研究記事27

「希望を抱いてエホバを待て」

「希望を抱いてエホバを待て」

「希望を抱いてエホバを待て。勇気を出し,心を強くせよ」。詩編 27:14

24番の歌 報いを見つめなさい!

を学ぶか *

1. (ア)エホバは私たちにどんな希望を与えてくださっていますか。(イ)「希望を抱いてエホバを待[つ]」とはどういうことですか。(「語句の説明」を参照。)

 エホバは,ご自分を愛する全ての人に素晴らしい希望を与えてくださっています。間もなくエホバは,病気や悲しみや死をなくします。(啓 21:3,4)希望を抱いてご自分を待つ「温厚な人」を用いて,地球をパラダイスに変えていきます。(詩 37:9‐11)そして,私たち一人一人がご自分と温かい絆を持てるようにします。この絆は,私たちが今得ているものよりはるかに素晴らしいものです。何と貴重な希望なのでしょう。とはいえ,こうしたエホバの約束が実現すると信じられるのはどうしてでしょうか。エホバがこれまで約束を果たさなかったことは一度もありません。それで,私たちは「希望を抱いてエホバを待」つことができます。 *詩 27:14)エホバの目的が実現するのを,喜びを保ちながら辛抱強く待つことができるのです。(イザ 55:10,11

2. エホバはどんな約束を守ってきましたか。

2 エホバはこれまでずっと約束を守ってきました。際立った例を1つ考えてみましょう。「啓示」の書には,エホバがこの時代にあらゆる国や民族や言語の人を清い崇拝のうちに結び合わせるという約束が書かれています。今,このグループは「大群衆」と呼ばれています。(啓 7:9,10)大群衆は,人種や言語や生い立ちなどが異なる世界中の男性,女性,子供から成っているとはいえ,一致と平和を楽しんでいます。(詩 133:1。ヨハ 10:16)そして,伝道も熱心に行っています。関心を示す人がいるなら,いつでも,より良い世界の希望について喜んで語ります。(マタ 28:19,20。啓 14:6,7; 22:17)もし,あなたが大群衆の1人であるなら,この素晴らしい希望を大切にしていることでしょう。

3. サタンの狙いは何ですか。

3 悪魔サタンは私たちから希望を奪おうとしています。サタンの狙いは,私たちに「エホバは自分のことを気に掛けてくれていない。約束も守らない」と信じ込ませることです。もし,サタンに希望を奪われてしまうなら,私たちは勇気を失い,エホバに仕えることもやめてしまうかもしれません。これから考える通り,サタンはまさにこの手を使ってヨブを攻撃しました。

4. この記事ではどんなことを考えますか。(ヨブ 1:9‐12

4 この記事では次の点を考えます。サタンは,ヨブに忠誠心を捨てさせるためにどんなことを行いましたか。ヨブ 1:9‐12を読む。)ヨブの手本からどんなことを学べますか。エホバが私たちを愛し,約束を必ず守る方である,ということを忘れてはいけないのはなぜでしょうか。

サタンはヨブの希望を奪おうとした

5‐6. 短期間に,ヨブにどんなことが起きましたか。

5 ヨブは,とても順調な人生を送っていました。エホバとの良い関係を持っていました。たくさんの家族と仲良く暮らしていました。そして,とても裕福でした。(ヨブ 1:1‐5)でもヨブは,たった1日のうちに,ほとんど全てを失いました。まず,財産を失いました。(ヨブ 1:13‐17)そして,愛する子供たち全員が死んでしまいました。これがどれほどつらい出来事だったか,考えてみてください。親は子供を1人亡くしただけでも,本当に深い悲しみを味わいます。ですから,ヨブと妻は,10人の子供全員が死んでしまったと聞いた時,本当に大きな衝撃を受けたに違いありません。ヨブが衣服を引き裂き,地面に崩れ落ちたのも,無理もないことでした。(ヨブ 1:18‐20

