研究記事2
あなたも兄弟姉妹の力になれます
「彼を遣わしたのは,……皆さんを力づけ,慰めるためです」。テサロニケ第一 3:2
121番の歌 互いに励まし合いなさい
何を学ぶか *
1. エホバに仕える兄弟姉妹の中には,どんな経験をしている人がいますか。
世界各地でエホバに仕えている人の中には,ストレスとなる状況にあったり,つらい経験をしたりしている人が大勢います。そのような経験をしている会衆の仲間のことが思い浮かびますか。重い病気と闘っている人や,大切な人を亡くした兄弟姉妹がいます。家族や親しい友がエホバに仕えるのをやめてしまい,そのことを深く悲しんでいる人もいます。自然災害で被災し,生活を立て直そうとしている人もいます。そのような兄弟姉妹は慰めや支えを必要としています。どうすれば支えになれますか。
2. パウロが慰めや支えを必要とすることがあったのはなぜですか。
2 パウロは命の危険を何度も経験しました。(コリ二 11:23‐28)「体に1つのとげ」を刺され,耐えなければなりませんでした。何かの病気について述べていたのかもしれません。(コリ二 12:7)一緒に働いた仲間であるデマスに見捨てられ,失意することもありました。「デマスは今の体制を愛して」パウロを見捨てたのです。(テモ二 4:10)パウロは天に行くよう選ばれ,勇気があり,兄弟姉妹を助ける利他的な人でしたが,それでも時には気落ちすることがありました。(ロマ 9:1,2)
3. エホバはどのようにパウロを力づけ,支えましたか。
3 パウロは慰めや支えを得ることができました。どのようにですか。エホバから聖なる力を与えられ,強くされました。(コリ二 4:7。フィリ 4:13)エホバは兄弟姉妹を通してパウロを力づけることもしました。パウロは一緒に働いた兄弟たちが「とても力づけ,助けて」くれた,と言っています。(コロ 4:11,脚注)助けてくれた人として,アリスタルコ,テキコ,マルコの名前も挙げています。この3人はパウロを力づけ,忍耐するよう助けました。どんな資質を持っていたので,パウロを力づけることができたのでしょうか。この3人の手本にどのように倣い,仲間を力づけ,励ますことができますか。
アリスタルコのように揺るぎない愛を示す
4. アリスタルコは,パウロにどのように揺るぎない愛を示しましたか。
4 アリスタルコはテサロニケ出身のマケドニア人で,友としてパウロに揺るぎない愛を示しました。アリスタルコが聖書に初めて登場するのは,パウロが第3回宣教旅行でエフェソスを訪れた時のことです。パウロと一緒にいたアリスタルコは,暴徒に捕まりました。(使徒 19:29)自由にされた後も,自分の安全を優先してパウロと別れるのではなく,揺るぎない愛を示し,一緒に行動しました。何カ月か後,ギリシャでもパウロと一緒でした。パウロはこの時も反対者たちに命を狙われていました。(使徒 20:2‐4)西暦58年ごろ,パウロは囚人としてローマに護送されました。この長旅にもアリスタルコは同行し,一緒に難船を経験しました。(使徒 27:1,2,41)ローマに着いてからは,しばらくパウロと共に拘禁されていたようです。(コロ 4:10)そこまでして揺るぎない愛を示してくれる友に,パウロは力づけられ,励まされたに違いありません。
5. 格言 17章17節によれば,どうすれば友として揺るぎない愛を示すことができますか。
5 アリスタルコのように,友として揺るぎない愛を示すことにより,兄弟姉妹を支えましょう。兄弟姉妹にとって順調な時だけでなく,「苦難の時」にも寄り添うのです。(格言 17:17を読む。)兄弟姉妹は,試練に遭ってかなり後になってからも慰めを必要とすることがあります。3カ月の間に両親を相次いでがんで亡くしたフランシス *という姉妹は,こう言っています。「厳しい試練に遭うと,なかなか立ち直れないものです。親が亡くなったのはずいぶん前のことですが,今もつらい気持ちが続いています。そのことを分かって,ずっと支えてくれる友たちがいます。本当に感謝しています」。
6. 揺るぎない愛を持つ人はどのように行動しますか。
6 友として揺るぎない愛を示す人は,犠牲を払って兄弟姉妹を支えます。ピーターという兄弟は,進行性の病気の末期にあると診断されました。妻のキャスリンはこう語っています。「会衆のある夫婦が,私たちを病院に連れて行ってくれました。その時,夫の病気のことが分かりました。2人は,私たちの状況を知った時からずっと,快く助けてくれました。必要な時にいつでも助けてくれたのです」。試練に耐えられるよう助けてくれる本当の友がいるのは,とても心強いことです。
テキコのように信頼できる人になる
