1. ヨセフはどんな問題にぶつかりましたか。どうしましたか。

 ヤコブの息子ヨセフは，難しい問題にぶつかりました。ある女性から，「私と寝て」と言われたのです。その人は，主人であるポテパルの妻でした。ヨセフはこの誘惑を退けました。中には，「どうしてそんなことをしたんだろう」と考える人もいるかもしれません。ポテパルは家にいませんでした。また，ヨセフはその家の奴隷だったので，主人の妻の誘惑を退けるなら，どんな仕返しをされるか分かりませんでした。それでも，ヨセフはしつこい誘惑を退け続けました。なぜでしょうか。ヨセフはこう言っています。「そのような非常に悪いことをして，神に対して罪を犯すことなど，どうしてできるでしょうか」。（創 39:7‐12）

2. ヨセフは姦淫が神に対する罪であることをどのようにして理解しましたか。

² ヨセフは，姦淫がエホバから見て「非常に悪いこと」であるということをどのようにして理解したのでしょうか。モーセの律法の「姦淫をしてはならない」という規定が記されたのは，200年も後のことでした。（出 20:14）でもヨセフは，エホバのことをよく知っていたので，エホバが性的不道徳を憎んでいるということが分かっていました。例えば，エホバが取り決めた結婚は1人の男性と1人の女性の結び付きである，ということを理解していました。またヨセフは，祖父の母親であるサラが犯されそうになった時，2度にわたってエホバが保護したということを聞いていたでしょう。エホバは同じようにして，イサクの妻リベカのことも保護しました。（創 2:24; 12:14‐20; 20:2‐7; 26:6‐11）ヨセフはこうしたことをじっくり考えて，エホバから見て何が正しく何が間違っているかを理解できました。ヨセフはエホバを愛していたので，エホバの基準に従いたいと思っていました。

3. この記事ではどんなことを考えますか。

³ あなたは，正しいことを愛していることでしょう。でも，完全な人は一人もいないので，気を付けていないと，正しさに関する世の中の見方に簡単に影響されてしまうかもしれません。（イザ 5:20。ロマ 12:2）では，正しさとは何か，正しいことを愛することはどのように私たちのためになるかを考えていきましょう。そして，エホバの基準への愛を強めるためにどんなことができるか，3つの点を取り上げます。

4. 正しさとはどういうことではありませんか。

⁴ 世の中には，自分こそ正しいと考える独善的な人たちが多くいます。とはいえ，そうした態度は神に喜ばれません。イエスは地上にいた時，当時の宗教指導者たちを非難しました。彼らが正しさに関する基準を自分たちで決めていたからです。（伝 7:16。ルカ 16:15）本当の正しさは，自分の基準で決められるものではありません。

5. 聖書で言う正しさとは何ですか。

⁵ 正しいことを行うのは，本当に立派なことです。聖書で言う正しさとは，エホバから見て正しいことを行うことです。「正しさ」に相当する語は，エホバの最高の基準に従って生きるという考えを伝えています。例えば，エホバは古代イスラエルの商人に対して，「ごまかしのない……重り」を使うようにと命じました。（申 25:15）ここで「ごまかしのない」と訳されているヘブライ語は，「正しい」と訳すこともできます。ですから，エホバから見て正しいことを行いたいと願うクリスチャンは，仕事に関する全てのことで，ごまかすことなく正直に行動する必要があります。また，正しいことを行う人は，公正を愛し，不公正を憎みます。それで，「全ての点で神に喜ばれ」るために，自分の決定をエホバがどうご覧になるかをよく考えます。（コロ 1:10）

