研究記事50
立派な羊飼いの声を聞く
「その羊たち[は]私の声を聞きます」。ヨハネ 10:16
23番の歌 エホバはわたしたちの力
何を学ぶか *
1. イエスが自分の弟子たちを羊に例えたのはなぜですか。
イエスは,自分と弟子たちとの関係を羊飼いと羊の間の強い絆に例えました。(ヨハ 10:14)これはぴったりの例えです。羊は羊飼いのことを知っていて,羊飼いの声に従うからです。ある人は,旅先での経験についてこう述べました。「羊の写真を撮りたいと思い,近くに来させようとしましたが,その羊はわたしたちの声を知らないのでついて来ませんでした。ところが一人の羊飼いの少年がやって来て,羊を呼ぶや否や,彼の後について行くのです」。
2‐3. (ア)どうすればイエスの声を聞くことができますか。(イ)この記事と次の記事ではどんなことを考えますか。
2 羊飼いであるイエスも,羊である弟子たちについて,「その羊たち[は]私の声を聞きます」と言いました。(ヨハ 10:16)でも,私たちはどうすれば,今は天にいるイエスの声を聞けるのでしょうか。1つの方法は,イエスの教えの通りにすることです。(マタ 7:24,25)
3 この記事と次の記事では,立派な羊飼いであるイエスの教えについて取り上げます。イエスは,私たちがやめるべきことと行うべきことについて教えました。まずは,やめるべき2つの点を考えてみましょう。
「心配して気をもむのをやめなさい」
4. ルカ 12章29節によると,どんなことが原因で「心配して気をもむ」ことがありますか。
4 ルカ 12:29を読む。イエスは弟子たちに,生きていくのに必要な物について「心配して気をもむのをやめなさい」と言いました。私たちは,イエスの教えが正しく,良い結果をもたらすことを知っているので,その通りにしたいと思っています。でも,時にはそうするのがとても難しいことがあります。なぜでしょうか。
5. どんな場合に,生きていくのに必要な物について心配になるかもしれませんか。
5 衣食住など,生きていくのに必要な物について心配になることがあるかもしれません。経済状況が厳しい国に住んでいる場合,家族を養っていくのは大変なこともあります。また,一家の稼ぎ手の死によって,残された家族がお金に困るということもあります。新型コロナウイルスが流行したせいで,失業したり収入を得られなくなったりしたかもしれません。(伝 9:11)こうした難しい状況の中で,どうすればイエスの教えに従って,心配するのをやめることができるでしょうか。
6. ある時,ペテロはどんなことを経験しましたか。
6 ある時,ペテロとほかの使徒たちは暴風で荒れるガリラヤ湖を舟で渡ろうとしていました。その時,イエスが湖の上を歩いているのを見ました。そこでペテロは,「主よ,あなたでしたら,水の上を歩いてそちらに行くよう私に命令してください」と言いました。イエスから「来なさい!」と言われると,ペテロは舟から出て,「水の上を歩いてイエスの方に向か」いました。しかし,その後何が起きたでしょうか。ペテロは「暴風を見て怖くなり,沈み始めた時,『主よ,助けてください!』と叫」びました。そこで,イエスは手を伸ばしてペテロを助けました。注目すべきなのは,ペテロがイエスに目を向けていた間は大荒れの水の上を歩けた,ということです。しかし,嵐を見た時,恐れと疑いに負けて沈み始めました。(マタ 14:24‐31)
7. ペテロの例からどんなことを学べますか。
7 私たちは,ペテロの例から大切な点を学ぶことができます。ペテロは舟から出て水の上に立った時,自分が嵐に気を取られて沈み始めるとは考えもしなかったでしょう。水の上を歩いてイエスの所まで行きたい,と思っていました。でも,ペテロはイエスに目を向け続けることができませんでした。ペテロが水の上を歩くには信仰が必要でした。同じように,私たちが問題に立ち向かうためにも信仰が必要です。エホバやエホバの約束から目をそらしてしまうなら,私たちも“沈み”始めてしまうでしょう。どんな嵐が生じるとしても,エホバが必ず助けてくださるということを忘れてはいけません。そのために何ができるでしょうか。
8. どうすれば必要な物について心配し過ぎないでいられますか。
