研究記事12
話すべき時と黙っているべき時
「黙っているのに時があり,話すのに時がある」。伝道 3:7
63番の歌 忠節を保つ
何を学ぶか *
1. 伝道 3章7節はどんなことを教えていますか。
話すのが好きな人もいれば,口数が少ない人もいます。この記事の主題聖句にも述べられている通り,話すのに時があり,黙っているのに時があります。(伝道 3:7を読む。)兄弟姉妹についていえば,もっと話してほしいと思う場合もあれば,話し過ぎだと感じる場合もあります。
2. 話す能力の正しい用い方を決めるのは誰ですか。
2 話す能力はエホバが与えてくださったものです。(出 4:10,11。啓 4:11)エホバは聖書の中で,話す能力の正しい用い方を教えています。この記事では,話すべき時と黙っているべき時とを判断するための聖書中の例を考えます。私たちが話す事柄を聞いてエホバはどう思うか,ということも考えます。まず,話すべき時について考えましょう。
話すべき時
3. エホバについて語る点で,どんな心構えが必要ですか。ローマ 10章14節からどんなことを学べますか。
3 エホバとエホバの王国についていつでも語れるようにしておきましょう。(マタ 24:14。ローマ 10:14を読む。)語るなら,イエスに倣えます。イエスが地上に来たのは,1つとして,父エホバについて人々に教えるためでした。(ヨハ 18:37)どのように話すかも大切です。エホバについて話す時は,「温和な態度と深い敬意を示し」,相手の気持ちや考えを思いやる必要があります。(ペテ一 3:15)そうすれば,ただ語るだけでなく,教えることができ,恐らく心を動かせるでしょう。
4. 格言 9章9節によれば,忠告を与えることはなぜ相手のためになりますか。
4 長老は,兄弟や姉妹に必要な忠告をためらわずに与えるべきです。もちろん,気まずい思いをさせないよう,良い時を選ぶ必要があります。周りに人がいない状況で話すよう気を配ります。長老はいつでも,相手の尊厳を傷つけない話し方をするよう努めます。それでも,賢く行動するのに役立つ聖書の原則をきちんと伝えます。(格言 9:9を読む。)勇気を出して話すことはなぜ大切ですか。対照的な2つの例を考えましょう。息子を矯正するのを怠った父親と,王になる人に進言した女性の例です。
5. 大祭司エリは話すべき時に話さなかったといえるのはなぜですか。
5 大祭司エリは息子たちに愛情を注ぎました。しかし,息子たちはエホバを敬っていませんでした。幕屋で祭司として働くという重責を担っていたのに権限を乱用し,エホバへの捧げ物を不敬に扱い,性的に不道徳なことを平気で行いました。(サム一 2:12‐17,22)モーセの律法によれば,エリの息子たちは死刑にされるべきでした。しかし,エリは息子たちを甘やかし,やんわりたしなめるだけで幕屋での職務をそのまま行わせました。(申 21:18‐21)エリの判断についてエホバはどう感じましたか。「なぜあなたは私よりも息子たちを尊んでいるのか」と問いただし,悪人である息子たちを死なせることにしました。(サム一 2:29,34)
6. エリの行動からどんなことを学べますか。
6 エリの行動からどんなことを学べますか。エホバに仕える友人や親戚がエホバの基準に背くことをしているなら,その点を指摘しましょう。エホバが任命した人たちに助けを求めるよう勧め,そうしたかどうかを確かめる必要もあります。(ヤコ 5:14)エリのように,友人や親戚をエホバよりも尊ぶという間違いをしてはなりません。矯正が必要な人に問題を指摘するには勇気が要りますが,そうするだけの価値があります。エリとは逆の行動を取ったイスラエル人アビガイルの例を考えましょう。
7. アビガイルがダビデに話しに行ったのはなぜですか。
