研究記事25

「それら目立たない人」を傷つけないようにしましょう

「それら目立たない人」を傷つけないようにしましょう

「それら目立たない人のうち一人も軽く見ないようにしなさい」。マタイ 18:10

39番の歌 わたしたちの持つ平和

を学ぶか *

1. エホバは,私たち一人一人のためにどんなことをしてくださいましたか。

エホバは,私たち一人一人を引き寄せてくださいました。(ヨハ 6:44)それがどういうことか,考えてみてください。エホバは,世界中の何十億もの人を注意深く調べ,あなたが素晴らしいものを持っているのをご覧になりました。それは,エホバを愛するようになる誠実な心です。(代一 28:9)エホバは,あなたのことを知っていて,理解していて,愛しています。本当にうれしいことではないでしょうか。

2. エホバが私たち一人一人のことを気に掛けていることは,イエスの例えからどのように分かりますか。

2 エホバは,あなたのことも仲間の兄弟姉妹一人一人のことも,深く気に掛けています。この点を示すために,イエスはエホバを羊飼いに例えました。100匹の羊のうち1匹が群れから迷い出るなら,羊飼いはどうするでしょうか。「99匹を山に残し,迷い出ている羊を捜しに出掛け」ます。そして羊を見つけると,叱ったりはせずに喜びます。この例えからどんなことが分かりますか。どの羊もエホバにとって大切だ,ということです。イエスはこう言いました。「天にいる私の父はそれら目立たない人の1人が滅びることも望んでいません」。(マタ 18:12‐14

3. この記事ではどんなことを考えますか。

3 私たちも,兄弟姉妹の誰かをがっかりさせるようなことは決してしたくありません。では,どうすれば仲間を傷つけることを避けられるでしょうか。また,誰かに傷つけられた場合は,何ができますか。この記事では,こうした点について考えます。でもその前に,マタイ 18章に出てくる,「それら目立たない人」について,もう少し考えましょう。

「それら目立たない人」とは誰のことか

4. 「それら目立たない人」とは,誰のことですか。

4 「それら目立たない人」とは,年齢に関係なく,イエスの弟子全員のことです。イエスの弟子は,たとえ何歳であっても,イエスから進んで教えてもらおうとしているという意味で,「幼い子供のよう」です。(マタ 18:3)生まれた場所や育った環境はさまざまで,見方や性格もいろいろですが,キリストに信仰を抱いているという点は共通しています。そして,イエスは弟子たち全てを心から愛しています。(マタ 18:6。ヨハ 1:12

5. エホバはご自分に仕える人が傷つくのを見ると,どう感じますか。

5 「それら目立たない人」は全て,エホバにとっても大切な存在です。エホバの気持ちを理解するために,私たちが子供たちに対してどんな気持ちを抱くか,考えてみましょう。子供たちは私たちにとって大切な存在で,守ってあげたいという気持ちになります。子供たちには,大人ほど力や経験や知恵がないからです。誰かが苦しむのを見るのは嫌なことですが,特に子供たちが苦しむのを見ると,嫌な気持ちになるどころか,怒りさえ感じます。同じようにエホバも,私たちを守りたいと思っています。そして,ご自分に仕える人が傷つくのを見ると,嫌な気持ちになるどころか,怒りさえ感じます。(イザ 63:9。マル 9:42

6. コリント第一 1章26‐29節によると,イエスの弟子たちは世の中の人々からどう見られていますか。

6 ほかにもどんな意味で,イエスの弟子たちは「目立たない人」ということができるでしょうか。世の中ではどんな人が重視されていますか。裕福な人や有名な人や権力を持っている人です。しかし,イエスの弟子たちの多くはそうではないので,人々から重視されず,取るに足りない「目立たない人」と見なされています。コリント第 1:26‐29を読む。)でも,エホバの見方は違います。

7. エホバは,私たちが兄弟姉妹に対してどんな気持ちを持つことを望んでいますか。

7 エホバは,ご自分に長年仕えてきた人であれ,真理に新しい人であれ,ご自分を崇拝している全ての人を愛しています。エホバは兄弟姉妹全てのことを大切に思っているので,私たちも仲間のことを同じように大切に思うべきです。私たちは,「信仰で結ばれた兄弟たち」の一部ではなく,「を愛し」たいと思っています。(ペテ一 2:17)それで,兄弟姉妹を守って助けるためにできることは何でもしたい,と思うはずです。誰かを傷つけてしまったことに気付いたなら,なかったことにしようとすべきではありません。その人に対して,「考え過ぎだ」とか,「忘れるべきだ」と思ってもなりません。人が傷つく原因にはどんなものがありますか。兄弟姉妹の中には,育った環境などのために,なかなか自信が持てない人がいます。また,真理に新しいために,人の不完全さにどう対処したらよいか分からない,という人もいます。いずれにしても,私たちは良い関係を取り戻すために,できる限りのことをしなければなりません。一方,人の言葉や行動に傷つくことがよくあるなら,自分の中に改善すべき点があることを認めて努力する必要があります。そうすれば,穏やかな気持ちでいることができ,仲間とも良い関係でいられます。