6 サタンは次に,ヨブの健康を損ない,尊厳を奪いました。(ヨブ 2:6‐8; 7:5)以前のヨブは,人々から大いに敬われ,助言を求められることもありました。(ヨブ 31:18)でも,今では誰もヨブを相手にしません。兄弟や友人たちからも避けられ,召し使いさえ言うことを聞こうとしません。(ヨブ 19:13,14,16

現代の多くのエホバの証人も,ヨブと同じようなつらい状況を経験してきた。(7節を参照。) *

7. (ア)ヨブは自分が苦しんでいる理由についてどう考えましたか。でも,どんなことはしませんでしたか。(イ)クリスチャンは,挿絵の状況に似たどんな試練を経験するかもしれませんか。

7 サタンはヨブに,「自分が苦しんでいるのはエホバの恵みを失ったからだ」と信じ込ませようとしていました。例えば,強い風を送り込んで,ヨブの10人の子供たちが食事を楽しんでいた家を倒しました。(ヨブ 1:18,19)また,天から火を降らせて,羊や羊の世話をしていた召し使いたちを焼き尽くしました。(ヨブ 1:16)風や火が天から下ってきたので,ヨブは,「これはエホバからのものに違いない。自分はエホバを怒らせてしまった」と考えました。それでも,エホバを侮辱することはしませんでした。ヨブは,長年にわたって自分がエホバから良いものをたくさん受けてきたことを理解していました。それで,エホバから良いものを受けたのであれば,悪いことも喜んで受けるべきだと考え,「エホバの名が引き続き賛美されますように」と言いました。(ヨブ 1:20,21; 2:10)ヨブは,経済的にも精神的にも身体的にも大きなダメージを受けていましたが,エホバへの忠実を保ちました。それでもサタンは,ヨブに対する攻撃をやめませんでした。

8. サタンは次にどんなことを行いましたか。

8 サタンは別の方法でヨブを攻撃しました。3人の偽の友を使って,ヨブの自尊心を奪おうとしました。3人は,ヨブが苦しんでいるのは何か悪いことをしたからだ,と主張しました。(ヨブ 22:5‐9)そして,ヨブが悪いことを行っていないとしても,エホバに喜んでもらおうとする努力は無駄だ,と思わせようとしました。(ヨブ 4:18; 22:2,3; 25:4)「エホバは自分のことを愛してくれていないし,気に掛けてもくれていない。エホバに仕えても無駄だ」と思わせようとしていたのです。3人のこうした言葉を聞いたヨブは,自分には希望はない,と考えたかもしれません。

9. ヨブが勇気や強さを示せたのはなぜですか。

9 この時の情景を想像してみましょう。ヨブは灰の中に座り,絶え間ない痛みに耐えています。(ヨブ 2:8)3人の偽の友は,ヨブの人格を容赦なく攻撃し,自尊心を奪おうとしています。子供たちを亡くして心が引き裂かれそうになっていたヨブに,こうしたつらい経験が岩のようにのしかかってきたのです。初め,ヨブは黙っていました。(ヨブ 2:13–3:1)3人の友はそれを見て,ヨブがエホバを退けようとしている,と考えたかもしれません。でも,それは全く間違っていました。やがてヨブは,おそらく頭を上げ,3人の友を真っすぐに見てこう言いました。「私は死ぬまで忠誠を貫く!」(ヨブ 27:5)ヨブがさまざまな苦しみを経験しながらも,これほどの勇気や強さを示せたのは,どうしてでしょうか。ヨブは,人生で最悪の時にも,エホバがやがてこの苦しみを終わらせてくださる,という希望を捨てませんでした。そして,たとえ死ぬことになったとしても,エホバが生き返らせてくださる,ということを理解していました。(ヨブ 14:13‐15

ヨブの手本に倣うには

10. ヨブの記述からどんなことを学べますか。

10 ヨブの記述からどんなことを学べるでしょうか。サタンが私たちに無理やりエホバを捨てさせることはできないということや,エホバが私たちの状況を全て理解してくださっているということです。また,関係する問題について理解を深めることもできます。では,ヨブの手本から学べる点を幾つか考えていきましょう。