6. エホバの基準が正しいと言えるのはなぜですか。（イザヤ 55:8，9）

⁶ 聖書は，エホバを「正しさの源」と呼んでいます。（エレ 50:7）エホバは全てのものを造った方なので，エホバだけが正邪の基準を正しく定めることができます。エホバの基準は，人間の基準よりもはるかに高いものです。エホバは完全な方ですが，人間は不完全さや罪の影響を受けているからです。（格 14:12。イザヤ 55:8，9を読む。）それでも，私たちは神に似た者として造られているので，正しさに関するエホバの基準に従って生きることができます。（創 1:27）そして，ぜひそうしたいと思っています。お父さんエホバを愛しているので，できる限りのことをしてエホバに倣いたいと思っているのです。（エフェ 5:1）

7. 信頼できる基準が必要なのはなぜですか。

⁷ 正邪に関するエホバの基準に従うことは，私たちのためになります。例えで考えてみましょう。銀行ごとにお金の価値が違ったり，建設会社によって長さや重さの単位が違ったりするなら，大混乱になってしまいます。また，医師などが一定の基準に従わずに治療を行うなら，患者の命に関わります。こうした例から分かる通り，信頼できる基準は私たちの保護となります。同じように，正邪に関する神の基準も，私たちの保護となるのです。

8. 正しいことを愛する人には，どんな祝福が与えられますか。

⁸ エホバは，ご自分の基準に従って生きようとする人たちに祝福を与えます。こう約束しています。「正しい人は地上に住み続け，そこで永遠に暮らす」。（詩 37:29）全ての人がエホバの基準に従う時，平和と一致の下に幸せに暮らせる世界が実現します。エホバは，私たちにそうした生活を送ってほしいと願っています。ですから，一人一人が正しいことを愛するのは本当にふさわしいことではないでしょうか。では，正しいことへの愛をどうすれば強めることができますか。3つの点を考えてみましょう。

9. 正しいことを愛する上で，どんなことが助けとなりますか。

⁹ （1）基準を定める方エホバを愛する。正しいことを愛するためには，正邪の基準を定める方エホバへの愛を深める必要があります。エホバへの愛が深まれば深まるほど，エホバの正しい基準に従って生きたいという気持ちが強くなります。アダムとエバのことを考えてみましょう。もしエホバを愛していたなら，2人はエホバのおきてを破るようなことはしなかったはずです。（創 3:1‐6，16‐19）

10. アブラハムはエホバへの理解を深めるためにどんなことをしましたか。

¹⁰ 私たちは誰も，アダムとエバと同じ間違いをしたいとは思いません。そうならないためには，エホバについて学び，エホバの考え方や素晴らしい性質についての理解を深めていく必要があります。そうすれば，エホバをいっそう愛するようになります。アブラハムの例を考えてみましょう。アブラハムは，エホバを心から愛していました。エホバの決定を理解できないこともありましたが，エホバに背を向けるのではなく，エホバのことをもっと知るように努力しました。例えば，ソドムとゴモラを滅ぼすというエホバの決定について知った時，アブラハムは，「地上の人全てを裁く方」が正しい人と邪悪な人を一緒に滅ぼしてしまうのではないか，と心配になりました。でも，そんなことはエホバに限ってあり得ないと思いました。それで，エホバに対して丁寧に繰り返し質問しました。エホバはその質問に辛抱強く答えました。その結果，アブラハムは，エホバが一人一人の心をご覧になる方で，正しい人と邪悪な人を一緒に罰することは決してない，ということを理解できました。（創 18:20‐32）

11. アブラハムは，エホバを愛し信頼していることをどのように示しましたか。

¹¹ アブラハムは，ソドムとゴモラの町についてエホバと会話して，大いに心を動かされました。お父さんエホバへの愛と敬意が深まったに違いありません。何年も後，エホバに対するアブラハムの信頼は大いに試されました。愛する息子イサクを犠牲として捧げるようにと命じられたのです。でもアブラハムは，エホバのことを前よりもよく知るようになっていました。それで，エホバに何も尋ねることなく，その通りにするために準備を始めました。この時，アブラハムは心が引き裂かれるような思いだったに違いありません。それでも，エホバについて学んだことをじっくり考えたことでしょう。エホバが正しくないことや愛のないことを行うはずはない，ということを理解していました。パウロによれば，アブラハムは，エホバがイサクを生き返らせることができると考えました。（ヘブ 11:17‐19）エホバはイサクの子孫が1つの国民となると約束していましたが，この時イサクにはまだ子供がいませんでした。アブラハムは，お父さんエホバを愛していて，エホバが正しいことを行うと信じていました。それで，難しい命令ではありましたが，信仰を示し，その通りに行いました。（創 22:1‐12）