他の人の方が上だと考える

8. イエスの弟子たちは,当時一般的だったどんな態度の影響を受けていましたか。

8 イエスが「それら目立たない人」について話したのはなぜでしょうか。弟子たちから次のように尋ねられたからです。「天の王国ではいったい誰が一番偉いのですか」。(マタ 18:1)当時のユダヤ人の多くは,立場や地位を非常に重視していました。ある学者はこう述べています。「人が生きるのも死ぬのも,名誉,良い評判,名声,称賛,敬意などを求めてのことであった」。

9. イエスの弟子たちは何をする必要がありましたか。

9 ユダヤ人の文化には,競争心が深く根付いていました。イエスは,弟子たちがそうした考え方を除き去るために努力しなければならないことをよく知っていました。それでこう教えました。「あなたたちの間で一番偉い人は一番若い人のように,教え導く人は奉仕する人のようになりなさい」。(ルカ 22:26)私たちは,「自分より他の人の方が上だと考え」るなら,「一番若い人」のように行動することができます。(フィリ 2:3)そうした考え方ができるようになればなるほど,人を傷つけてしまうことは少なくなるでしょう。

10. 私たちはパウロのどんな助言を心に留める必要がありますか。

10 どの兄弟姉妹にも,自分より優れた点が何かしらあります。仲間の良いところに注目しているなら,このことを認めるのは難しくありません。使徒パウロがコリントのクリスチャンに与えた次の助言を,私たちも心に留める必要があります。「あなたの何が他の人より優れているのですか。あなたが持っているもので,もらったのではないものがあるのですか。もらったのであれば,どうしてもらったのではないかのように誇るのですか」。(コリ一 4:7)私たちは,人の注目を集めたいという気持ちや,自分の方が他の人よりも上であるという考え方に注意するべきです。素晴らしい話をする兄弟も,聖書レッスンを見つけるのが上手な姉妹も,自分ではなくエホバに賛美をもたらすようにしましょう。

「心から」許す

11. 王と奴隷についてのイエスの例えから何を学べますか。

11 イエスは,人を傷つけてはならないと弟子たちに警告したすぐ後に,王と奴隷についての例えを話しました。王は,奴隷が決して返せない多額の借金を取り消してあげました。しかし,この奴隷は仲間の奴隷のはるかに少額の借金を取り消そうとしませんでした。すると,王は憐れみを示さなかったこの奴隷を牢屋に入れました。この例えから何を学べますか。イエスはこう言いました。「もしあなたたち各自が仲間を心から許さないなら,天の父もこの主人と同じようにします」。(マタ 18:21‐35

12. 私たちが許そうとしないなら,周りの人を傷つけることになってしまいます。どうしてそう言えますか。

12 この奴隷の行動は,奴隷自身だけでなく,周りの人も傷つけました。第一に,仲間の奴隷に憐れみを示さず,「借金を返すまで牢屋に入れ」ることによって,その人を傷つけました。第二に,その奴隷がしたことを見た仲間の奴隷たちを傷つけました。「仲間の奴隷たちは,起きた事柄を見て非常に悲しみ」ました。同じように,私たちの行動も周りの人に影響を与えます。誰かから嫌なことをされた時に許そうとしないなら,どうなるでしょうか。第一に,その人を許さなかったり,無視したり,愛を示さなかったりするなら,相手を傷つけることになります。第二に,私たちがその人とうまくいっていないのを見る会衆の人たちに嫌な思いをさせてしまいます。

あなたは怒りの気持ちを持ち続けますか。それとも心から許しますか。(13‐14節を参照。) *

13. 1人の開拓者の経験からどんなことを学べますか。

13 兄弟姉妹を許すなら,自分のためにもなりますし,周りの人のためにもなります。開拓者のクリスタル姉妹の場合もそうでした。 * 姉妹は会衆の1人の姉妹から傷つけられました。こう述べています。「その人の不親切な言葉にナイフで切られるような思いをしたことが何回もありました。奉仕の時に同じ車に乗るのも嫌でした。だんだんと熱意や喜びを失っていきました」。クリスタル姉妹は,自分が腹を立てるのは当然だと思っていました。でも姉妹は,怒りの気持ちや自分をかわいそうに思う気持ちに負けることはありませんでした。「ものみの塔」1999年10月15日号の「心から許しなさい」という記事にある,聖書に基づくアドバイスを謙遜に当てはめました。相手の姉妹を許したのです。クリスタル姉妹はこう言います。「今では,誰もが新しい人格を身に着けるために努力していることや,エホバが私たちを毎日惜しみなく許してくれていることが分かるようになりました。肩から大きな荷物を下ろしたような気持ちになり,喜びも取り戻すことができました」。