7 アビガイルは裕福な地主ナバルの妻です。ダビデは部下たちと共にサウル王から逃げていた間に,ナバルの羊飼いたちと行動し,ナバルの羊を略奪隊から守りました。ナバルは感謝しませんでした。それどころか,ダビデから遣わされた部下たちが食料や水の援助を求めた時に腹を立て,怒鳴り散らしました。(サム一 25:5‐8,10‐12,14)ダビデはナバルの家の男たちを皆殺しにすることにします。(サム一 25:13,22)どうすれば災いを回避できるでしょうか。アビガイルは,自分が話すべき時であることをわきまえ,勇気を奮ってダビデに会いに行きました。腹を立て,おなかを空かせ,武器を持った400人の男たちのもとに出て行ったのです。
8. アビガイルの行動からどんなことを学べますか。
8 アビガイルはダビデに会った時,勇気を奮い,敬意を込め,説得力のある話し方をしました。自分のせいではないのにダビデに謝りました。正しいことを愛している人という信頼を込めてダビデに進言しました。また,エホバが自分を助けてくださるに違いないと考えました。(サム一 25:24,26,28,33,34)誰かが重大な過ちを犯しそうだと気付いたなら,アビガイルに倣い,勇気を奮ってそのことを指摘しましょう。(詩 141:5)敬意を示しながらも大胆に語る必要があります。その人のことを思って忠告するなら,真の友になれます。(格 27:17)
9‐10. 長老はどんなことをわきまえながら忠告を与えますか。
9 とりわけ長老は勇気を奮い,道を踏み外した兄弟姉妹を正さなければなりません。(ガラ 6:1)長老は,自分も不完全で忠告が必要な場合があることを謙遜に認めています。だからといって,矯正すべき人を戒めずに放置することはしません。(テモ二 4:2。テト 1:9)忠告を与える時は,辛抱強く教え,上手に話すよう努めます。兄弟を愛しているので助けます。(格 13:24)とはいえ,長老が一番気に掛けるのはエホバを敬うことです。エホバの基準を守り,会衆の清さが損なわれないようにします。(使徒 20:28)
10 ここまでで,話すべき時について考えました。一方,黙っているべき時もあります。黙っていることを難しく感じるどんな状況がありますか。
黙っているべき時
11. ヤコブはどんな例えを用いましたか。この例えが適切なのはなぜですか。
11 話すべきでないことを話さない,というのは必ずしも簡単ではありません。聖書の筆者ヤコブは,その難しさをこう説明しています。「言葉で過ちを犯さない人がいれば,それは完全な人で,体全体を制御できます。馬を従わせるために口にくつわをかませれば,馬の体全体を操れます」。(ヤコ 3:2,3)くつわは,手綱につないで馬の口にかませます。手綱を引くことにより,馬を思い通りの方向に進ませたり停止させたりできます。手綱を離すなら,馬は暴走し,馬も乗っている人も大けがをします。話し方もコントロールしないなら,大きな被害が及びます。手綱を引くかのように舌を制御し,黙っているべきどんな状況があるでしょうか。
12. 誰と話す時に舌を制御すべきですか。
12 兄弟か姉妹が内密にすべき情報を持っている時,あなたはどうしますか。私たちの活動が禁止されている国で奉仕している人に会ったとします。どのように伝道し集会を開いているか,詳しく知ろうとしますか。これは舌を制御すべき時です。もちろん,悪気はないでしょう。兄弟たちを心から気に掛けているので,様子を知りたいという気持ちも分からなくはありません。兄弟たちのために具体的に祈りたいとも思います。それでも,内密のことを知っている兄弟姉妹に圧力を掛けるのは,その人に対する愛の欠けた行為です。また,その人を信頼して働く現地の兄弟姉妹にとっても不親切なことです。禁令下にあり,ただでさえ大変な状況で働いている兄弟姉妹に余計な負担を掛けたくはありません。そのような土地で働く兄弟姉妹は,伝道や他の活動がどのように行われているかについての詳細が知られることを望んでいません。
13. 格言 11章13節にある通り,長老はどのように行動すべきですか。なぜですか。