12. どうすればアブラハムに倣えますか。（詩編 73:28）

¹² どうすればアブラハムに倣えるでしょうか。エホバについて学び続けることです。そうすれば，エホバとの絆を強め，いっそうエホバを愛するようになります。（詩編 73:28を読む。）そして，良心をエホバの考えにいっそう合ったものとすることができます。（ヘブ 5:14）そうなれば，何か間違ったことをするように誘われても，それを退けることができます。また，エホバが悲しむことやエホバとの絆を弱めることを行うことについて考えることすらしません。では，正しいことを愛していることを示すために，ほかにも何ができるでしょうか。

13. 正しいことを行うには何が必要ですか。（格言 15:9）

¹³ （2）正しいことに対する愛を強めるよう毎日努力する。正しさに関するエホバの基準への愛を強めることは，筋肉を鍛えることと似ています。どちらも，毎日努力する必要があります。エホバは分別のある方で，私たちにできないことを求めたりはしません。（詩 103:14）そして，「正しく生きようとする人を愛する」と約束しています。（格言 15:9を読む。）私たちは，エホバに仕える面で何か目標を立てたなら，それを達成するために努力を続けます。同じように，正しいことを行う面でも努力を続ける必要があります。エホバは，私たちが着実に進歩していけるよう辛抱強く助けてくださいます。（詩 84:5，7）

14. 「正義の胸当て」とは何ですか。それが私たちにとって欠かせないのはなぜですか。

¹⁴ エホバは，正しいことを行うことは重荷ではない，と愛情深く教えてくれています。（ヨハ一 5:3）それは重荷ではなく保護となります。私たちが生きていくのに一日たりとも欠かせないものです。パウロが述べた，神からの武具について考えてみましょう。（エフェ 6:14‐18）兵士の心臓を守っているのはどの武具でしょうか。「胸当て」です。胸当てが心臓を保護するのと同じように，「正義の胸当て」つまりエホバの正しい基準は，心つまり私たちの内面を守ってくれます。ですから，正義の胸当てを着けることを決して忘れてはいけません。（格 4:23）

15. どうすれば正義の胸当てを着けることができますか。

¹⁵ どうすれば正義の胸当てを着けることができるでしょうか。毎日の決定をエホバの基準に沿ったものにすることによって，そうできます。どんなことを話すか，どんな音楽を聞くか，どんな本を読むか，どんなテレビや動画を見るかについて決める時には，まず次のように考えましょう。「どんなものを心に取り入れることになるだろうか。これはエホバの基準にかなったものだろうか。それとも，不道徳や暴力や貪欲や利己心といった，エホバが正しくないと考えているものに思いを傾けさせるものだろうか」。（フィリ 4:8）自分の決定をエホバの考えに沿ったものとするなら，エホバの正しい基準によって心を守ることができます。

16‐17. イザヤ 48章18節からすると，私たちはいつまでもエホバの基準に従って生きていくことができます。なぜそう言えますか。

¹⁶ 「自分はこれから，来る日も来る日も，来る年も来る年も，エホバの正しい基準に従って生きていけるだろうか」と心配になることがありますか。イザヤ 48章18節にあるエホバの例えに注目してみましょう。（読む。）そこでエホバは，私たちの正しい行いが，「海の波のように多くなる」と述べています。自分が広々とした浜辺に立っていて，寄せては返す波を見ているところを想像してみてください。そうした穏やかな環境で，「いつか波がやって来なくなるのではないか」と心配になったりするでしょうか。そんなことはないはずです。あなたが知っている通り，海の波は何千年にもわたって打ち寄せてきましたし，これからも打ち寄せるからです。

