1. マタイ 24章9節からすると，私たちが世の人々から憎まれても驚くべきでないのはなぜですか。

エホバは，愛する能力と愛されたいという願いを持つ者として人間を創造しました。それで私たちは，誰かから憎まれると傷つきます。恐れを感じることさえあります。ヨーロッパに住むジョルジーナ姉妹はこう言います。「私は14歳の時，エホバに仕えているという理由で母から憎まれるようになりました。見捨てられたように感じ，自分はいい子ではないのかもしれないと思うようになりました」。 * また，ダニーロ兄弟はこう書いています。「エホバの証人だという理由で，兵士たちから殴られ，侮辱され，脅された時，本当に恐ろしく感じ，自尊心を傷つけられました」。このように，憎まれて傷つくことがあっても，私たちは驚きません。イエスが予告していた通りだからです。（マタイ 24:9を読む。）

2‐3. イエスに従う人たちが憎まれるのはなぜですか。

² イエスに従う人たちは，世の人々から憎まれます。なぜなら，イエスと同じく，「世の人々のようではない」からです。（ヨハ 15:17‐19）それで，政府に敬意を示しますが，政党を支持したり，国旗に敬礼したり，国歌を歌ったりはしません。エホバだけを崇拝します。サタンとサタンの「子孫」がどれほど反論するとしても，神に人類を治める権利があることを認め，支持しています。（創 3:1‐5，15）そして，神の王国だけが人類の問題を解決できることや，敵対する者たち全てをその王国が間もなく滅ぼすことを人々に伝えています。（ダニ 2:44。啓 19:19‐21）これは温厚な人たちにとっては良い知らせですが，悪人にとっては悪い知らせです。（詩 37:10，11）

³ 私たちはさらに，神の正しい基準に従って生きているという理由でも憎まれます。この基準は，世の人々の腐敗した道徳基準とは全く異なっています。例えば，多くの人たちは，神によって滅ぼされたソドムとゴモラの人たちがしていたようなひどく不道徳な行いを悪いことだとは思わなくなっています。（ユダ 7）私たちは，聖書の基準に従ってこうした行いを退けるので，人々からあざけられたり，心が狭いと言われたりします。（ペテ一 4:3，4）

4. 人々から憎まれる時，何が耐え忍ぶ力となりますか。

⁴ 人々から憎まれ，あざけられる時，何が耐え忍ぶ力となりますか。エホバが私たちを助けてくれるという強い信仰です。信仰は盾のように，「邪悪な者の火矢を全て消すことができます」。（エフェ 6:16）しかし，信仰だけでは十分ではありません。愛も必要です。なぜでしょうか。愛があれば，「いら立」つことはなく，あらゆるつらいことを耐え忍ぶことができるからです。（コリ一 13:4‐7，13）では，エホバへの愛，兄弟姉妹への愛，また敵への愛が，憎しみを耐え忍ぶ上でどのように力となるかを考えましょう。

5. イエスはお父さんエホバを愛していたので，どうすることができましたか。

⁵ イエスは，敵に殺される前の晩，忠実な弟子たちにこう言いました。「私[は]父を愛している[ので]，父が命じた通りにしています」。（ヨハ 14:31）イエスはエホバを愛していたので，厳しい試練を耐え忍ぶことができました。私たちもエホバを愛するなら，同じように試練を耐え忍ぶことができます。

6. ローマ 5章3‐5節によると，エホバに仕える人たちは，世の人々から憎まれてもどうしますか。

⁶ エホバに仕える人たちも，神への愛によって迫害を耐え忍んできました。例えば，使徒たちはユダヤ人の最高法廷から伝道をやめるようにと厳しく命じられた時，神への愛に動かされて，「人ではなく神に従」いました。（使徒 5:29。ヨハ一 5:3）こうした極めて強い愛は，現代の兄弟姉妹にとっても力となっています。多くの仲間たちは，残酷な政府から圧力をかけられても，しっかり立ち，忠実を保っています。世の人々から憎まれるとしても，気落ちするのではなく，喜びます。（使徒 5:41。ローマ 5:3‐5を読む。）

7. 家族から反対される時，どうすべきですか。

⁷ 自分の家族から反対されることは，非常に大きな試練となるかもしれません。私たちがエホバについて学びたいと思うようになると，家族の中には，私たちがだまされていると考える人や，頭がおかしくなったと思う人がいるかもしれません。（マル 3:21）激しく反対する人もいるでしょう。しかし，こうした反応は意外なものではありません。「自分の家の人たちが敵になる」とイエスは言いました。（マタ 10:36）もちろん，私たちは親族からどう思われるとしても，親族を敵と見なすことはありません。エホバへの愛が深まるほど，人々への愛も深まるからです。（マタ 22:37‐39）とはいえ，人を喜ばせるためだけに聖書の基準を無視して妥協することは決してしません。

