研究記事7
聖書をどのように読んでいますか
「どう読みますか」。ルカ 10:26
48番の歌 日ごとにエホバと共に歩む
何を学ぶか a
1. イエスが聖書を大切にしていたことはどんなことから分かりますか。
イエスの話を聞いているところを想像してみてください。イエスはたくさんの聖句を引用して教えます。しかも,そうした聖句を覚えているのです。イエスはいつも聖書から語る人でした。バプテスマを受けた後に語った言葉も,亡くなる直前に語った言葉も,聖書からの引用でした。 b (申 8:3。詩 31:5。ルカ 4:4; 23:46)地上で伝道を行った3年半の間,イエスは人々の前で聖書を朗読したり引用したり説明したりしました。(マタ 5:17,18,21,22,27,28。ルカ 4:16-20)
2. イエスはどのようにして聖書のことをよく知るようになりましたか。(表紙の絵を参照。)
2 イエスは伝道を始めるずっと前から,聖書を読んだり聖書の朗読を聞いたりしていました。幼い時には,家族の会話の中でヨセフやマリアが聖書のことを話すのを聞いていたはずです。 c (申 6:6,7)また,安息日には家族と一緒に会堂に通っていたことでしょう。(ルカ 4:16)そこで聖書の朗読を真剣に聞いていたに違いありません。やがて,イエスは自分でも聖書を読むようになります。こうしてイエスは聖書のことをよく知るようになりました。それだけでなく,聖書の言葉を愛し,学んだことを実践するようにもなりました。律法に詳しかった教師たちも,12歳のイエスと神殿で話した時,「[イエス]の理解力と答えにとても驚」きました。(ルカ 2:46,47,52)
3. この記事ではどんなことを学びますか。
3 私たちも毎日聖書を読むなら,聖書のことをよく知って愛するようになります。でも,ただ聖書を読めばいいのでしょうか。律法教師やパリサイ派やサドカイ派の人たちは,聖書をよく読んでいて律法に通じていましたが,大切なことを学び損なっていました。イエスが彼らに語った言葉から,聖書を読む時に意識したい点を3つ学べます。(1)読んだ内容を理解すること,(2)宝のような真理を見つけること,(3)学んだことに合わせて自分を変えることです。
読んだ内容を理解する
4. ルカ 10章25-29節からすると,聖書を読む時に大切なのはどんなことですか。
4 聖書を読む時には,意味をよく理解するようにしましょう。そうでないと,大切な点を学び損なってしまうかもしれません。イエスと「律法に通じた男性」のやり取りを考えてみましょう。(ルカ 10:25-29を読む。)この男性は,どうすれば永遠の命を得られるかと質問しました。それに対して,イエスは聖書に注目させ,「律法には何と書いてありますか。どう読みますか」と尋ねます。男性は,神を愛することと隣人を愛することが必要だ,と聖書から正しく答えました。(レビ 19:18。申 6:5)でもイエスに「私の隣人とはいったい誰でしょうか」と聞きました。この人は聖書の言葉を知っていましたが,その意味を十分に理解してはいなかったということです。それで,聖書をどのように当てはめたらよいかも分かっていませんでした。
読んだ内容を理解するスキルは磨くことができる。
5. 聖書を理解する上で,祈ることやゆっくり読むことはどのように役立ちますか。
5 聖書を理解するためには,良い読み方をすることが大切です。まず,読む前にエホバに祈ります。集中して読み,内容を理解できるよう,聖なる力を求めることができます。次に,ゆっくり読むようにしましょう。そうすれば内容をよく理解できます。声に出して読んだり,オーディオ版を聞きながら読んだりするのも効果的です。視覚と聴覚の両方を使うと,心に深く印象付けることができ,記憶にも残りやすくなります。(ヨシュ 1:8)そして,読み終わったならエホバにもう一度祈ります。聖書を与えてくださったことへの感謝を伝え,学んだことを実践できるように助けてください,とお願いすることができます。
6. 自分に問い掛けたり,メモを取ったりしながら読むとよいのはどうしてですか。(写真も参照。)