¹⁷ あなたの正しい行いも，海の波のように多くなります。そのためにどんなことができるでしょうか。何かの決定を下す時には，まずエホバがどんなことを望んでいるかを考えるようにしましょう。そして，それを実行してください。そうするのがとても難しく感じることもあるかもしれませんが，愛情深いお父さんエホバはいつもあなたのそばにいて，力を与え，毎日正しいことを行えるように助けてくださいます。（イザ 40:29‐31）

18. 自分の基準でほかの人を裁いてはいけないのはなぜですか。

¹⁸ （3）裁くことをエホバに委ねる。私たちはエホバの正しい基準に従って生きるよう努力するとはいえ，ほかの人を裁いたり独善的になったりしてはいけません。私たちには，自分の基準でほかの人を裁く権利は与えられていません。エホバが「地上の人全てを裁く方」であることを覚えておく必要があります。（創 18:25）エホバは，裁くことを私たちに委ねてはいません。この点についてイエスは，「裁くのをやめなさい。裁かれないためです」と言っています。（マタ 7:1） b

19. ヨセフは，エホバが裁いてくださることを信じていました。なぜそう言えますか。

¹⁹ 正しいことを行ったヨセフの例をもう一度考えてみましょう。ヨセフは自分にひどいことをした人のことも裁いたりはしませんでした。ヨセフの兄弟たちはヨセフを捕まえて奴隷として売り飛ばし，父親のヤコブにはヨセフが死んだと思い込ませました。何年か後，ヨセフは家族と再会します。その時までにヨセフは，大きな権力を持つ支配者になっていたので，兄弟たちを厳しく裁いて仕返しすることもできました。ヨセフの兄弟たちは，自分たちがしたことを深く後悔していたとはいえ，ヨセフから仕返しされるのではないかと恐れていました。でも，ヨセフはこう言いました。「恐れないでください。私が神だとでもいうのでしょうか」。（創 37:18‐20，27，28，31‐35; 50:15‐21）ヨセフは謙遜さを示し，裁くことをエホバに委ねたのです。

20‐21. どうすれば独善的な態度を避けられますか。

²⁰ 私たちもヨセフに倣って，裁くことをエホバに委ねます。例えば，兄弟姉妹の動機を疑ったりはしません。私たちは人の心を読むことができないからです。「動機を調べる」ことができるのはエホバだけです。（格 16:2）エホバは，生い立ちや文化などに関わりなく，どんな人のことも愛しています。そして，私たちに対して，「心を大きく開」くようにと教えています。（コリ二 6:13）それで私たちは，全ての兄弟姉妹のことを裁くのではなく，愛するように努力します。

²¹ そして，私たちは兄弟姉妹でない人のことも裁いたりはしません。（テモ一 2:3，4）あなたは，エホバの証人ではない親族について，「あの人が真理を聞くことは絶対にない」と言ったことがありますか。そのように裁くことは，独善的で出過ぎたことです。エホバは今でも，「あらゆる場所の全ての人に」悔い改める機会を与えています。（使徒 17:30）独善的な態度はエホバから見て正しくないということを忘れないようにしましょう。

22. 正しいことを愛していきたいと思うのはなぜですか。

²² 正しさに関するエホバの基準を愛するなら，私たちは幸福になることができます。そして，人々は私たちの姿を見て，神にも私たちにもいっそう引き寄せられるようになります。ですから，「正しいことを切望」するのを決してやめないようにしましょう。（マタ 5:6）エホバは私たちの努力に目を留め，私たちの進歩を見て喜んでくださいます。世の中には正しくないことを行う人がますます多くなっていますが，安心してください。「エホバは正しい人を愛する」からです。（詩 146:8）