか。

¹¹ 人の信仰を妨げてはならないというのは，本当に身の引き締まる警告です。何によって人の信仰を妨げてしまうことがあるでしょうか。例えば，自分が選ぶエンターテインメントや服装や仕事です。それ自体は悪いものではないとしても，私たちの選択によって人の良心を傷つけ，信仰を妨げてしまうなら，それは重大なことです。イエスは，兄弟姉妹の信仰を妨げる人は，重い石を首に掛けられて海に沈められる方がよい，と言いました。（マタ 18:6）

12. ある開拓者の夫婦からどんなことを学べますか。

¹² ある開拓者の夫婦はイエスの警告に従いました。2人の会衆には，バプテスマを受けたばかりの夫婦がいました。この夫婦は，夫も妻も非常に保守的な家庭で育ったので，クリスチャンは健全な内容のものであっても映画を見に行くべきではない，と考えていました。ですからある時，開拓者の夫婦が映画を見に行ったことを知って驚きました。そのことがあってから，開拓者の夫婦は映画を見に行くのをやめました。バプテスマを受けたばかりの夫婦が良心を聖書の見方に合わせ，バランスの取れた考え方ができるようになるまでは，映画を見に行かないことにしたのです。（ヘブ 5:14）2人は新しい兄弟姉妹に，口先だけではなく行いによって無私の愛を表しました。（ロマ 14:19‐21。ヨハ一 3:18）

13. どのようにして，誰かに罪を犯させるような状況を作ってしまうことがありますか。

¹³ 誰かに罪を犯させるような状況を作るなら，その人の信仰を妨げてしまうかもしれません。1つの例を考えましょう。アルコールに依存していた聖書研究生が大変な苦闘の末，ようやくその問題を克服しました。逆戻りしないためには，お酒を一切飲むべきではないことを知っています。その後もよく進歩して，バプテスマを受けました。ある時，兄弟姉妹が集まる食事会に招かれます。招いた兄弟はその新しい兄弟にお酒を勧め，こう言います。「もうクリスチャンになったんだから，エホバが聖なる力で助けてくださるよ。聖なる力は自制を生み出すよね。自制があれば，お酒を飲み過ぎるはずはないよ」。新しい兄弟がこの間違ったアドバイスに従ったらどうなるかは想像がつくでしょう。

14. 集会に出席することは，フィリピ 1章10節のアドバイスに従う上でどのように役立ちますか。

¹⁴ 集会に出席すると，フィリピ 1章10節のアドバイスに従いやすくなります。第一に，エホバが何をより重要なことと見ているかを学べます。第二に，純粋な者になるため，学んだことをどのように当てはめたらよいかが分かります。第三に，「愛を表し立派な行い」をしたいという気持ちになります。（ヘブ 10:24，25）兄弟たちから励まされると，エホバと兄弟たちへの愛が深まります。エホバと兄弟たちを心から愛しているなら，兄弟たちの信仰を妨げるようなことは決してしないよう努めるはずです。

15. 「正しい実を豊かに結[ぶ]」とはどういう意味ですか。

¹⁵ パウロは，フィリピのクリスチャンが「正しい実を豊かに結[ぶ]」ことができるようにと熱烈に祈りました。（フィリ 1:11）この「正しい実」には，エホバとエホバに仕える人たちへの愛が含まれるに違いありません。イエスに対する信仰や素晴らしい希望について人々に話すことも含まれます。フィリピ 2章15節では，「世の中で光り輝[く]」という表現も使われています。これは適切な表現です。イエスは弟子たちが「世の光」だと述べたからです。（マタ 5:14‐16）また，自分に従う人たちに「人々を弟子としなさい」と命じ，彼らが「地上の最も遠い所にまで，……証人とな[る]」と言いました。（マタ 28:18‐20。使徒 1:8）この最も重要な仕事を一生懸命に行うなら，「正しい実」を生み出せます。

16. 難しい状況の下でも光り輝くことができる，と言えるのはなぜですか。フィリピ 1章12‐14節からどんなことを学べますか。（表紙の絵を参照。）

¹⁶ どんな状況の下でも光り輝くことは可能です。良い知らせを伝える上で障害に思えることが，伝道のチャンスになることもあります。例えば，パウロはフィリピのクリスチャンに手紙を書いた時，ローマで軟禁されていました。鎖につながれていましたが，看守や訪れてくる人に伝道しました。置かれた状況の下で熱心に伝道したのです。その結果，兄弟たちは「確信を持ち，恐れることなく，ますます勇敢に神の言葉を語[る]」ことができました。（フィリピ 1:12‐14を読む。フィリ 4:22）

17. 難しい状況の下で，どのように伝道している兄弟姉妹がいますか。

¹⁷ 多くの兄弟姉妹がパウロのような勇気を示しています。家から家などの表立った方法で伝道できない国に住んでいるため，他の方法で良い知らせを伝えています。（マタ 10:16‐20）そのような制限が課せられているある国の巡回監督は，伝道者に自分の“区域”の人たち，つまり親族，近所の人，クラスメート，同僚，知り合いに良い知らせを伝えることを提案しました。2年足らずで，巡回区に新しい会衆が幾つもできました。あなたの国では自由に伝道できるとしても，難しい状況の下で伝道している兄弟姉妹から大切な教訓を学べます。エホバがどんな障害も克服する力を与えてくださることを固く信じ，宣教を十分に行う方法を探すべきである，ということです。（フィリ 2:13）

18. あなたはどんなことを決意していますか。

¹⁸ 私たちは終わりの時代に生活しています。ぜひとも，パウロがフィリピのクリスチャンに与えたアドバイスに従いましょう。より重要なことを見極め，純粋な者となり，人の信仰を妨げず，正しい実を生み出しましょう。そうすれば，私たちは愛の豊かな人になることができ，愛情深い父エホバがたたえられます。