8‐9. ジョルジーナ姉妹が厳しい反対を受けても忠実を保つ上で，何が力となりましたか。

⁸ 前に出てきたジョルジーナ姉妹は，母親から厳しい反対を受けても，忠実を保つことができました。こう言っています。「母と私がエホバの証人と聖書の勉強を始めてから半年後，私が集会に行きたいと言うと，母は急に態度を変えました。母は背教者と連絡を取っていたのです。そして，背教者の考えを持ち出して，私を攻撃してきました。私を侮辱したり，髪を引っ張ったり，首を絞めたり，出版物を捨てたりもしました。私は15歳でバプテスマを受けました。母は私がエホバに仕えるのをやめさせようとして，私を施設に入れました。そこは反抗的な10代の子たちが入れられるような場所で，薬物に手を出した人や犯罪をした人もいました。自分を愛し気遣ってくれるはずの人から反対されるのは，本当につらいことです」。

⁹ ジョルジーナ姉妹が耐え忍ぶ上で，何が力となったでしょうか。こう語っています。「母からの反対が始まったのは，私がちょうど聖書全体を読み終えた日でした。それで，これが真理だと心から確信し，エホバをとても身近に感じていました。私の祈りを，エホバはいつも聞いてくれました。施設にいた時には，1人の姉妹が私を家に呼んで，聖書の勉強ができるようにしてくれました。会衆の兄弟姉妹からも力をもらいました。家族のようにかわいがってくれたんです。どんな人から反対されるとしても，エホバの方がその人よりずっと強いということを実感しました」。

10. エホバが何をしてくれることを確信できますか。

¹⁰ 使徒パウロは，どんなものも「主であるキリスト･イエスを通して示される神の愛から私たちを引き離すことはでき」ない，と書きました。（ロマ 8:38，39）一時的につらい思いをするとしても，エホバはいつもそばにいて，私たちを慰め，力づけてくれます。そして，ジョルジーナ姉妹の経験から分かる通り，エホバは会衆の兄弟姉妹によっても助けてくれるのです。

11. ヨハネ 15章12，13節でイエスが教えた愛は，どのようにイエスに従う人たちの力となりましたか。

¹¹ イエスは亡くなる前の晩，弟子たちに互いを愛するよう教えました。（ヨハネ 15:12，13を読む。）自己犠牲的な愛が，一致を保ち，世の人々からの憎しみを耐え忍ぶ力となることを知っていたからです。テサロニケ会衆の例を考えてみましょう。テサロニケの兄弟姉妹は，会衆ができたばかりの時から迫害を経験していましたが，それでも忠実さと愛の手本となっていました。（テサ一 1:3，6，7）そのような人たちに対してパウロは，「いっそう」愛し合うように勧めました。（テサ一 4:9，10）愛は気落ちしている人を慰め，弱い人を支える力となるからです。（テサ一 5:14）テサロニケのクリスチャンはパウロから教えられた通りにしました。それでパウロは，約1年後，「テサロニケのクリスチャンへの第二の手紙」の中で，「一人一人がいっそう愛し合うようになっている」と書くことができました。（テサ二 1:3‐5）愛は，テサロニケのクリスチャンが困難や迫害を耐え忍ぶ力となったのです。

12. ある国で戦争が起きた時，兄弟姉妹はどのように互いへの愛を示しましたか。

¹² 前に出てきたダニーロ兄弟と妻の経験を考えてみましょう。2人の住む町が戦争に巻き込まれた時も，2人は集会に出席し続け，できる限り伝道を行い，持っていた食べ物を兄弟姉妹と分け合いました。そんなある日，武装した兵士たちがダニーロ兄弟の家にやって来ました。ダニーロ兄弟はこう言います。「兵士たちは私に，信仰を捨てるようにと迫りました。それを拒むと，兵士たちは私を殴り，私を撃つふりをして，私の頭上に向かって発砲しました。そして，『今度来た時には，お前の妻をレイプしてやる』と脅して去っていきました。でも兄弟たちは，すぐに私たちを列車に乗せ，別の町に逃げられるようにしてくれました。みんなが示してくれた愛は決して忘れません。到着すると，その町の兄弟たちが食べる物を準備し，仕事や家を探す手伝いもしてくれました。おかげで，戦闘地域から逃げてきた仲間をかくまうこともできました」。こうした経験から，仲間への愛が憎しみを耐え忍ぶ力となることが分かります。