8 問題について心配するのではなく,エホバを信頼することが大切です。愛情深いお父さんエホバは,私たちがエホバに仕えることを第一にするなら,生きていくのに必要な物を与える,と約束しています。(マタ 6:32,33)そして,その約束をこれまでずっと守ってきました。(申 8:4,15,16。詩 37:25)エホバは,鳥や花をさえ世話しています。そうであれば,私たちは食べる物や着る物について心配する必要はないはずです。(マタ 6:26‐30。フィリ 4:6,7)親は子供を愛しているので,子供に必要な物を与えます。同じように,お父さんエホバは私たちを愛しているので,私たちに生きていくのに必要な物を与えてくださいます。エホバは私たちを必ず支えてくださるのです。
9. ある夫婦の経験からどんなことを学べますか。
9 エホバが私たちに必要な物を与えてくださることを示す経験を考えてみましょう。全時間奉仕を行っている1組の夫婦は,古い車で1時間余りかけて,難民センターにいる姉妹たちを迎えに行き,集会に行きました。兄弟はこう言います。「集会後,姉妹たちを食事に招待しました。でも誘った後になって,出してあげる物が何もないことに気付きました」。その後,どうなったでしょうか。「家に帰ると,ドアの前に食べ物がたくさん入った袋が2つ置いてありました。誰が置いてくれたのかは分かりませんでした。エホバの助けを感じました」。別の時のことですが,その古い車が故障してしまいました。奉仕を行うために,2人には車がどうしても必要でしたが,修理するためのお金はありませんでした。修理工場に車を持っていくと,1人の男性がやって来て,この車は誰のですか,と尋ねてきました。兄弟は,自分の車であること,そして修理が必要であることを伝えました。すると,男性はこう言いました。「壊れていても構いません。この車は,妻が欲しいと思っていた車なんです。しかも,この色を探していました。いくらで譲ってもらえますか」。こうして兄弟は,別の車を買えるだけのお金を手に入れることができました。兄弟はこう言います。「その日の終わりにどんな気持ちだったかは,想像していただけると思います。これは決して偶然ではありません。エホバが助けてくださったんです」。
10. 詩編 37編5節からすると,必要な物について心配しなくてよいのはどうしてですか。
10 立派な羊飼いであるイエスの言うことに従い,生きていくのに必要な物について心配し過ぎるのをやめ,エホバが支えてくださることを確信しましょう。(詩編 37:5を読む。ペテ一 5:7) 5節で取り上げた状況について考えてみてください。エホバはこれまで,家族の頭や雇い主を通して,私たちが毎日必要な物を得られるように助けてくれたことでしょう。家族の頭が亡くなったり,失業したりした場合には,ほかの方法で助けてくださいます。たとえ方法が変わるとしても,エホバは必ず助けてくださるのです。では次に,立派な羊飼いがやめるよう教えている別の点について考えてみましょう。
「裁くのをやめなさい」
11. マタイ 7章1,2節によると,イエスはどんなことをやめるよう教えましたか。そうするのが簡単でないのはなぜですか。
11 マタイ 7:1,2を読む。イエスは,不完全な人間が人の欠点に注目しがちであることを知っていました。それで,「裁くのをやめなさい」と教えました。私たちは,仲間の兄弟姉妹を裁かないようにする必要がありますが,完全ではないので,欠点に目が向いてしまうことがあります。では,どうすればよいでしょうか。イエスの言うことに従い,人を裁くのをやめるよう真剣に努力することです。
12‐13. ダビデに対するエホバの見方について考えることは,人を裁くのをやめる上でどのように役立ちますか。
12 エホバの手本について考えるのは良いことです。エホバは人の良いところに注目しています。ダビデの場合がそうでした。ダビデは重大な間違いを犯しました。例えば,バテ・シバと姦淫を犯し,バテ・シバの夫であるウリヤが死ぬように仕組みました。(サム二 11:2‐4,14,15,24)その結果,自分だけでなく,ほかの妻たちや家の者たちも傷つけました。(サム二 12:10,11)また別の時には,エホバから命じられていなかったにもかかわらず,兵士たちの数を数えました。そのようにして,軍隊の大きさに誇りを抱き,エホバよりも軍隊を信頼していることを示してしまったのです。その結果,7万人ものイスラエル人が伝染病で死にました。(サム二 24:1‐4,10‐15)
13 もし,あなたがその時イスラエルにいたら,ダビデのことをどう思ったでしょうか。エホバの憐れみを受けるには値しない,と考えたでしょうか。エホバはそのようには考えませんでした。ダビデがそれまで示してきた忠実さや,本当に悔い改めている様子に目を向けました。そして,重大な罪を犯したダビデを許したのです。エホバは,ダビデがご自分を深く愛していることや,正しいことを行いたいと思っていることを知っていました。エホバは,私たちの良いところに目を留めてくださるのです。そのことを本当に感謝できるのではないでしょうか。(王一 9:4。代一 29:10,17)