7‐8. パウロがテキコを信頼していたことは,コロサイ 4章7‐9節のどんな言葉から分かりますか。
7 テキコはローマの属州アジア出身のクリスチャンで,揺るぎない愛を示し,パウロと共に行動しました。(使徒 20:4)西暦55年ごろ,パウロはユダヤのクリスチャンのための募金を組織しました。この大切な仕事のためにパウロが選んだのはテキコだったかもしれません。(コリ二 8:18‐20)パウロは後に,ローマで初めて拘禁されました。その時テキコは,パウロの使者を務めました。パウロの手紙や励ましのメッセージをアジアの会衆に届けたのです。(コロ 4:7‐9)
8 テキコは信頼できる友としてパウロをずっと支えました。(テト 3:12)当時,全てのクリスチャンがテキコほど頼りになったわけではありませんでした。パウロは2度目に拘禁されていた西暦65年ごろ,アジア州の兄弟の中に自分から離れていった人がいると書いています。反対者を恐れて離れたのかもしれません。(テモ二 1:15)しかし,信頼できるテキコには,新たな務めを託すことができました。(テモ二 4:12)テキコのような良い友がいることをパウロはうれしく思ったことでしょう。
9. どんな点でテキコに倣えますか。
9 テキコに倣い,信頼できる友になりましょう。手助けすることを約束するだけでなく,兄弟姉妹の役に立つことをして助けることができます。(マタ 5:37。ルカ 16:10)助けを必要とする人は,私たちが信頼できることを知ると,心強く思います。ある姉妹はこう言っています。「助けを申し出てくれた人が約束の時間に来てくれるのか,心配しないで済むと,安心できます」。
10. 試練や落胆を経験するとき,誰に力づけてもらえますか。格言 18章24節からどんなことが分かりますか。
10 試練にぶつかったり気落ちしたりしている人は,信頼できる友に話を聞いてもらえると,気持ちが落ち着くものです。(格言 18:24を読む。)ビジャイという兄弟は,息子が排斥され,ひどく落ち込みました。「信頼できる人に話を聞いてもらいたいと思いました」と言っています。カルロスという兄弟は,良くない判断をしたため,大切にしていた会衆での奉仕の立場を失いました。「決め付けることなく話を聞いてくれる人がいてほしいと思いました」と語っています。カルロスの場合,長老たちがじっくり話を聞き,気持ちを整理できるよう助けてくれました。長老たちが話を口外しないことを知っていたので,安心して話せました。
11. どうすれば信頼できる友や話し相手になれますか。
11 信頼できる友や話し相手になるには,辛抱強くあることが必要です。ジャンナという姉妹は,夫が家を出て行ってしまった時,親しい友人たちに話を聞いてもらえたことが力になりました。「みんなよく辛抱し,私の話を聞いてくれました。多分,同じことを何度も話していたと思います」と言っています。よく話を聞くなら,苦しんでいる仲間の良い友になれます。
マルコのように進んで仕える
12. マルコはどんな人でしたか。どのようにして他の人のために仕えましたか。
12 マルコはエルサレム出身のユダヤ人のクリスチャンです。いとこのバルナバは,宣教者としてよく知られていました。(コロ 4:10)マルコは裕福な家庭で育ったようですが,生活の中でお金や物を重視しませんでした。マルコは人のために進んで仕え続け,そうできることを喜びました。ある時は使徒パウロのために,別の時には使徒ペテロのために働き,2人が務めを果たせるよう助けました。マルコは恐らく,2人の身の回りの世話をしたのでしょう。(使徒 13:2‐5。ペテ一 5:13)パウロはマルコが「神の王国のために私と共に働いており,私をとても力づけ,助けてくれています」と書いています。(コロ 4:10,11,脚注)
13. パウロがマルコの働きを認めていたことは,テモテ第二 4章11節のどんな言葉から分かりますか。
13 マルコはパウロの親しい友になりました。パウロはローマで最後に拘禁されていた西暦65年ごろ,テモテに2通目の手紙を書きました。その手紙の中で,ローマに来る時にマルコを連れてきてほしいと言っています。(テモ二 4:11)パウロは,それまでずっと奉仕してきたマルコの働きを認めていました。だからこそ,とても重要な時にマルコがそばで支えてくれるように頼んだのです。マルコはパウロの身の回りの世話をしました。食料や,手紙を書くための材料を差し入れるなどしたのでしょう。マルコの支えや励ましは,処刑される時が迫っていたパウロにとって,忍耐する力となったに違いありません。
14‐15. マタイ 7章12節の通りにして仲間を手助けした,どんな例がありますか。