13. 人々から憎まれるとしても，エホバに仕え続ける上で，聖なる力はどのように助けとなりますか。

¹³ イエスは自分に従う人たちに，敵を愛するよう教えました。（マタ 5:44，45）これは決して簡単なことではありません。でも，神の聖なる力の助けがあれば可能です。聖なる力は，愛，辛抱強さ，親切，温和，自制などを生み出します。（ガラ 5:22，23）これらは，憎しみを耐え忍ぶ力となります。多くの人は，エホバに仕えている夫，妻，子供，近所の人がこうした性質を示しているのを見て，反対するのをやめました。バプテスマを受けて私たちの仲間になった人も，大勢います。ですから，エホバに仕えているというだけの理由で私たちを憎む人たちを愛するのが難しいと感じるなら，聖なる力を祈り求めましょう。（ルカ 11:13）そして，神に従うなら常に最善の結果になる，ということを確信してください。（格 3:5‐7）

14‐15. ヤスミーン姉妹は，夫からひどく反対されても夫を愛しました。そうする上で，ローマ 12章17‐21節はどのように役立ちましたか。

¹⁴ 中東に住むヤスミーン姉妹の例を考えてみましょう。姉妹がエホバの証人になった時，夫は妻がだまされていると思って，神に仕えるのをやめさせようとしました。妻を侮辱したり，親族や聖職者や魔術師を呼んで妻を脅させたり，家族をばらばらにしていると非難したりしました。集会中に兄弟たちを大声でののしることさえしました。ヤスミーン姉妹は，ひどい仕打ちを受けていたのでよく泣いていました。

¹⁵ 王国会館では，兄弟姉妹がヤスミーン姉妹を慰め，力づけました。長老たちは，ローマ 12章17‐21節の言葉を当てはめるよう勧めました。（読む。）姉妹はこう言います。「簡単ではありませんでしたが，祈ってエホバに助けを求め，聖書の言葉を当てはめるためにベストを尽くしました。夫が意地悪をしてキッチンに土を投げ込んだ時には，きれいに掃除しました。侮辱されても，穏やかに接しました。夫が病気になった時には，優しく世話をしました」。

16‐17. ヤスミーン姉妹の例から何を学べますか。

¹⁶ ヤスミーン姉妹は，夫に愛を示したので報われました。こう語っています。「夫は，私がいつも正直に話していることが分かってからは，もっと信頼してくれるようになりました。宗教についての話も敬意を持って聞いてくれますし，家を平和な所にするために協力してくれるようにもなりました。今では喜んで私を集会に送り出してくれます。わが家の雰囲気はびっくりするほど良くなって，穏やかな毎日を過ごせています。いま願っているのは，夫が聖書の真理に心を開き，一緒にエホバに仕えてくれるようになることです」。

¹⁷ ヤスミーン姉妹の例から，「愛は全てのことに耐え，……全てのことを希望し，全てのことを忍耐」する，ということが分かります。（コリ一 13:4，7）確かに，愛は憎しみよりもずっと強いものです。愛は心を動かします。そして，私たちが愛を示し続けるなら，エホバは喜んでくれます。しかし，反対する人たちが私たちを憎み続けるとしても，喜ぶことができます。なぜでしょうか。

18. 憎まれても喜べるのはなぜですか。

¹⁸ イエスは，「いつでも人々があなたたちを憎むとき，……あなたたちは幸福です」と言いました。（ルカ 6:22）私たちは，人から憎まれたいと思っているわけではありません。殉教者になろうとしているわけでもありません。では，憎まれても喜べるのはなぜでしょうか。3つの理由があります。1つ目に，憎しみを耐え忍ぶなら，神に喜んでもらえます。（ペテ一 4:13，14）2つ目に，信仰が試されて強くなります。（ペテ一 1:7）3つ目に，永遠の命という非常に貴重な報いを得ることができます。（ロマ 2:6，7）

19. 使徒たちが打ちたたかれても喜べたのはなぜですか。

¹⁹ イエスが復活して間もなく，使徒たちはイエスが言っていた幸福を経験しました。打ちたたかれ，伝道をやめるよう命じられても喜んだのです。なぜでしょうか。「イエスの名のために辱められるという栄誉を与えられた」からです。（使徒 5:40‐42）敵からの憎しみを恐れる気持ちよりも，主人であるイエスへの愛の方が強かったのです。使徒たちはその愛を，良い知らせを広め続けることによって示しました。現代でも，大勢の兄弟姉妹が難しい状況の中で忠実にエホバに仕え続けています。エホバがそうした働きや神の名に対する愛を忘れたりはされないことを知っているからです。（ヘブ 6:10）

20. 次の記事ではどんなことを考えますか。

²⁰ この体制が続く限り，私たちは世の人々から憎まれます。（ヨハ 15:19）でも，恐れる必要はありません。次の記事で考える通り，エホバはご自分に忠実に仕える人たちを「強くしてくださり，……守ってくださいます」。（テサ二 3:3）ですからこれからも，エホバへの愛，兄弟姉妹への愛，また敵への愛を示し続けていきましょう。そうすれば，私たちの一致を保ち，信仰を強めることができます。エホバをたたえることもできます。そして，愛が憎しみよりもはるかに強いということを証明できるのです。