11. エホバへの信頼を保つなら,どんな良い結果になりますか。(ヤコブ 4:7

11 ヨブの例から分かる通り,エホバへの信頼を保つなら,どんな試練も忍耐でき,サタンに立ち向かうことができます。そして,どんな結果になるでしょうか。聖書によると,サタンは私たちから逃げ去ります。ヤコブ 4:7を読む。)

12. ヨブは復活の希望からどのように力を得ましたか。

12 私たちは,復活の希望に強い信仰を持つ必要があります。前の記事で考えた通り,サタンはしばしば死に対する恐れを使って,私たちに忠誠心を捨てさせようとします。サタンはヨブに関して,命を守るためならエホバに仕えることさえやめる,と言いました。でも,それは間違っていました。ヨブは,死を避けられないような非常に難しい状況に直面していましたが,妥協することはありませんでした。エホバが善い方であることを確信し,エホバがいずれ物事を正してくださるという強い希望を持っていたので,頑張ることができました。また,自分が生きている間に物事が正されないとしても,エホバが将来自分を復活させてくださる,ということに信仰を持っていました。ヨブは,復活の希望が実現することを固く信じていました。私たちも復活を固く信じているなら,死に直面してもエホバへの忠誠を保つことができます。

13. サタンがどんな手を使ってヨブを攻撃したかに注目する必要があるのはなぜですか。

13 私たちは,サタンがどんな手を使ってヨブを攻撃したかに注目する必要があります。なぜなら,サタンは現代の私たちに対しても似たような方法を使ってくるからです。サタンは,「自分の命を守るために,自分が持つもの全てを差し出します」と主張しました。ここで「人」という言葉が使われていることから,サタンがヨブだけでなく,全ての人のことを言っていたことが分かります。(ヨブ 2:4,5)サタンはいわばこう言っていました。「エホバを本当に愛している人などいない。誰でも自分の命を守るためならエホバを捨てる。エホバは人間のことを愛してなどいない。人間がエホバに喜んでもらおうとしても,エホバはそんなことを気に留めていない」。でも,私たちは前もって教えられており,希望を抱いてエホバを待っているので,サタンにだまされることはありません。

14. 試練によって,どんなことが明らかになりますか。どんな例がありますか。

14 私たちは試練を,自分をもっとよく知る機会と見る必要があります。ヨブの場合,試練は,自分の弱さに気付き,それを直す助けとなりました。例えば,ヨブはいっそう謙遜になる必要があるということに気付きました。(ヨブ 42:3)私たちも,試練に遭う時,自分のことをもっとよく知ることができます。ニコライ兄弟は,健康状態が非常に悪かったにもかかわらず,留置施設に入れられました。 * こう言っています。「勾留中の生活はレントゲン検査のようで,その人がクリスチャンとしての良い性質を持っているかどうかを明らかにします」。ですから,自分の弱いところに気付いたなら,それを直すために努力することができます。

15. 私たちは誰の声に耳を傾ける必要がありますか。なぜですか。

15 私たちは,敵の声ではなくエホバの声に耳を傾ける必要があります。ヨブは,エホバから語り掛けられた時,注意を払ってよく聞きました。エホバはヨブに対していわばこう言っていました。「あなたは,私の創造する力を理解しているか。私は,あなたにどんなことが起きているかを全て知っている。あなたは,私があなたを気遣っていないとでも思っているのか」。それに対してヨブは,エホバが善い方であることを認めて,謙遜にこう言いました。「あなたのことを耳で聞いてはいましたが,今ではあなたをこの目で見ております」。(ヨブ 42:5)この時ヨブは,恐らく灰の中に座ったままで,体は腫れ物で覆われており,子供たちの死を悲しんでいました。それでもエホバは,ご自分がヨブを愛し,良いと認めていることをはっきりと示しました。(ヨブ 42:7,8