14. マタイ 18章21,22節によると,使徒ペテロはどんなことに難しさを感じていたようですか。私たちはイエスの答えから何を学べますか。

14 私たちは,人を許すべきだということを知っています。そして,そうするのは正しいことです。でも,難しさを感じることがあるかもしれません。使徒ペテロも時折そう感じることがあったようです。マタイ 18:21,22を読む。)では,どんなことが助けになるでしょうか。第一に,エホバがどれほど許してくれているかをじっくり考えましょう。(マタ 18:32,33)私たちは許されなくても当然なのに,エホバは惜しみなく許してくれています。(詩 103:8‐10)また,「私たち[は]愛し合わなければなりません」。ですから,許さないという選択肢はありません。私たちには仲間の兄弟姉妹を許す務めがあるのです。(ヨハ一 4:11)第二に,仲間を許すならどんな良い結果になるかをじっくり考えましょう。自分を傷つけた人を助け,会衆の一致を保ち,エホバとの友情を守り,肩の荷を下ろすことができるでしょう。(コリ二 2:7。コロ 3:14)第三に,許すよう私たちに求めている方エホバに祈りましょう。仲間の兄弟姉妹との平和な関係をサタンに引き裂かれることがないようにしてください。(エフェ 4:26,27)サタンのわなを避けるには,エホバの助けが必要です。

自分を傷つけないようにする

15. コロサイ 3章13節からすると,兄弟姉妹から気に障るようなことをされた場合,何をすべきですか。

15 では,仲間の兄弟姉妹から非常に気に障ることをされた場合はどうしたらよいでしょうか。平和を保つために,できることは何でも行ってください。エホバに熱烈に祈りましょう。自分に嫌な思いをさせた人のために,エホバの祝福を求めてください。「あなたが喜んでいるその人の良い面に注目できるよう助けてください」と祈ることもできます。(ルカ 6:28)されたことを忘れることができないなら,その人にどのようにして話したらよいかをよく考えましょう。その人はわざと傷つけるようなことをしたわけではない,と考えるのは大切です。(マタ 5:23,24。コリ一 13:7)相手と話す時には,動機を疑わないようにしましょう。平和な関係を取り戻すためにこちらが努力しても,相手が応じようとしない場合はどうでしょうか。「引き続き……我慢し」,諦めてしまわないようにしましょう。コロサイ 3:13を読む。)特に大切なのは,怒りの気持ちを持ち続けないようにすることです。そうしないと,エホバとの友情にひびが入ってしまうかもしれません。自分を傷つけるようなことは決してしないようにしましょう。そうすれば,誰よりもエホバを愛していることを示せるのです。(詩 119:165

16. 私たち一人一人にはどんな責任がありますか。

16 素晴らしいことに,私たちは「1人の羊飼い」の下で「1つの群れ」として,兄弟姉妹と共にエホバに仕えることができています。(ヨハ 10:16)「エホバの望まれることを行う組織」の本の165ページにはこうあります。「[一致]の恩恵を受けているあなたには,一致を保つことに貢献する責任があります」。それで私たちは,「兄弟姉妹を……エホバと同じ観点から見るように自分を訓練す」る必要があります。私たち一人一人は,「目立たない」としてもエホバにとって大切な存在です。あなたも兄弟姉妹に対してエホバと同じ見方をしていますか。エホバはあなたが仲間を助けるために行う全てのことに目を留め,高く評価しています。(マタ 10:42

17. どんなことを決意できますか。

17 私たちは仲間の兄弟姉妹を愛しています。ですから,仲間を傷つけるようなことは決してしないように決意しましょう。(ロマ 14:13)自分より兄弟姉妹の方が上だと考えます。仲間を心から許します。自分を傷つけるようなことはしません。ぜひ,「平和に役立つことや,励まし合う助けになることを何でも行いましょう」。(ロマ 14:19

77番の歌 快く許しなさい

^ 5節 私たちは完全ではないので,兄弟姉妹を傷つけるようなことを言ったりしたりしてしまうことがあります。そんな時,どうするでしょうか。良い関係を取り戻すために進んで努力しますか。すぐに謝るでしょうか。それとも,傷つく方が悪いと考えるでしょうか。また,ほかの人の言葉や行動が気になることがよくありますか。そういう場合,「これは私の性格だから仕方がない」と考えますか。それとも,弱さと認めて直そうとするでしょうか。

^ 13節 名前は変えてあります。

^ 54節 や挿: 1人の姉妹が会衆の姉妹に腹を立てている。姉妹たちは2人で問題を話し合い,仲直りして,その後は一緒に奉仕を楽しんでいる。