6 聖書をよく理解するために,ほかにもできることを2つ考えてみましょう。1つ目は,自分に問い掛けながら読むことです。登場人物は誰か,誰が誰に向かって話しているか,どうしてそう言ったのか,いつどこで起きた出来事か,といった点を考えます。そうすれば,話の流れをつかみやすくなるでしょう。2つ目は,メモを取りながら読むことです。考えを文字にすると,頭の中を整理することができ,記憶にも残りやすくなります。次のようなことをメモできます。あらすじや要点,調べて分かったこと,学べること,自分の感想,どのように実践できるかなどです。そうするなら,聖書の言葉をエホバから自分へのメッセージと感じられるようになるでしょう。
7. 聖書を理解するためには何が必要ですか。どうしてですか。(マタイ 24:15)
7 イエスは,聖書を理解するためには識別力が必要だと教えました。(マタイ 24:15を読む。)識別力とは,2つの考えの関連や違いを把握する能力のことです。識別力があるなら,物事の表面には現れていない部分を見抜くことができます。イエスの言葉から分かる通り,聖書の預言が実現していることを理解するためにも識別力が必要です。
8. 聖書を読む時,どのように識別力を働かせることができますか。
8 エホバは私たちに識別力を与えてくださいます。それで,識別力を働かせることができるように助けてください,とエホバに祈りましょう。(格 2:6)それに加えて,聖書を読む時には内容をよく分析し,すでに知っていることとの関連を考えるようにします。「エホバの証人のためのリサーチガイド」などの出版物も活用できるでしょう。そうするなら,聖句の意味や,どのように自分に当てはめられるかが分かります。(ヘブ 5:14)識別力を働かせて聖書を読むなら,内容をもっとよく理解できるようになります。
宝のような真理を見つける
9. サドカイ派の人たちはどんな大切な真理を受け入れていませんでしたか。
9 サドカイ派の人たちは,モーセ五書の内容をよく知っていました。でも,そこに書かれている大切な真理を受け入れていませんでした。ある時,サドカイ派の人たちは,復活の教えに関してイエスに言い掛かりをつけました。それに対してイエスはこう言いました。「モーセが書いたいばらの木に関する記述の中で,神がモーセに『私はアブラハムの神,イサクの神,ヤコブの神である』と言ったのを読まなかったのですか」。(マル 12:18,26)サドカイ派の人たちはこの聖句を何度も読んでいたはずですが,亡くなった人が復活するという大切な真理を受け入れていなかったのです。(マル 12:27。ルカ 20:38) d
10. 聖書を読む時にはどんなことを意識できますか。
10 この記述からどんなことが分かるでしょうか。聖書を読む時には,その聖句から学べることをできるだけたくさん見つけることが大切です。基本的な教えだけで満足するのではなく,宝のように隠されている聖書の教えや原則も探すようにしましょう。
11. 聖書から宝のような真理を見つけるためにどんなことができますか。(テモテ第二 3:16,17)
11 聖書を読む時,どうすれば宝のような真理を見つけられるでしょうか。テモテ第二 3章16,17節によると,「聖書全体」は,(1)教え,(2)戒め,(3)矯正し,(4)指導するのに「役立ちます」。(読む。)普段あまり注目しないような聖句であっても,この4つの役立つ点を見つけられます。まず,「その聖句は,エホバやエホバの目的や原則についてどんなことを教えているだろうか」と考えましょう。自分を戒める面でどのように助けとなるかも考えましょう。その聖句は,自分の良くない点に気付いてそれを正し,エホバに仕え続けるためにどのように役立つでしょうか。矯正するという面では,「伝道で会う人の間違った見方を正すために,どのように使えるだろうか」と考えられます。そして,エホバと同じ考え方ができるように自分を訓練し,指導するのに役立つ点も探すことができます。こうした4つの点を意識しながら聖書を読むと,宝のような真理をたくさん見つけることができるでしょう。
学んだことに合わせて自分を変える
12. イエスがパリサイ派の人たちに,「読んだことがないのですか」と言ったのはどうしてですか。
12 イエスは,聖書を間違った態度で読んでいたパリサイ派の人たちに,「読んだことがないのですか」と言いました。(マタ 12:1-7) e この時彼らは,イエスの弟子たちが安息日を守っていないと批判しました。それに対してイエスは,聖書中の2つの出来事とホセアの聖句に触れ,パリサイ派の人たちが安息日の意味を理解しておらず,憐れみに欠けていることを指摘しました。彼らは聖書を読んでいたのに,どうしてそれに沿った考え方や行動ができなかったのでしょうか。謙遜ではなく,ほかの人を批判するような態度で読んでいたからです。それで,聖書を本当の意味で理解することができていませんでした。(マタ 23:23。ヨハ 5:39,40)