16. イザヤ 49章15,16節によると,試練に遭う時,どんなことを覚えておく必要がありますか。

16 現代の私たちも,侮辱されたり,だめな人間だと見られたりすることがあります。私たち個人や組織の評判を傷つけようとする人から,「悪意のあるうそをいろいろ言われる」かもしれません。(マタ 5:11)でも,ヨブの記述から分かる通り,エホバは,私たちが試練にぶつかるとしてもご自分への忠実を保つことができる,と確信しています。エホバは,希望を抱いてご自分を待つ人たちを愛していて,見捨てることは決してありません。イザヤ 49:15,16を読む。)ですから,神の敵の中傷に耳を傾けてはいけません。トルコに住むジェームズ兄弟の家族は,厳しい試練を経験してきました。兄弟はこう述べています。「私たちは,エホバの証人についてのうそに耳を傾けるなら,ひどくがっかりする,ということに気付きました。それで,王国の希望に思いを向け,エホバへの奉仕を熱心に行い続けました。そうすると,喜びを保つことができました」。ヨブのように,私たちもエホバの声に耳を傾けましょう。そうするなら,敵のうそによって希望を奪われてしまうことはありません。

希望は私たちの支えとなる

ヨブの忠誠は報われた。ヨブと妻はエホバに祝福され,長い人生を楽しんだ。(17節を参照。) *

17. ヘブライ 11章に出てくる忠実な人たちの手本から,どんなことを学べますか。

17 厳しい試練に遭っても勇気と強さを保ってエホバに仕えた人は,ヨブのほかにもたくさんいます。パウロはヘブライ人のクリスチャンへの手紙の中で,そうした人たちについて,「大勢の証人たち」と書きました。(ヘブ 12:1)それらの人たちは皆,厳しい試練を経験しましたが,死に至るまでエホバへの忠実を保ちました。(ヘブ 11:36‐40)彼らの努力や忍耐は無駄だったでしょうか。決してそんなことはありません。確かに,彼らは生きている間にエホバの約束全てが実現するのを見たわけではありません。それでも,希望を抱いてエホバを待ち続けました。また,彼らはエホバから良いと認められていることを確信していたので,いずれエホバの約束の実現を見ることができる,と信じていました。(ヘブ 11:4,5)こうした人たちの手本について考えると,希望を抱いてエホバを待ち続けようという気持ちが強くなります。

18. エホバのためにどんなことを行っていきたいと思いますか。(ヘブライ 11:6

18 現代の世界はますます悪くなっています。(テモ二 3:13)また,サタンはエホバに仕える人たちに対する攻撃をやめていません。それで,将来どんな試練にぶつかるとしても,一生懸命エホバに仕えていきましょう。私たちは,「生きている神に希望を抱いている」からです。(テモ一 4:10)ヨブがエホバのおかげで迎えた結末から分かる通り,「エホバは優しい愛情にあふれ,憐れみ深い方」です。(ヤコ 5:11)私たちも,エホバへの忠実を保ちましょう。エホバは,ご自分に「熱心に仕えようと努める人たち」に必ず報いを与えてくださるのです。ヘブライ 11:6を読む。)

133番の歌 救出を神に求めなさい

^ 大変な試練を忍耐した人といえば,忠実な人ヨブのことを思い浮かべるかもしれません。ヨブの経験からどんなことを学べるでしょうか。サタンが私たちに無理やりエホバを捨てさせることはできないということや,エホバが私たちの状況を全て理解してくださっているということです。また,エホバがヨブの試練を終わらせたのと同じように,私たちの苦しみ全てをいずれ終わらせてくださる,ということも学べます。こうしたことに対する確信を行動によって表すなら,「希望を抱いてエホバを待」っていることになります。

^ の説: 「希する」と訳されるヘブライ語には,基本的に,大きな期待を抱いて何かを「待つ」という意味があります。誰かに頼る,もしくは誰かを信頼する,という考えも含まれています。(詩 25:2,3; 62:5

^ 一部の名前は変えてあります。

^ や挿: ヨブと妻は,子供たちを一度に亡くすという悲惨な経験をした。

^ や挿: ヨブは試練を最後まで忍耐した。ヨブと妻が,自分たちと家族にエホバが与えてくださった祝福について考えている。