14. 人を裁くのをやめる上で,どんな見方をすることが助けになりますか。
14 エホバが私たちに完全さを期待していないのですから,私たちも他の人に完全さを期待するのではなく,良いところに目を向けるべきです。誰かのできていないところに注目して,あれこれ言うのは簡単かもしれません。でも,エホバと同じ考え方をする人は,人の不完全さに気付いていても仲良くやっていくことができます。加工されていないダイヤモンドは美しくありませんが,カットして磨くとどれほど美しくなるかが分かっている人には,とても貴重なものです。私たちはエホバとイエスに倣って,人のできていないところではなく,良いところに注目する必要があります。
15. どんな生活を送っているかを想像することは,人を裁かないようにする上で,どのように役立ちますか。
15 人を裁くのをやめるために,人の良いところに注目することに加えて,ほかにもできることがあるでしょうか。どんな生活を送っているかを想像してみることです。ある時,神殿にいたイエスは,貧しいやもめが小額の硬貨2枚を寄付箱に入れるのを目にしました。イエスは,「どうしてもっと多く寄付しなかったのか」とは言いませんでした。寄付の額に注目するのではなく,やもめがどんな気持ちで寄付をしたか,普段どんな生活をしているかに目を向けたのです。そして,できる限りのことをしたこのやもめを褒めました。(ルカ 21:1‐4)
16. ベロニカ姉妹の経験からどんなことを学べますか。
16 人を裁くのをやめる上で,どんな生活を送っているかを考えることがとても大切であることは,ベロニカ姉妹の経験からも分かります。姉妹の会衆には,1人で息子を育てている姉妹がいました。ベロニカ姉妹はこう言っています。「その親子は集会や奉仕にいつも参加しているわけではなかったので,私はあまり良い印象を持っていませんでした。でも,その姉妹と一緒に奉仕をした時,息子が自閉症で,いろいろ大変であることを話してくれました。生活していく面でも,2人でエホバに仕える面でも,一生懸命頑張っているようでした。息子の調子によっては,別の会衆の集会に行かなければならないこともあったようです。姉妹がそんな苦労をしているとは知りませんでした。姉妹がエホバに仕えるために本当によくやっていることを知って,偉いな,と思いました」。
17. ヤコブ 2章8節はどんなことを教えていますか。どうすればその言葉の通りにできますか。
17 もし自分が仲間の誰かを裁いていることに気付いたなら,どうしたらよいでしょうか。私たちは兄弟姉妹を愛さなければならない,ということを思い起こしましょう。(ヤコブ 2:8を読む。)裁くのをやめることができるよう助けてください,と真剣にエホバに祈ることもできます。そのように祈ることに加えて,自分の方から近づいてその人に話し掛けるようにしましょう。そうすれば,相手のことをもっとよく知ることができます。奉仕に誘ったり食事に招待したりするのも良いことです。相手のことが一層よく分かるようになると,エホバやイエスに倣ってその人の良いところに目を向けることができるようになります。そうするなら,裁くのをやめるように,という立派な羊飼いの教えに従っていることになります。
18. 立派な羊飼いの声を聞いていることをどのように示せますか。
18 羊が羊飼いの声を聞くのと同じように,イエスの弟子たちはイエスの声を聞きます。生きていくのに必要な物について心配することや,人を裁くことをやめるよう努力するなら,エホバとイエスは良い結果になるよう助けてくれます。私たちは,「小さな群れ」の羊であれ,「ほかの羊」であれ,これからも立派な羊飼いの声を聞き,それに従っていきましょう。(ルカ 12:32。ヨハ 10:11,14,16)次の記事では,イエスが弟子たちに行うよう教えた,2つの点について考えます。
53番の歌 一致して共に働く
^ 5節 イエスの羊がイエスの声を聞くというのは,弟子たちがイエスの教えを学び,その教えの通りにする,ということです。この記事では,イエスの教えのうち2つを考えます。生きていくのに必要な物について心配するのをやめることと,ほかの人を裁くのをやめることです。どうすればこうした教えの通りにできるかも取り上げます。
「ものみの塔」(研究用)