14 マタイ 7:12を読む。つらい経験をしているときに,身の回りのことを手助けしてもらえると,本当にありがたいものです。悲惨な事故で父親を急に亡くしたライアンという兄弟は,こう言っています。「つらく感じているときには,いつもなら普通にこなしている事柄ですら,とてもできないと思ってしまいます。身の回りのちょっとした事柄でも支えてもらえると,本当に助かります」。
15 周りの人の状況によく目を配るなら,どんなことで手助けできそうかが分かるものです。記事の始めに出てきたピーターとキャスリンを助けた姉妹は,2人が通院できるよう取り計らいました。ピーターとキャスリンは,もう運転ができません。そのため,この姉妹は会衆の有志に声を掛け,交代で病院に連れていけるようにしました。示された親切についてキャスリンは,「気持ちが少し楽になりました」と言っています。小さく見えることであっても,身の回りのことで手助けするなら心強く感じてもらえます。
16. マルコはどんな点で私たちの手本ですか。
16 1世紀に生きていたマルコは,多忙な毎日を送っていました。エホバへの奉仕に関連した重い責任を担っていて,福音書を書く必要もありました。それでも,時間を取ってパウロを力づけました。パウロも,マルコなら頼みを聞いてくれると思っていました。アンジェラという姉妹の例を挙げましょう。姉妹は,親戚が事件で殺された時,仲間が支え,慰めようとしてくれたことを心強く感じました。こう話しています。「力になろうとしてくれていたので,気兼ねしないで近づくことができました。兄弟姉妹は,ちゅうちょしたり気後れしたりするそぶりを全く見せませんでした」。私たちも,「身の回りの事柄に関して兄弟姉妹を進んで助ける人と見られているだろうか」と考えることができるでしょう。
兄弟姉妹を力づける
17. コリント第二 1章3,4節を思い巡らすと,他の兄弟姉妹を慰めようという気持ちになります。なぜですか。
17 慰めや支えを必要とする兄弟姉妹は,身近にいるものです。誰かが私たちを慰めるために話してくれた励みとなる考えを,今度はほかの兄弟姉妹に話してあげられるかもしれません。祖母を亡くしたニノという姉妹は,こう言っています。「私たちがエホバの役に立とうとするなら,エホバは他の兄弟姉妹を慰めるために私たちを使うことができます」。(コリント第二 1:3,4を読む。)始めに出てきたフランシスという姉妹もこう言っています。「コリント第二 1章4節の言葉の通りだと思います。誰かが自分を慰めてくれた時の手本に倣って,今度は他の兄弟姉妹を慰めることができます」。
18. (ア)誰かを慰めることに気後れする場合があるのはなぜですか。(イ)どうすれば兄弟姉妹を気遣えますか。例を挙げてください。
18 力になるには,気後れするとしても,進んで行動する必要があります。誰かが苦悩しているとき,何と言い,どう行動したらよいかが分からないかもしれません。ポールという長老は,父親を亡くした時にしてもらったことについてこう語っています。「私にどのように声を掛けたらよいか分からず,戸惑っていたと思います。それでも,慰めたい,支えたいと思ってくれていました。その気持ちがうれしかったです」。タジョンという兄弟は,震災を経験した少し後のことについてこう話しています。「地震が起きてから,いろいろな人からメッセージをもらいました。内容はあまり覚えていないのですが,大丈夫かどうか気遣ってもらえたことは忘れません」。気遣いを示すなら,兄弟姉妹を力づけることができます。
19. 兄弟姉妹の力になることをあなたが心に決めているのはなぜですか。
19 今の体制の終わりが近づくにつれ,世界の情勢は悪化し,生活はますます困難になるでしょう。(テモ二 3:13)しかも,受け継いだ罪や不完全さのために自分で問題を招いてしまうこともあります。ですから,私たちは今後も慰めや支えを必要とします。パウロは生涯を終えるまで忠実を保ち,忍耐することができました。仲間のクリスチャンによる慰めや支えが忍耐する力になったことは明らかです。私たちも,アリスタルコのように揺るぎない愛を示し,テキコのように信頼できる人になり,マルコのように進んで仕えましょう。そうすれば,兄弟姉妹は強い信仰を持ち続けることができます。(テサ一 3:2,3)
^ 5節 使徒パウロはたくさんの苦難を経験しました。つらい時には,力づけ,助けてくれる兄弟たちがいました。この記事では,パウロを支えた3人の兄弟について考えます。どんな資質を持っていたので,パウロを力づけることができたのでしょうか。この3人の手本にどのように倣えますか。
^ 5節 この記事に出てくる一部の名前は変えてあります。
75番の歌 わたしたちの喜びの理由
「ものみの塔」(研究用)