13 とりわけ長老は,格言 11章13節の原則を守り,内密の事柄を漏らさないよう気を付けます。(読む。)長老が結婚している場合には注意が必要です。夫婦はよく意思を通わせ,本当の気持ちや心の奥にある思いや気掛かりなことを伝え合うなら強い絆を保てます。でも長老は,会衆の兄弟姉妹の「内密のこと」を明かしてはなりません。明かすなら信頼を失い,自分の良い評判を損ないます。会衆で責任ある立場に任命されている人は,「二枚舌を使わず」,信頼して話してくれた人を裏切りません。(テモ一 3:8)うわさ好きであってはなりません。長老は妻を愛しているなら,知る必要のない情報を漏らして妻に不必要な荷を負わせることはしません。
14. 長老の妻は,夫が良い評判を得られるようどんなことに気を配れますか。
14 妻は内密のことを話すよう夫に圧力を掛けてはなりません。夫の良い評判が損なわれることのないためです。圧力を掛けないなら,夫を困らせずに済みます。夫を信頼して話をした兄弟姉妹を敬うことにもなります。何よりもエホバに喜ばれます。会衆の平和と一致に貢献できるからです。(ロマ 14:19)
私たちが話す事柄を聞いてエホバはどう思うか
15. エホバはヨブの3人の友人のことをどう思いましたか。なぜですか。
15 ヨブ記から,いつ,どのように話すかについて多くを学べます。一連の悲惨な経験をしたヨブのもとに,4人の人がやって来ました。慰めや忠告を与えるためです。4人はかなりの間,黙ったままでした。しかし,そのうちの3人であるエリパズ,ビルダド,ツォファルは,その後の発言から読み取れる通り,ヨブをどのように力づけられるかを考えていたわけではありません。ヨブの間違いをどのように証明できるかを考えていたのです。3人の発言には,一部正しい内容もありました。しかし,ヨブやエホバについて語った事柄の多くは不親切か,事実に反するものでした。3人はヨブを容赦なく批判しました。(ヨブ 32:1‐3)エホバはどうしましたか。3人に強い怒りを抱きました。愚かなことをしたと責め,ヨブに祈ってもらうよう指示しました。(ヨブ 42:7‐9)
16. エリパズ,ビルダド,ツォファルの行動からどんな点を学べますか。
16 エリパズ,ビルダド,ツォファルの行動から幾つかの点を学べます。第一に,兄弟を批判すべきではありません。(マタ 7:1‐5)話す前に,相手の話をよく聞きましょう。そうして初めて兄弟たちの状況が分かります。(ペテ一 3:8)第二に,話す時は親切で正確な事柄を語りましょう。(エフェ 4:25)第三に,私たちが人にどのように話すかにエホバは注目しています。
17. エリフの対応からどんなことを学べますか。
17 次にヨブの所に来たのはエリフです。エリフはアブラハムの遠い親戚です。ヨブと3人の友人の話をよく聞いていました。しかも,細心の注意を払っていたことがうかがえます。ヨブの気持ちを思いやりながらも,正しい考え方ができるよう率直な忠告を与えているからです。(ヨブ 33:1,6,17)エリフはエホバが誉れを受けることを一番気に掛けていました。自分や他の人が誉れを受けることを考えていたのではありません。(ヨブ 32:21,22; 37:23,24)エリフの対応から,黙って話を聞くべき時があることを学べます。(ヤコ 1:19)忠告を与える時は,自分に注目させるのではなく,エホバが栄光を受けることを一番気に掛けるべきです。
18. 話す能力が与えられていることへの感謝をどのように示せますか。
18 話す能力をエホバからの贈り物と見ている人は,いつ,どのように話すかに関する聖書の勧めに従います。賢い王ソロモンは,エホバに導かれてこう書きました。「適切な時に話される言葉は,銀の器の中の金のリンゴのようだ」。(格 25:11)人の話をよく聞き,話す前に考えましょう。そうすれば私たちが語る言葉は,高価で美しい,金のリンゴの装飾品のようになります。口数が多いか少ないかにかかわらず,人の励みになり,エホバに喜ばれる言葉を語れます。(格 23:15。エフェ 4:29)話す能力を与えてくださったエホバへの感謝を表す,何よりの方法です。
93番の歌 『あなた方の光を輝かせなさい』
^ 5節 聖書には,話すべき時と黙っているべき時とを判断するための原則が示されています。聖書の原則を理解し,当てはめるなら,エホバに喜ばれる話し方ができます。
「ものみの塔」(研究用)