13. どんな態度で聖書を読むことが大切ですか。どうしてですか。
13 イエスの言葉から,正しい態度で聖書を読むことの大切さが分かります。パリサイ派の人たちのようにはなりたくありません。謙遜であり,意欲的に学ぶようにしましょう。聖書の「言葉を温和に受け入れ,それが心に植え付けられるようにしてください」。(ヤコ 1:21)温和で柔らかい心があるなら,聖書の言葉を当てはめやすくなります。謙遜であって初めて,憐れみや思いやりや愛について学び,学んだことに合わせて自分を変えることができるのです。
14. 自分を聖書に合わせて変えているかどうかは,どんなことから分かりますか。(写真も参照。)
14 聖書に合わせて自分を変えているかどうかは,人との接し方に表れます。パリサイ派の人たちは聖書の言葉が心に達していなかったので,「罪のない人を断罪し」ていました。(マタ 12:7)ほかの人に対する自分の見方や接し方について,次のように考えてみましょう。人の良いところについていつも話しているでしょうか。それとも,できていないところを批判することが多いでしょうか。誰かが間違いをした時,進んで許すでしょうか。それとも,根に持ったり厳しく責めたりするでしょうか。このように分析するなら,自分の考え方や感じ方や行動を聖書に合わせて変えているかどうかが分かります。(テモ一 4:12,15。ヘブ 4:12)
聖書を読んで幸せを味わう
15. イエスは聖書についてどう感じていましたか。
15 イエスは聖書を愛していました。そのことは,詩編 40編8節でこう預言されていました。「私の神,あなたの望まれることを喜んで行います。あなたの律法は私の奥深くにあります」。このようにイエスは聖書を愛していたので,幸せを味わい,エホバに忠実に仕え続けることができました。私たちも聖書を心から愛するようになるなら,幸せを味わいつつエホバに仕えていくことができます。(詩 1:1-3)
16. 聖書から多くのことを学ぶためにどんなことをしたいと思いますか。(「 イエスの言葉から学べる聖書の読み方」の囲みを参照。)
16 この記事では,イエスの言葉や手本について学びました。私たちも聖書を読むスキルを磨いていくようにしましょう。聖書をよく理解するために,祈り,ゆっくり読み,自分に問い掛けたりメモを取ったりしながら読むことができます。出版物を活用して聖句を分析し,識別力を働かせるようにしましょう。普段あまり注目しないような聖句からも,宝のような真理を見つけることができます。正しい態度で聖書を読み,聖書に合わせて自分を変えていくようにしましょう。こうした点で努力するなら,聖書からたくさんのことを学び,エホバともっと親しくなることができます。(詩 119:17,18。ヤコ 4:8)
116番の歌 光は輝きを増す
a エホバに仕える私たちは,聖書を毎日読むよう努力しています。聖書を読んでいる人たちはほかにもいますが,その多くは内容を正しく理解できてはいません。イエスの時代にもそのような人たちがいました。イエスが彼らに語った言葉から,聖書を読む時に意識したい大切なことを学べます。
c マリアは聖句をよく知っていて,それを会話に含めたこともあります。(ルカ 1:46-55)貧しかったヨセフとマリアは,自分用の聖書を手に入れることができなかったと思われます。会堂で聖書が朗読される時,それを真剣に聞いていたので,後で思い起こすことができたのでしょう。
d 「ものみの塔」2013年2月1日号の「神に近づく ―『この方は……生きている者の神なのです』」という記事を参照。
e マタイ 19章4-6節でもイエスはパリサイ派の人たちに,「あなた方は読まなかったのですか」と言いました。彼らは創造についての記述を読んではいましたが,そこから結婚に対する神の見方を読み取ることができていませんでした。
f 写真や挿絵: 王国会館での集会で音響係の兄弟が幾つもミスをしてしまった。でも集会後,兄弟たちはそのミスではなく誠実な努力に目を留めて褒めている。
「ものみの塔」(研究用)